前作『荒川、神キラーチューン』が、webサイトが主催する「CoRich舞台芸術まつり2014春」でグランプリを受賞。また、主宰山田の活発な外部活動や、劇団員たちによる番外公演など多彩な活動で、今まさに旬になろうかという劇団ロ字ックの公演が、間もなく下北沢の地下劇場で始まる。タイトルは『媚微る(びびる)、』。主宰で作・演出を担当する山田佳奈と、舞台芸術まつりで俳優賞を受賞した小野寺ずるの二人に次回公演の話しなどを聞いた。

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小野寺ずる・山田佳奈

——「CoRich舞台芸術まつり2014春」で作品はグランプリ、小野寺さんは俳優賞を受賞しました。少し時間がたってしまいましたが、賞をもらった感想を聞かせて下さい。
山田 今年は賞をいただくことが多い1年でした。お世話になっている劇場さんが主催している賞で「演出賞」をもらったりして、幸先がいいなぁと思っていたら、こりっちも。びっくりでしたね。
——-賞をもらって、成長したという実感はありますか?
山田 んー…あんまりない。(小野寺に)どうですか?
小野寺 主宰を前にあれなんですが、言い方はちょっとおこがましいけど、作品だったり、クオリティだったり、多くの人の心を掴んだっていう部分では評価される作品だったと思うんですけど、やっぱり運じゃないけど…。なんだかとてもうれしい贈り物というか、いただいたものという感じです。
——-とりあえず、褒めてもらえるっていうのはうれしいですよね。
山田 褒めてもらえるっていうよりは、接触を持ってもらう機会が増えるっていうのがうれしいことなんじゃないですかね。
——-お客さんに?
山田 お客さんと作品が、ですかね。どの作品であれ、好みであったり、評価というか人のものさしがそれぞれあるので、そこにかかった上で、心を震わせられるものなのか。別の人にとってはまた別の震わせ方をするものなのか。いろいろなものがある中でやっぱり一番大事なのは、接触を持ってもらえることなのかなぁって思いますね。
——-小野寺さんは俳優賞ですね。
小野寺 ありがたいですよね。山田からは作品のグランプリを逃しても、小野寺が俳優賞を取れるような作品にしたいと言っていたから。「いや、そんな絶対、取れない」とみんなの前では謙遜してたんですけど、内心では「絶対取る!」って思って稽古していました。当時、個人的にもいろいろあって「わたしは魂からぶつかって、絶対取る!」って思っていたので、「よかった〜!」って。だから山田さんにありがとうの気持ちです。

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——-さらにお二人の紹介としては、本サイト内にある「日刊☆えんぶ」で山田さんには連載小説「煩悩サンスクリット」を、小野寺さんにはその挿絵を描いていただいています。
山田 もうすぐ2年ですね。
——-書いていて「大変」以外になにかあれば。
山田 そうですね。やっぱりなんかね、最初、書いていく時にすごく力んでいたというか、もちろん小説なんて書いたことなかったので、どういう言葉を使って。言葉だけでどう情緒だとかを出していくかっていうことをね、すごく難しいなぁとか考えて書いていた感が強かったんですけど。やっぱりもう、回を重ねていくとそれどころではなくなるというか。もう話をとりあえず書いていかなければ、この登場人物たちを生かしていかなければっていう気持ちが強くなりますね。私は小説家ではないんだなっていうのは書いていくうちに感じたりもして。でも、小説の書き方、パターンなんてないわけで。それが小説だよっていう人もいるだろうし、これは小説じゃないっていう人もいるだろうし。これはこれでいいかと思ってね、書いています。
——-「小説」という中にはまっていく必要はないわけで。どうですか小野寺さん、挿絵の方は。
小野寺 わたしはパッと読んで気に入った言葉を2つくらいもらって、そこから自由に描かせてもらっているという感じです。お料理をする気持ちで。今日はアナログでクレヨン使ってみよう。色鉛筆使ってみよう、デジタルに移行してみようとか。75回やってきて、どんどん実験をさせてもらっている感じがして、すごく楽しいです。
——-あとどのくらいまで続きますか? 最後とか考えてあるんですか?
山田 あまり深くは考えてないんですが。最近、気づいたんですけど、「煩悩サンスクリット」というからには、108つかなぁと思ってますけど(笑)。
——-じゃあ、一応、108回をめどに。
山田 展開によっては100回かなぁと思ってますけど(笑)。
——-お任せします(笑)。
小野寺 100でもいいですよね。美しい。
——-よろしくお願いします。

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——-次の作品についての話ですけど。まずはどんなお芝居なんでしょう? タイトルは「媚媺る(びびる)」と読むんですね。
山田 最初、思うことがあって「媚びる」っていうタイトルを付けたんですが、振り返ってみてそのタイトルで作品を書くのはちょっと自分としては今、気が向かないなぁと思ったときに、じゃあ何が書きたいかなぁって。木島かなえさんっていう女性がいたじゃないですか。容姿はあまり良くない彼女に接触した男性が何人も死んでしまって。一時期、裁判の傍聴席を巡ってすごい行列ができて話題になったり。すごい興味がある人だったんですよ。ずーっと。あの人は、男に媚びて生きてきていたのかなぁって思って、それを考えていて。で、あの人の話はどっかで取り上げたいなぁ、書きたいなぁとは思っていて。あ、これ今かなぁって思ったんですよね。その時にこれは「媚びる」っていうタイトルじゃないな、「媚びる」っていう表面的なことだけを書くのではなく、私の中で「びびる」っていうのがしっくりきて。文字は当て字なんですけど、「媚びる」っていう字にビビルの2つ目の「微」が美しい女をさす「び」なんですよね。で、すごく造語的に面白いと思って。「媚微る」っていうタイトルにしました。
——-いろんな意味が含まれているような感じですね。
山田 そうですね。たぶん、あの女性に対しても「まじびびるわぁ」みたいな世間の目もあるじゃないですか。世間体のことばで今、一番表しやすいのは、「まじ、あの人びびるよねー」っていう言葉なのかな。現代風の「びっくりする」っていう言葉なのかなぁ。でもびっくりするじゃないな。多分、んー…、現代が生んでしまった1人の女性だからこそ現代の言葉が一番しっくりくるのかなぁっていうことで「媚微る」にしました。
——-じゃ、ベースはその話がもとになっている?
山田 そうかもしれない。ただロ字ックは事件を扱う劇団ではなくて、あくまで一人の女性のある側面だったり、人生の中の一瞬を描きたいという思いが強いので。テレビのニュースにちらっとでも取り上げられてしまうような女性に、最近はすごく興味が湧く傾向があるんです。前回は「神になりたかった女」っていうのをニュースで見てちょっと興味あるなぁっていうところから広げていった作品だったんですけど、今回は木島さんっていうああいう容姿の女性が男性を取り込んでいく、そういうことをしてしまった。調べていくとすごい寂しい背景がどんどん出てくるので。そういう女性を書きたいなぁと思って。かなりあの女性をモチーフにはしているんですけど、あの女性の話だと思って公演に来られると多分、全然違う話なんじゃないかなっていう。
——-観客は公演そのものを観に行くのではと思いますけどね。


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——-小野寺さん俳優としては、台本を読んでいかがですか?
小野寺 なんか、鈍色ですね。いつもに比べて。ロ字ックの作品、私は初期の頃から関わったりして作品を観ているんですけど、「ピシ!」ってはっきりしたものが「ピン!」と張り詰めて行くような、イメージが強いんですけど。今回は色がさびているような鈍色で、もっと実態が掴みづらい煙というか、綿というかなんていうんですかね、ぼわーっと。すごく大きい圧迫感のある綿というか煙だったり、
山田 もうちょっと現実的に表現するとどうなりますか?
小野寺 そうですね。そういうイメージがあって。この作品、陰鬱な人間関係で、人のことを思って言葉を吐いてる人ってひとりかふたりで。他の人はもっと陰鬱で、悪意に満ちている人が多い気がしています。それを年末に地下で冬にやるっていうそれだけで、わたしはすごくいいなぁ!って思いますね。事件性っていう部分は、今回の作品ではそんなに私は重要なものではないし、作品の核でもない気がして、それよりももっと、事件を起こしかけている女性と被害を受けている女性の、その魂自体が同列というか、何も変わらないんだなっていう印象を受けてます。それを感じると「あいつが悪い」、「あいつが何てひどいことをしたんだ」っていう一辺倒な物語ではなく、それを受けて人それぞれが、ちょっと普遍的なものを感じられる作品になればいいなぁ、なる可能性を秘めてると思います。
——-なんかお話を聞いていると、演じている人が大変そうですね。
山田 毎回大変ですね。ロ字ックはねぇ。やっぱり自分がどういう人間であるか、まわりとどういうコミュニケーションの取り方をするかとか、どういうふうに存在していくかっていうことを作品の中で突き詰めていくんですよね。役者、役たちが。現実ではそれがいやで避けている部分も多いのに、演劇でやるってけっこうストレスですよね。
——-でも演劇だからやるっていうのもありますよね。
山田 その上、お客さんに見せなきゃいけないっていう。今回はうーん、しかも地下っていう閉塞感が、さらに1コ負荷がかかった状態での人間関係なので。わたしが役者だったら「やりたくない」と思いますね(笑)。


【プロフィール】
やまだかな〇東京を中心に活動している劇団ロ字ックの作家・演出・役者。レコード会社のプロモーターから演劇の世界へ。20代、330代の男女の深層をリアルに描く『人間のナナメ読み』によるエッジの効いた戯曲と、ポップで疾走感ある演出が持ち味。劇団ロ字ック(ロジック)を主宰する傍ら、ガールズユニット「HAPPY BIRTHDAY」のライブ総合演出や音楽界の『夏フェス』ならぬ小劇場界の『鬼フェス』を主宰し、全団体の総合プロデュースを行うなど、エンターテイメ ント業界でマルチに活躍中。2014年7月俳優座劇場で外部作品を演出を経て、2015年3月には豊橋芸術劇場PLATにて俳優の近藤芳正とともに市民劇を創作する。

おのでらずる〇役者。思春画家。89年生まれ。気仙沼市出身。ロ字ック所属。危ういキャラクターと爆破的演技を武器に一進一退。「獣系不発弾女優」として一部玄人に愛でられる。弱点は腹。演劇ぶっくで、イラスト&エッセイ「お芝居のアソコ」を連載中。

{公演情報}

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劇団ロ字ック公演『媚微る(びびる)、』

作・演出◇山田佳奈
出演◇小野寺ずる、堂本佳世、日高ボブ美、山田佳奈(以上、□字ック)、
猪俣三四郎(ナイロン100℃)、片桐はづき、川本ナオト、
榊菜津美(アマヤドリ)、笹木皓太(あんかけフラミンゴ)、松本亮(劇団扉座)、
泉佑里奈、サエト、左藤英美(美しい呼吸)、矢野昌幸
公演日◇12月10日(水)〜12月14日(日)
会場◇下北沢 小劇場B1 http://www.honda-geki.com/
劇団ロジックHP:http://www.roji649.com/


【文/坂口真人 撮影/矢崎亜希子】



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