DSC_5388

シェイクスピアの『夏の夜の夢』を下敷きにした移動参加型演劇『SAFARING THE NIGHT/サファリング・ザ・ナイト』が、ぴあと舞台芸術集団地下空港によって3月2日から上演中だ。(12日まで。すみだパークスタジオ特設会場にて)
 
舞台芸術集団地下空港は、伊藤靖朗が中心となって活動。「CoRich舞台芸術まつり!」で、2016年春の準グランプリ+制作賞W受賞。また、昨年は『ポセイドンの牙』で紀伊國屋ホールに進出するなど注目の劇団。今回の『SAFARING THE NIGHT/サファリング・ザ・ナイト』は、観客は2種類(オベロンゲート&タイタニアゲート)の入り口のどちらかから入場、見て、歩いて、感じて参加する体験型エンタテイメントになっていて、中心にある1つの大事件に、観客の視点の数だけ新たな物語が生まれる作品とも言える。また、『攻殻機動隊』のVR作品やLADY GAGAのデヴィッド・ボウイのフェイスマッピングで世界を驚愕の渦に巻き込んだ、WOWの浅井宣通が参加し、今まで体験したことのない演劇体験をもたらしてくれるだろう。
 
出演者は、ライサンダー役には、『タガタリススムの、的、な。』、『ポセイドンの牙』に続く3度目の地下空港作品の出演となる人気俳優・原嶋元久、ディミトリアス役には、『十三人の刺客』で鮮烈舞台デビューを飾った庄野崎謙。ハーミア役には出演者オーディションを勝ち抜き抜擢された18歳のフレッシュスター・山下聖菜。そしてヘレナ役は音楽劇『赤い竜と土の旅人』でリイ役を演じた逢沢凛が務める。
さらに地下空港の数々の作品に出演してきた所属俳優・野田孝之輔、映画の話題作に数々出演の俳優・荒木秀行、地下空港4作品連続出演中の個性派俳優・竹岡常吉、演劇集団キャラメルボックスの所属俳優として数々の作品に出演の女優・林貴子などが参加。総勢30名程のビッグカンパニーですみだパークスタジオに特設会場を組んでの上演となる。

【あらすじ】
20**年の近未来、世界は対立する2つの巨大AI(人工知能)企業体・オベロンとタイタニアに支配されつつあった。オベロンは、全権代表シシアスらによって開発され、統合国家システム体として急激に拡大。大規模な防衛オペレーションを行い、世界約90カ国がオベロンにその主権を移譲する。一方、タイタニアは、オベロンの拡大と防衛的侵略に対抗する国連加盟国83カ国によって立ち上げられた。ヒポリタを議長としたタイタニア連盟を形成し、オベロンと激しい戦争を行っている。そして2つのAIが遂に歴史的統合を実現することになり、その記念式典が開かれることに。そこで式典参加の候補者たちが事前に集められるのだが…。

この公演の作・演出を担当する伊藤靖朗、ライサンダー役の原嶋元久、ディミトリアス役の庄野崎謙の3人にインタビューをすることができた。

DSC_5386
庄野崎謙、原嶋元久、伊藤靖朗

観客との関係も楽しめるアトラクション!

──今回は、2つの入り口やアプリの導入、移動型の劇場、WOWの浅井宣通さんの参加など、新しい演劇体験になりそうですね。
伊藤 『SAFARING THE NIGHT/サファリング・ザ・ナイト』の世界観を旅する気持ちで来てもらいたいですね。1つの空間の冒険者になるような気持ちで参加していただけると楽しめる作品だと思います。
原嶋 遊園地などが作り出す空間の雰囲気や空気をリアルに感じられる公演なので、稽古場で稽古しているときから「外にでたい!」というエネルギーに満ちていました。現地でセリフのやりとりをする方がとてもすんなりするし、すみだパークスタジオでしか上演できないものだなという印象があります。
──こういう形の公演ならではの面白さは?
原嶋 会場内で色々な人に会うとことによって、ストーリーが明確になっていくんです。それはお客さんとの関係もそうです。もちろん、会話をしなくてもいい選択肢がありますが、僕は全部会話しようというくらい気合いが入ってます。
伊藤 素晴らしい(笑)。
原嶋 そういうサイドストーリーを楽しみに、お客様が僕らに飛び込んでくるのか、飛び込んでこないのか、そこは自由なので、飛び込んできた時の楽しさを期待しているところです。もちろん、飛び込んでこなかったとしても、お客様と一緒に作っていく面白さがありますね。

DSC_5395
 
庄野 僕は、台本を読ませていただいた時に、まず「アトラクションだな」という印象がありました。その中でお芝居を通してお客様と交わりながら、観客自身で選べるストーリーだなと感じました。入り口も2つ、オベロンゲートとタイタニアゲートがあるので、そこから各々がコースを選んでいく。『SAFARING THE NIGHT/サファリング・ザ・ナイト』の世界を旅するように動いて、またみんなで集まって新しい出来事が起きて、一緒にそれについて考えてストーリーが進んでいくエンターテインメントになっています。お客様に自ら声をかけることもありということで、僕は無視しようかなと(笑)思っていたんですけど、原嶋くんの話を聞いていたらそうはいかなくなりましたね。
伊藤 でも役柄が違うから、スタンスが違ってもいいんだよね。
庄野崎 お客さんとの接点が違うということで、演者それぞれ違う関わり方をすると思うので、そこも楽しみにしていただけたら。
原嶋 僕が「壁ドン」で庄野さんが「顎クイ」とか(笑)。
一同 (笑)。

DSC_5256

『夏の夜の夢』は夜と森は現代に通じる

──シェイクスピアの作品を下敷きにした理由は。
伊藤 『夏の夜の夢』は夜と森が出てくるんです。この作品にとって、夜であることと森であることは重要なんです。夜は朝が来る前の時間で、恐ろしかったり、暗闇が不安だったりする。今、社会全体を見回してみると、私たちは朝に向かっているのか、夜に向かっているのかわからない現状にあるのではないかという想いがあって、不吉な夜に向かわないようにしたいなという願いを込めているんです。それから森は、自分たちがどちらに向かうのかを、お客様自身がサファリの中で探検しながら模索するという、2つの要素を着想として入れています。
原嶋 僕が思ったのは、時代背景は違うけど、恋愛に関しては普遍的なものを感じました。
庄野崎 原作がシェイクスピアならではの面白さも感じていただけると思います。
伊藤 シェイクスピアを読んで面白かったのは、異なる社会的な立場、例えば『ロミオとジュリエット』でいうと、ロミオの見方、ジュリエットの見方、ジュリエットのお母さんの見方は全く違うんです。それに応じたレトリックが展開して、社会観が見えてくる。シェイクスピアはそれを言葉に入れ込んで立体的な社会構造を作り上げた。そういうレトリックを通じて、シェイクスピアがやっていたことが大好きなので、彼の志を受け継ごうと思っています。

DSC_5314

五感で感じて見えないものを見る

──伊藤さんから見て、お二人の印象は。
伊藤 原嶋くんは情熱タイプだな。消えない炎のような情熱を一貫して感じますね。それが強烈なものですね。庄野崎さんはワークショップで何回か一緒にやってるね。
庄野崎 そうですね。
伊藤 よくものを見ている方だなと思いましたね。稽古をやりつつも、しっかりと物事を見定めようとする。そういうところはある意味対照的なタイプなので、演出しがいもあるし、演出家冥利につきますね。
──お二人から見た演出家の伊藤さんは?
原嶋 いい意味でもいろんな意味でも大変な人ですね(笑)。
伊藤 おいおい(笑)。
原嶋 デンジャラス感が楽しいです(笑)。これはできないと決めつけないところが素敵で、できないかなと思ったところも、本当にできた時に、こんなこともできるんだという喜びを発見させてくれる人です。
庄野崎 以前ワークショップを受けさせていただいた時も、今回も、伊藤さんの頭の中は、どうなってるんだろうとすごく思いました。台本は活字のみですから、これをどう具現化させていくのかと思っていたら、しっかりと具現化されている。頭の良い方だと思いますし、稽古でも、気持ちで動くところは気持ちで動くように的確な演出をされているのを肌で感じました。

DSC_5353

──最後にこの作品への意気込みをお願いします。
伊藤 アトラクションに来るような気持ちで来て下さい。それを超える楽しみが待っています。演劇ならではの問いかけも込めた作品ですし、思いきり楽しみつつ、思いきり考えて、俳優とともに同じ世界で生きていることを感じてもらえたらと思います。
原嶋 メインキャスト以外のグループリーダーやパビリオンと呼ばれる人たちにも、役がしっかりとあって、彼らの人生を作っているので、そのドラマも見ていただきたいですね。僕らを含め、カンパニー全体を見て感動してもらいたい。全部を体験してもらいたいです。
庄野崎 絶対に楽しい作品だと思いますし、お客様には五感で感じてもらいたいです。劇場内を移動して、人だけじゃないものを見ます。その全てを目で見て、耳で聞いて、肌で感じて、全身で楽しんでもらいたい。絶対後悔させない公演になると思います。

DSC_5401

 
【プロフィール】
DSC_5301
いとうやすろう○作・演出家。静岡県静岡市葵区出身。1999年、舞台芸術集団『地下空港』を有志で結成。以後、全作品の演出を手がける。2014年、ウェールズ国立劇場日本人新進アーティスト招聘プログラム・Waleslab選抜に合格。渡英し現地にて新作『赤い竜と土の旅人』のためのリサーチ&ディベロップメント&発表を行う。2016年、CoRich舞台芸術まつりで『赤い竜と土の旅人』準グランプリ&制作賞受賞。

DSC_5269
はらしまもとひさ○1993年生まれ、東京都出身。最近の主な舞台作品は『ママと僕たち』『Bank Bang Lesson!!』『不機嫌なモノノケ庵』『レイと天使の住む数字』『今、此処より、明るい夜をこえて』『バイバイ、ブラックバード』など。今後の出演作に『3D欲求』『吾輩は猫である』『ALL OUT!! THE STAGE』などが控える。

DSC_5379
しょうのざきけん○1987年生まれ、福岡県出身。ドラマ『俺の空 刑事編』主役オーディションに応募。2700人の応募者の中から10人のファイナリストに残り、2011年7月10日に行われた最終審査にて主役に選出された。主な出演作品は、ドラマ『俺の空 刑事編』『梅ちゃん先生』『ATARU』『サキ』、映画『劇場版 ATARU THE FIRST LOVE & THE LAST KILL』、舞台『十三人の刺客』など。
 

〈公演情報〉
safa-chiradai
『SAFARING THE NIGHT/サファリング・ザ・ナイト』
作◇W・シェイクスピア
演出◇伊藤靖朗
出演◇原嶋元久 山下聖菜 逢沢凛/野田孝之輔 竹岡常吉 荒木秀行 林貴子(演劇集団キャラメルボックス)/田代絵麻(映像音声出演)庄野崎謙 ほか
●3/2〜12◎すみだパークスタジオ特設会場
〈料金〉オベロンゲート/特典付プレミア7,800円 タイタニアゲート/特典付プレミア 7,800円オベロンゲート/通常5,500円 タイタニアゲート/通常5,500円 (全席指定・税込)
■「オベロンゲート」は、「すみだパークスタジオ内『倉』」集合、「タイタニアゲート」は、「すみだパークスタジオ内『SASAYAギャラリー』」集合
■上演専用スマホアプリ無料ダウンロード中(会場にwifi環境はございません。通信容量、充電にご注意ください。)
iOS iOS8以上のiPhone、Android Android5以上(※iPadなどタブレットを除く)
 


【取材・文・撮影/竹下力】

 




kick 

shop 

nikkan 

engeki