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「こんなに笑えるシェイクスピアは初めて」と好評を博した青木豪演出のオールメールDステ。その第3弾は、シェイクスピア喜劇の中で最も幸福な物語とも言われる『お気に召すまま』を、10月に上演する。『ヴェニスの商人』(2011年)、『十二夜』(2013年)に続き、満を持しての公演となる。
 
【STORY】
フレデリック(松尾貴史)は兄である前公爵(松尾貴史/二役)を追放して、その地位や財産を奪ったが、姪のロザリンド(前山剛久)は自分の実娘シーリア(西井幸人)と共に宮廷に置き、いとこ同士の二人は仲睦まじく暮らしていた。
今は亡き栄光の騎士サー・ローランド・ド・ボイスの末弟オーランドー(柳下 大)は、家督を継いだ長兄オリヴァー(三上真史)からの不遇な扱いに不満を抱えていた。
ある日オーランドーは公爵主催のレスリング大会で宮廷お抱えのレスラーであるチャールズ(加治将樹)に勝利し優勝する。そこで、宮臣のル・ボー(遠藤雄弥)とともに試合見物をしていたロザリンドに出会い、2人は一瞬にして恋に落ちる。
その後、公爵から突然の追放を言い渡されたロザリンドは、男装して身分を隠し、シーリアと道化のタッチストーン(牧田哲也)を連れ、追放された父・前公爵が暮らしているというアーデンの森へ向かう。一方、オーランドーもまた、弟の活躍に対するオリヴァーの嫉妬を危惧する召使いのアダム(石田圭祐)とともに邸を離れ行き着いたアーデンの森で、旅人のジェイクイズ(加治将樹/二役)や貴族のアミアンズ(鈴木壮麻)を従え悠々自適に暮らす前公爵に助けられる…。

それぞれの事情でやってきたアーデンの森で、絡みもつれる恋模様に彩られながら、権力争いや兄弟の確執を乗り越えて、真実の愛にたどり着く男女。様々な入れ替わりから生まれる人間ドラマで笑って笑って、最後はハッピーになれるシェイクスピア喜劇だ。
この作品で道化のタッチストーン役に扮する牧田哲也に、この作品と3年ぶりに出演するDステ、また最近入団した「柿喰う客」のことなどを話してもらった。

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一歩引いた視点で物事を滑稽に眺めている道化

──牧田さんは今年は確か、俳優になって10年目ですね。
07年に初舞台ですから『お気に召すまま』から10年目に入ります。改めてもう10年かと思いますね。やっぱり1つのことを10年続けることは難しいと思いますし、それを10年やってこれたというのは、自分でもちょっと感慨があります。
──その節目で出演するのがシェイクスピア劇で、Dステにとっても大きな作品となるわけですが、青木豪さんの演出は?
僕は『ヴェニスの商人』に出ていましたから、今回で2回目です。『ヴェニス』でも同じ道化役でした(笑)。シェイクスピア劇は、そのあと一度もやってなかったんですが、今回、オーディションがあったので、そのために戯曲を読んだら、言葉がノリやすくて楽しいなと。改めて面白さを感じました。前回は青木さんの演出もシェイクスピア劇への出演も初めての経験でしたから、いっぱいいっぱいで。でもその中でもシェイクスピア劇の魅力はわかりましたから、今回は少しは余裕をもって、台詞の音とか楽しめたらいいなと思っています。
──そのへんはやはり役者としての成長ですね。
ちょうど6月に出演していた「柿喰う客」の公演でも、中屋敷(法仁)さんが言葉の音を気にされていて、その演出を受けながら、「こういう音が面白いかな」とか考えながらやっていたんです。その経験が今回のシェイクスピアでも生かせたらいいなと思っています。
──ちょうど良いタイミングですね。道化のタッチストーンについてはどう演じようと?
道化ですから普通の人間より一歩引いた視点で、物事を滑稽に眺めているし、それを巧みに言葉にする存在かなと。そして、普通の人たちより一段下に見られるような立場だからこそ、見えてくるところがあるんじゃないかと思います。僕もわりとイジラレやすい面があるので(笑)、そこから入っていけるし、だからこそわかる道化の目線みたいなものを、うまく表現できればと思っているんです。

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俳優たちが成長して経験を積み重ねてきたDステ

──そして、遠藤雄弥さん扮するオードリーに恋をするというのも、とても楽しみです。
ビジュアル撮影でも一緒だったんですが、はちゃめちゃな感じがメイクや衣裳から出てましたね。僕で扱いきれるのかという不安はずっとつきまとってます(笑)。たしか7年ぶりくらいの共演なんですが、役者同士としてはとても楽しみです。あと不安なのは、歌うシーンがあるんですよね。道化っぽい歌で人を見下すような(笑)、それを明るく歌い切るんですが、歌はミュージカルの『チョンガンネ』(12年)ぶりなので、大先輩の鈴木壮麻さんも出てくださることだし、しっかり学ばせていただこうと思っています。
──色々なことをしなくてはいけないんですね?
青木さんの演出は意表をつくことばかりなんです。『ヴェニス』の時も、設定を大学の講堂にするというのは後から出てきたんです。そういう仕掛けがあるからこそ、すごく面白くなるんですが。『十二夜』は僕は出ていなかったんですが、たまたまロンドンに行った時、留学中の青木さんに会って、2人でロンドンで観た『十二夜』のいいなと思った部分を日本風にアレンジしていて、さすがだなと思いました。
──牧田さんはDステ出演も『チョンガンネ』以来で、3年ぶりですね。Dステの変化も感じるのでは?
まず今回、共演したことない若手たちが何人かいるし、他のメンバーもすごく久しぶりなんです。出ていない3年間は外側から観ていたわけですが、『十二夜』を観た時、D-BOYSのメンバー個々が、それぞれ自分の魅力に気づいて、それを出そうとしていたり、自分の中の課題をクリアしてきていたり、それぞれ成長しているのを感じたんです。同世代がいっぱいいることで、自分の個性はなんだろうと考える機会になるし、気づきやすい場でもあって、そこが成長に繋がるのだなと思いました。
──牧田さんはじめとする先輩たちが、がんばって引っ張ってきた部分もあると思いますが。
いや、たぶんある時期までは、皆それぞれ自分のことだけで精一杯だったと思うんです。それがなんとなくお互いのことや場面全体のことを話し合うようになったのが、11作目の『クールの誕生』(12年)だった気がします。役者対役者で話せるみたいな感じになった。そして今回19作目ですからね。さらにDステが積み上げてきたものがあるはずで、稽古場から楽しみだなと思っています。
──19作も続けてきたこと自体、すごいことですね。
最初はD-BOYSの役者としての成長のために、会社が企画してくれたわけですが、続けているうちに僕ら自身もだんだん自覚するようになってきた。その結果、1人1人が色々なことを考えるようになって。たとえば柳下(大)が宮田慶子さんに演出してもらいたくて、『オーファンズ』を持ち込んで上演したり、僕自身について言えば、最初は本当に演劇は苦手だったんですが、今では中屋敷さんの劇団に入るくらい演劇好きになっているわけです。だからDステという存在に感謝するところはすごく大きいです。

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自分に足りないものを鍛えてもらうために入団

──演劇を好きになったという部分で、自身で一番大きな意識の変化があったのは?
直接的なきっかけは『千に砕け散る空の星』(12年)でした。上村(聡史)さんの演出に大きな刺激を受けたんです。戯曲が難解でしたから、頭が壊れてしまいそうなくらい(笑)大変だったんですが、上村さんのおかげで何とかできたし、少しは自信もつきました。そのすぐ後が『クールの誕生』で、わりと聞き手に回る役だったんですが、その役で、いつもは簡単に褒めてくれない加治(将樹)さんとかズッキーさん(鈴木裕樹)という先輩たちに、「いいじゃないか!」みたいに言ってもらえたんです。新聞の劇評にも名前が出たり、そういう目に見える評価をもらうと嬉しいし、励みになりましたね。
──それ以降、『熱海殺人事件』や、リーディングドラマの『死神の浮力』、二人芝居の『Equal ー イコール』など幅広く活躍していますね。そんな中で昨年、劇団「柿喰う客」への入団が発表されました。
たぶん僕はリアルな演劇のほうで評価してもらっていることが多いかなと思っていて。だからこそ、圧倒的なフィクションを作る「柿喰う客」に入りたかったんです。僕がそこまで培ってきて評価されたものを生かしつつ、自分の足りないところを鍛えてもらいたいと思ったので。今回の『お気に召すまま』で言うなら、タッチストーンは道化で心情は出さないというか見えない人なわけで、でもその人間が周りを転がしていくわけですから、それをやってのける内面と表現をちゃんと作り上げないといけない。
──等身大の自分ではなく、より想像力で膨らませたり過剰な表現力を必要とする役なんですね。
そういう力をもっと鍛えるために、「柿喰う客」はとても刺激になる劇団なんです。これから何十年も役者を続けていくうえで、自分にとって劇団に入ったことは、とても大きな意味があると思っています。
──いわば飛び道具を持った役者さんが沢山いる劇団ですね。その主宰の中屋敷さんとの出会いが、『チョンガンネ』だったわけですね。
あれで僕自身が知らなかった面を引き出してもらったと思っていて。中屋敷さんは個々の役者の魅力を引き出してくれるし、分析してくれるんです。僕という役者を定期的に見てくれる人がほしかったし、言ってほしかった。これまで何度か、劇団という場所で鍛えられてきた俳優の人たちと共演するうちに、やっぱり土台が欲しいなと思っていて、そこに「柿喰う客・新メンバー募集」という機会があって、思い切って飛び込んだわけです。ただ、最終的には僕はリアリズムで生きる役者になりたいと思っているので、そこに還元できるものを得たいという思いが根底にはあるんです。
──D-BOYSと劇団という2つでやっていいのだという、1つのケースを牧田さんが提示して、色々な可能性を示してくれたと思います。
このケースがさらに出てくるかは僕のこれからにかかっていると思うし、良いモデルケースになれればと思っています。
──6月にあった「柿喰う客」公演での経験が、早速、『お気に召すまま』でも生かされそうですね。
6月公演で、少なくとも自分に何が足りないか、気がついたこともあるので、そこは役に立てたいなと思います。
──最後に改めて意気込みをいただければ。
青木豪さんが書いてくれた今回の『お気に召すまま』の脚本は、2011年の『ヴェニスの商人』から5年間、僕らのことを見てくれて、よく知っている方が書いた脚本だと思います。それが稽古場でまたどう変わるかなと思うと楽しみです。オールメールの面白さや、ベテランの松尾貴史さんや石田圭祐さん鈴木壮麻さんの力をかりて、Dステならではの、Dステでしか観られないシェイクスピアを作れたらと思っています。
──ポスターの皆さんの姿だけでも、相当弾けそうですね。
あれだけでお腹いっぱいになりそうですよね(笑)。とにかくハッピーな喜劇ですので、笑って帰っていただけるようにみんなで頑張ります。

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まきたてつや○1984年生まれ、愛知県出身。主な出演作品に、舞台『千に砕け散る空の星』、『熱海殺人事件』、ドラマライブラリー『死神の浮力』『フランダースの負け犬』など。映像では、TBS『半沢直樹』BSスカパー!『螻蛄(疫病神シリーズ)』、NHKBSプレミアムよるドラマ『はぶらし/女友だち』、映画『HK 変態仮面』、『東京闇虫パンドラ』などがある。


〈公演情報〉
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Dステ 19th『お気に召すまま』
脚本◇ウィリアム・シェイクスピア
翻訳◇松岡和子
演出・上演台本◇青木豪
音楽◇笠松泰洋
出演◇柳下大、石田圭祐、三上真史、加治将樹、西井幸人、前山剛久、牧田哲也、遠藤雄弥、松尾貴史、鈴木壮麻、大久保祥太郎、山田悠介(台本の登場順)
●10/14〜30◎東京・本多劇場
●11/12、13◎山形シベールアリーナ
●11/19、20◎兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
東京公演 〈料金〉¥7,000/召しませシート¥6,000〈日時・枚数限定〉(全席指定・税込)
 一般発売:8月7日(日)
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
 



【取材・文/榊原和子 撮影/岩田えり】
 




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