観劇予報 : 晴れやかな門出！市川月乃助改め二代目喜多村緑郎襲名披露『九月新派特別公演』初日館前行事　レポート

たくさんの祝福を受け、二代目喜多村緑郎が新たな節目の一歩を踏み出した！

歌舞伎俳優として市川猿翁（三代目市川猿之助）のもと修業を積みながら、数々の舞台で着実に成長をとげ、その技量と端正な舞台姿で人気を集めてきた市川月乃助。今年１月に正式に劇団新派へ入団し、次代をになう心強い新戦力として、新派にとっては大事な名跡である「喜多村緑郎」を二代目として名乗ることとなった。

その襲名披露公演である『九月新派特別公演』が９月１日、ついに新橋演舞場で幕を開けた（11日まで、大阪松竹座では9月17日～25日まで）。月乃助改め二代目喜多村緑郎にとってはもちろん、新派にとっても大きな節目となる公演の初日の昼の部にさきがけて、劇場前で出演者らによる挨拶、鏡開き、手締めの行事が催された。

劇場前には、炎天下にもかかわらず、開幕を今や遅しと待つファンはもちろん、この行事を楽しみに来た人々や取材陣が集まった。

まずは、名物公演の「東をどり」をはじめ、新橋演舞場ともゆかりの深い東京新橋組合の芸者衆が登場。たちまち華やかな空気が漂う。続いて、昼の部の「振袖纏」に出演する火消し役の俳優たちが、いなせな姿で木遣りを披露した。その後、新派から水谷八重子、波乃久里子、この公演が初舞台となる春本由香、瀬戸摩純、また、二代目と同じ一門で育った歌舞伎俳優の市川猿弥、市川春猿、春本の兄でもある尾上松也、安孫子正松竹株式会社取締役副社長が登場し、「水谷！」「波乃！」「澤瀉屋！」「音羽屋！」などの威勢のいい掛け声が飛び交うなか、ひと言ずつ挨拶を行った。（文中の澤瀉屋の「瀉」は、正しくはワカンムリです）

【挨拶】

水谷八重子　新橋の皆様、ご協力ありがとうございます。どうか千秋楽まで、お客様に宣伝をよろしくお願いいたします。同じ芸者の恰好をしてくるのは気が引けたのですが、舞台でこの恰好をしておりますので、仲間入りをさせていただきました。ここにいらっしゃるお客様、切符をお持ちの方いらっしゃいますか？（は～い、と手が挙がる）　まぁ嬉しい！　どうぞお帰りになりましたら、少なくとも５人の方には宣伝してくださいましね（笑）。向こう三軒両隣、ご町内会、皆様お誘いあわせくださり、もう一度いらしていただけたら幸せです。11日まで、昼夜違う演し物ですので、どうぞ全部を観ていただきたいという思いでいっぱいです。

波乃久里子　朝早くから、この炎天下のなかようこそおいでくださり、本当にうれしゅうございます。また、まり恵さんはじめ、新橋の皆様お集まりくださり、喜多村緑郎さんの良い門出になります。どうぞこの後とも、新派をご贔屓くださいますよう、ひとえにお願い申し上げます。また、夜の部は？　皆様ちょっと少ないですけど、夜の部は私が出ておりますので（笑）、よろしくお願いいたします。

市川猿弥　この度、二代目喜多村緑郎さんご襲名のおめでたい席にご一緒できることが本当に嬉しく思います。少しでも舞台に華を添えられるように頑張って勤めてまいりますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。

市川春猿　二代目喜多村緑郎さんと私、30年間、苦楽をともにしてきた仲でございまして、その喜多村緑郎さんがこの度ご襲名されるということで、私もぜひ何かお力添えがと思い、今回この襲名披露興行に出させていただき、大変嬉しく思っております。千秋楽まで一生懸命勤めさせていただきますので、どうぞご声援のほどよろしくお願い申し上げます。

尾上松也　二代目喜多村緑郎襲名公演に、私も出演させていただくこと、本当に嬉しく思っておりますし、念願でした新派公演に今回初めて参加させていただきます。劇団新派は、私の母、そして祖父、父もお世話になりまして、非常にご縁を感じておりましたので、いつかはと思っておりまして、こういった機会を得て本当にありがたく思っています。私事ですが、妹である春本由香も劇団新派に入団させていただき、初舞台を踏みます。兄妹一緒に演舞場で新派に出演できるということも、大変嬉しく思っています。何よりもこの公演が成功できるよう、私を含め、妹も精進して努力してまいりますので、何とぞひと月よろしくお願いいたします。

春本由香　このおめでたい公演の日に、初舞台を踏ませていただけるということで、これから精進してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

瀬戸摩純　11時から「振袖纏」で、松也さんと夫婦役をさせていただきます。川口（松太郎）先生の素敵な作品ですので、ぜひご覧ください。よろしくお願いいたします。

そして、いよいよ主役の出番。軽快な囃子とともに、人力車に乗った市川月乃助改め二代目喜多村緑郎が、東京新橋組合の芸者衆の出迎えを受けて颯爽と登場。二代目は「緑屋！」（喜多村緑郎の屋号）との掛け声、そして満場の拍手を浴びながら、挨拶を行った。

市川月乃助改め二代目喜多村緑郎　皆様、暑いなか本当にありがとうございました。いよいよ本日から喜多村緑郎先生のお名前を襲名させていただきます。私としては、人力に乗せていただき、新橋の花柳界の皆様に華を添えていただき、このように大勢の方にいらっしゃっていただき、こんなに嬉しいスタートを切ることができたとは、一生思い出に残る一日になりました。新橋演舞場では11日まで、大阪松竹座では17日から25日まで、精一杯勤めさせていただきたいと思っております。ぜひとも劇場へ足を運んでいただければ本当に嬉しく思います。どうか、二代目喜多村緑郎を末永くよろしくお願い申し上げます。