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22年にわたる白石加代子のライフワーク『百物語』が、昨年10月に99話で終了した。だが「白石加代子は続きます」ということで、次の企画が立ち上がった。
強力な共演者・佐野史郎を迎えてのパフォーマンス・リーディング『笑った分だけ、怖くなる』は、現代作家の2つの小説を読んでいくというものだ。古典文学からSF小説、耽美から諧謔まで、独特の語り口と豊かな表現で聞かせてくれた白石加代子の「朗読」の世界が、また新展開を迎える。
そんな彼女への本誌4月号インタビューを別バージョンの写真とともにご紹介。

自分の心をのぞいたことあります?
 
──22年間、『百物語』を走り抜かれて、今の気持ちはいかがですか?
最後までなんとか辿り着いたという、せいせいした気持ちとともに、やはり隙間隙間でふっと思い出して、魂を持っていかれるような瞬間があるんです。しんどいこともありましたけど、和やかなあの空間に、また行きたいなと思ってしまったり、不思議ですね。
──それだけ白石さんの暮らしの中で、当たり前のことになっていたのでしょうね?
長く生きてきた分いろいろな経験をしているし、特別なことだとも思っていなかったのですが、逆に、そう思って心の準備をしていなかったせいか、隙を窺われたというか。愛を急に失うってこういうものかしら、と思ったりしています(笑)。
──それでも、もう次の企画『笑った分だけ、怖くなる』が始まって、また「怖い」お話なのですね?
私も「また怖いで括るの?」という気持ちはあったのですが、考えてみたら怖くない小説なんてないですし、どんな作品も核には怖さがないと成立しないんです。結局それは人間そのものが怖いということで、「お客様、笑ってますけど、御自分の心をよく覗いて見て下さい。」というメッセージなんです。

台本との距離を縮めることで安心する

──今までは白石さん1人でという形でしたが、今回はお相手に佐野史郎さんを迎えるのですね。
初めて共演するんです。まだ宣伝写真の撮影でご一緒しただけなのですが、ちょっとミステリアスな方で(笑)、お愛想笑いなんか決してしない、いい意味で怖い俳優さんだなという印象でした。
──演出がマイムで有名な小野寺修二さん。
小野寺さんも初めてです。リーディングですけど、おそらく動きがつくと思います。そこもちょっと期待しているんです。
──朗読劇ならではの大変さというのはありますか?
朗読は、体調ですごく変わるんです。普通の芝居は台詞が入るまでは悪戦苦闘ですが、一度入ったら、体調がちょっとくらい悪くても台詞は出てきます。そういう面では普通の芝居のほうが気持ちがラクですね。今、『死の舞踏』というリーディングを、仲代達矢さんと益岡徹さんの3人で稽古しているのですが、あの仲代さんが、ページのめくりとか、そういうちょっとしたことで、戸惑ったりされるんです。私に「落としたらどうなるの?」とか「いっぺんに3ページめくってしまったらどうなるの?」とか聞かれたり。実は私は、最後の『百物語』の回に、本をバタンと落としたんです。ちょうどTV中継も入っていて、ディレクターの方は「おしまいだ!」と思われたらしいんですけど、私はそのまますっと拾って、だいたいこの辺りだなと思って開いたら、ちょうどそこだったんです。面白かったのは、私がページを開くまで、お客様は楽しんで待っていらっしゃって、お客様は、目の前で起きることを全部面白がっているんだなと思いました。
──すぐそのページを開けるのも白石さんならではで、読み込んでいるから、台本との距離が近いのでしょうね。
何度も台本と向き合って、自分の味方にしてしまうのがいいのかもしれませんね。私の台本は、書き込みもあるしすごく汚いんです。でも台本との距離を縮めることで、安心できるところもありますから。
──最近、リーディングという形が増えてきましたが、白石さんはその草分けですね。これからも新しいリーディングの世界を拓いていってください。
最初の頃は、朗読はもっと淡々とやってください、とかアンケートに書かれたりしたんですよ(笑)。お客様もさまざまなリーディングの舞台に触れて、楽しみ方が広がったと思います。今度は1人から2人になるのでどうなるのか、まだ自分でもわからないのですが、佐野さんと一緒に、新しいリーディングの世界を作れたらいいなと思っています。

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しらいしかよこ○東京都出身。67年、劇団早稲田小劇場(現SCOT)に入団。89年、SCOTを退団。以来、映像や舞台で幅広く活躍中。 最近の主な舞台は『国盗人』、『ビューテイー・クイーン・オブ・リナーン』『ムサシ』(ロンドンNYバージョン)『おやすみ、かあさん』『ギリシャ悲劇 トロイアの女』(イスラエル公演)『あかいくらやみ』『鼬』など。読売演劇大賞優秀女優賞、芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章、旭日小綬章、菊池寛賞などを受けている。



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白石加代子新企画
『笑った分だけ、怖くなる』Vol.1
[第1ラウンド]東野圭吾作『超税金対策殺人事件』(「超・殺人事件 推理作家の苦悩」(新潮文庫)より)
[第2ラウンド]小池真理子作『妻の女友達』(集英社文庫)
上演台本◇笹部博司
演出◇小野寺修二
出演◇白石加代子 佐野史郎
4/15〜19◎東京芸術劇場シアターウエスト その他、新潟、兵庫、大阪、東京近郊などで公演
〈料金〉5,500円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉ジェイクリップ 03‐3352‐1616(平日10:00〜19:00) 




【構成・文/宮田華子 撮影/田中亜紀】


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