「おたふく物語」初日舞台公開 藤山直美

明治座9月公演は、藤山直美主演で江戸の人々の暮らしを瑞々しく描く山本周五郎の名作『おたふく物語』。演出は山本周五郎作品をテレビや舞台に上げた立役者でもある石井ふく子が手掛けるという見逃せない作品だ。(25日まで。そののち10月5日〜10日、博多座)
 
【物語】
江戸の下町に住むおしず(藤山直美)はおっちょこちょいだが心は温かく、ご近所の人気者。けれども、なぜかいまだに嫁いでいない。「あたしはおたふく(不美人)だから」と笑い飛ばすが、実は家族の問題を抱えていた。牢屋に入っていた弟栄二(金子昇)がたびたび金をせびりに来るので、家計は火の車だったのだ。
ある日、妹のおたか(田中美佐子)に友吉(丹羽貞仁)という若旦那との良い縁談が舞い込む。「何とかして妹を嫁がせる!」と、おしずは両親や妹を守り、弟に立ち向かうことを決心する。そんなおしずも想いを寄せる人がいた。
江戸中に名を知られるほどの腕を持つ彫金師の貞二郎(錦織一清)だ。おしずは貞二郎のすばらしい作品をこっそり集めており、秘かな恋心を抱いていたのだが──。 

 「おたふく物語」初日藤山直美、田中美佐子

藤山が演じるおしずは、おっちょこちょいで「おたふく」だが優しい人柄で皆に好かれている。藤山は、おしずが持つ明るい慌て者の部分、窮地で見せる胆の据わり具合、好きな男に対する可愛さなど、様々な魅力を過不足なく演じて適役。芝居の長さを感じさせず、もっと見ていたいという気にさせる。
おしずの憧れの彫金師貞次郎には錦織一清。仕事で成功しているが驕らない真面目な職人の男らしさに魅力があり、おしずと引き合わせられる場面での心情の変化や後半の夫婦のすれ違いなど、めりはりをつけて演じてみせる。
姉思いの妹おたか役には田中美佐子、良家に嫁いだ女性らしい品があり、貞次郎に誤解されている姉を弁護する場面では、溢れる気持ちが伝わってきて胸を打つ。
また、貞次郎の師匠来助に林与一、その妻おそのには音無美紀子という達者な2人が江戸の人情を的確に表現して、物語に一層の厚みを増している。不良の弟役の金子昇が最後に見せる心根、おたかの夫役の丹羽貞仁の優しさなども印象に残る。
江戸の四季の風情なども取り入れた舞台の美しさと、山本周五郎作品の温かみがすみずみまで感じられ、明治座ならではの江戸物芝居の良さがたっぷり味わえる舞台だ。 

「おたふく物語」初日舞台公開
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誕生日ケーキ(撮影:佐藤栄里子)

初日の9月1日は、石井ふく子の90歳の誕生日で、芝居に引き続き卒寿を祝うイベントが行われた。元気な姿を見せた石井に錦織が音頭を取り出演者客席が一体となり「HAPPY BIRTHDAY ふく子さん」と歌い祝った。この舞台を観た者はみんな、この年齢まで現役であり続ける石井の衰えぬパワーを感じられるだろう。

【囲みインタビュー】 


「おたふく物語」初日舞台公開田中美佐子 藤山直美

この公演の初日の直後に囲みインタビューが行われ、藤山直美、田中美佐子、錦織一清が登場した。

──初日1回目の公演を終えていかがですか?
藤山 疲れましたね。お客さんを前にして初めて台詞を喋らせてもらうので緊張します。
──カーテンコールで石井ふく子さんのお誕生日パーティーもありましたが。
藤山 900歳……じゃない(笑)、90歳。私も嬉しかったです。
──終わった後どのようなお話がありましたか?
藤山 終わってすぐ来たので。
錦織 ダメ出しはこれからです(笑)。
田中 今日ダメ出しないからと言われました。完璧だったということでしょうか(笑)。
──石井先生はどんな方ですか?
藤山 優しいですよ。
──今回はどのようなアドバイスがありましたか?
藤山 台詞をしっかり喋りなさい。間を大事にしてください、と。本当に普通のことなんですけど、なかなか普通ができないので、いろいろ怒られました。
田中 私はずーっと怒られっぱなしです。まず立ち居振る舞いがまったくできていないから、振り返ることから立ったり座ったり。それで緊張していたのですが、直美さんに言ったら「まかしとけ」って。
藤山 言うたことないんだけど(笑)。
田中 言ったやん(笑)。藤山さん結構長い台詞を話しているんです。聞いていると長く感じないんですが、何ページもあるんですよ。私もそういうところがあって、「私、台詞忘れたらどうしよう」と言ったら、「忘れたら任しとけ」って。
藤山 だって助け合いですもんね。
──錦織さんは石井先生の作品は明治座で2回目ですね。
錦織 はい。前回もそうだったんですけど、自分のお芝居のプランを持ち込まなくても手取り足取り、石井先生に委ねると自然に出来てくるという感じです。演劇トレーナー的な存在です。
──ご自身も演出をなさっていますが。
錦織 今回久し振りに出るほうをやってみて、普段役者さんたちにお願いしていることを自分が一番出来ていないことに気が付きました(笑)。出ていただいたみなさんにこれからLINEで謝ろうと思っています笑)。
──時代ものは久し振りですね?
錦織 そうですね。舞台の時代物というのは場数が少ないので、石井先生や直美さんとも初めてです。かなり気をつかっていただいていると思います。緊張していましたが、一緒に出させていただくシーンは安心感に包まれているようで、直美さんの大きさを感じました。帯を締めていただく役(着替えを手伝ってもらうシーンがある)ですから、恐縮しちゃって。
──生着替えですね!
錦織 生着替えなんです。後ろ向いているから気付かないかもしれませんが、あの時何も着ていないんですよ!
──えっ!?
錦織 嘘ですよ(笑)。
──(笑)藤山さん、錦織さんは息ぴったりですね。
藤山 合わしてくれてはるんですよ。
錦織 ものすごく勉強になりますね。面白いですね。
──ラブシーンで笑いが起こるというのがお二人らしくて。
藤山 良いですよね。ほほえましくて。ありがとうございます。
──新たなコンビの誕生ですね。
錦織 ありがとうございます。
──藤山さんから見て錦織さんの旦那様はいかがですか?
藤山 優しそうでしょ。ご自身が演出されていますから、ひとつひとつのお芝居がすごく冷静です。なんでも寸法とったりね。演出されている方やなというのが分かりますね。俯瞰でものを見はりますから。一緒にさせていただいてありがたいと思っています。
──演技の話をされたりしたんですか?
藤山 全然違う話ばかりしてます。大体、永ちゃんの歌でどれが好きとか。
田中 よく歌ってくれるんです。
藤山 私、歌ってます。廊下で歌って、もうちょっとで救急車が来るんちゃうかと(笑)
──ご自身の今の支えはなんでしょうか?
藤山 そりゃ共演者ですよ。石井先生であり、スタッフであり、毎日こうやって舞台に出させてもらっているのが支えです。
錦織 そうですね。
藤山 だって助け合わないと無理ですから。今までは三人で頑張ってきはりましたけどね、少年隊で。
一同 (笑)。
藤山 これから沢山増えましたので、よろしくお願いいたします。
──錦織さんは?
錦織 友人の中に同業の方はあまりいないんですけど、そういいった知人がいつも支えになっています。現場から離れるとまったく違うことで盛り上がっています。ただのオヤジになれるとことです。
田中 私は家族がいて、こっちに来たら直美さんがいて。このチームは最高です。初めて組ませていただいたんですけど、素晴らしい。この56歳の私が錦織さん除いて一番下で、自分がすごく若くなったような気がして(笑)嬉しいです。
──25日までの公演ですが意気込みをお願いします。
藤山 お客さんに喜んでいただけるお芝居を石井先生の舵取りで、一座全員で頑張らしてもらいたいな思っております。

〈公演情報〉
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明治座『おたふく物語』
原作◇山本周五郎
脚本◇黒土三男
演出◇石井ふく子
出演◇藤山直美、錦織一清、田中美佐子/音無美紀子、金子昇、丹羽貞仁、林与一  ほか 
●9/1〜25◎明治座 
〈料金〉 S席13.000円 A席9.000円 B席6.500円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00-17:00)
●10/5〜27@博多座
〈お問い合わせ〉博多座電話予約センター 092-263-5555(10:00-18:00)
http://www.hakataza.co.jp/lineup/h28-10/




【取材・文/佐藤栄里子 写真提供/明治座】





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