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ブロードウェイミュージカルの名作を、ミュージカル俳優として活躍を続ける城田優が初演出することで話題の意欲作『アップル・ツリー』が、赤坂RED/THEATERで上演中だ(6月7日まで)。

『アップル・ツリー』は、「真実の愛」をテーマに、マーク・トゥエインの「アダムとイブの物語」等、原作の異なる3つのストーリーをオムニバス形式で綴るミュージカルとして、『屋根の上のヴァイオリン弾き』で知られるシェルダン・ハーニック(作詞)、ジェリー・ボック(作曲)により、1966年ブロードウェイで初演された大ヒットミュージカル。日本では、1978年、当時ミュージカルに積極的に挑戦していた劇団薔薇座によって初演され、後に宝塚歌劇団、パルコ制作公演と、上演を重ねた懐かしい作品でもある。

この古典と言っても良いミュージカルの34年ぶりの上演を手掛けたのが、これが演出家デビューとなる俳優の城田優。ミュージカル『エリザベート』の黄泉の帝王トート役などが絶賛を集め、今、最も期待されるミュージカル俳優の1人だが、かねてからクリエイターとしても活動したいと念願していたとのことで、今回、満を持しての演出家デビューとなった。

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物語は、アダムとイブの楽園での日々と、その後を描く第1部「アダムとイブの日記」。未開の王国で身分違いの恋をした王女が迫られる、究極の選択の行方を追う第2部「女か虎か」。現代ニューヨークで煙突掃除として働く少女が、魔法によって映画スターに変身するものの、夢に見たスターの座を得てたものの、真実の愛はどこに?の第3部「パッショネラ」の、3編から成り立っている。

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基本構造としては、アダムとイブと蛇、王女と警備隊長と吟遊詩人、煙突掃除の少女とロックスターとMCという、3話それぞれに3組の男女がいて、同じ俳優が時空を越えて演じて行くことで物語が展開される構成なのだが、今回城田は3組の男女をエピソードごとに散らして、別の俳優に演じさせている。これによって3話のつながりは薄くなるが、個別の魅力が発揮されて、更に俳優1人1人の活躍の場が大きく広がる利点があった。過去の上演では、宝塚歌劇がこの方法論を取っていて、数多くのスターを登場させていたが、今回もアダム役を務めるベテランの岸祐二以外は、城田自らがオーディションで選んだという新鮮な役者たちが、与えられた持ち場で存分に躍動している。

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ミュージカルの舞台ですでにキャリアを積んでいる人材から、アイドルグループ出身者、東京藝術大学の学生と、その履歴は様々だが、何よりも全員が聞いていて心地よく、力強い歌声を持っているのに感心させられる。
特に3編のミュージカルナンバーが、繊細で美しいメロディー、古代王国らしい土着のパッションとリズム、これぞニューヨーのショーアップされた華やかな音楽と、バラエティーに富んでいる中、銘々を受け持つ歌い手の声と楽曲が見事にマッチしているのが印象的だった。演出家城田優が、如何に俳優の個性を大切にし、作品と役柄に効果的に活かそうとしているのかが、これによって巧まずして伝わってきたし、ピアノとチェロによる生演奏の豊かな魅力も、作品のミュージカルならではの良さを十二分に支えていた。
 
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そんな、俳優を大切にしている演出の姿勢は、舞台全体にも貫かれていて、演者の細かい表現やニュアンスを丁寧に救いあげているから、作品の流れが実に滑らかだ。赤坂RED/THEATERのコンパクトな舞台面に、階段上の段差を作り、また梯子なども使用することによって、空間を縦にも使い、視覚的に多彩でありつつ、どこにも唐突感がないのは、このなめらかな進行故だろう。ミュージカル嫌いを標榜する人の定型句でもある「突然歌い出す」感が全くなく、台詞が自然に歌になり、また台詞になり芝居になる見事なつながりが美しい。

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聖書の物語である「アダムとイブ」や、古代王国の王女や、ニューヨークの煙突掃除の少女という、今の日本からは一見遠くにある物語から、普遍的な愛の形が浮かび上がり、どの物語も観終わってしみじみと身近に感じられるのは、この美しい流れあったればこそだ。その意味でも、ミュージカルを愛している人にはもちろん、あまりなじみのない人にも是非観てもらいたい舞台に仕上がっていて、声の出演というお楽しみも用意されている城田優の、真摯な演出家デビューと、それに応えた岸をはじめとした役者たちの頑張りに拍手を贈りたい舞台となっている。

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初日を迎えたキャストと、演出の城田優からコメントが届けられ、それぞれが作品への手応えと魅力を語った。


【キャスト&演出家よりのコメント】

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岸祐二 城田くんの初演出作品で、気軽に楽しんでもらえる作品になっていると思います。「ミュージカル始めまシート」もありますので、ご家族、お友達、恋人とお誘いあわせの上、観にいらしてください。

上野哲也 城田さんの厳しい稽古を乗り越えて成長した自分の演技でお客様を魅了したいと思います。

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小山侑紀
 ご観劇後に皆様の笑顔に包まれた劇場になるかと思います。楽しい気分で帰っていただける作品に仕上がっていますので、ぜひ楽しみにいらしてください。

杉浦奎介 あっという間の1時間50分になると思いますので、1秒たりともお見逃しなく!

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関谷春子 みんなの涙と努力の結晶をぜひその目で目撃してください。

豊原江理佳
 短い稽古期間でしたが集中して良い作品ができたと思うので、皆様、楽しんでください。

和田清香 どこか懐かしく、心がポッと温まるような気持ちになっていただける作品です。お客様との距離が近いからこそ、より頑張りたいと思います。初日の幕が開けてからも進化していくので、ぜひリピートしてほしいです。

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演出家・城田優
 初演出ということでがむしゃらにここまで突っ走ってきました。表現力と歌声を併せ持つ魅力的なキャスト、選りすぐりのスタッフとともに、皆様に夢の時間をお届けしたいです。お届けします(笑)!ぜひ楽しんでください。




〈公演情報〉
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ミュージカル『アップル・ツリー』
脚本◇ジェリー・ボック&シェルダン・ハーニック、ジェローム・クーパースミス
作詞◇シェルダン・ハーニック  
作曲◇ジェリー・ボック
日本語脚本◇青井陽治  
演出◇城田優   
音楽監督◇西野誠 
出演◇岸祐二 上野哲也 小山侑紀 杉浦奎介 関谷春子 豊原江理佳 和田清香 
●5/28〜6/7◎赤坂RED/THEATER
〈料金〉7,000円 (全席指定・税込) ミュージカル始めまシート4,000円(当日引換券・限定枚数、チケットぴあのみ取扱い)
〈お問い合わせ〉ワタナベエンターテインメント 03-5410-1885(平日11:00〜18:00)
〈公式HP〉https://appletree.themedia.jp/  



【取材・文・撮影/橘涼香 】


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