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フランス、マルセーユの港町を舞台に、そこで暮らすおおらかな人々と、そこに生まれた若者の苦悩を描いたフランスの国民的喜劇の傑作が、山田洋次脚本・演出、今井翼主演の音楽劇『マリウス』として、3月6日から日比谷の日生劇場で上演される(27日まで)

フランスの人気作家マルセル・パニョルによる戯曲、『マリウス』『ファニー』『セザール』は、マルセーユ三部作と呼ばれる、フランスの国民的な古典喜劇。マルセーユ独特の陽気でのんびりと生きている市井の人々と、若者の恋と苦悩を港町の風情の中コメディタッチで描いた作品は、かつてコメディフランセーズでの上演が大ヒットとなり、長くロングランが続けら、映画化もされ今なお愛され続けている。
 
このフランスの古典喜劇を創作の源と呼ぶのは山田洋次監督。『男はつらいよ』シリーズ、『幸福の黄色いハンカチ』『息子』『学校』『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』『武士の一分』『母べえ』『小さいおうち』など、数限りない傑作を世に送り出してきた名監督である。彼にとってこの戯曲は、舞台を日本に移した映画『愛の讃歌』(1967年・倍賞千恵子主演)や、『男はつらいよ』寅さんシリーズの原点となるなど、その創作活動に影響を与え続けてきた。
 
そんな作品が、満を持して山田洋次脚本・演出、今井翼主演の音楽劇『マリウス』として、日生劇場の舞台に登場することとなった。その製作発表記者会見が1月に行われ、山田洋次監督、安孫子正松竹株式会社副社長・演劇本部長、出演者を代表して主演の今井翼、瀧本美織、柄本明、林家正蔵が登壇。公演への抱負を語った。

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【登壇者挨拶】

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安孫子正
 今日はお寒い中ありがとうございます。日生劇場で3月に音楽劇『マリウス』という芝居を上演させて頂くことになりました。『マリウス』には演出の山田監督に大変な思い入れがおありと聞いておりますので、それは後程監督からお話頂くとしまして、『マリウス』の上演に際してはここにいらっしゃる素敵な俳優さんたちに出演して頂くことになりました。主演のマリウスの今井翼さんの多方面での大活躍は皆さんご存知のことと思いますが、私共松竹の芝居にも数多く出て頂いておりまして、その中でも山田監督の演出作品では『さらば八月の大地』で、新橋演舞場に出演して頂いております。また相手役のファニーには瀧本美織さんにご出演頂きますが、彼女も昨年演舞場の『狸御殿』に出て頂いて、本当に明るく素晴らしい舞台を見せて頂き、私共の身内のような感じでございます。更に柄本明さんは亡くなった勘三郎さんとの『浅草パラダイス』をはじめ、数多くの素晴らしい作品を一緒に作ってきて、戦友のような気持ちでおります。林家正蔵さんは、松竹の舞台はおそらく初めてでございますが、山田監督の映画にはなくてはならない常連の方と言うことで、これから上映される『家族はつらいよ』にもご出演頂いている、本当に素晴らしい俳優さんによって、フランスのマルセーユの港町で暮らす人々の物語『マリウス』を日生劇場でどのように作り上げて頂けるか、私も非常に興味を持っているところでございます。是非この公演が素晴らしい成果をあげますように、皆様にもお力添え頂きたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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山田洋次 皆さん今日はよくいらしてくださいました。昔の話になりますが、僕らが映画を志ざした頃はリアリズムの時代で、社会主義的なリアリズムが世界中を席巻していて、僕たち映画人もリアリズムに憧れていました。でもそんな時代にあってもずっと僕の中に脈々と流れていたのは、学生時代に読んだマルセル・バニョルのマルセーユ三部作だったんです。この楽しい陽気な世界が故郷のように僕の中にずっとあって、渥美清さんを主役にしてこのドラマを作りたいという提案をして、はじめはテレビドラマのシリーズとして、僕が脚本を書いたのですが、その時に僕は渥美清さんだったらセザールだなと思いました。そして可愛い妹がファニーで、その恋人がマリウス、それがさくらと博になり、そこを核としてドラマを作っていけばいいのではないか?ということから「寅さんシリーズ」がスタートした訳なんです。そういう意味で僕にとってはとても忘れられない、奥の深い、深い鉱脈のような世界が、このマルセーユ三部作なんです。それから長い間僕は「マルセーユ三部作が芝居になれば良いんだが」と提案し、話してきて、それがこういう形で実現することになって、セザール、マリウス、ファニーそれぞれに素晴らしい俳優さんを得て、正蔵さんの役もこのトライアングルの4番目になるようなとても大事な役で、寅さんで言えばタコ社長のような役です、絶対にいなければならない役です。そういう人たちでこの芝居がやれるというのは、50数年前にワクワクしながら読んでいた世界を日本で上演できる、僕は今夢を見ているような気持ちです。「寅さん」では結局さくらと博は結ばれる訳で、それに寅さんも納得してホッとするんだけれども、マリウスとファニーは結ばれないので、セザールとしては悲しい結果で終わる。そういう意味でこの芝居は寅さんよりも、もっと苦い味わいがある。その苦みをどうやって明るい笑いで包むか、というところが勝負ではないかと思います。楽しくて笑い転げながらこの苦い味わいも感じて劇場を後にできるような芝居になったらいいなと思います。どうぞよろしくお願いします。

今井翼 皆様本日はお集りくださりありがとうございます。マリウスを演じます今井翼です。まずはじめにこうして再び山田監督のもとで芝居ができることを心より感謝しております。ありがとうございます。監督もおっしゃっていたように、監督が様々な作品を創作して来た中で故郷と言い表すこの作品を、今こうして自分が演じられることにただただ感謝しております。僕にとって監督というのは芝居の根幹から、僕の人生においてもとっても重要なことを教えてくださる、勝手ながらに僕は監督のことを恩師だと思っています。その恩師から『さらば八月の大地』の際に、芝居の楽しさ、更にその楽しさの向こうにある自分自身が具体的に向き合い、乗り越えるべき課題を教えて頂きまして、まさに今回の時間もそうなのですが、僕にとっては目の覚めるような時間を頂きました。芝居の魅力を改めて教えてくださったのが山田監督です。これほど素敵で素晴らしい役者の方々に囲まれて、また素晴らしいスタッフの方々のバックアップを頂ける、僕自身これまでジャニーズ事務所に入って色々な経験をさせて頂きましたけれども、改めてこれほど恵まれた環境で仕事が出来ることに心より感謝しています。松竹さんからはこの話すタイミングで、思いの丈を話してくださいと言われましたので、悔いなく話したいので(笑)もう少し思いをお話させて頂きます。今回は作品から派生した歌と踊りもあり、もちろん芝居というところが核になってくるのですが、(歌や踊りの)そういった部分ではこれまで自分が培ってきたものを活かし、芝居という部分では自分自身はまだまだ未熟だと思っていますので、だからこそこの作品としっかりと向き合って、この作品が持つ切なくも温かな人情喜劇というものを皆様には客席でお楽しみ頂き、尚且つ後に余韻としても味わって頂けるような作品にして行きたいと思っています。もうちょっと話したいので(笑)、すみません何度も言うようですけれども、僕はまだまだ役者として未熟でこうやって真ん中に立たせて頂くというのが、僕自身こそ信じられないありがたい話です。自分自身を客観視すれば、芝居をする上で真ん中に立つような肌ではないと思っておりましたが、ありがたいことに監督からこういった最高のチャンスを頂きましたので、僕は皆さんの胸をお借りして自分の新たな道のスタートとしてまずは一皮剥けられるように、覚悟して一生懸命挑みたいと思っております。それが僕の思いの丈です!皆様どうもありがとうございました。

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瀧本美織 
皆様こんにちは。今日はこんなにたくさんの方にお集り頂きまして本当に嬉しく思っています。ありがとうございます。こんなに素晴らしいお話を頂いたことに恐縮しています。本当に今ここにいることが信じられないです。素晴らしい監督、キャストの方々、このような環境に身を置くことができて本当に光栄だと思っています。台本を読んですごく切なくてもどかしい、大人でさえも可愛らしく見えてくる登場人物、その愛くるしさですとか、思い通りにならない切なさの中で愛ある決断をしていったりですとか、マリウスとファニーの愛ももちろんなのですが、親子の愛情だったりなど、色々な愛の形を楽しんで頂ける作品になるんじゃないかなと思っています。本当に120%、200%の力を出して、情熱をぶつけていきたいと思います。思いの丈でした(会場笑い)。

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柄本明
 セザールをやらせて頂きます柄本です。思いの丈ということなのですが、思いの丈ということは?と今ずっと考えていたのですが(笑)、山田監督とは映画をいくつかさせて頂いておりまして、また山田門下生になって頑張りたいと思います。稽古の過程で思いの丈を膨らませて、なんとか劇場で思いの丈を発散できればなと思っております。どうぞよろしくお願い致します。

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林家正蔵
 パニス役の林家正蔵です。どうぞよろしくお願い致します。思いの丈を話させて頂きます(笑)。監督の映画に出させて頂いて、その休憩時間に『マリウス』の話は、本当にたくさん山のように伺いました。作品に対する監督の思いの深さ、監督が求めている美しいもの、楽しいもの、面白いものがすべてこの作品に詰まっていると言われました。ですから本当にこの舞台に出られるのが夢のようでございます。5月に公開される『家族はつらいよ2』に出演している橋爪功さんはじめ皆さんにお会いした時に、この舞台に出ることを申し上げましたら、橋爪さんが「羨ましいな!役者として監督の演出で『マリウス』に出ることは大変な名誉だと正蔵君、わかった方がいいんじゃないか」と言われて「あぁそうなんだ」と思いました。そして「他に誰が出るの?」と訊かれましたので「柄本さんが」と言いましたら「柄本さんには気をつけろ」と(笑)、こういう風に言われました。一昨日夏川結衣さんからも電話がかかってきました。夏川さんからは「監督が本当に大切にしている作品なんだから、正蔵さん『家族はつらいよ』から出るのはあなただけなんだから、命がけでパリスという役をやってくださいね」という言葉を頂きました。そして妻夫木聡君からも「頑張ってください、応援しています!」という熱いメッセージを頂きました。ただ蒼井優ちゃんだけ「頑張ってね!」とケラケラ笑っていました(爆笑)。そんなことで、よろしいでしょうか(笑)。本当に一生懸命やります。台詞もたくさんあります。今から大変です。大役なので柄本さんどうぞよろしくお願い致します。


【質疑応答】

──山田監督、主要キャストの皆様の配役をどのようにして決められたのでしょうか?
山田 キャスティングという仕事は監督、演出家の仕事の中でもかなり大事な仕事で、3分の1以上のエネルギーと才能が費やされるのではないかと思います。逆に言えば良い脚本があって、良いキャスティングができればその作品の成功はほぼ約束されていると言っても過言ではないような気がします。そういう意味でとっても考えながら、苦労しながら、準備しながら選び抜いた人たちで、皆さん相当に芸達者な人たちでありますから、この人たちを生かすアンサンブルはきっと素晴らしい、美しいものになるに違いないと確信しています。役のイメージと俳優さんのイメージ、もちろん俳優さんのスケジュールもありますから、そんなことの中で選び取っていった考えられる限りの1番良い俳優さんを選べたと思っております。

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──山田監督、この作品には学生時代に出会い、寅さんシリーズが生まれるきっかけにもなったとのこと
ですが、今回改めて音楽劇として挑戦されようと思ったきっかけは? 
山田 長い間、何十年も僕の中では故郷のように帰っていく作品であり続けた訳ですから、日本でも戦後何度も舞台化されていて、僕はそれは観ておりませんが、この作品を舞台にするのだったらこういう方法が良いのではないか?というようなことはずっと思っていた訳です。僕は映画監督でしたからなかなかそんな機会はありませんでしたけれども、僕の中ではずっといつか舞台にできたらいいなと思っていました。それが2013年に『さらば八月の大地』で、僕は初めてと言ってもいい、大きな劇場での舞台の演出をやって、映画の演出も舞台の演出も1番芯のところではあまり変わらないんだなと思ったりしたこともあったので、またこんな仕事があったら、と思っていた時に、この『マリウス』に至った訳です。何かドラマチックなきっかけがあって、ということではなかったのですが、プロデューサーの人たちにも演劇部の人たちにも、『マリウス』の話はしていたものですから、それがだんだん盛り上がっていって、やろうじゃないかということになったということです。
──今井さん、恩師である山田監督にこの場をお借りしてお伺いしておきたいことはありますか?
今井 それはこれから本稽古に入る訳ですから、そこで自分が抱く疑問、それ以上に監督から教われることと言うのをこれから楽しみにしています。前回勘九郎君とご一緒した『さらば八月の大地』で、稽古の前、こういった会見の場に挑む前に、監督から演じる上で、どう考え、なぜ動くか、といったとってもシンプルなようで非常に奥の深い指導を頂けたことが、僕はすごくありがたいと思っていますので、またこれから自分が覚悟をもって挑ませて頂く稽古の中で、色々と教わることができたらと思っています。
──今の時点で演じられる役の人物像と、大切にしたいところを教えてください。
今井 繰り返すようなのですが、これは現場に入らないとわからない点があると思います。その中で自分の準備として、それは準備にしか過ぎないという考えもあるのですが、僕はせっかくこれだけの機会を頂いたものですから、昨年末に1人でマルセーユに行って来まして、日本を発つ前に監督とコンパクトな打ち合わせを行った際に頂いたお言葉を持って、パリからマルセーユに向かっていく列車の中で考えたことと、それからマルセーユでマリウスという気持ちを重ね合わせて過ごした時間から、今度はマルセーユを背にパリに戻る時というのは、何か不思議な、その地に行かなければ抱けなかった思いが抱けたような気がしたんです。それとこれも1つの勉強として、当時のフランス映画『マリウス』もそうですし、監督がこの作品を山口県に移して描かれた映画『愛の讃歌』も観ておりまして、そういったところからこの作品の持つテーマ、とてもピュアな中にもじわっとくる温かさとかを、自分の中で解釈して、でも1番はやっぱり現場に入って、監督から具体的に頂く言葉と、皆さんとご一緒するところで見つけることができればと思っています。

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瀧本
 やっぱりこれから動きの中で変わっていく、感情が変化していくところもとてもあると思うのですが、ファニーはとても快活でマリウスとのやりとりの中で、マリウスより年下なのですけれども、ちょっと上と言いますか、やはり女性の方が精神年齢って上に見られたりしますでしょう?そういう感じがすごく出ていて、マリウスをからかったりするところが可愛らしいなと思ったり、そうした微笑ましいシーンから、愛する人と離れて行く覚悟をするというのは並大抵のことではないと思うので、そういう覚悟をもって演じられたらいいなと思うのと、芯の強さをいつもブレないように持っていられたらいいなと思っています。
柄本 本を読んで感じたことはもちろんあるのですが、稽古を始まってやはりわからないというところがあるのが1番大切と言いますか、台詞を言ってわからないところが監督の演出のもとでどうなっていくのか。きっとそこから生まれるものがあると思っています。
林家 わからないところだらけでございまして、本当に本を読んでどういう役なんだろうと日々考えているのですが、ただ今日監督から早速ヒントを頂きまして「タコ社長のような」という。タコ社長、タコ社長、と思って臨んでいきたいなと思います。タコ社長(笑)。

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──今回音楽劇ということで、ミュージカルナンバーが何曲くらいあって、どういう傾向の歌なのかと、振付がフラメンコの方ですが、そのあたりどのようになるのかを教えてください。
山田 フラメンコは、僕は翼君のフラメンコを見せて頂いてびっくりしたんです。素晴らしいんですよね。なんでこんなにフラメンコが上手いんだろうと思いましたら、彼がフラメンコという芸術に憧れてスペインに単身留学して、スペイン語を学んでフラメンコを学んだ。そういう一途な情熱というのがあるので、彼にとってフラメンコは特別なんだなと感じた訳です。その翼君を主演にするということで、フラメンコをちょっとでも活かしたいなと思って、フランス、マルセーユの物語で、スペインは近い訳だし、同じ地中海沿岸の国ですから、当然マルセーユにも、特に1930年代のお話なのでジプシーもいるでしょう。街のあちこちにいて踊りを踊って観客からお金を得たこともあったと考えられるし、1930年代の映画を観ると、そういう人たちが登場しているので、ジプシーの踊りに魅せられてマリウスが自分でも先生について踊っている、という設定を考えた訳です。その次に、マリウスが踊るということがあるとすれば、歌うということもあるのではないか、翼君は歌もきちっと歌える訳です。その時に瀧本美織という、やはり歌を的確に歌える人が得られたので、芝居が歌に変わっていくということができれば非常に楽しくなるのではないかと。そんな風なところで、もちろん台本にもここから歌になると書いてありますし、作曲家にもお願いして曲を書いてもらったりもしていますが、これは稽古をする中でまた変えていくことが色々あるのではないかなと思っています。ここからを歌ったみたらどうなるだろうか、ではどんな曲がいいのか、を作曲家にも立ち会ってもらって、一緒になって歌や踊りを創り上げていくことができたら楽しいのではないかなと思いました。そんな訳なので、全編に渡って歌があるものではないので、ミュージカルではないですが、音楽劇というところがちょうど良いのではないかと思って、そういう舞台にしたいと思っています。

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※えんぶ4月号(3/9発売)では、「今井翼・瀧本美織 対談」を掲載します。お楽しみに!


〈公演データ〉
音楽劇『マリウス』
脚本・演出◇山田洋次
原作◇マルセル・バニョル
音楽監督◇長谷川雅大
出演◇今井翼、瀧本美織、綾田俊樹、林家正蔵、柄本明 他
●3/6〜27◎日生劇場
〈料金〉S席12,500円、A席7,500円、B席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489(10時〜18時)
松竹ホームページ http://www.shochiku.co.jp



【取材・文・撮影/橘涼香】





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