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ゴツプロ!全員写真(前列:佐藤正和、中下元貴、塚原大助、浜谷康幸  後列:渡邊聡、44北川、泉知束、かなやす慶行)

40代の男性俳優8人で結成されたゴツプロ!が、第1弾『最高のおもてなし!』の大ヒットを受け、「同世代の恋する大人たちへ」をキャッチフレーズに、第2弾『キャバレーの男たち』を、1月26日から下北沢駅前劇場で上演する(2月6日まで)。
 
演出は山野海、劇団ふくふくやの主宰で女優としても活動、竹田新の名前で脚本家としても数多くの作品を発表、小泉今日子の初演出作品『日の本一の大悪党』(2016)でも脚本を手がけている。
今回の物語は、昭和38年のとあるキャバレーにいる歌姫・姫子に想いを捧げる中年男8人が、右往左往して繰り広げる、笑いあり、涙ありのロマンチックストーリー。
公演へ向けて、ひときわ熱の入る稽古場で、ゴツプロ!主宰の塚原大助、俳優の佐藤正和と浜谷康幸、そして作・演出の山野海に話を聞くことができた。
 
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佐藤正和、山野海、浜谷康幸、塚原大助

第1作を終わって、初めてゴツプロ!という劇団になった!
 
──まず、ゴツプロを旗揚げした経緯を教えていただけますか。
塚原 新宿で浜谷さんと佐藤さんと泉知束の3人で、よその芝居を観終わったあとに、ご飯を食べながら「何かやろうよ」と。
佐藤 飲んだ勢いで(笑)。
塚原 そこから、これまでの役者人生の中で僕が刺激を受けた仲間を集めて、スゲー芝居を創ろうぜって出来たのがゴツプロ!です。
山野 私は劇団ふくふくやの主宰をしていて、浜谷康幸と塚原大助、かなやす慶行は劇団員で、ゴツプロ!の他のメンバーも昔から知っている人ばかりなんです。塚原と浜谷からやりたいことがあるという話を聞いて、ちょうど「後輩たちが何かやるなら、私の脚本で良ければどうぞ」という話をしていた時だったので、タイミングが良かったんです。企画として男性8人だけというのも面白いなと。演出は第1回の『最高のおもてなし!』が初めてでしたが、男性の中で女性が作・演出をやるというフィルターを通せば、また違う面白いものが生まれるかなと思って引き受けました。
佐藤 メンバーは集まるべくして集まった8人で、最初に誰と一緒にやりたいかという話をした時点で、すごく心地のいい集団になるなと。そして第1弾の『最高のおもてなし!』を終わった時点で、それは確信しました。山野さんに作・演出をやってもらってよかったと改めて感謝したし、最初はユニットぐらいのつもりでしたが、『最高のおもてなし!』で「劇団」に変わったんです。その時初めて、ここはゴツプロ!という劇団なんだなと思いました。
浜谷  正直、2回目があるとは思ってなかったですね。まずは話したことを具現化しようと始まったので。でもとても刺激的で、塚原の劇団にかける情熱に心を打たれたし、ありがたいことに2回目も決まった。飲み屋でクダを巻いてしゃべった話から、こんなことになるとは思っていませんでしたから、本当に嬉しいです。

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山野海だけが作れるオリジナルな脚本世界

──山野さんは竹田新という名前で脚本家もされています。長年の付き合いの皆さんから見た、彼女の脚本の魅力を教えていただけますか。
塚原 うーん、なんて言えばいいのかな……。
山野 黙らないでほしいなぁ(笑)。
塚原 一言で言えないんですよ。読んでいるとすごく難しいなと思います。少なくとも1回読んで、すぐに面白いねという脚本ではない。けれど稽古を見ている中でキャラクターが立って、どんどん明確になってくる。つまりセリフに書かれていない、その人たちが抱えているものを見定めるのが重要なポイントで、セリフの裏に書かれているところを理解して演じなくてはならない。だから難解だなと思います。でもお客さんからは、笑いながら泣ける、泣きながら笑える、どういう感情になったらいいのかわからないと、そういう言葉をいただくんです。それは僕らが難しい脚本に悩みながらも舞台に立って、泣いたり笑ったりすることに共鳴していただけたのかなと思います。
佐藤 僕はブラボーカンパニー(主宰・福田雄一)に所属していて、10年以上前に劇団ふくふくやに出させていただいて、海さんの脚本に触れました。ふくふくやは人情喜劇が多いんですけど、小泉今日子さんの『日の本一の大悪党』に書いた世界は、笑いのないダークなもので、ゴツプロ!とはまるで違うものでした。でも海さんだけが作るオリジナルな脚本というのは感じられました。僕の解釈では、海さんの脚本には執念があるんです。それはどのストーリーにも通じている。もしかするとそれが作品ごとに、笑いになったり、ダークなものに変化していくのかなと。
浜谷 お客さんの期待を裏切る脚本になっているんです。海さんはよく「タダじゃ泣かせない」とおっしゃるんですけど、泣かせるだろうなと思わせて笑わせる。こういう展開になると思っているところでそうならない。こんなセリフだったら気持ちいいだろうなというところで逆のことを言ったりする。だからハラハラするし、お客さんが引き込まれる。それにプロローグが毎回秀逸で、舞台の世界に一気に引っ張っていく。もちろん塚原が言ったように、作品の奥底に流れているそれぞれの人間が抱えるいろいろな想いが、ダイレクトに伝わるからこそなんですけどね。
──山野さんは新橋の出身ということで、下町がモチーフになったりしますか。
山野 私は昭和40年生まれですから、まだ闇市の名残りが裏通りにはあって、でも、表に行けば普通のサラリーマンが沢山いるという時代に育ちました。街にはキャバレーがあったり、乾物屋のおじさんがいたり、色々なパワーが混在していて、そのぶん生きるエネルギーに満ち溢れてました。勉強では得られない野生の勘とか生きるエネルギーがないと食い殺されるような、そこで育ったので、執念というよりは生きるエネルギーでしょうね、何のために生きて、次の世代に何を渡していくかということを常に考えています。だから舞台はたくさんのお客さんに観て欲しいし、なんでもいいから何か持って帰って欲しい。そうするためには、真剣に気持ちをさらけ出さないとお客さんが付いてこないので、気持ちをさらけ出すことはいつも意識しています。
──ゴツプロ!と他の公演と意識して書き分けている部分は?
山野 意識して書き分けているつもりはないです。逆に、私は皆さんに書かせてもらっているんです。『日の本一の大悪党』は小泉さんと話しながら作ったし、ふくふくやでは劇団のみんなと話すし、ゴツプロ!は男性8人に演じてもらいたいものを考えるんです。『最高のおもてなし!』は知人が観て、男性が脚本を書いたと思ったらしいし、『日の本一の大悪党』は、なぜか女性が書いたと思ったそうです。私としては、あくまでカンパニーに沿った脚本を書かせてもらっているだけなんですけどね。

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本物の時計と一緒にリアルタイムに時を刻む舞台
 
──その第1回目の『最高のおもてなし!』ですが、その手応えを振り返っていただけますか。
塚原 稽古初日から千秋楽までテンションが落ちることなく、刺激し合って盛り上がって、楽しくて、素晴らしい時間でした。メンバーにとって、「こういうことしたいな」という舞台が実現した場所だったので、そのエネルギーもお客さんにも伝わったと思います。貴重な経験でした。
佐藤 駅前劇場でたった8人の役者で演じて、10日間14ステージで1800人近い動員は、すごいことだと思います。僕らは小劇場でやってきたけれど、旗揚げでいきなり2週間やって、満員が続いて追加公演まであって、しかも第2弾も決まってというのは、めったにないですから。端から見たらびっくりしますよね。
浜谷 自信を持ってお客さんを呼べる素晴らしい作品でした。お客さんに楽しんで帰ってもらえれば役者冥利につきますし。上演時間は2時間弱でしたが、その内の1時間35分、全員が舞台に出ずっぱりで、しかも舞台上の時計と一緒に、リアルタイムに時が刻んで終結するという作品で、時計に合わせてストーリーが展開していくので、本当に隙がなくて、最後はどうなるだろうって、お客さんも僕らもドキドキする。演じていて面白かったし、それをお客さんも感じてくれたんだと思います。
塚原 大変だったよな。
浜谷 うん。緊張感のあるお芝居は他にもあるかもしれないけど、ああいう仕掛けをお客さんに提示できたのは大きかった。役者とお客さんが時間を共有していける作品だったよね。
──演劇だからこそできる舞台ですね。
山野 そうなんです。打ち合わせで何気なく、「時計と一緒に進んでいくのが面白いね」とか言ったら、みんながやろうやろうと。言わなきゃよかったと(笑)。1分でも時計とずれると成立しなくなるお話だったので大変でした。でもずれたことは一回もなかったです。
佐藤 凄かったよね。
 
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キャッチコピーは「40代や50代の恋する大人たちへ」

──そしていよいよ第2弾となる『キャバレーの男たち』はどんな物語になるのですか?
山野 昭和38年のキャバレーが舞台で、そこの歌姫・姫子が中心になって、彼女を崇拝してキャバレーに勤める男性が右往左往する話なんです。歌姫は40代の色気のある女性で、舞台には登場しないのですが、彼女の湧き立つような匂いをお客さん感じてもらいたい。それには8人の、このおじさんたちに(笑)、どう演じてもらったらいいかということを考えました。おじさんたちも40過ぎで、歌姫に恋している人もいれば、憧れている人もいたり、歌姫と何かあった人もいたり、それぞれの姫子に対する思いがあるんです。ある意味、恋ですね。だから「40代や50代の恋する大人たちへ」という言葉が副題になっています。大人になっても恋をするのに、素直になれなかったり、恥ずかしくて何もできなかったり、隠さなければいけない恋もある。だから恋する大人たちにも観てもらいたい作品です。
──ロマンチックですね。
佐藤 そうなんですが、演じているのがおじさんたちばかりで。
山野 そのおじさんの顔がゴツゴツしているから、ゴツプロ!なんで(笑)。
佐藤 ゴツゴツしているのは僕以外ですよ。
山野 いやいや、みんなでしょ(笑)。
──話していると、皆さん優しくて柔らかいです。
山野 そうなんです。純粋なんです。見かけはおじさんですけど、少年のような心を持っている人ばかりです。
──皆さん、それぞれどんな役柄なのですか?
塚原 僕の役は、姫子と恋に落ちたけど、結婚はしなかったんです。妻と子供を戦争中に目の前で亡くしたトラウマがあって、姫子とは一線を越えることができずにいるけれどそばに置いておきたい。だから姫子をキャバレーで歌わせる。でもそれが自分への痛みにつながって、最終的には、自分のエゴを押しつけたことで、彼女は大変な状況になっていきます。
佐藤 僕はあることで記憶を失っていた男の役です。つまり8人の中では唯一、彼女に対する想いがない役なんです。それが話の中でどう転んでいくのかが見どころです。僕だけ彼女への気持ちが自分でわからない。一番ぼんやりしている役かもしれないです。
山野 でもこのキャラクターが一番の核なんです。
──難しい役どころですね。
佐藤 なんか、いつもそうなんですよねえ。
山野 (笑)。
浜谷 僕は姫子の弟です。青年期にある事件で一家離散してしまう。それで姫子に対して何もしてあげられなかったという後悔があって、それとちょっとした恋心のような姉への憧れがあります。そして、20年ぶりに再会するけれど…という役です。
山野 そして、今回は歌にも注目していただきたいと思っていて。テレビ朝日の『熱闘甲子園』で「明日への卒業」というオープニング・テーマを書かれた石川よしひろさんが、キャバレーのコーラス・グループのために作詞・作曲してくださった歌があるんです。その歌から、歌姫の姫子をどう想像して感じ取っていただくか、そこも今回のテーマになっています。
 
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余韻と一緒に劇場から帰っていただけたら

──これからのゴツプロ!の目標は?
塚原 動員1万人ですね。2018年1月には本多劇場が決まっているので、本多で1週間の公演を次は2週間、3週間、2021年には1カ月公演をすれば1万人になります。1万人を集めることが出来たら、また、違う世界がみえるのかと。大丈夫です。僕らならできます。
山野 海外も行くんでしょ?
塚原 海外公演もやります!
──最後にこの公演への意気込みを。
塚原 この8人の色気を感じて欲しいですね。
佐藤 舞台上で、生きてるリアルなおじさんの姿をお見せしたい。
浜谷 舞台には現れない姫子を感じていただきたいので、そこへ向かって誠心誠意突っ走るだけです。
山野 お客様に、舞台を観た後に美味しいビールを飲んで欲しいと思っているんです。一緒に観たお友達とこのお話が続きはどんなふうになるのか、どんな生活になるんだとか、新橋の立ち飲み屋で話すように会話してくれたら。カッコよかったねとか、面白かったね、だけでもいいので、余韻と一緒に劇場から帰っていただけたら嬉しいです。ぜひいらしてください。
 
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山野海(前列)、佐藤正和、浜谷康幸、塚原大助(後列)
 
つかはらだいすけ○東京都出身。2005年に新宿紀伊国屋ホールにて上演された、44 Produce Unit『フツーの生活 長崎編』 にて山野海と共演。それをきっかけに、ふくふくやの劇団員となる。それから10年の時を経て、2016年にゴツプロ!を旗揚げ、主宰を務める。代表的な舞台に『フツーの生活』『贋・四谷怪談』、映画『RETURN』、ドラマ『龍馬伝』などがある。
  
さとうまさかず○福岡県出身。福田雄一主宰のブラボーカンパニー所属。ゴツプロ!旗揚げメンバー。主な出演舞台に『天晴パラダイス青信号〜ゴールドフィンガー』『明烏~akegarasu~』など。映画は『HK/変態仮面』(福田雄一監督)、ドラマは『勇者ヨシヒコと魔王の城』など多数の作品に出演。
 
はまややすゆき○東京都出身。2011年『ずんばらりん。』で劇団ふくふくやに初参加。2015年ふくふくや劇団員として入団。ゴツプロ!創設メンバー。主な出演舞台に『カランのコロン』『愛の賛歌』『日の本一の大悪党』など。映画『哭きの竜』『ろくでなしブルース2』、ドラマは『八重の桜』『シングルマザーズ』などに出演。

やまのうみ○東京都出身。女優、劇作家、脚本家。1999年に劇団ふくふくやを立ち上げ、主宰をつとめる。女優としても全公演に出演し、ドラマ『救命病棟24時』やNHK大河ドラマ『八重の桜』などに出演。また、竹田新の名義で脚本家として活躍、小泉今日子の初演出作品、安田顕主演『日の本一の大悪党』(2016年)の脚本も手がける。ゴツプロ第1回公演『最高のおもてなし!』(2016年)で演出家デビューを果たす。
 

〈公演情報〉
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第27回下北沢演劇祭参加作品
ゴツプロ! 第2回公演『キャバレーの男たち』
脚本◇竹田新
演出◇山野海
挿入歌◇石川よしひろ
出演◇塚原大助、佐藤正和、浜谷康幸、泉知束、かなやす慶行、中下元貴、渡邊聡、44北川
●2017/1/26〜2/6◎下北沢駅前劇場
〈料金〉前売4,000円 当日4,500円 ゴツ割!3,500円(全席指定・税込)
〈お問い合せ〉070-6562-4480(11:00〜19:00 日曜休)
 

【取材・文・撮影/竹下力】



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