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宮木あや子の小説『野良女』が、佐津川愛美、芹那ら豪華キャストで舞台化され、4月5日〜9日、新宿シアターサンモールで上演される。
宮木は『花宵道中』で第5回R-18文学賞大賞と読者賞を受賞してデビュー。同作品は2014年に実写映画化。宮木作品のメディアミックスからはドラマ『校閲ガール』をはじめ数々のヒット作が誕生し、初めての舞台化が本作となる。

【あらすじ】
結婚?仕事?なんの為に生きている?と常に悩みがつきず、何事をするにも現実が重くのしかかってくる年齢を迎えたアラサー独身女子が、行きつけの小汚い居酒屋で泡盛を飲みながら続けられるガールズトーク。愚痴を言ったり自暴自棄な発言をしながらも、心底にあるのは「幸せになるまで死ねません!」ということ。そんなあがき続ける5人の女性たちの日常と葛藤を描いている。

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今回の舞台化で、オンナのホンネを身体ひとつで演じる女優は5人。数多の映画やドラマに出演し、実力派女優として知られ、最近では舞台『娼年』でも評価を高めた佐津川愛美。バラエティアイドルだけでなく、つかこうへい七回忌追悼特別公演『リング・リング・リング2016』への出演などで本格的な女優へ活躍の場を広げた芹那。実写版『セーラームーン』で主演月野うさぎ役でデビュー。その後、女優・声優・グラビアなど幅広い活躍を続ける沢井美優。新国立演劇研究所卒業生で、ネクストシアター版『ハムレット』など蜷川幸雄演出作品に数多く出演、『頭痛 肩こり 樋口一葉』など栗山民也作品にも出演する深谷美歩。『特捜戦隊デカレンジャー』のピンク役で特撮ヒロインとしてブレイク。ミュージカル『レ・ミゼラブル』や『Endless SHOCK』をはじめ舞台で活躍中の菊地美香。そして、演出の稲葉賀恵の意向により、5人の女性の意中の男性5役を1人の男性キャストで表現するために選ばれた文学座で活躍中の池田倫太朗。実際に出演するというより、トルソー(マネキン)の黒子になったり、影絵で演じたりと、まさに女性陣を影で支える男性を演じる。

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演出の稲葉賀恵は、文学座に所属する気鋭の若手でイプセンの『野鴨』演出でも話題を呼んだ。脚本のオノマリコは「趣向」の主宰で、『THE GAME OF POLYAMORY LIFE』で第61回岸田國士戯曲賞の最終選考にノミネート。稲葉とオノマは2015年に、『解体されゆくアントニンレーモンド建築 旧体育館の話』(シアタートラム)を上演した。音楽には「劇団鹿殺し」に所属するオレノグラフィティを迎えている。そして舞台装置はストリップ劇場をモチーフに、客席に張り出した「花道」の先に、「ベッド」と名付けた直径2mの円形のステージを設置。女性たちの「勝負」の場は「ベッド」で行われることになる。

この舞台の冒頭部分の公開稽古と囲みインタビューが3月24日、都内で行われた。

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オレノグラフィティのアレンジによるモダンジャズ風の胸が踊るような楽曲が流れ、女優陣が優雅にお辞儀をして挨拶をすると、中央から、真っ白いワンピースのような衣装が眩しい鑓水清子役の佐津川愛美が登場。他の女性キャストと同じように流れるように挨拶をするかと思いきや、いきなりマイクを両手にがっしりと掴んで、顔色を強張らせ「25歳を過ぎれば普通に結婚できると思ったのに、こんなに綺麗な自分なのに、なぜ自分は結婚できないのか…」と愚痴り始め、世にいるアラサー女性の悩みを次々に代弁していく。いうなれば「アラサー女子あるある」をシャウトしまくる。美しい音楽と下品すれすれのセリフのギャップがオープニングの見どころとなっている。

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物語は、とある小汚い居酒屋に大学や仲良し5人組がやってくるところか始まる。桶川慶子役の芹那は、29歳で生命保険のセールスをやっている。地方出身で佐藤朝日の大学の同級生で、明るい性格の朝日に少し憧れを抱いている。父親が蒸発しており、貧しい幼少時代を過ごしたせいか根暗である。そのせいもあって性格が明るい男性が苦手で、鑓水の明るい男性の好みが今ひとつ理解できない。しかも、彼氏からDVを受けて、包帯や眼帯をしているが、それはセールストークで同情されると自己弁護してしまう。とかく都合のいい女という役どころで、居酒屋で慎ましく箸でつまみを食べながらお酒を飲む仕草が丁寧だ。
 
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佐藤朝日役の沢井美優は、30歳で鑓水の大学の先輩。実家は資産家のお金持ちで、秘書をしており、大学のときはミスコン3連覇。とにかくモテるのだが、実はバツイチで、おまけに2股をかけている。それでいて、同性から嫌われないという難しい役だが、派手なピンク色のスーツがすらりとした体躯によく似合い、目立つセリフを淀みなく発して元気溌剌、まさに勝ち組と言わんばかりの女性をカッコよく見せる。
 
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横山夏美役の菊地美香は、28歳で鑓水の最初の派遣先の元同僚。北関東の田舎出身。今は、自動車会社の事務で派遣社員である。不倫をしているのだが、相手の男性は、横山以外にも女性がいる浮気し放題のヤリチンだから、皆は「ブリチン」とコードネームで呼んでいる。冒頭のシーンでインパクトを与える役柄で、居酒屋をめちゃくちゃにする勢いで、下ネタやら下品な話やらで、イラつく相手(主に不倫相手)を攻撃していく。だが、それがエキセントリックに見えないのは、誰にでも当てはまりそうな「あるある」を感じるからだろう。アラサーで、派遣社員で、不倫してしまった、どうしようもない彼女の業の中に、年齢や性別を超えて訴えてくるものがあるのだ。
 
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壺井頼子役の深谷美歩は、29歳で半年前にある会社に正社員採用されたばかりだが、やっぱり自分のしたいことをしたくて早くも転職活動中という、これまた「あるある」な女性だ。スーツを着こなして、一見どこにでもいるアラサー女子をリアルに演じているのだが、酒に酔うと豪胆になるというキャラクターで、叫び声をあげて愚痴をこぼしたり、相手を罵倒したりと、セリフの抑揚も巧みで笑いを誘う。
 
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主人公の鑓水清子役の佐津川愛美は、28歳で地方から出てきて1人暮らしだが、卒業後の就職先が決まらず、派遣社員になってしまう。しかも最初の派遣先から5社目という状態だ。恋人は2年間いないのが悩みだったりする。そんな彼女が会社の喫煙所で、営業に来ていたリース会社の鈴木大輔と出会い一目ぼれをしてしまうのだが……。佐津川は、舞台を所狭しと動きまわり、アラサーと自称する自分の悩みを矢継ぎ早に語っていくのだけれど、口跡が良く、何より佇まいが可憐で美しい。だが、実はその店の常連だという鈴木を居酒屋で待ち伏せ、4人に協力してもらって彼を狙うという肉食系なところが今っぽくて面白い。かなりハチャメチャなキャラクターなのにブレないのは、凛とした佇まいと口跡のよいセリフからくるものだろう。

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池田倫太朗は、鈴木の役をトルソーの黒子役として演じている。他の男性たちの役も影絵になったりという形で、実際に登場することはない。つまり、5人の女性たちの、時には憧れの幻想として、時には目を背けたい現実として現れる男性の象徴なのだ。そんな難しい役割を、声質とトーンの変化だけで表現してみせる。
 
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この作品に登場するアラサー女子たちは、幸せになりたい、構ってもらいたい、愛してもらいたい、という願望がありながら、それが果たされたないこともわかって諦めている。そして、そんな自分を肯定して生きている。そこにどこか醒めている現代の30代の女性像も浮かび上がる。強烈な下ネタや自虐ネタをスパイスに、実は都会に生きる女性の孤独を匂わせ、その中で強く生き抜こうともがく女性たち。その姿を笑いを織り交ぜて見せる彼女たちと同世代の稲葉賀恵の演出。オープニングから目の離せない舞台になることは間違いない。
 
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【囲みインタビュー】

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深谷美歩、菊地美香、佐津川愛美、芹那、沢井美優

この稽古後に囲みインタビューが行われ、佐津川愛美、芹那、沢井美優、菊地美香、深谷美歩が登壇した。

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佐津川愛美(鑓水清子役)
好きなセリフは芹那ちゃんと同じで、鑓水の「30歳の女なんて生きているだけで偉いんだよ」というセリフです。自分を肯定するようなセリフが端々に出てくるところが見どころだと思います。稽古をやっていく中で変わっていく部分もあるので、初日が開けるまでに、まだまだ変わっていきますが、みんなで芝居をした中で出来てきた感覚や、稲葉さんが新しく感じて掴んでくださったところが、反映されている現場です。だから本番は、もっと違う形になると思いますよ。本当にみんなで戦っているので、生きるのが必死で、肩を寄せ合って助け合いながら頑張っている毎日です。現場では、舞台と同じように、よく食べて、よく喋って、本当にプライベートなことも喋るので、喧嘩が起きたら危ないぐらいです(笑)。
最初は、女の子だけだと怖いなと思いましたが、それは例えば、10代の時は頑張りすぎて、周りが見えなくなることがあって、それぞれが個人で頑張ってしまうからなんです。今回のチームは、みんなのいいところを見つけてくれて、絶対に否定しないでいてくれるので、優しいと思うし、稽古場にいるのが楽しいですね。つまり、アラサーに近い世代でいいところは、お互いに人を否定しなくなって、みんなのいいところを見ることができるようになる経験値があるのかなと思います。下ネタとか男子が怯えるとか、そんな文句がいっぱい付いていて、最初はどうなるかと思いましたが、人間味のある脚本が出来上がっていて、最後には、勇気をもらえるような作品になると思っています。明日に向けて頑張る元気がもらえる作品になっているので、女性に観ていただきたいと思いますし、男性は男性で楽しんでいただける作品です。笑った後にお客様の背中を押せる作品になると思いますので、劇場に来てください。

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芹那(桶川慶子役)
実際に、アラサーとして桶川に共通する部分も共通しない部分もあります。他の役に共通する部分もあると思いますが、今の私しかできない役なので、その環境を楽しみたいです。

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沢井美優(佐藤朝日役)
アラサーとして刺さる言葉が多すぎ(笑)。鑓水のセリフで食べ物を注文する品でも、これはアラサーだなと表していると思います。本編を通じて素敵なセリフもあるし、「おいおい」というセリフもありますけれど、それは劇場で観てください(笑)。稽古を重ねるたびに、私たち必死だなって、今を生きるのは大変だなというのを感じながら、楽しみながらやっています。観に来てくださる方も、一緒に今を生きて欲しいなと思います。アラサーの魅力は経験値ですね。辛いことも、嬉しいことも、なくしたものも多いし、得るものも多い狭間にいる世代だと思います。同時に30歳を超えても、過去を振り返って、前の私はそうだったと得るものがあるから、プラスに変えていくパワーを持っていますね。その経験がプラスアルファになる年齢だなと思っています。現実でも、プライベートも仕事も恋愛も、シチュエーションとしてあるなと思います。ただ、恋愛のことで男性を否定したり、蔑むように会話をするのではなく、本当に自分の悩みとして、共感してほしい、女性がこういうことで悩んでいるなと男性にも考えて欲しいな。役作りは経験値がものをいいますね。年上の女優さんと幅広く知り合うことのできるのが私たちの特権だと思います。だから、今回の役は実生活でも演技でも経験がものをいうのかな(笑)。

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菊地美香(横山夏美役)
鑓水の「あー、もう全部持っている」というセリフは、アラサーを超えている方も、納得していただけるだろうし、これからアラサーに向かっていく人たちにも納得できるセリフがたくさんありますね。『野良女』は作品自体が攻めています。稽古を重ねて、前半は楽しくポップだけれど、すごく深いところにググッと入り込んでいく作りになっています。ファンの方からは、そんなに赤裸々な美香ちゃんを見たらどうしよう、好きじゃなくなくなっちゃうかもしれないという心配もあるそうですが(笑)。もちろん、外見はそういう作りですが、戦っている『野良女』に出てくるキャラクターたちのお話ですので、女性に対してのメッセージが強いですけれど、むしろ男性の弱さとか、脆さも感じていただける作品だと思います。お1人でふらっと劇場に来ていただくのもいいし、大切な方といらっしゃってくださってもいいと思います。すべてのお客様に、何か1つでもメッセージを届けられるように、意気込んでいます。アラサーは魅力しかないな(笑)。失敗もまだ取り返せるし、日々の稽古場でうまくいかないことも乗り越えられる経験を積んでいると思います。5年前だったら、心が折れて泣きながら帰った稽古場の帰り道も、今なら笑いながら話ができる。休憩時間も台本にかじりついていたのが、みんなでジュースを作ったり、パンを食べたりとちょっとした余裕も生まれて来て、いいことばかりだなって思いますよ。

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深谷美歩(壺井頼子役)
私は最初のシーンで鑓水が「可愛い子ぶっているんじゃねーよ、バーカ」というセリフが好きです。彼女は本当に可愛いのに…。とにかく熱い芝居にしたいと思っていて、綺麗事じゃなくて、醜い姿とか、もがいている姿を見てもらいたいですね。それからマネキンの男性も見どころですよ(笑)。

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〈公演情報〉

舞台『野良女』
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演出◇稲葉賀恵(文学座) 
脚本◇オノマリコ(趣向) 
音楽◇オレノグラフィティ(劇団鹿殺し)
出演◇佐津川愛美 芹那 沢井美優 深谷美歩 菊地美香 他
●4/5〜9◎新宿シアターサンモール
〈料金〉6,900円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東映ビデオ カスタマーセンター 0120-1081-46(受付 月曜〜金曜 10:00〜13:00、14:00〜17:00/土・日・祝祭日を除く)
〈公式サイト〉http://noraonna-stage.jp
〈公式ツイッター〉@noraonnna_stage



【取材・文・撮影/竹下力】


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