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奔放に生き、突然この世を去った母、そして残された三人姉妹。
母と娘の絆を問いかける問題作『母と惑星について、および自転する女たちの記録』が、現パルコ劇場での最後の新作として上演される。母から娘へと紡がれる“命”と“愛”を探る作品だ。
作は蓬莱竜太、演出は栗山民也、演じるのは志田未来、鈴木杏、田畑智子、斉藤由貴という4人、いずれも演技力では定評ある女優ばかりだ。
その舞台で母を演じる斉藤由貴と三女を演じる志田未来に、「母、娘、女」、そしてお互いのことなどを話してもらった演劇ぶっく6月号の記事を別バージョンの写真とともにご紹介する。
 
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惑星と同じくらいわからないのが母?
 
──台本を読んだときの印象からお聞きしたいのですが。
志田 私は舞台は今回が二度目で、前回は二人芝居だったということもあり、1人がずっとしゃべっている台本でしたから、舞台はそういうものなのかなと思う部分もあったのですが、今回、結構ぽんぽんと会話が進んでいくので、なんか楽しいなと思いながら読んでいました。
斉藤 私は、まずタイトルで「やられたな」と思いました。長いなと(笑)。そして1つ1つの単語がものすごくインパクトがあって、それが1つに集約した時に、特別な何かをこちらに与えてくれるような、面白いタイトルだなと思いました。
──志田さんはタイトルについては?
志田 私も長いなと思いました(笑)。それから「母と惑星について」ということでは、娘たちにとって、母って惑星と同じくらい未知というか、わからないもので、大きいものなんだろうなという印象を受けました。
──物語としては、母親の死から始まるのですね?
斉藤 冒頭から私はすでに死んでいて、3人の娘たちはそれぞれの悩みや問題を抱えている。けれど3人の絆はすごく強くて一緒に旅に出るんです。その随所に母親との回想シーンが盛り込まれるという展開になっています。
──その母親がかなり問題の多い人のようですが。
斉藤 シンプルに言うと「最低な母親」です(笑)。母である前に女だし、母親として備わるべき母性とか、そういうものが欠落してしまった人間。そういう描かれ方を最初のほうではされています。
──そんな母をもった娘を演じる側として、わかる部分はありますか。
志田 私自身の母はそういった感じではないので、ニュース等を見る限りでしかわからないのですが、でも実際そういう形の家族も、母と娘の関係もあるのかなと。まったくないものではないと思います。
──母親役の斉藤さんは実生活でも母親ですが、そういう女性のことは?
斉藤 わかりますよ。具体的な話として、私はすごく沢山仕事をしているので(笑)、仕事をしていないお母さんに比べれば、母として家にいる時間が少ないと思います。その時点で母親としてはかなり不足しているという自覚があります。それに加えて、母親としてきちんとしていないタイプなので(笑)、子どもたちにとっては頼れる母親ではないんです。
──もし不足しているものがあるとしたら、それは何で補おうと?
斉藤 出来のわるい母親として私にできることは、本当にものすごく愛してることを伝えること。それから、女優という自分の生業をとても愛しているので、それを伝えることで、それは仕事をしている後姿を見てもらうしかないと思っています。
 
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訓練とか鍛錬では得られない女優の「種」
 
──今回、お二人は舞台では初共演ですが、ドラマでは共演したことがあるそうですね。その時の印象は?
斉藤 志田さんは素晴らしい女優さんです。それは間違いない。こういう仕事について、私がときどき使う表現で、女優とか俳優の「種」って呼んでいるんですけど、そういうものをお持ちの方だなって。訓練とか鍛錬とかいうものと関係のないところで、既に女優としてある、そういう印象でお芝居を拝見していました。
志田 斉藤さんとは二度ほどご一緒させていただいたのですが、初めての時の役の印象が、ふだんの斉藤さんとはかけ離れていたんです。でも現場に入られるとガラッと雰囲気が変わって、それを見て、周りの空気まで変えられる方なんだと思いました。それに途中の回から入られたんですが、斉藤さんが現場に来られたら、すごく良い緊張感が漂って、シーンもピリッと引き締まりました。本当に凄い方だなと思いました。
──天性の女優というところは共通していますね。志田さんは初舞台の『オレアナ』が好評でしたが、振り返ってどんな時間でしたか?
志田 舞台は自分で自分のお芝居が見られないので、回数を重ねる中で、自分がちゃんと成長できているかどうかもわからなくて、嫌になった時期もありました。ただ、終わった後に、本当に毎日濃かったなと。1つの台本とか1つの台詞についてすごく考えたりしていたので、こういう時間って大切だなと思いました。
──斉藤さんは舞台も長く続けていらっしゃいますが、舞台の魅力というのは?
斉藤 嫌なことがいっぱいあるところ(笑)。自分のダメさを思い知ったり、続けて何度も同じことを繰り返す中で惰性とかそういうものと戦わなきゃいけなかったり、評価、批評、お客様からの反応などに一喜一憂したり、大変なことがいっぱいあるんですよね。でも、それこそがたぶん舞台の魅力なんだと思うんです。
──毎回それを乗り越えていくわけですね?
斉藤 実際には乗り越え切れないんですけど、でも見えない山をやみくもに登っていくという感じがいいなと思っていて。答えが出ないのがいいんです。
 
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女優をやっていないと自分の輪郭がぼやける
 
──志田さんは二度目の舞台で、少しは慣れましたか?
志田 いえ全然。今も期待より不安のほうが大きいですし、一度立ってしまって、あの緊張感とかプレッシャーを知ってしまったからこそ、逆にもっと怖いという気持ちがあります。やはり人前に出て失敗は許されないという、それしかなかったし、そのプレッシャーは想像していた以上でしたから。
斉藤 初舞台で二人芝居というのは、相当ハードル高いものね。
志田 その高ささえ、まだわかってないんです(笑)。でも舞台って面白いというか、深いなと思いました。楽しいだけじゃないということも思いましたし。でもそういう大変なこととか、自分のことを考える時間があるからこそ、終わった時の達成感が凄かったんだと思います。
斉藤 やっぱり達成感はあった?
志田 今までで一番ありました。一番感じました、達成感を。
斉藤 今それを聞いて、一番嬉しいかも(笑)。それは素晴らしいことだから。
──女優という仕事については、お二人はどう感じていますか?
斉藤 私にとっては、多分、女優業は空気のようなもので、吸わないと死んでしまうと思います。結構真剣にそう思うんですけど。女優をやっていないと、自分という存在がすごく輪郭がぼやけるんです。女優という仕事で、役柄や役名を与えられることによって、自分の輪郭がハッキリして、自分と外界の区別がつくみたいな。だから私にとっては演技をするというのは、生きる上で不可欠なものに感じます。いつか名も知られないようなところでしか芝居ができなくなったとしても、続けるだろうなって思うくらいですから。
志田 私は、6歳の頃にこのお仕事を始めたので、物心ついたときにはもうやっていたんです。だから、やらなくなったらどうなるんだろうと考えると怖いところはあります。でも、自分のことが、まだよくわかってないところもあって。
斉藤 意外と結婚してぱっとやめたりしてもおかしくない気がする。
志田 (笑)。
──では改めてこの作品を観る方へのメッセージをお願いします。
志田 母と娘の話なので、観た方がそれぞれ思うところがある作品だと思います。本当に素晴らしい先輩方の中で、私も必死についていきますので、ぜひ楽しみにしていてください。
斉藤 サブタイトルについている、「これからは、私を生きる。」というのが、すごくいろいろなことを内包しているし、表現していると思うんです。誰にとっても命題である、自分の生きるこれからの道、自分の来し方、みたいなものを、この舞台を観ることによって、何か感じていただけたらと思うし、母娘の絆というのが、世によく言われるように、最も純粋で深い愛だとするなら、それをまったく逆のところからアプローチしていくことで、母娘の絆というものを最終的に表現できたら素敵だなと思っています。あとは、4人の女性の個々の孤独みたいなものが、それぞれ違う問題といびつな人間性をもって描かれると思うので、それがすごく美しく表現されたら素敵かなと思っています。
 
 
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 斉藤由貴・志田未来
 
さいとうゆき○神奈川県出身。1984年、第3回「ミスマガジン」でグランプリに選ばれる。映画・ドラマ、舞台で活躍し、歌手としても多くのヒット曲を持つ。詩、小説、エッセイなど著作も多く、またドキュメンタリー番組など、数多くの番組のナレーションを務めている。近年の主な出演作はNHK大河ドラマ『真田丸』、舞台『ゼブラ』『斎藤幸子』『奇跡のメロディ〜渡辺はま子物語〜』『Chanson de 越路吹雪 ラストダンス』『紫式部ダイアリー』など。
 
しだみらい○神奈川県出身。06年、主演ドラマ『14才の母』(NTV)で数々の新人賞に輝く。10年には映画『誰も守ってくれない』で日本アカデミー新人俳優賞を受賞。最近の主な出演作は、ドラマ『まっしろ』(TBS)、映画『ST 赤と白の捜査ファイル』(佐藤東弥監督)『おかあさんの木』(磯村一路監督)など。昨年パルコ・プロデュース『オレアナ』(栗山民也演出)で初舞台を踏んだ。
 
 
 
〈公演情報〉
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パルコ劇場“クライマックス・ステージ”シーズン2
パルコ・プロデュース公演
『母と惑星について、および自転する女たちの記録』
作◇蓬莱竜太
演出◇栗山民也
出演◇志田未来 鈴木杏 田畑智子 斉藤由貴
●7/7〜31◎パルコ劇場
〈お問い合わせ〉パルコ劇場 03-3477-5858
〈料金〉¥7,800 プレビュー公演¥7,000 U-25チケット¥4,000(観劇時25歳以下対象・当日指定席券引換・要身分証明書)(全席指定・税込)
●8/4◎仙台 電力ホール
〈お問い合わせ〉キョードー東北 022-217-7788
●8/9◎広島 JMSアステールプラザ大ホール
〈お問い合わせ〉TSS事業部 082-253-1010(平日10:00〜18:00)
●8/13〜14◎北九州芸術劇場 中劇場
〈お問い合わせ〉キョードー西日本 092-714-0159
●8/16◎りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション北陸 025-246-3939
●8/20〜21◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00〜18:00)




【文/宮田華子 撮影/安川啓太】
 



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