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役者の息づかいまで聞こえる小劇場空間にこだわり続ける演出家・和田憲明は、『ディーラーズ・チョイス』、そして『プルーフ/証明』と2年連続で翻訳劇に挑んできたが、今年はモダンスイマーズの初期の公演として04年に上演された蓬莱竜太作の『304』を、下北沢の小劇場シアター711で上演中である(11/30まで)。

 
【物語】
東京、池袋北口から5分。古びたビル等が何軒か窮屈そうに立っている─―赤松ビル三〇四号。
そこにいるのは5人の男女。数年前、高校の同級生だった彼ら。
ボスの松崎(マツザキ)がどこからか持ってくる、怪しげな仕事。
不思議に思いつつ、割りが良いためそれで生計を立てる秋山(デンパ)、辻本(シロオビ)、木内(マンガ)、真鍋(カロリー)。
雑然としながらも平穏に過ぎる毎日。
ふいに起きた異変。呼び鈴が鳴り、椎名(シイナ)という男が土足で入ってくる。

古いビルの一室にたむろしている、ちょっと世の中から外れたような若者たち。無線マニアのデンパ(稲葉友)はここではないどこかにいる自分を妄想して、ハム仲間と会話する。コンビニの食料を大量に買ってくるカロリー(金成均)は食べ物にこだわる。ゲームに熱中する柔道部出身のシロオビ(山下平祐)、四六時中マンガを読み続けるマンガ(高畑こと美)。お互いに興味も関心もないが、この部屋の住人マツザキ(寺本一樹)が持ち込む「ヤバそうだけど割りのいい仕事」を共有することで繋がっている。どこか関係性の歪んだ仲間たちの共同生活だ。
 
そんな彼らのもとに1本の電話がかかり、マツザキが血相を変えるところから、場面は一気に緊迫していく。「お前たち、ちゃんと運んだのか?」。受け渡しをまかされた「カバン」が、相手に届かなかったのだ。恐怖に震えながら仲間たちに詰め寄るマツザキ。そして304号室のドアがいきなり開けられ、シイナ(鈴木綜馬)が入ってくる。そのシーンではこちらも心臓を掴まれるような恐さが襲う。だが、本当にドラマティックなのはそこから先で、マツザキの過去やシイナとの関係が露わになっていくと、現代社会の病んだ部分がリアルに浮かび上がるのだ。
 
禍々しくもあり、また切なくもある舞台上の304号室で起きる光景。和田演出らしいバイオレンスで非日常的な空気のなかで、むき出しの感情でぶつかり合う俳優たち。稲葉友のデンパが繊細さとともに強さも感じさせれば、金成均のカロリーは1人ハイテンションで空間を波だたせるうざさがあり、山下平祐のシロオビの強がる青年のもろさや、マンガの高畑こと美がふと見せる女としての部分などは、それぞれ人間くさい。寺本一樹のマツザキは、仲間の前で見せる顔とシイナを前にしたときのギャップを演じわけ、そして、鈴木綜馬のシイナの強烈な存在感と危険な匂いは圧巻だ。
だが、物語のラストは不思議な解放感もあって、短い時間のなかで観客もともに大きなうねりを体験するような、そんな感覚にしてくれる作品である。


この作品に出演している鈴木綜馬から、コメントが届いた。

【コメント】

鈴木綜馬(シイナ役)
この作品の魅力は、まず、出てくる人たちがとても「今」だと思います。最初に出てくる稲葉友くんの無線のやりとりとか、とてもバーチャルで切なくなってしまうような感じを受けるんです。そういう若者たちが集まって、ヒリヒリするような、生きた証を求めるような、そういう切ない空気がこの演劇空間に充満していて、その中でこうして芝居が出来ていることは、これからの自分の財産になると思います。
和田憲明さんの稽古場は、緊張もしましたし刺激的で、稽古が終わるのが寂しかったですね。そして、そう思っている自分にびっくりしました(笑)。どこか人生を問われているような稽古でしたし、仕事との向き合い方でも、「ここまですればこんなものが得られるんだぞ」ということを、とても意識させてくれる稽古場で、そういう気持ちを皆で共有しながら、励まし合いながら作ってきました。
50歳をすぎた僕が21歳の稲葉くんに「ねえ、俺、大丈夫?」と聞いて(笑)、一緒に帰る電車の中で「がんばろうね明日も」と励まし合ったり、30代の金(成均)くんに「こういう芝居でいいのかな」と聞いて、アドバイスをもらったり。そういう、全員が同じラインに立ったところでのやり取りが出来ている。それはある種とてもフェアで、「この稽古場とても素敵だな」と涙が出そうになったりしました。公演が始まってからも、スタッフの方たちはじめ、本当に良いチームワークで過ごしています。
ミュージカルの舞台では、ここまでヒリヒリしたなかにいる僕、ここまで雑然とした作りの舞台にいる僕をご覧になることはないと思いますし、人間の赤裸々な顔を見ていただけることが、この作品の魅力だと思います。とにかくこのチームの皆と一緒に、『304』の世界を新鮮に生きています。ぜひ観にいらしてください。


〈公演情報〉
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ウォーキング・スタッフプロデュース
『304』
作◇蓬莱竜太
演出◇和田憲明
出演◇稲葉友、金成均、寺本一樹、山下平祐、高畑こと美/鈴木綜馬
●11/22〜30◎下北沢 シアター711
〈料金〉
前売:指定席¥4,000 ベンチシート¥3,500(座席番号付き)
当日:指定席¥4,200 ベンチシート¥3,700(座席番号付き)
学生割引:¥2,500(枚数限定・公式HPにて前売のみ取扱い ※当日引換・要学生証提示)
〈問合わせ〉ウォーキング・スタッフ(石井光三オフィス内)03--5797-5502(平日13時〜18時)
〈チケット問合わせ〉 アトラス 03-5413-4815 (平日12時〜18時)


【文/榊原和子 写真提供/アトラス】


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