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1979年のウエストエンドでの初演以来、ブロードウェイ、そして日本で幾度も上演されてきた名作に佐々木蔵之介が挑むパルコ・プロデュース公演『BENT』が、7月9日、世田谷パブリックシアターで幕を開けた。共演は北村有起哉、さらに新納慎也や藤木孝といったベテラン、若手の中島歩や小柳友など、魅力あふれる顔ぶれで、演出は話題を集める森新太郎。本年度の注目作品の1つだ。

【物語】
1934年、マックス(佐々木)はクラブダンサーの恋人ルディ(中島)と同棲、男遊びやドラッグにふける自堕落な生活を送っている。その日もナチス突撃隊の青年ウルフ(小柳)を家に連れ込んでルディを呆れさせていた。そこに突然ナチス親衛隊に踏み込まれウルフは殺害される。慌てたマックスとルディはアパートを飛び出し、グレタ(新納)のクラブに逃れる。二人はグレタから、突撃隊への粛清と同性愛者狩りが始まったことを聞き逃走する。ドイツ脱出の機会をうかがっていた二人だが国外逃走は困難だった。マックスは叔父(藤木)に一人で逃げろと促されるが断り、ナチスに捕まってしまう。収容所に向かう護送車の中でルディは目をつけられ暴行を受ける。マックスは居合わせたホルスト(北村)の助言でルディを見殺しにすることで自らの命を繋ぐ。
収容所で人々は罪状により色分けされた印を胸に着けられていた。ゲイはピンク、政治犯は赤、犯罪者は緑、ユダヤ人は黄色。ピンクの印を着けるホルストに収容所で再会し、マックスは最低の扱いを受けるピンクから逃れるために黄色の星を得たいきさつを語る。やがてマックスは持ち前の機転でうまく立ち回り、楽だと思われる作業に就きホルストを呼び寄せる。その作業、石運びはいつ殺されるかわからない監視下にあるが、宿舎が別の2人には唯一会うことができる時間だ。だが休憩の3分間は直立不動でいなくてはならない。その3分間に彼らは愛を交わす。その方法とは…そして二人の愛の行方は…。
 
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ナチス政権下のベルリンを振り出しに、逃走先、護送車のなか、収容所へと移り変わる物語のなかで、佐々木蔵之介は、いい加減な生き方をしていたマックスが変化していくさまを的確に演じて観るものを惹きつける。また、愛を言葉にしないマックスだが、その心のうちにある愛を雄弁に伝えてみせる。
北村有起哉のホルストは、マックスに心を開いていく過程を繊細に表現。率直なホルストが伝える愛の言葉には心を揺さぶられる。力で押さえ込まれても心までは押さえ込まれない人間の不屈の愛。佐々木と北村が演じる美しくも崇高な愛が圧巻だ。

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その他の出演者も、ウルフの小柳友はエロティシズムを醸し出しながら不幸へと落ちていきルディの中島歩がたどる運命の儚さは時代の残酷さを表現、新納慎也は裏社会の人間らしい凄味ある演技で物語を引き締める。藤木孝は妻子持ちの隠れゲイの人生を短い出番で印象づけ、甥を助けようとする場面の佐々木との対話は、映画なら巻き戻したくなるようなシーンだ。
暗い時代の過酷な状況を生きる人々を描いた作品だが、森新太郎の柔軟でテンポある演出が作品の重さを救っている。

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【囲みインタビュー】

この公演の初日前日に、プレス用の公開舞台稽古が行われ、囲みインタビューに佐々木蔵之介と北村有起哉、新納慎也、藤木孝、中島歩、小柳友がそれぞれ衣裳で登場した。
 
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小柳友、新納慎也、北村有起哉、佐々木蔵之介藤木孝、中島歩

──初日を迎える意気込みをお願いします。
佐々木 僕はもう初日を迎えるのが楽しみでしょうがないですね。2日目からが怖いんですけど、1ヵ月みんなでこれだけ稽古したので、早くお客様の前に立ちたいという気持ちです。
北村 本当にここまでやってこられたので…濃密な稽古期間をみんなと共有できたので後はやるだけです。
小柳 演出家の森さんに愛を注いでいただいたので、これから皆さんに良い舞台を届けたいと思っています
新納 この作品の素晴らしさをいち早く皆さんにお届けしたいと思っています。
藤木 素晴らしい作品だと思っています。森新太郎さんの作品に出られて嬉しく思っています。頑張ります。
中島 本をいただいた時から良い作品になるなという確信がありました。稽古でも充実した時間を過ごさせていただきました。森さんに良い演出をつけていただいたので初日はものすごく楽しみなのと同時に稽古が終わっちゃうというさみしさもあります。

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──難しいテーマですが?
佐々木 とっかかりとしてナチスドイツ、収容所の話で更にホモセクシャルの話ということで、ハードルが高いかもしれませんが、内容はどストレートな愛の物語なんです。台本読んだ時から泣いてしまったほど、本当に愛を叫ぶ話なのでぜひ劇場で体験してほしいと思います。
──これまで同性愛者の役は演じられたことがありますか?
佐々木 何度かあります。
──同性愛で更に強制収容所の話ということで、思い入れは?
佐々木 登場人物が男とオカマしかいないんですね。女優がひとりもいなくて、それがグサッときています。この暑い中ずーっと男ばかり。これから夏もずーっと男とオカマばかりで(笑)。
──稽古場がむさ苦しかったり?
佐々木 みんな汗だくで。テレビではこの舞台風景を映像で流してくれると思いますが、流せないようなことばっかりやっていました(笑)。いやー、冒頭から絡んでいます。僕は前回、前々回は全裸になったけれど、今回は半裸で済んでいるんですけど、その分絡みます(笑)。
──坊主頭は初めてですか?
佐々木 高校時代はスポーツ刈りだったので初めてです。いや、楽ですね。シャワーが楽だし、これでも伸びたんですよ。自分のなかでは分け目できるかなくらいで、いやいやいや、いいですよ!
北村 坊主頭は何回かありますね。オシャレでやったことはないですけど仕事で。今回もそういう設定なので、「(やりたくないから)僕は鬘で」と言っても、鬘の筋が見えてたらお客さんがドン引きするような作品なので(笑)。でも夏だからよかったです。
──北村さん痩せましたね
北村 役作りです。1年前からゆっくり食事制限をして、10キロくらい。
佐々木 なんか、お酒をビールからハイボールに切り替えたって。それくらいやろ?(笑)糖質を落としたくらいで。
北村 僕あんまりストイックなのはできないんですよ(笑)。
佐々木 でもかなり痩せています。
北村 好きでやっているんで、あまり追い詰めすぎるとおかしなことになっちゃうから。楽しんでやりたいというのがありますね。
──女性がいないのはどうですか?
北村 気をまわす必要がなく、とても健康的です。換気扇がカラカラ回っているような稽古場です。
佐々木 健康的かー?(笑)
一同 (爆笑)。

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──新納さんは今回ドラァグクイーンを演じられますね。
新納 はい。紅一点で頑張ります(笑)。
──映画ではミック・ジャガーが演じた役を自分が演じることになってどうですか?
新納 まさかこの日がやってくるとは思いませんでしたが、劇場に入ってこの格好になってまさかこうなるとも思いませんでした。稽古場ではジャージにTシャツでやっていたので、自分でもびっくりしました。
──自分で着てみてどうですか?
新納 まあ、いつもの感じで(笑)。綺麗に仕上がっていると思いますが、どうですか?(ポーズする)
一同 (笑)。
──メイクにどのくらい時間がかかりますか?
新納 10分くらいですかね。嘘!(笑)1時間くらいかけています。
佐々木 『真田丸』の戦国武将(豊臣秀次役)がね。振り幅がすごいですね(笑)。
新納 『真田丸』の皆さん、すみません!(笑)
──役作りでそういうお店に行ってみたりは?
新納 僕はどっちかっていうと『真田丸』よりこういう役のほうが多いので、通常運行に戻るって感じ。特に新しい勉強もしていません(笑)。
──佐々木さん、最後にメッセージを。
佐々木 過酷で絶望的な話ですが、愛を忘れず愛のために闘って、愛を生き抜いた男たちの話です。ぜひ劇場でご覧ください。お待ちしております。

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〈公演情報〉
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パルコ・プロデュース『BENT』
作◇マーティン・シャーマン
翻訳◇徐賀世子
演出◇森新太郎
出演◇佐々木蔵之介、北村有起哉
新納慎也、中島歩、小柳友、石井英明、三輪学、駒井健介/藤木孝
●7/9〜24◎世田谷パブリックシアター
●7/30◎仙台国際センター
●8/6.7◎京都劇場
●8/14◎広島アステールプラザ・大ホール
●8/16◎福岡市民会館
●8/19〜21◎森ノ宮ピロティホール
〈お問い合わせ〉パルコ 03-3477-5858

http://www.parco-play.com/

 

【取材・文/佐藤栄里子 写真提供/パルコ 撮影/加藤幸広】



OSK「CRYSTAL PASSION 2016 〜情熱の結晶〜」




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