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近代演劇の先駆者と称されるスウェーデンの劇作家ストリンドベリ。日本でも多くの演劇集団によってこれまで数々の作品が上演されてきた。そんな作家の二大傑作、『令嬢ジュリー』と『死の舞踏』が、Bunkamuraシアターコクーン内に特設される2つの小劇場で、気鋭の演出家小川絵梨子の演出により、連日交互上演されることになった。(3/10より4/1まで。)
この極めて刺激的な試みの一翼を担って『令嬢ジュリー』の下男ジャン役を演じるのが城田優。ミュージカル界で多くの実績を積み上げてきた彼が、本格的なストレートプレイの舞台にどう取り組むのか。期待と意気込みを聞いたえんぶ2月号の記事を、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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小川演出の魅力とスタッフの言葉が背中を押してくれた

──今回、本格的なストレートプレイへの挑戦に、この『令嬢ジュリー』を選んだ決め手は?
これまでもストレートプレイのオファーはたくさん頂いていたのですが、歌うのが好きということもあって、どうしてもミュージカルの方に気持ちが行っていた部分がありました。でも今回、この『令嬢ジュリー』のお話を頂いた時に、長く信頼している事務所のスタッフ陣が「これは貴方にピッタリだから、是非やるべきだ」と強く推してくれたんです。そういう客観的なプロデュース目線の判断は、いつも信じているんです。更に小川絵梨子さんが演出をされると伺って、僕自身小川さんが演出された作品は何本も拝見させて頂いていて、素晴らしい才能をお持ちの前途洋洋たる演出家さんだと注目していたし、いつかご一緒してみたいという思いをずっと持っていましたから、その2つで出演を決めさせて頂きました。
──小川演出のどういう点に魅力を感じていたのですか?
例えば難解な物語であっても、小川さんの演出によって感覚的に理解できるんです。彼女が創り出す世界観や、独特のセンスがとても好きです。何よりも舞台の上の人物の感情をリアルに見せながら、洗練された空間に仕上げる方なので、客席から観ていてとても興味を惹かれる演出家さんでした。今回一緒に作る側に回ることでどんな発見があるのか、特に役者が納得できるようにディスカッションを重ねながら稽古を進めてくださる方だと聞いているので、ストレートプレイ1年生みたいな僕としては(笑)心強いので、すべてをさらけ出して飛び込んでいこうと思っています。

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──『令嬢ジュリー』という作品について、今感じているのはどんなことですか?
1880年代の貴族と平民という階級社会の中の物語なので、今の時代の日本に生きる僕がリアルに感じようとすると、初めは難しかったです。でも小川さんが手がけられた上演台本を読んでみたら、とてもわかりやすい平易な言葉で、気持ちで話せる台詞になっていたので、まず安心しました。とはいっても3人芝居の中で僕の演じるジャンはほぼ出ずっぱりですし、台詞量も膨大なので、課題は山積みですが、想像していたより何倍も話しやすい言葉になっているので、良かった!と思っています。
──ジャンという役柄に共感するところは?
ジャンは下から這い上がる立場の人間で、いつか実業家になって上に立つ人間になるという話をジュリーにする。たぶん自分はそうなれるという自負と熱い思いを抱いているんだと思うんです。そこは芸能界に入ったばかりの頃の自分に重なりますね。当時は僕のことを誰も知らなかったし、思うように仕事も決まらなかったのですが、でも絶対に上に行く、やりたいことができるように必ずなる!という諦めない心を持っていたので、上に向かおうとする姿勢、ジャンの野心には共通するものを感じます。僕自身は今振り返ると、当時抱いていた夢はほぼ叶えられていて、それは自分でもすごいことだと思うし、だからこそ今は上に行きたいという思いより、質を高めたいという方向に視野が広がっているのですが。そんなふうに自分の経験をジャンの言葉に重ねながら、説得力のある役作りができたらいいなと思っています。

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演出を経験したことで演者としての視野も広がった

──今回、『令嬢ジュリー』と同時に『死の舞踏』も上演されるという珍しい形態ですが。
とても興味深いですよね。シアターコクーンという由緒ある劇場の中に、2つの劇空間を作って、同じ作者の違う作品を1人の演出家で交互上演する。まず客席の半分以上をつぶして舞台面を2つ作ることが、興行としてどれほど難しいかを考えると、制作側の覚悟のすさまじさと勇気を感じます。そういう意味でとてもエンターテイメント性が高いですし、客席の設計図を見ただけで驚きを感じる試みです。全く違う物語ですが、やはりこうして上演するからには、何らかの影響を互いにもたらすと思いますし、小川さんも2つの作品は実はリンクしているとおっしゃっているので、お客様には『令嬢ジュリー』だけでなく『死の舞踏』もご覧頂いて、この新しい試みから何かを感じ取って頂きたいです。
──昨年『THE APPLE TREE』で演出家としてもデビューしたことで、演劇の観方や演じ方に変化はありましたか?
大きく変わりました。これまでプレイヤーだった時には全く気づいていなかったセットや照明、衣装に対しても興味が広がりましたし、スタッフ、キャスト全員を引っ張っていかなければならない立場を経験したことによって、演じる側に戻っても演出家の大変さがわかるようになりました。特に『THE APPLE TREE』が3つの時代の異なる物語から出来ているオムニバス形式だったので、デビュー作にして貴重な経験が出来たのは幸いでしたし、今回同じ作家の違う作品を2作同時に創る小川さんの大変さも想像できる気がします。だからこそ、自分にとって初挑戦ともいえるストレートプレイ『令嬢ジュリー』に懸命に取り組んで、千穐楽の幕が降りた時に、自分なりにステップアップできたと思えるような舞台にしていきたいですね。

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しろたゆう○東京都出身。03年俳優デビュー。ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍中。10年ミュージカル『エリザベート』のトート役で第65回文化庁芸術祭演劇部門新人賞を受賞し、15年、5年ぶりに務めた同作品の同役で、第23回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。また岩谷時子奨励賞も受賞するなど絶賛を浴び、16年の4都市上演も好評を博した。近年の主な舞台は『スウィニー・トッド』『テイクフライト』『ロミオ&ジュリエット』『ファントム』『The Love Bugs』、また『THE APPLE TREE』で演出家デビューも果たし、更に活躍の幅を広げている。
 
〈公演情報〉
シス・カンパニー
『令嬢ジュリー』
作◇A・ストリンドベリ
演出・上演台本◇小川絵梨子
出演◇小野ゆり子 城田優 伊勢佳世
『死の舞踏』
作◇A・ストリンドベリ
翻案◇コナー・マクファーソン
演出・翻訳◇小川絵梨子
出演◇池田成志 神野三鈴 音尾琢真
3/10〜4/1◎Bunkamuraシアターコクーン
〈お問い合わせ〉シス・カンパニー 03-5423-5906
〈公式サイト〉http://www.siscompany.com



【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】



ユナク(超新星)、ソンジェ(超新星)、イ・ジフン出演。韓国ミュージカル『INTERVIEW』




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