s_151117_eB0005

世界中で繰り返し上演され続けている名作『オーファンズ』が、2月10日の初日を皮切りに東京と神戸で上演される。
孤独で荒れ果てた暮らしをしていた兄弟が、かつて孤児だった男の優しさに触れ、再生していく物語で、1983年にロサンゼルスで初演されてから、世界各地で幾度となく舞台で上演されてきた。
今回は柳下大、平埜生成、高橋和也という戯曲のイメージ通りの顔ぶれが集結、宮田慶子の演出で小劇場の密な空間でじっくりと見せる舞台となる。その作品に登場する3人に、この舞台と役柄について話してもらった演劇ぶっく2月号の記事を別バージョンの写真とともにご紹介する。

s_YANAGISITA

愛情を知らないでギリギリのところで生きてきた

──まず最初に戯曲を読んだ印象から聞かせてください。
柳下 作品はすごく面白いと思ったのですが、今の自分で表現しきれるかなと。でも宮田慶子さんが演出してくださるという信頼感がありますし、また新しい自分を引き出していただきたいと強く思いました。
高橋 20年ぐらい前、僕が10代だったときに上演の企画があって読んでるんです。実現しなかったんですけれど、柳下くんがやるトリート役の予定で読んでました。今、40代半ばになってこの戯曲にまた出会って、ちょうど若者から中年の役に変わっていく時期に、このハロルドという役に出会えたのはとてもラッキーだなと思っています。
平埜 僕はこれまでの芝居で、こういうリアリズムの芝居の経験がなかったので、ついにこういう役をやれるんだと嬉しかったです。日常会話というか、日常を切り取ったようなお芝居をあまりやってこなかったので。
──平埜さんの演じるフィリップは、特殊な育ち方をしてきた青年ですが、どうアプローチしますか?
平埜 まずは孤児ということを自分の中でどう納得させていくか、そこを頑張らないといけないなと。それからハロルドに地図をもらったことをきっかけに、自分の中の世界が広がっていく。その感覚は共感できるなと思っています。
柳下 フィリップもトリートも愛情というものを知らないで、ギリギリのところで生きてきているんですよね。でも人の温かさだったり外の世界に触れたときに、ちょっとずつ本当の「人」になっていく。
──トリートも兄貴ぶっていますが、まだ子供なんですね。
柳下 気を張って大人ぶっているだけなんです。だからちょっとしたことですぐ子供に戻ってしまうし、子供だからこそ言い訳も達者で悪いこともすぐに覚えてしまう。それがハロルドに出会って、最初はもちろん気を許してないと思うんですが、でもすべてを受け入れてくれる人は初めてだったんじゃないですか。そして、受け入れたくないけど無意識に受け入れてしまっている自分を見て、嬉しい自分もいるだろうし、安心できる自分にも初めて出会えたんじゃないかと思います。
──高橋さんは2人とハロルドの関係をどう捉えていますか?
高橋 ハロルドってどこかいかがわしいにおいがしますよね。裏の世界ともつながっているような。トリートと出会って「おもしろい奴だ、ひょっとしたら片腕として使えるかもしれない」と思ったんでしょうね。ところがまんまと引っかかって縛られて(笑)、しかもねぐらにはこういう弟がいた。この弟を見たときに関わろうと思ったんでしょうね。いびつな兄弟の中で兄の言うがままになっているこの弟をなんとかしなきゃいけないと、ある種ハロルドの父性が目覚めたのかもしれない。そして、世代は違うけれどもかつての自分を見るような思い、自分とお前たちは同じだという、そういう思いで関わっていくのでしょうね。
 
s_TAKAHASI

何層にもわたって人物造形を掘り下げる演出

──3人芝居という密な空間でのお芝居ですが?
柳下 好きですね。しかもキャパが200人ぐらいなので余計楽しめそうだなと。同じ少人数の芝居でも、去年2月に演じた『いつも心に太陽を』は、見せる芝居というかお客さんに伝えていくことを意識していましたが、この『オーファンズ』は、それとは逆に見せようとしないで、物語の中だけでお芝居をしているような、このような芝居は久しぶりなので楽しみです。
平埜 こんなに出演者が少ないのは初めてです。でも、単純に言葉を舞台上でたくさん言える喜びのほうが大きくて(笑)。そういう役に出会えたので嬉しいです。
高橋 僕は、密な空間での芝居は、昔ベニサンピットがあった頃によくあそこでやりました。あの頃の経験は今も僕にとって貴重です。宮田さんとも本当に久しぶりで、一番最後にやったのは10年以上前で、2本やったどちらも少人数の芝居だったんです。でも少人数になればなるほど宮田さんの演出はきつくなる(笑)。ものすごく細かいし、そこにちゃんと存在するまで何層にもわたって人物造形を掘り下げないとだめなんです。ここまでできると次はさらに掘り下げさせられる。それが延々と続いてどこまでいっても初日が来ない感じでした(笑)。でもそのぶん充実感というか、すごく楽しい思いをさせていただきました。
柳下 宮田さんのダメ出しは納得できる理由があるんですよね。僕は『真田十勇士』の初演で鍛えていただいて、再演の時はあまり言われなかったんですが、僕が怪我をしてからはダメ出しが日に日に増えていきました。「動けないんだから、新しい見せ場を作らなきゃいけないし、お芝居でちゃんと見せることになるからダメ出し多くなるよ!」と。しかも難しいダメ出しが多くて、それが僕的にはすごく嬉しかったです。
──平埜さんは宮田演出の厳しさを聞いていかがですか。
平埜 よし!という気持ちです(笑)。いろいろ言われたほうが僕はラクなので。
 
s_151117_eB0029

さみしいという感情が膨らんでいる時代

──この芝居をどんな方たちに観てほしいですか?
柳下 時代背景など今の僕たちからかけ離れているので想像しづらいと思いますが、今はSNSで顔も見ないで交流ができて、簡単になっているぶん関係は薄くなっていると思うんです。でも、この物語の時代は、コミュニケーションを取るには目を見て会話を交わさないといけなかったわけで。人と人が直接触れ合って、その思いとか情に触れたとき、人はどれだけ変われるのかという、そういう部分がとても響きますし、今の時代だからこそ観ていただきたい作品だと思います。
平埜 たぶん僕世代のお客さんも多く観に来てくださると思うんですが、今のこの時代、口に出しては言わないけど、さみしいという感情がすごく膨らんでいっている気がして、それは僕もそうなんですけど、インターネットでコミュニケーションを取ったり、人と会わなくなったりする根源がそこにあると思っているんです。この舞台はそのさみしさが元気に変わるような作品かなと。さみしさがあるからこそ元気に変われるという相対性の面白さ、そういうのが含まれている作品だと思います。だから僕とか僕より若いお客さんたち、悩んでいる高校生とかが明日も生きてみようかなと、そう思える舞台になればいいなと思っています。
高橋 柳下くんが最初のほうで言ったように、これは相手に向かってしゃべっている芝居で、3人の心の交流の話なんですね。そのなかでお互いが理解しあったり、愛情を持ったり、猜疑心を持ったり憎んだり、そういう交流を観ていることで、きっとあっという間に時間が過ぎていくと思います。この若い2人と一緒に作り上げる世界は良い意味で未知数で、僕自身ワクワクした気持ちですし、一緒に良い舞台にしていきたいと思っています。

s_151117_eB0017


s_151117_eB0022
やなぎしたとも○神奈川県出身。06年、俳優デビュー。以降、映像や舞台で活躍中。最近の出演作品は、ドラマはNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』BSスカパー!藤沢周平新シリーズ『果し合い』TBS『結婚式の前日に』など、舞台『熱海殺人事件 The Next』『熱海殺人事件 Battle Royal』ブロードウェイ・ミュージカル『アダムス・ファミリー』『真田十勇士』(初演、再演共に猿飛佐助役で出演)『いつも心に太陽を』など。5月には明治座『御宿かわせみ』に出演予定。

s_HIRANO
ひらのきなり○東京都出身。劇団プレステージのメンバー。主な出演作品は、舞台『JEWELERY HOTEL』『SAMURAI挽歌II』『FROGS』『見上げればあの日と同じ空』(再演) 『ロミオとジュリエット』『ア・フュー・グッドメン』など。ドラマは『ごめんね青春!』『オトナ女子』(フジテレビ)など。

s_151117_eB0021
たかはしかずや○東京都出身。1988年男闘呼組として音楽デビュー。93年解散後、94年映画『KAMIKAZE TAX』(原田真人監督)などで俳優活動を本格的に開始。テレビや映画、舞台などで活躍中。最近の主な出演作品は、ドラマ『海に降る』(WOWOW)『64』(NHK)、『撃てない警官』(WOWOW 1月10日スタート)映画『そこのみにて光輝く』(高崎映画祭助演男優賞受賞)『きみはいい子』、舞台『血の婚礼』『テキサス』『嵐が丘』など。
 
※翻訳の谷賢一さんのインタビューはこちら
http://blog.livedoor.jp/enbublog-forecast/archives/51987217.html

〈公演情報〉
0000000059702
『オーファンズ』
脚本◇ライル・ケスラー
翻訳◇谷賢一
演出◇宮田慶子
出演◇柳下大 平埜生成 高橋和也 
●2/10〜21◎東京芸術劇場 シアターウエスト 
●2/27、28◎新神戸オリエンタル劇場 
〈料金〉
東京/S席¥6,800 高校生以下¥4,000(全席指定・税込)
大阪/S席¥6,800 A席¥5,800(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉ワタナベエンターテインメント03-5410-1885 (平日11:00〜18:00)




【文/吉田ユキ 撮影/大倉英揮】

お得なチケットいろいろ販売中!
shop_rogo_l

header_rogo


粟根まこと(劇団☆新感線)、松永玲子(ナイロン100℃)などなど連載中!
title