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約300年続いた徳川幕府がいよいよ終わりを迎え、時代が明治へと移りゆく動乱の幕末、「最後のサムライ」と呼ばれた男がいた。彼の名は、河井継之助。北陸の小藩・長岡藩にあって、日本の行く末をいち早く察知し、因習にとらわれず西洋文化を取り入れ、画期的な藩政改革を断行しながらも、真の意味での「武士道」を守り抜いた男だ。

そんな河井継之助の激動の人生を、市原隼人の主演、ブロードウェイで活躍する新進気鋭のイヴァン・キャブネットの演出で描く『最後のサムライ』が、3月4日から天王洲 銀河劇場で幕を開ける(15日まで)。
 

稽古開始から3週間が経とうとする頃、『最後のサムライ』の稽古場を訪ねた。
幕末には継之助と対立する立場にあった元長州藩士で、明治期の元勲・山県有朋役の久ヶ沢徹、継之助と同じ長岡藩士で血気盛んな山本帯刀役のオレノグラフィティ(劇団鹿殺し)、山県と交渉する武器商人のエドワルド・スネル役の辻本耕志(フラミンゴ)、長岡藩の重鎮で封建主義的な山本勘右衛門役の藤尾姦太郎(劇団犬と串)という4人に、作品の魅力や稽古の様子などを聞いた。
それぞれが役にかける思い、舞台への意気込みを語りながらも、笑いの絶えない、稽古場の明るい雰囲気を感じさせるインタビューとなった。


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辻本耕志、久ヶ沢徹、オレノグラフィティ、藤尾姦太郎
 


河井継之助と個性的な人たちの物語


──まずは作品の印象とそれぞれの役について伺いますが、久ヶ沢さんは官軍参謀の山県有朋ですね。

久ヶ沢 僕は主人公の河井継之助のことは、今回初めて知ったんですが、聞くところによると破天荒な人だったというので、市原(隼人)君はすごく合ってるんじゃないかと思います。継之助は、動乱のなかで斬新なこともやっていたということで、全体として、ポップな感じになればいいなというイメージです。僕の演じる有朋は、いろいろな本で「ちょっと嫌な感じの人」として書かれていますが(笑)、この作品では意外とそういう要素はないし、僕としてはお客さんが「あの人、かっこよくない?」って騙されればいいなと(笑)。有朋を知っている人からすればイメージが違うかもしれませんが。作品の世界観では、継之助のことを別の角度から言い表していく人として描かれていて、彼と対極にある人という気がしています。
 

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──「別の角度から」という意味では、辻本さんの演じるスネルもそうですね。

辻本 お金や武器の話ばかりしていますが、おそらくスネルは、人間的に継之助さんを好きなんです。男として、サムライとして好きなので、そういう雰囲気を出せればいいと思います。

──唯一の外国人の役でもありますが。

辻本 最初は「え、俺!?」って。僕(背が)160しかないし、台本のなかには「手がでかい」とかもあって…。

久ヶ沢 今、小道具さん、手を作ってる(笑)。

辻本 「でっかくなっちゃった!」って、コントじゃないんですから(笑)。

久ヶ沢 右手だけでかい男。

オレノグラフィティ これ、どういう状況なんですか?

辻本 (笑)。役作りとしては、台詞を片言にするとコントになっちゃうので、最初は誇張して誇張してネチっこくやらせてもらって、今はそれを抜いていって、自然にする作業をやっています。

──作品の印象はいかがですか?

辻本 幕末物は初めてやらせてもらうので、わくわく感はすごくあります。継之助のお話ですが、個性的な人たちが集まっているので、面白いものになるなと。展開もけっこう速いので。

──有朋とスネルは、狂言回しのような存在でもありますよね。

辻本 そうですね。ストーリーテラー的な感じもあります。


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──
お芝居ではお二人の絡みがすごく多いですが、「久ヶ沢アニキ」からは何かアドバイスなどは? Twitterではかなり仲が良いというのが伝わりますが。

辻本 他の人たちとは、多分(一緒に)やらせてもらったことがなくて、みんな僕より年下で、僕が一番年上かなと思ってたらアニキが決まったので「よかった〜!」って。アニキにはずっとお世話になっていて、頼ってます。芝居でもいっぱいアドバイスをもらって、非常にありがたいですね。こうやってすぐ冗談を言ってくれますし(笑)。

久ヶ沢 冗談!?

辻本 あ、本気だったんだ(笑)。

一同 (爆笑)。


「こういう人だったんじゃないかな」と思わせる市原・継之助
 

──オレノさんは、同じ長岡藩の山本帯刀で、継之助とは衝突もしますが。

オレノ でも、やっていて(帯刀は)継之助と似てるところが実はあるんだな、と。最後の方は特に、彼に影響されて一番変わる人物なので。ベクトルが違うだけで、元々コアの部分が一緒なのかなと。それは市原さんの演技を見ててもすごく感じますし、彼とのシンパシーをちゃんと繋げていけたらなと思いますね。
──その「コアな部分」は何だと思いますか?

オレノ 言葉にするのってすごく難しいですが…。猪突猛進というか、道に対して真っ直ぐなんだろうなって。自分に対してもすごく素直な人間なんだろうなと思いますね。継之助もそうだし、帯刀もそう。目的としては二人とも多分一緒で、「良くしたい」ってことだけなんです。方法論が違うだけで。

一同 (頷く)。

オレノ 台本としては完成されていますが、内容が難しかったり、久ヶ沢さんと辻本さんが出てるシーンと僕らのシーンと、時間軸が入れ替わるとか、お客さんにとってわかりにくいところがあると思います。でもそれを埋めるように、キャラクターの熱だったり台詞の華があるので、とにかく痛快なものにできて、お客さんが「おっ!おっ!」と思っている間に終わればいいなと思ってます。

──藤尾さんは長岡藩の重鎮の山本勘右衛門で、藩の偉い人たちのなかでもわりと年配の役ですね。

藤尾 そうなんです。推定すると、60歳を超えるんですよね。たぶん声でこの役に。

久ヶ沢 28歳の声じゃないもん!(笑)家老の声ですよね、完全に。

藤尾 あとは、演出のイヴァン(・キャブネット)と話して、鬘と衣裳とメイクに頼ろうって(笑)。

──合意の上で?

藤尾 合意です。 勘右衛門は長岡藩に昔からいて、古い慣習でずっとやっていて、その結果どういう思想を持っていて、継之助にどういう対応をするのか、そこが出ればいいんじゃないか、というところでやってます。
 

最後_0036

──
市原さんの継之助について、皆さんから見ていかがですか?

久ヶ沢 さっきも合っていると言ったように、多分、皆さんが感じている通りの、熱い、真っ直ぐなところがあって、それを表すエピソードはいくつかあるんですけど、言えないものもあって。物理的に言えば「…穴が開いた」とか(笑)。

辻本 ははは(笑)。

久ヶ沢 真面目に言うと、「(継之助は)こういう人だったんじゃないかな」っていう気がします。キャスティングも凄くいいなぁと。

オレノ 確かに、こういう人だったんだろうなという感じがしますね。


すべての登場人物にそれぞれの道がある


──冒頭のダンス風の場面や、殺陣など、お芝居以外で見せる部分もありそうですが?

オレノ 演出のイヴァンは、お芝居の部分についてもパフォーマンスの部分についても、「言葉がなくても楽しめる、わかりやすい」というのをすごく重視している感じがします。たとえばパフォーマンスでも、華やかであることと同時に、物語のなかの必然として出てくることを大事にしている。イヴァンは日本語がわからないのですが、「君たちが今すごく怒ってるように見えるから、そういう風に見えないようにしてほしい」とか、まず万人にわかるように、そのうえで細かいニュアンスを出す、そういう演出をつけてくれています。
久ヶ沢 逆に日本語がわからない分、感情の流れがおかしいと、そこにすごく反応するんです。初日の稽古後に飲み会があって、僕がそこを質問したら「たしかに(言葉は)わからないけど、その場にいる人たちの反応を見て、合っているのか合っていないのか、役者がちゃんとニュアンスを出してるかわかる」と言っていて、僕は半信半疑だったんですけど、実際にやってみたら「全部合ってるな」と思いました。

オレノ そうですね。

久ヶ沢 稽古中に僕らが見てても「ん?」と思うようなところは、「そこは、こういう感情だったからこうなる、その感情をちゃんと挟んでくれ」という指摘があるので、やっぱりそうなんだなって。言葉は関係ないんだなというのは、すごく勉強になりました。

オレノ すべての登場人物に必ず道を作ってくれる。彼らがどこに向かって、どこに到達するのか、全員に一本ずつそれぞれの道があるから、「まずはちゃんとそれを通すのが一番大事で、どう見せたいとかは別にいいよ」と言ってました。


最後_0018

有朋とスネルのシーンはとにかく粋!


──先ほど辻本さんが久ヶ沢さん以外とはご一緒したことがないと仰ってましたが、今回、お互いの印象はいかがですか?

オレノ 久ヶ沢さんは舞台でしか拝見したことがなくて、お話は何度かさせてもらったことがありますが、まさか共演できるとは。実際に共演してみて、こんなに気さくな方だったのかと思って(笑)。ロジックが強い方という印象で、すごく緻密に計算して作っていて、多分「これは違うよ」ってたくさん言われるだろうし、もしかしたら嫌われちゃうかなとか思ってたんですけど、そんなことなくて。

久ヶ沢 いやいや、いや?

一同 (爆笑)。

オレノ えっ…嫌われてましたか?(笑)

久ヶ沢 ロジックで作ってるっつーの(笑)。オレノくんの芝居は観ていたんですけど、初めて共演して、鹿殺しで見てるまんまのストレートな感じで来るところが。

オレノ グーパンチしか出さない(笑)。

久ヶ沢 グーパンチどころか、ストレートしか出してこないから。「フックねえのかよ!」って(笑)。でもそのストレートさが、帯刀にすごく合ってる。いや、きっと、手はいっぱい持ってるんですよ…持ってるはずなんです。

オレノ 持ってないです(笑)。

久ヶ沢 それを敢えて「俺は今回、左手一本でしか勝負しないぜ」っていう心意気がね(笑)。

オレノ 僕の不器用さをうまくフォローしてくださって(笑)。

久ヶ沢 帯刀としてすごく良い味が出てるから素晴らしい。

オレノ ありがとうございます。

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久ヶ沢 藤尾君の芝居は初めて観ましたが、声だけ聞いてると「ぴったりすぎるな!」って。何十歳背伸びしてるんだ、と(笑)。そのへんの上手さをすごく感じるんですよね。今後とも注目の劇団です(笑)。

藤尾 劇団を(笑)ありがとうございます。

オレノ パーソナリティではないんだ(笑)。

藤尾 でも欲を言えば、絡みたかったなと。

久ヶ沢 そうなんです。

辻本 絡んでないね。

久ヶ沢 僕はスネル以外だと、岩村(猪野広樹が演じる)としか絡まなくて、あと本当に一言だけ、ソニンちゃん(紅小壺役)に「すまなかった」って。それで終わりですからね(笑)。

オレノ 僕らの背後に出てくるところですね。「山県か」って(笑)。

久ヶ沢 そうそう(笑)。
──あの「すまなかった」で、有朋の評価がぐっと上がります。

オレノ 良い台詞ですね。

久ヶ沢 そうですね。ただ、あの台詞、楽まで正解が出ないんじゃないかと。

オレノ 有朋とスネルのシーンはとにかく粋なんです。背中で語るシーンとかすごく多くて、見てて「こういう大人になりてえな」って思うような。

久ヶ沢 えっ、そう!?

オレノ メチャメチャかっこいいっすよ。

藤尾 かっこいいっすね。息がまたすごく合ってるから。

オレノ 「そこ待つんだ」とか「そこかぶせるんだ」とか。

藤尾 稽古場でのやり取りが速いんです。

久ヶ沢 台詞忘れてるだけなんだけどね。

一同 (爆笑)。

オレノ 夢を潰すことはやめてください、俺が憧れてんのに(笑)。

久ヶ沢 真面目が嫌いでな〜(笑)。


今の時代の目で過去から学ぶ大切さ
 
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──藤尾さんから見て皆さんはいかがですか?

藤尾 オレノさんも仰ってましたけど、初めて顔合わせでお会いした時に、怖そうなゾーンがあるなと思ったんですけど、その日の親睦会でしゃべって「なんてテキトーな人たちなんだろう」って、すごく安心しました(笑)。

──大人の余裕、という感じですか?

藤尾 そうですね(笑)。

久ヶ沢 大人の余裕だってさ(笑)。

辻本 藤尾くんと僕、10(歳)違いますからね。

久ヶ沢 え!?
辻本 最初、藤尾くん絶対年上だと思ってて。

久ヶ沢 俺も、自分より年上だと思ってた(笑)。

藤尾 それは嘘でしょ!おかしいでしょ(笑)。

久ヶ沢 本読みの時に「年上がいる!」って(笑)。

辻本 良い声出すし。

オレノ 年配の声(笑)。

久ヶ沢 オレノはいくつ?

オレノ 今年31歳です。

辻本 31なの!?

久ヶ沢 マジか…。


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辻本
 こないだソニンちゃんが、久ヶ沢さんが52歳だって知って。

久ヶ沢 ソニンちゃんが「ええっ!? なんか、今までいろいろすいません…」って。

辻本 それまでタメ口で話してたから(笑)。

オレノ いろいろフラッシュバックしたんでしょうね(笑)。

藤尾 あの時、あの時が(笑)。
──では最後に、公演への抱負をお願いします。

藤尾 河井継之助の物語ですが、彼をどう思ってるかというのは人それぞれで、たとえばスネルや山県はちょっと未来から見ていたり、または同じ時代から見ていたり、意見が相当違っています。150年ぐらい前の日本人ですが、今と変わっているところと、あまり変わってないところと、それぞれ出ていると思いますし、そういうものが継之助やその周りを通して見えてきたら面白いなと思っています

オレノ 僕は日本史が苦手で、学校でもビリから2番目だったんですけど(笑)、そんな僕でも楽しめるようなお芝居にしたいと思ってます。もちろん、継之助が好きな歴史ファンの方も、そうじゃない方も、楽しめるお芝居にしようと思いますので、ご期待ください。

辻本 たかだか150年ぐらいでこんなに変わったんだ、と思うようなことばかりですし、今の平和な日本では考えられないことばかりです。外国から文化が入ってきて、日本が激動した時代のことを、スピーディーにみんなの個性で見せれたらいいなと思っております!

久ヶ沢 今、辻本君がすごく良いことを力説して、僕はまったく逆のことを言うんですけど(笑)。たしかに、時代が動いていろいろありましたが、この作品には、今の時代の人にも通じる普遍的な問題が描かれてるんですよね。チョイスしなければいけないことがあって、この時代の人たちはこういうサジェスチョンがあって選んでいった。で、今もこの国は立場的にはそんなに変わらなくて、どうするんだと突きつけられているような気がするんです。だからこそ、今生きている人たちが、今の時代の目で過去を見て、同じ轍を踏まないためにはどうしたらいいのか、そこに思い至ってもらえたら、我々がこの作品を、熱をもって一生懸命演じる意味があるのかなと。もちろん、あまり考えず単純に見てもらって、「あれ、あんまり変わってないんだな。我々がちゃんとした選択をしていかないといけないんだな」と、ちょっとだけ感じていただければ、より嬉しいです。



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辻本耕志、久ヶ沢徹、オレノグラフィティ、藤尾姦太郎


くがさわとおる○福井県出身。SET(スーパーエキセントリックシアター)所属。舞台やTVドラマはもちろん、映画、ラジオ、ナレーションなど多岐にわたって活躍中。最近の出演は、舞台『ボクの妻と結婚してください。』『コンダーさんの恋〜鹿鳴館騒動記〜』(14年)、映画『揺れに揺られて、揺られてゆらり』(真壁幸紀監督)など。


おれのぐらふぃてぃ○兵庫県出身。劇団鹿殺し所属。劇団鹿殺し第12回公演『百千万』以降、全作品に出演、05年からは劇団オリジナル楽曲の作詞・作曲も担当。最近の出演は、舞台『ジルゼの事情』(OFFICE SHIKA×Cocco、再演)。今秋公開の映画『ピースオブケイク』(田口トモロヲ監督)に出演。


つじもとこうじ○和歌山県出身。02年7月に吉田ウーロン太、竹森千人とコントユニット・フラミンゴを結成。単独公演を中心に、TV、舞台、映画(俳優、声優)でも活躍。最近の出演は、小林賢太郎演劇作品『ノケモノノケモノ』、映画『オズ めざせ!エメラルドの国へ』、MX『蟲師 続章』など。


ふじおかんたろう○東京都出身。劇団犬と串に08年case.1『メスブタ』より参加。ピーチャム・カンパニー、北京蝶々など他劇団公演にも出演。最近の出演は、『K.テンペスト』犬と串case.13『うぶ』MMJプロデュース『美女と魔物のバッティングセンター』(14年)など。



<公演情報>

201410-31-96-c034589620150207130638

『最後のサムライ』

脚本◇岡本貴也

演出◇イヴァン・キャブネット

出演◇市原隼人/徳山秀典 中村誠治郎 阿久津愼太郎 オレノグラフィティ(劇団鹿殺し) 猪野広樹・小林豊(BOYS AND MEN)(Wキャスト) 山内圭輔(Wキャスト) 岡本玲 /辻本耕志(フラミンゴ) 永島敬三 藤尾姦太郎(犬と串)/久ヶ沢徹/ ソニン 他


●3/4〜15◎天王洲 銀河劇場

〈料金〉¥12,000(VIP席) ¥8,500(S席) ¥7,000(A席)(税込・全席指定)

〈公式ブログ〉http://samurai13.exblog.jp/ 



【取材・文/内河 文     撮影/田中亜紀】


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