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兄と弟…永遠の“ライバル”であり、分かち合う“仲間”、そして“男同士”など、兄と弟の間にあるさまざまな関係性をテーマに、鈴木勝秀が脚本・演出する舞台『僕のリヴァ・る』が、2月18日から新国立劇場 小劇場で幕を開ける。
個人主義の考えが増えている現代において、誰かと分かち合える事の大切さ、必要さ、同時に不条理でもある人間関係を、兄弟というファクターを通して訴えかける舞台になる。
 
キャストは、ミュージカル『テニスの王子様』で人気を博し、『武士白虎 もののふ白き虎』で主演をつとめ、4月には話題の舞台『ARCADIA アルカディア』にも出演が決まっている安西慎太郎。そして『弱虫べダル』や『最遊記歌劇伝』、この1月の『ノラガミ』にも主演した鈴木拡樹。さらにベテランの小林且弥と山下裕子という4人の舞台だ。装置も新国立劇場の機構を生かしたセンターステージという特殊な演劇空間で演じるこの作品について、主演をつとめる安西愼太郎に内容と役柄などを語ってもらった。

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「兄」と「弟」の様々な形を3本のストーリーで演じる

──この作品は鈴木勝秀さんのオリジナルで、3本のオムニバスストーリーだそうですが、それぞれの物語での安西さんの役柄を教えてください。
1本目は現代のお話で、赤ちゃん役を小林且弥さんが、そのお兄ちゃん役を僕が演じます。展開もスピーディで、コメディというほどではないのですが、ちょっと笑えるような、面白くて濃密な作品になっています。その中に、兄弟というのはどういうものかという関係性が見えて来て、ただ面白いだけではない、「あ、兄弟ってそうだよな」とお客さんにも共鳴していただけるようなものになっていると思います。
──安西さんの役は何歳ですか?
僕は3歳で、且弥さんは生まれたばかりの赤ちゃんです。この1本目は人形を使っているのですが、それによって見た目は人形なのに声が僕や且弥さんというアンバランスな面白さがあるし、大切なことも伝えやすくなったりしています。3本のうちの1本目として、「兄弟」の話にお客さんが入るための入り口になっていると思います。
──2本目は画家のゴッホと弟のテオドールを描いた作品ですね?
僕はテオドールの役で、ゴッホは鈴木拡樹さんです。テオドールについては、ゴッホという人は狂気的なところがある人だと思いますから、その兄を援助するテオドールも、やはりどこか狂気的なところがあるんじゃないかなと思うんです。兄と並ぶくらい、もしくはそれ以上にそういう人で、だからこそゴッホの才能を認めることができるし、援助できるのかなと。そしてきっと兄に似ているというかリンクする部分があると思うんですが、それを似せて表現するわけではなく、お客さんが観ていて、「あ、この一瞬はどこかゴッホを彷彿とさせる」みたいなことを、感じとってもらえたらいいなと思っているんです。
──兄を愛しているだけに、やはり同化してしまうところもあるのでしょうね。
意識せずにそうなっているんだと思います。
──そして3本目が小説が原作になっている『盲目のジェロニモとその兄』ですね。
ジェロニモの役が僕で、兄は且弥さんです。今まで僕は身体のどこかが不自由な人の役をやったことがなくて、今回は盲目ということで、それをどう表現するかというのが課題なのですが、兄弟の関係性でいえば、僕はこの3本目が一番共鳴できるんです。兄弟は路上で歌を歌ったりして生活しているのですが、そこに旅人というか攪乱させる人物がいて喧嘩になってしまうんです。その中で、一番大事なものは弟にとっては兄で、兄にとっては弟だということがわかってくるのですが、兄弟がいる方ならすごく共鳴できると思います。もちろんいなくても、人としてとても共感できるお話ではないかと思っています。
──この3役をそれぞれ演じ分けるのですから、たいへんですね。
でも「この役はこう」とへんに作り込まないで、物語が変わるとともに自然に切り換わっていけるように稽古しています。それはお客さんにとっても同じで、流れの中で自然に切り換えて観ていただけるように演出されていると思います。

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誰かに影響を与えられたらどんなに素敵だろう

──鈴木勝秀さんの演出は初めてだそうですが、どんな印象ですか?
スズカツ(鈴木勝秀)さんの稽古で一番わくわくするところは、役者が持ち込んでくるものをすごく見たがってくださるんです。そしてそれを「良いものはいい、悪いものは悪い」ときちんと判断してくれるんです。稽古の中でも「考えることをやめないで」といつも言ってらっしゃるので、スズカツさんが考えることをやめないなら、それに負けないように僕たちはさらに考えないといけないし、繰り出していかなくてはいけない。そういうふうに役者の良いものを引き出してくださる方です。
──演出家に負けないように色々考えて持ち込む安西さんもすごいですね。初舞台は2012年ですから、まだ4年ちょっとのキャリアなのに。
いえ、それはこの稽古場が、自由に色々なことを持ち込めるような空気感があるからで、先輩の役者さんたちのおかげでもあるし、やっぱりスズカツさんがそういう雰囲気を作ってくれているからなんです。僕は技術的にも実力的にもまだまだですけど、そんな僕でも色んなことを考えたくなるし、「スズカツさんを笑わせてやろう」ではないですけど、「どうだ」みたいにぶつけてみたくなるんです。縮こまらないで、そんなふうに自由でいられることは、自分にとってもすごく嬉しいことなんです。
──安西さんは初舞台から2年目に主役もして、役者として目覚ましい勢いで成長している感じですが、お芝居はどこが好きなのですか?
僕は1本の映画がきっかけで、この世界に入ったんです。ジョニー・デップとレオナルド・ディカブリオの『ギルバート・グレイプ』(93年・アメリカ)で、それまで映画とかお芝居に興味はそんなになかったんです。でもこの映画を観たとき、すごく胸が熱くなって、自分もこういうふうになりたいと思ったんです。人に影響を与えられるってすごいなと。
──文学的でしかもかなり屈折した映画でしたね。いわゆる戦隊ものなどに憧れるタイプかと思っていたので、ちょっと意外です。
もちろんそういうものもカッコいいと思いますし憧れますけど、『ギルバート・グレイプ』のちょっと歪んだ世界、あれも兄弟を描いていますけれど、自分とはまるで違うああいう世界にもどこか共感できたし、「そうだよな」と思えたんです。そんなふうに誰かに影響を与えられるようになれたらどんなに素敵だろうと。
──もともと表現への欲求があったのでしょうね。いつも伸び伸びと演じていて楽しそうですが、苦しいときなどは?
苦しいというより、考えているうちに煮詰まりすぎてしまって、頭の中が固まってしまうこともあるんです(笑)。でもそれも含めて楽しいという感覚です。この役をどう演じたら作品にプラスになるのかなとか考えるのが面白いし、苦しくはないです。
──本当にお芝居が好きなんですね。たしか初舞台はテレンス・マクナリーの『コーパス・クリスティ』で、クリストファー・マーロウの『エドワード二世』にも出演するなど、演劇らしい舞台も経験していますね。
本数的には2.5次元作品のほうが多いのですが、数は少なくても演劇的と言われる作品で培ったものは、役者としての僕に同じくらい大きな影響を与えていますし、その1つ1つの役や舞台が、今とても役に立っているのを感じています。
 
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演劇に対する愛を忘れずに成長していきたい

──今回の共演の方についても伺いたいのですが、鈴木拡樹さんとは初共演だそうですね。
そうです。以前から他の役者さんからその凄さも聞いていました。読合せのときから頭の回転が速く、お芝居がすごく好きな方なんだということもわかりました。そういう方と一緒にやれるのは、学ばせていただくことがすごく多いと思いますし、共演したかった方なので、すごく嬉しいです。
──小林且弥さんは年末の明治座公演などでも共演していますね?
勝手にお兄ちゃんのように思っています(笑)。かっこいいなと思いますし。僕は年下なんですけど、年齢に関係なく一役者として対等にセッションしてくれるし、意見も正面から受けとめて「そうだね」と一緒に考えてくれるんです。だから僕も窮屈にならずに色々相談させてもらっています。
──紅一点の山下裕子さんは、鴻上尚史さんの第三舞台出身の女優さんで、初共演ですね。
とても自由に色々考えて来られる方で、演技することがすごく好きなんだなと。それは皆さん共通で、それぞれ実力もすごいのですが、それ以上にお芝居をすることが大好きなのが、掛け合いをしていて伝わります。どの方とやり取りしていても楽しくて仕方ないです。
──今回、センター・ステージで周り中からお客様に見られるのはいかがですが?
初舞台の『コーパス・クリスティ』が青山円形劇場で、円形ステージでしたから周り中から見られていたのですが、それが楽しかったんです。もちろんまだ右も左もわからない時でしたから、皆さんにいっぱいご迷惑をかけていたと思うんですが、いきなりそういう舞台を経験ができたのは貴重だったなと思います。
──全方位から観られる舞台なんてめったにないですからね。
そういう舞台って、お客様も色々な角度から観るわけで、そこで見えるものは、少しずつ違っていると思うんです。それなのに行き着くところはやっぱり1つで、それが演劇の面白さだし、素晴らしさだと思います。今回も感動させようとかどう観てもらおうとか考えずに、「兄弟」というテーマについて、少しでもなにか感じていただけたら嬉しいなと思います。
──役者・安西慎太郎としては、これからどんなふうに生きていきたいですか?
自分は技術も実力もまだまだなのですが、とにかく演劇が好きで、どんな仕事でもそうだと思うんですが、「好き」ということが一番成長につながると思うんです。ですからこれからも演劇に対する愛を忘れずに、1つ1つの作品で、考えること感じることを大事にしていきたいと思っています。
──次の『アルカディア』も、すごい役者さんたちとの共演が待っていますね。
すごく嬉しいです。反面、緊張も大きいのですが、そこで縮こまらないようにしたいです。それは逆に失礼だと思いますし。今の自分の持っている最高のもの、それ以上のものを出していきたいです。今回の『僕のリヴァ・る』も、そういう気持ちで取り組んでいますので、ぜひ観にいらしてください。

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あんざいしんたろう○1993年生まれ。神奈川県出身。2012年、舞台『コーパス・クリスティ 聖骸』でデビュー。主な出演作品には、TVはTBS『アリスの棘』、舞台は『エドワード二世』、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシリーズ、『戦国無双』関ケ原の章(主演)、『聖☆明治座・るの祭典〜あんまりカブると怒られちゃうよ〜』、『滝口炎上』、『K』第二章-AROUSAL OF KING-、『武士白虎  もののふ白き虎』(主演)、『晦日明治座納め・る祭』など。今後の予定としては、3月7日に『安西慎太郎カレンダー2016.4-2017.3』(東京ニュース通信社)が発売、4月〜5月に舞台『ARCADIA  アルカディア』(演出:栗山民也)が控えている。


〈公演情報〉
L177711-0001-001
『僕のリヴァ・る』
上演台本・演出◇鈴木勝秀
出演◇安西慎太郎、小林且弥、山下裕子、鈴木拡樹
●2/18〜21日◎新国立劇場 小劇場
〈料金〉¥6,800(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉る・ひまわり 03-3277-6622(平日 11:00〜19:00)




【取材・文/榊原和子 撮影/岩田えり】


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