s_ 岡田太郎2(撮影:交泰)

劇団「悪い芝居」の音楽家・俳優、岡田太郎が活動の場を一気に広げている。今年は柿喰う客、Baobab、アマヤドリなど勢いのある小劇場の音楽を次々と手がけ、来月10月には所属するバンド「ジャパニーズCLUB」でCDデビューする。現在は、自らの生演奏で音楽を担当する悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』(作・演出:山崎彬)が京都で、楽曲提供したアマヤドリ『『月の剥がれる』(作・演出: 広田淳一)が東京で上演中だ。

s_悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』 (2)
悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』

――今回の『春よ行くな、』は、2013年の『春よ行くな』がベースとなっています。初演では、どういう発想から音づくりを始めたのでしょうか?
正直、初演のときのことが記憶にないんです。悪い芝居に入って4作目の本公演。当時は右も左もわからなくて、自分の中にあるものをめちゃくちゃ出してやろう思ってつくった。その結果がこの音楽になったんやろうなと思います。音ができるまではものすごく考えた記憶はあって、山崎彬が初演で構想ノートを書いているのですが、僕も音楽構想ノートを書いてスタッフに見せたりしていました。今見ると、めっちゃ青臭いんですけどね。※山崎彬の構想ノート http://waruishibai.jp/864197re/
──初演は悪い芝居本公演で初めて舞台に立って生演奏で劇伴を担当した作品だそうですね。
入団して1、2作目の『駄々の塊です』(2011年)と『カナヅチ女、夜泳ぐ』(2012年)は音楽だけ作っていて、3作目の『キャッチャーインザ闇』(2013年)は音響オペレーションをしていました。1、2作目では自分で作った音楽を音響さんに流してもらっていたんですが、日々変わるので毎日、音楽を直していた。それで3作目は自分で音響オペをするようになって、でも結局、作ってあるものを再生しているわけなので、じゃあその場で自分で演奏すればいいじゃん、となったのが初演の『春よ行くな』でした。僕が大事にしているのは、あまり打ち込み音を使わないこと。役者の歩幅など動きのテンポは絶対に一定ではないので、その役者の呼吸に合わせる音楽って、機械の打ち込みではなく人間がその場でつくるものだと思っているんです。だから、生演奏でもやるんです。
──今回のリインカーネーション版をつくるにあたって、音楽は変わりましたか?
自分の年齢も、台本上の役柄の年齢もあがったことはありますね。今回、1〜3曲目は全部、録音し直しています。でも、ちょっと残した部分もあるんですよ。2曲目に、自分の声でめっちゃ叫んだ音が入っているんです。その声をギターアンプに通して、ひずませて聞かせてる。それはそのまま使っていてる。美味しかった部分だけ残してもってきて、録りなおした感じですね。
──音のスタイル、ジャンルとしてはどういうものでしょうか?
言葉にするのは難しいですね。台本のもやもやってしているやつを、ぐちゃぐちゃと音に出した感が初演はあったんですよ。再演は少しひいては観れているかな。ちょっと背伸びした部分の背伸び感も音にも現れていると思うし。一番激しい部分と、けれど落ち着いているところと両面を持ち合わせている音かな。戯曲にもそういう面があると思っています。

s_ 岡田太郎1(撮影:交泰)

2016年は『春よ行くな、』のほか、EPOCH MAN『鶴かもしれない2016』(1月)、柿喰う客フェスティバル2016『サバンナの掟』『いまさらキスシーン』(6月)、悪い芝居vol.18『メロメロたち』(7月)、東京ジャンクZvol.6『サスペンデッドアワー2』(7月)、Baobab『靴屑の塔』(9月)、AKB48 チーム8 単独上演舞台『絢爛とか爛漫とか』(9月)、アマヤドリ『月の剥がれる』(9月)を手がけた。12月には僕たちが好きだった川村紗也(2)『ゆっくり回る菊池』の音楽も担当する。

──最近、一気に仕事の幅が広がっています。
舞台の劇伴のお仕事をいただくようになったのはこの3年ぐらいでしょうか? 作曲はひとりでするのですが、広くいうと演出家さんや作家さんに譜面をもらっている感じがしています。そういう意味では僕の作風は、作家さんたちに広げてもらっているのが大きいですね。一方で、自分の根底にある、自分が作りたいものってなんだろうと悩んだこともありました。
──その根底の部分が、ギターボーカル3人のバンド「ジャパニーズCLUB」の活動ですね?
そうなんです。ジャパニーズCLUBは10月にCDデビューが決まりました。なので、今はすごくいいバランスやなと思います。ギター3人のバンドっておもろいでしょ。CDでは再現不可能なぐらいいろんなことをやろうと思って、打ち込みから、ギター弾き語りなどいろいろやっています。ライブでは、3人で汗かきまくって歌いまくってという感じ。まずは、ジャパニーズクラブでフジロック(FUJI ROCK FESTIVAL)に出たいですね。

s_岡田太郎 稽古風景(撮影:交泰)

──今年は音楽を担当した映画『INNOCENT15』(監督・脚本:甲斐博和)も公開されました。劇伴をつくる音楽家としては、今後どういうものに取り組んでいきたいですか?
ぼくは、このスタッフ、このキャスト、この場所でしかできないという音楽を探してきています。今回、山崎さんに「太郎くんがかっこよかったって、アンケートに書かれへんかったら勝ちやね」って言われたんですが、音響や照明スタッフさんからも、「音や照明がすごかったとか言われたら、それはある意味よくなかったということだ」という話をよく聞きます。ひとつが突出するのはなく、すべてが揃ったからこそ生まれる作品の音でありたいかな。そして、「岡田太郎じゃないとできないから頼んだ」という存在になりたいです。
──具体的にやりたいことはありますか?
音楽家としては演劇にこだわっているわけではないので、いろいろやりたい。ミュージカルだけではなくて、劇伴として歌詞ありきの歌ものも、やりたいですね。ドキドキしている場面でドキドキしているような演技をしながら歌詞でも「ドキドキした♪」とか歌うような、さむいのが多いと思うので、そうじゃないやつを嫌味なく上手くできる演出家とやりたいです。
──では、最後に生演奏で出演中の『春よ行くな、』は、お客さまに何が残るといいなと思っていますか?
せりふとか鳴っていた音とかは残っていなくてよくて、結果、外に出たときに何か心にひっかかるものが変わればいいですね。劇場を出たときに音楽とかせりふが残っていたら、俺らの音や言葉が根付いちゃっただけだから。劇場を出た瞬間から、その人の新しい解釈がはじまって、それを想う力が強くなったらいいなと思います。

s_悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』
悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』
 

〈公演情報〉
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悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』
作・演出◇山崎彬(悪い芝居) 
美術
杉原邦生(KUNIO) 
音楽
岡田太郎(悪い芝居)
●京都公演 9/23〜26◎京都芸術センター 講堂 
●東京公演 10/4〜10◎テアトルBONBON
出演◇奥田ワレタ(クロムモリブデン)、大原研二(DULL-COLORED POP)、永嶋柊吾、片桐はづき、斎藤加奈子(ろりえ)/北岸淳生、、植田順平、山崎彬(以上悪い芝居)

★映画『INNOCENT15』(監督・脚本:甲斐博和)は2016年12月17日(土)〜23日(金)、東京・テアトル新宿でレイトショー。

s_ジャパニーズCLUB ジャケ写
★ジャパニーズCLUBデビューアルバム『J.P.C』
2016年10月19日(水)発売。2000円(税抜)



【撮影/交泰(人物) 舞台写真/堀川高志(kutowans studio)】



『ハンサム落語第八幕』




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