市川猿之助_宙叉御前)

市川猿之助が昼夜ともに大奮闘中の『明治座十一月花形歌舞伎』で、11月9日、夜の部で宙乗り600回の記録を達成した。
夜の部は「三代猿之助四十八撰」の作品の1つ、『四天王楓江戸粧』で二度の宙乗りや早替り、舞踊的な土蜘蛛退治、大立廻りなどの見せ場と、屋台崩しなど、“究極のスペクタクル”が展開されている。
 
【物語】
帝の遁世を好機と左大臣高明は、姉の辰夜叉御前を蜘蛛の妖術で蘇生させ、天下を狙う。立ち向かうのは源氏の大将、源頼光と家臣の四天王。同じく家臣で独り武者と呼ばれる平井保昌の弟の平井保輔は、袴垂の安と名を変え、市井に無頼の日々を送っていた──。

序幕では藤原純友の妻である辰夜叉(猿之助)の蘇生に始まり、その弟で天下を狙う左大臣高明(坂東亀三郎)の悪事が描かれる。見どころはなんといっても十二単姿の辰夜叉御前の宙乗りで、蜘蛛の糸を撒きながらという、妖しく美しい宙乗りを猿之助が見せてくれる。

夜の部「四天王楓江戸粧」㈰辰夜叉御前
(猿之助)
 
二幕目は男の夜鷹という珍しい趣向を用い、平井保輔(猿之助)の悪と忠義、母の幾野(片岡秀太郎)や兄嫁の和泉式部(市川笑三郎)、その妹の橋立(市川笑也)らが織りなす悲運の物語が描かれる。続いて「花山御所」では、顔見せ狂言には不可欠の『暫』の趣向を用いた華やかな場面となる。

夜の部「四天王楓江戸粧」㈫平井保輔(猿之助)、母の幾野(片岡秀太郎)
 
三幕目は、源頼光の身代わりとなった平井保輔の首を贋首と左大臣高明が看破して、源頼光の許嫁花園姫(市川笑野)や和泉式部や橋立の首を打てと命じる。そこに頼光の四天王の1人、碓井定光(市川右近)が登場。高明の携える十握の宝剣が偽物であると言って、鬼童丸(市川團子)に本物を持ってこさせる。また御所に仕える春町(市川春猿)と田原千晴(市川猿弥)も実は身をやつして高明を探っていたとわかる。そこへ辰夜叉が巨大な土蜘蛛となって現れる。
巨大な土蜘蛛の出現もダイナミックだが、
鬼童丸に扮する子役・團子の活躍ぶりに会場が沸きに沸く場面だ。
 
夜の部「四天王楓江戸粧」㈪
碓井定光(
市川右近)、土蜘蛛(猿之助)、鬼童丸(市川團子)

大詰は、地蔵堂で高明の残党狩りを行っている卜部季武(市川猿弥)の前に、文売り(猿之助)が姿を現す。だが小女郎狐と見破られる。そこに平将門の遺児である七綾姫(尾上右近)が将門の旗印を携えてやってくる。また、地蔵堂に引き込まれていた猪熊入道(市川欣弥)も登場し、4人のだんまりのなか、名剣小狐丸を将門の遺児である太郎良門(猿之助)が持ち去る。
場面は変わって品川宿そばの紅葉茶屋。居候の彦左(亀三郎)をめぐって質屋の娘お七(尾上右近)と、女郎のおのぶ(猿之助)が言い争うなか、小狐丸に纏わる小女郎狐の物語が展開する。やがて小狐丸を手に入れた小女郎狐は稲荷の森へと飛び去っていき、お七こと実は七綾姫と、彦左こと実は高明、そして太郎良門と卜部季武の大立ち廻りのなか大団円を迎える。
二度目の猿之助の宙乗りは時間も長くケレン味たっぷり。さらにそのあとの
七綾姫と高明、太郎良門の大捕物は捕り方のアクロバティックな動きも楽しく、まさに出演者全員の奮闘で魅せる公演となっている。
 
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600回という記録について、11月9日の夜の部の開演前に市川猿之助が会見を行い、記者たちのインタビューに答えた。

【猿之助コメント】
500回というのもきりがよかったんですが、いつのまにか通り過ぎていました(笑)。僕自身、こんなに数がいってるとは思わなかったですね。怪我もなくやらせていただいたのはスタッフのおかげです。
襲名で襲名披露公演の『四ノ切』でずっと全国各地を回らしていただいて、『ヤマトタケル』と合わせて宙乗りの回数が増えました。とはいっても伯父がギネスブックに宙乗り5000回で載ってますので、この8倍以上やんなきゃいけない(笑)。 伯父の記録は、ひとつくらい抜きたい。 自分には、宙乗りの記録を抜くことくらいしかできないと思いますから。伯父の性格からすると、「600回なんて別に」と言うでしょう(笑)。まだまだだよと。
ベスト宙乗りというか、気持ちいいのはスーパー歌舞伎の『ヤマトタケル』ですね。鳥になって昇天してゆくのは一番気持ちいい。ヒヤリとした体験は、四国で装置が壊れて宙ぶらりんになってしまった。脚立が届いたのでそこから2階席に飛び込みました。
伯父からのアドバイスは、宙づりになっちゃいけない、あくまで宙を歩くようにと。 長袴の中の脚の動きの技術を教えてもらっています。 それから宙乗りは、ワイヤーを隠してはいけない。 ワイヤーが見えるからこそ歌舞伎の宙乗りなわけで、 イリュージョンではないので。あくまで江戸の精神を忘れないように、と教えられました。

※昼の部のレビューはこちら
http://blog.livedoor.jp/enbublog-forecast/archives/51940187.html 



〈公演情報〉

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『明治座 十一月花形歌舞伎』
【昼の部】
一、新歌舞伎十八番の内 高時(たかとき)
二、夏姿女團七(なつすがたおんなだんしち)
【夜の部】
三代猿之助四十八撰の内 通し狂言
四天王楓江戸粧(してんのうもみじのえどぐま)
市川猿之助宙乗り相勤め申し候
11/1〜25◎明治座
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター
03-3666-6666(10:00〜17:00)
http://www.meijiza.co.jp/info/




【取材・文・撮影/榊原和子 舞台写真提供/明治座】


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