観劇予報 : パワーアップして再演『真田十勇士』中村勘九郎･加藤和樹インタビュー

徳川VS豊臣の最終決戦「大坂冬の陣・夏の陣」で、百戦錬磨の戦いを繰り広げた真田十勇士の活躍を描いて、2014年、大喝采を浴びた話題の舞台『真田十勇士』の再演が、いよいよ９月11日からの東京公演を皮切りに、神奈川、兵庫で上演される。

しかも９月22日からは、舞台版の演出を手がける堤幸彦監督による映画版もロードショー公開と大きな注目が集まっている。

そんな作品で、初演・再演の舞台、そして映画でも主人公・猿飛佐助を演じ続ける中村勘九郎。また、初演と映画では由利鎌之助を、再演の舞台では霧隠才蔵を演じることになった加藤和樹。まさに『真田十勇士』の顔とも言える２人に、このビッグプロジェクトに挑む抱負を語ってもらった演劇ぶっく８月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介。

「マジか！？」が重なった再演の『真田十勇士』

──初演から２年を経て、『真田十勇士』の再演の話を聞いた時の気持ちから聞かせてください。

勘九郎　「マジか！？」というのが、正直なところでしたね（笑）。初演は役者もスタッフも本当に良いチームワークの中で務めることができて、とても楽しかったのですが、やはりものすごく大変でもあったんですよ。それが映画になる、「おっ？マジか！？」となり、更に再演もある、「マジか！？」と（笑）。あの日々がまた巡ってくるのかと思うと「頑張らないと！」と（笑）。とにかく体力的にきつい作品で、エンターテイメントを追求しているだけにアクションも多いですし、舞台をところ狭しと走り回り、喋り狂わないといけないので。

加藤　僕もやっぱり「マジか！？」でしたね。再演できるのは嬉しいことなんですが、僕の場合は役が変わるということで、そこでまず「マジか！？」と。

勘九郎　それ、僕にとっても３つ目の「マジか！？」だった（笑）。でも（加藤）和樹が（霧隠）才蔵になると聞いた時は、モチベーションが上がった。

加藤　ありがとうございます。映画の撮影中も、舞台の再演で才蔵が誰になるのかな？というのは、皆で話していましたよね。

勘九郎　そう！「ちょっと噂で聞いたけど…」とか言ってくるのもいて、どこから出た噂なんだ？みたいな（笑）。

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加藤　憶測が飛び交っていたので、映画のクランクアップの記者発表の直後に、プロデューサーさんから「再演では霧隠才蔵だから」と言われた時は、自分で咄嗟に呑み込めなくて、思わず「いや…無理です」と言ってしまったくらいでした。でも、堤（幸彦）監督も「和樹がいい」と言ってくださったと。「それならば！」と気持ちが高まったのですが、でもまず勘九郎さんの意向を訊いて頂きたくてお願いしたところ、その日の夜すぐご本人から「最高じゃないか！」という言葉を頂けたので、やらせて頂こうと思いました。それまで由利鎌之助役として密な関係を築いてきた筧十蔵役の高橋光臣さんはじめ、皆さんからも楽しみだと言って頂いているので、頑張らなければいけないし、もちろんその分プレッシャーもあるのですが。まずは(勘九郎を示して)この人がどんなムチャぶりをしてくるか覚悟しないと（笑）。

勘九郎　いや、それは大丈夫、俺は生まれ変わったよ（笑）。

加藤　生まれ変わった？今、言いましたよね（笑）

勘九郎　言った（笑）。

加藤　これ、残りますからね（笑）。なにしろ初演と映画を通じて、勘九郎さんの猿飛佐助と（松坂）桃李くんの霧隠才蔵の丁々発止のやりとり、コンビネーションの良さを目の前で見ていましたから。それが自分になると考えた時に、１人で突っ走って何ができる訳ではありませんし、隣にいる勘九郎さんの佐助の存在があってこそ関係性が成り立つので。そこは稽古で深めながら、精一杯やらせて頂きたいと思っています。

勘九郎　絶対に良い才蔵になると思うし、ものすごく期待してる。皆も、映画を経ての再演だから、更に新しいものをというモチベーションでくると思うし、堤監督がどんな発想を持ち込んでくるかで、稽古場でまた変わっていく可能性も大きいよね。それこそ堤監督もムチャぶりするから（笑）。

「何が嘘で何が本当なのか？」という深いテーマ

──その堤演出の面白さについてはいかがですか？

勘九郎　やはり、十勇士のキャラクターを掘り下げて、あれだけ１人１人を立たせたのは堤監督ですから、それはすごいなと思いますし、今回初演の青山劇場から新国立劇場へと変わることで、舞台機構も装置も変わるので、また新たな演出や深まる部分も出てくると思います。映画を経ているだけに、更に大きなスケールでお見せしたいという気持ちですね。

加藤　初演の立ち廻りも、毎回息が絶え絶えになるくらいで、早く死ねる奴が羨ましいと（笑）、皆で言っていましたからね。

勘九郎　才蔵は最後まで残るね。

加藤　残ります。今回大変です。

勘九郎　ザマァミロ！（爆笑）

──マキノノゾミさんの脚本についてはいかがですか？

勘九郎　最初に読んだ時にはまず驚きました。題名を二度見したくらいです（笑）。想像していたのとは全く違う破天荒なものだったので。でも「何が嘘で何が本当なのか？」というこの芝居のテーマが、自分たちが役者として日々芝居をする、更には生きていることにも通じるものでもあったので、深いなぁと思って読みました。

加藤　マキノさんが「練りに練って書いた」とおっしゃっていただけに、面白いだけでなくて、どんなに遊びの部分があってもちゃんと本筋に戻ってくる。ですから僕たちが、如何にそれを見失わずに演じるかにかかっていると思います。勘九郎さんもおっしゃったように、芝居というのは、そもそもは嘘なんだけれども、それを如何に本物に見せるのかが勝負で、そうするための力を貰える脚本です。

一緒に高みに向かおうと思える間柄

──初演、映画を通じて役者としてのお互いの魅力をどう感じていますか？

勘九郎　まるで学校の部活動のような現場だったんですが、和樹はとにかく身体能力が高くて、立ち廻りは抜群だし、役者としてとても高いところを目指している。その意識に触れて、こちらも一緒に高みに向かおうと思わせてくれる人ですね。

加藤　勘九郎さんは、本当に存在が素晴らしい方なので。初めは近寄り難いと思っていたのですが、僕が漫画雑誌を読んでいたら「貸して」とおっしゃって、とても楽しそうに読んでいるのを見て、「あ、わかり合える」と（笑）。

勘九郎　あれは絆になるね（笑）。

加藤　なりました（笑）。役者として尊敬できるのはもちろんですが、全く飾らない人柄が役にも出ていて、常に自然体で演じている。そこが素晴らしいし見習いたいと思います。

──そんなお２人の新しいコンビネーションが楽しみです。では改めて、再演にかける意気込みをお願いします。

勘九郎　クローズアップの効果や合戦のシーンのスケールなどを楽しんで頂ける映画と、生身の人間が今そこで走り回っている醍醐味を感じて頂ける舞台、同じ『真田十勇士』でも全く違うものになると思います。是非両方を楽しんで頂きたいですし、これだけのビックプロジェクトはなかなかないので、自分の持っている体力、表現力を出し尽くして、まずは自分たちが楽しんで臨みたいと思います。

加藤　初演を観てくださった方や映画も観てくださる方にも、どちらが良かったかではなく、どちらも良かったねと言って頂けるように、頑張ります！

なかむらかんくろう○東京都出身。十八代目中村勘三郎の長男。86年『近江源氏先陣館』「盛綱陣屋」の小三郎で初お目見得。87年歌舞伎座『門出二人桃太郎』の兄の桃太郎で、二代目中村勘太郎を名乗り初舞台。12年新橋演舞場二月大歌舞伎『土蜘』の僧智籌実は土蜘の精、『天衣紛上野初花』（河内山）の松江出雲守、『春興鏡獅子』の小姓弥生後に獅子の精で六代目中村勘九郎を襲名。歌舞伎界の若手ホープとして躍進を続ける一方、映画、テレビドラマ、現代劇、時代劇など、多方面で活躍中。

かとうかずき○名古屋市出身。05年『テニスの王子様』で脚光を浴び、06年には歌手としてもCDデビュー。俳優業と共に武道館ライブなど、ミュージシャン活動も精力的に展開している。近年の主な舞台作品に『ロミオ＆ジュリエット』『レディ・べス』『ボンベイ・ドリームス』『タイタニック』（主演）『No9─不滅の旋律─』『1789』（主演）などがあり、ミュージカルからストレートプレイまで注目の俳優として躍進中。

〈公演情報〉

舞台『真田十勇士』

脚本◇マキノノゾミ

演出◇堤幸彦

出演◇中村勘九郎、加藤和樹、篠田麻里子、高橋光臣、村井良大、駿河太郎、荒井敦史、栗山航、望月歩、青木健、丸山敦史、石垣佑磨、山口馬木也、加藤雅也、浅野ゆう子他

●9/11～10/3◎新国立劇場中劇場
●10/8～10◎KAAT神奈川芸術劇場
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337（10時～18時）
●10/14～23◎兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場　06-6377-3800（10時～18時）
〈公式ＨＰ〉http://sanadajuyushi.jp/