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エッジィで知的な数々の作品を輩出してきたニューヨークのオフ・ブロードウェイで、で2005年のベストに輝いたロック&ダンス・ミュージカル『ALTAR BOYZ』が、東京・新宿FACEで上演中だ。フレッシュなメンバーと振付で初日を飾ったTeamGOLDの公演に続いて、6日から日本初演メンバーが集結したTeamLEGACYの公演も幕を開け、2チームを続けて鑑賞することもできる、豪華な公演が今乗りに乗っている(16日まで東京・新宿FACE、2月18日大阪・森ノ宮ピロティホール〈TeamLEGACYの出演〉、更にTeamLEGACY×TeamGOLDによる合同スペシャル公演が、2月24日〜2月26日東京・品川プリンス・ステラボールで上演)。

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神と司祭に使える美しき5人の使徒たちがボーイバンド(ダンスボーカルグループ)を結成し、福音の歌とダンスで愛を説き、観客たちの魂を救うという設定の舞台は、人種差別、移民差別、ゲイ差別など、時代の難問を知的な比喩に変えて、2時間を駆け抜ける。日本では、2009年東京・大阪・名古屋で初演。作品ファンも増え、今回、5回目の公演を迎えているが、中でもTeamLEGACYは、ルーク役の森新吾の加入を除いて、日本初演メンバーが集まった、文字通り日本の『ALTAR BOYZ』の歴史の遺産と言って良い陣容。やはりSONG×DANCE×ACTで展開されるノンストップのステージの上に、メンバー1人1人の個性、スター性が煌めいているのが大きな魅力となっている。

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【STORY】

アルターボーイズとは、神に仕える美しき5人の男子=使徒たち、MATTHEW(東山義久)JUAN(植木豪)、MARK(中河内雅貴)、LUKE(森新吾)、ABRAHAM(良知真次)が結成しているボーイバンド(ダンスボーカルグループ)。彼らは、福音の歌とダンスで愛を説き、観客たちの魂を救うことを使命として、世界中でライブ活動を続けている。時あたかも、2017年世界ツアーの日本ファイナル公演。アルターボーイズたちは、会場に集った悩める観客たちの魂を浄化する為に、渾身の歌とダンス、更には個々の「悩み相談」にも応じ、観客全員の魂を救うために奮闘する。だが、これまで世界中で行って来たライブでは、思いもよらなかった「救われぬ魂」の存在が、メンバーたちを困惑させていき……。

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舞台に接して感じるのは、全体に貫かれている宗教に基づいた展開だ。元々アルターボーイズのメンバーたちの名前も、聖書で深い馴染みのある使徒たちから取られていて、教会に行くことを説き、神と対話する彼らの中に、ユダヤ人であるABRAHAMが混じっていることが意味するものなど、基本的にキリスト教国とは言えない日本で上演するには、ある意味でハードルの高い作品であるのは事実だと思う。

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けれども、そんな作品が長きに渡り愛され、上演が続いてきた背景には、たたみかけるサウンドに乗って歌い、踊りまくる理屈抜きのライブとしての醍醐味を作品が持っていたことと共に、知的でウイットに富んだ会話の中に、国や宗教人種の違いを越えて通じる、普遍的なテーマが盛り込まれていることがあるのは間違いない。特に「人を差別してはいけない」とか、「互いの政治思想、宗教、嗜好等を尊重し、多様性を認め合う」とか、大人であれば当然わかっていると思っていたあれこれが、軋みを見せている今の時代の空気に、ダイレクトに響くメッセージがあることに、改めて目を瞠る。

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仮に自分と異なる他者に対して、心の奥に違和感を持っていたとしても、それを大上段に振りかざすことは慎むといった礼節が失われ、自分さえよければ良いという赤子の本能のような雄たけびが、喝采を集めさえしている、確実に恐ろしい方向に世界が動こうとしている今だからこそ、この作品が訴えている人種差別、移民差別、ゲイ差別などを乗り越えようとする力には絶大なものがあった。
本当なら、こんな問題提起をしなければならない時代があったのだね、と言えていればどんなに良かったかと思う作品のテーマが、ここまで真に迫るのには忸怩たる思いも抱くが、その一方でロック&ダンス・ミュージカル『ALTAR BOYZ』が上演を重ねてくれている意義を感じずにはいられない。あくまでもエンターティメントの中で、ありのままの他者を認め合うことの尊さを訴えてくる作品は、あまりにも貴重だ。

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そんな作品を日本のエンターテイメントに根付かせた功労者たちが、今回の「TeamLEGACYに」集っている。リーダーMATTHEWを演じる東山義久は、自身も「DIAMOND☆DOGS」のリーダーであり、1舞台人としても敢えて道なき道を切り拓き、様々な挑戦を続けている存在であることが、このMATTHEW役に見事に投影されている。元々踊れて歌えて芝居ができないと成立しないSONG×DANCE×ACTライブである作品を、ここまで成長させ、牽引してきた東山の力は大きい。何よりも彼自身が成長し続けていることが、作品を更に引きあげていて、今回の上演で『ALTAR BOYZ』からの卒業を発表したのは、東山らしい姿勢でありながらも、やはり寂しいことだ。

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同じく今回の上演での卒業を発表しているJUANの植木豪は、スペイン訛りを、大阪弁に変換したウィットにあふれる役柄を飄々とした風情で演じている。ドラマ展開の中で、大きく感情を振幅させる役柄でもあるが、その姿にも愛らしさが漂うのは、本人のキャラクターと役柄がフィットしているからこそだろう。もちろん植木が出るからにはの、鮮やかなブレイクダンスも健在で、目を引き付けた。

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MARKの中河内雅貴は、このところしっかりした兄貴分的な役柄に回っている姿をよく観ていただけに、ゲイであるが為に壮絶ないじめを受けてきた過去を持つ役柄を繊細に見せているのが、改めて新鮮だった。MARKは作品の中に登場する様々な課題の中でも、特に今日性の高いLGBTの問題を担っている役でもあるから、中河内のように個性がクリアに立っている人材が演じることの効果は、やはり大きなものがある。

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LUKEの森新吾は、この数年振付だけでなく演出にも才能を発揮していて、全体を俯瞰する術と、柔和な語り口とを備えた存在だが、ひと度役者として舞台に身を置いた時に放つ、どこか尖った攻撃性が、この舞台にも生きている。出自はダンスの人と言って間違いないと思うが、歌唱力もいつの間にか大きく躍進していて、あっという間に感情が振りきれる役柄の危険な香りと、誇張された面白さを巧みに表現していた。

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ABRAHAMの良知真次は、大作ミュージカルにも数多く出演を重ねている貴重なミュージカル俳優の1人だが、確かな演技力はもちろん、歌っても踊っても「魅せる」ことのできる力量を、メンバーの中で唯一ユダヤ人であるからこそ、仲間を信じようとするどこか朴訥な役柄に、きちんと落とし込んでいることに感心させられる。終幕のソロも胸に迫り、やはり日本版『ALTAR BOYZ』には欠かせない人材だ。

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特に、この「TeamLEGACY」の出演メンバーそれぞれが、作品の日本初演以来の年月に培ってきた蓄積が、演出の玉野和紀の、永遠の少年と呼びたい遊び心もふんだんに盛り込まれた日本版『ALTAR BOYZ』を、更に大きくしていることは明白で、スターが演じる『ALTAR BOYZ』として、ライブ感満載のステージを輝かせていたのが印象的だった。フレッシュな勢いとスピード感に満ちた「TeamGOLD」、そしてキャラクターの味わい深い「TeamLEGACY」、両者を見比べる妙味の高い公演となっている。

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※TeamGOLDの記事はこちら
http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52018871.html


〈公演情報〉
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BEST OF OFF BROADWAY MUSICAL
『ALTAR BOYZ』
作◇ケビン・デル・アギラ
作詞・作曲◇ゲイリー・アドラー マイケル・パトリック・ウォーカー
演出◇玉野和紀
出演◇
「TeamLEGACY」東山義久 植木豪 中河内雅貴 森新吾 良知真次
「TeamGOLD」大山真志 法月康平 松浦司 常川藍里 石川新太
●2/3〜16◎新宿FACE
〈料金〉「TeamLEGACY」8,500円 (全席指定・税込 ※会場にて1ドリンク代500円別途必要)
〈料金〉「TeamGOLD」7,000円 (全席指定・税込 ※会場にて1ドリンク代500円別途必要)
 プレビュー公演 6,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードー東京 0570-550-799 (11時〜18時)
●2/18◎森ノ宮ピロティホール ※「TeamLEGACY」キャスト
〈料金〉8,800円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888(10時〜18時)
●2/24日〜2/26日◎東京・品川プリンス・ステラボール(TeamLEGACY×TeamGOLDによる合同スペシャル公演)
〈料金〉8,800円 (全席指定・税込 ※会場にて1ドリンク代500円別途必要)
〈お問い合わせ〉キョードー東京 0570-550-799 (11時〜18時)



【取材・文・撮影/橘涼香】




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