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市川海老蔵が、自身が演じる柳澤吉保にゆかりの名園を散策――。
7月2日に幕を開ける歌舞伎座の「七月大歌舞伎」は、市川海老蔵、市川猿之助、市川中車をはじめとする華やかな顔ぶれが揃った公演である(26日まで)。
 
演目は、昼の部が、地方藩士の子という生まれでありながら、五代将軍徳川綱吉の寵愛を受けて老中まで登りつめた、柳澤吉保の野心に満ちた生涯を描く宇野信夫作の「通し狂言 柳影澤蛍火 柳澤騒動」。そして、織女(織姫)と牽牛(彦星)の逢瀬に流星がやってくるという舞踊「流星」。季節感を味わえるとともに、猿之助の宙乗りも楽しめる。
夜の部は、元は腕のいい大工職人だがやくざ者となった佐吉と、その子・卯之吉との情愛を中心に描く「江戸絵両国八景 荒川の佐吉」。そして、荒事の魅力あふれる「壽三升景清 歌舞伎十八番の内 鎌髭 景清」となっている。
 
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6月7日、この「通し狂言 柳影澤蛍火 柳澤騒動」で、主役の柳澤吉保を勤める市川海老蔵が、この吉保が7年という歳月をかけ1702(元禄15)年に築園した特別名勝「六義園」(東京都文京区)を散策し、囲み取材を行った。
 
六義園は、和歌の趣味を基調とした「回遊式築山泉水」の大名庭園。あいにくの梅雨空だが、緑豊かな木立やつつじ、あじさいといった季節の花々が、やわらかな小雨をあびて美しく濡れる。えもいわれぬ風情だ。海老蔵は、妹山・背山と名付けられた築山や、洞窟石組の蓬莱島などが浮かぶ池のあたりをしばし散策し、出汐湊の付近で取材に応じた。
 
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【囲み取材】

海老蔵 雨の中、すみません。
──庭園を歩かれてみて、いかがですか。
海老蔵 そんなに歩いてないんですけど。でも素晴らしいですよね。東京ドーム2個分?
──今度演じられる柳澤吉保が設計した。
海老蔵 そうですね。そういうことで、今日は六義園さまに寄せていただいたけど、やっぱり改めて見ると素晴らしい日本庭園ですよね。日本人だけでなく海外の方にも多く見てもらいたいということで。ここ(取材場所)からは建物がほとんど見えないという。もうちょっと時間がある時に、個人的に来ようかなと。今日はちょっと回れなそうです。
──(吉保は)そういう「様式美」みたいなものに優れていた人。
海老蔵 そういったものに長けていた。

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──舞台はどういうものになるのでしょうか。
海老蔵 「柳澤騒動」ということですが、歌舞伎ですから、宇野(信夫)先生がずいぶん前にお書きになりまして、それをもうお亡くなりになりましたが、(三代目)實川延若さんが演じられて。近年ですと、(中村)橋之助のお兄さんが大阪松竹座でおやりになって。あんまりしょっちゅう出る演目ではないですが、人間の生きている性、欲ですかね。出世していく欲というものに対して表現していく、緻密な部分がございます。そういったものを、猿之助さんと一緒に表現できたらいいなと思います。
──かなり悪に手を染めながらも。
海老蔵 そういうところがひとつの面白みで、そのなかでどういう結末が悪いことをすると待っているかということもね、観ている方々にふわっと伝わるというより、じわじわするという、考えさせられる部分もある、歌舞伎では珍しい演目なのかなと。
──吉保公とご自身で共通するところなどは。
海老蔵 今はあんまりないですね。でも芸術、文化が好きだった。私も最近、年を重ねちゃったせいか、そういう美しいものを愛でるというのは。僕も権力をもっていたら、このぐらいの庭園を造りたいなと思いますが、今のご時世、これだけのものを造るのはなかなか難しい。でも、素晴らしい美意識ですよね、未だに残っているわけですからね。そういうところは、自分と共通点ではなくて、見習って、大きな人間になりたいと思います。

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──ドラマなどでは(吉保は)あまり良く描かれていませんが。
海老蔵 それがいいんじゃないですか。やっぱり人間というのは、きちんと生きて、すごく真面目にやってるから出世する、それだけでもなく。悪に手を染めながらも出世していく人もいるわけじゃないですか。そういったもののなかで、その魅力を劇、舞台として表現していくということで、非常にこのお話は面白いんじゃないかと思います。
──橋之助さんがなさった時は40数年ぶりということですか、今回これを選ばれたのは。
海老蔵 今回は、猿之助さんと一緒に歌舞伎座をやるということで、彼と話して、彼がどういうことをしたい、僕もどういうことをしたいというなかで、いろんなお話があって、最終的に彼も「柳澤騒動」がいいんじゃないかと。最後は二択だったんですけどね。それで2人で決めた演目がほぼ並んでいるので。
──それはやっぱり、橋之助さんの公演とかを観たりして。
海老蔵 もちろん。延若さんのは、僕まだ生きて(生まれて)なかったので…。
 
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〈公演情報〉
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『七月大歌舞伎』
【昼の部】
一、 通し狂言 柳影澤蛍火 柳澤騒動
二、 流星
【夜の部】
一、 江戸絵両国八景 荒川の佐吉
二、 壽三升景清 歌舞伎十八番の内 鎌髭 歌舞伎十八番の内 景清
出演◇市川海老蔵 市川猿之助 市川中車ほか
●7/2〜26◎歌舞伎座
料金◇1等席18,000円 2等席14,000円 3階A席6,000円 3階B席4,000円 1階桟敷席20,000円(税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489または03-6745-0888
 
 
 
【取材・文・撮影/内河 文】


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