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明治座で2011年に花形歌舞伎が復活して以来7年。いまや恒例となった「明治座花形歌舞伎」。今回は、座頭にミュージカル、テレビなどでも活躍する片岡愛之助を招き、フレッシュな若手歌舞伎俳優が多く出演、5月3日から27日の千穐楽まで、明治座を新緑に染める。

昼の部は『月形半平太』と『三人連獅子』の2本立て。愛之助にとって『月形半平太』は初役、舞踊の『三人連獅子』は楳茂都流としての東京公演は初めてとなる。夜の部はこちらも初役の通し狂言『南総里見八犬伝』と、バラエティ豊かな豪華3本立てで『明治座 五月花形歌舞伎』が上演される。

『月形半平太』は、「春雨じゃ。濡れてまいろう」の名台詞でおなじみの長州藩士・月形半平太の活躍を描いた作品で、『国定忠治』と並ぶ新国劇の代表作のひとつ。1919年に、京都明治座で初演されたのちに、テレビ、映画、演劇など様々な場所で取り上げられたが、歌舞伎では長らく上演されなかった。この度、若手と片岡愛之助の手によって新しく蘇る。
『三人連獅子』は、「楳茂都連獅子」と呼ばれ、上方舞の楳茂都流の家元、二世楳茂都流扇性の振付によって1908年に作られた。楳茂都流の『三人連獅子』は、親獅子、子獅子だけではなく、母獅子が登場するのが特徴。大道具も松羽目ではなく、清涼山を背景に牡丹の花が咲き乱れる舞台装置になっており、一味違う『連獅子』が観られるだろう。
夜の部の『南総里見八犬伝』は、曲亭馬琴が1814年から30年近い歳月をかけて書き上げた98巻・106冊の江戸を代表する大作である。今回は、通し狂言と銘打ち、八犬士の誕生から、芳流閣の大屋根での大立廻り、円塚山の場のだんまりといった「八犬伝」ならではの名場面も網羅し、八犬士が勢揃いして仇の扇谷定正を追い詰める大詰めまでを上演。まさに歌舞伎の醍醐味に満ちたエンターテイメント作品になる。

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上演に先立ち、製作発表会が行われ、明治座の代表取締役社長である三田芳裕、松竹株式会社の取締役副社長である安孫子正、そして片岡愛之助が登壇。登壇者の挨拶のあと、質疑応答、そして片岡愛之助の囲み取材が行われた。

【登壇者挨拶】
 
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三田芳裕
ご多忙の折、お集まりいただきありがとうございます。5月の公演は、松竹さんに、花形歌舞伎をお願いいたしました。明治座での花形歌舞伎は、しばらく絶えて、2011年に復活し、今年が7年目でございます。早いもので7年。明治座での歌舞伎公演は、明治座の地元の日本橋の方々はじめ歌舞伎のファンの方々まで大勢の方にお集まりいただいております。今年もご期待の言葉をいただいており、私どもも5月を楽しみに迎えようと思っております。5月の3日が初日、そして27日が千穐楽、つつがなく公演が成功裡に終わりますように、みなさま、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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安孫子正
今日はお忙しいなか、誠にありがとうございます。本年は、明治座さんから若手の歌舞伎ということで呼んでいただきました。花形歌舞伎も7回目でございますけども、その間に歌舞伎の風が明治座さんと共に舞い上がり、その一員である片岡愛之助さんを中心に公演をさせていただくことになりました。『月形半平太』と片岡さんの家元である楳茂都流に伝わる『三人連獅子』という狂言を昼の部で上演させていただきます。そして、夜の部には通し狂言で『南総里見八犬伝』を上演させていただきます。
愛之助さんは、朝から出ずっぱりの奮闘公演になりますけれども、今回は若手を中心に愛之助さんを支える方が頑張って出演してくれることになりました。お正月には浅草で若手の歌舞伎がございますけれども、歌舞伎の世界では、チャンスを得て上演する場所が少ない。今回は期待の若手、中村萬太郎さん、坂東新悟さん、中村米吉さん、中村隼人さん、中村壱太郎さん、中村種之助さん、昨年から襲名いたしました中村橋之助さん、中村福之助さんという8人が顔を揃えるということになりました。この8人の若手は浅草でも揃うことはないので、愛之助さんを中心に、若い人たちのエネルギー、そして彼らが熱演する舞台をお楽しみください。
今回は久しぶりに『月形半平太』というお芝居を上演させていただきます。過去には名優が演じた作品ですけれども、今の時代に半平太を誰にしようかと考えた時に、なかなか実らなかった。今回は明治座さんと相談させていただいて、改めて上演させていただくことにしました。久しぶりの上演でございますので、これも多くの方にお楽しみにしていただけるものと思います。朝から晩まで、愛之助さんを中心に若手がフル回転をいたしますので、どうぞ皆様方にお力添えをいただき、ご後援いただければと思います。

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片岡愛之助
みなさまさお忙しいなか、お集まりいただき、誠にありがとうございます。そして5月、明治座さんで花形歌舞伎をやらせていただきます。久しぶりに帰ってまいりました。明治座での公演は大好きでございます。と申しますのは、こけら落としの時に出演させていただきまして、そこからのご縁。明治座についているお客様もたくさんいらっしゃるので、どうしてもお客様がお好きな歌舞伎は何かなと相談してまいりましたら、副社長が『月形半平太』はどうかとおっしゃられて、「これしかない」と思いました。やはり、私は上方の人間でございますから、ただただ殺伐としているのではなく、少しはんなりとした部分も大立廻りもあり、いろいろ楽しんでいただける要素があるお芝居でございます。その月形半平太役を務めさせていただきます。そしてみんなで楽しく作っていこうと思います。
『三人連獅子』ですが、楳茂都流の家元を務めさせていただいて、先代の家元が亡くなっても、歌舞伎舞踊はたくさん作ってまいりましたけれども、上演される機会が非常に少なくなっておりました。私が家元を継がせてもらった以上は、私の使命として、今までかかっていた歌舞伎の舞踊をいろんなところでできる限り上演して、みなさまに知っていただきたいという思いもあり、みなさまのおかげで念願が叶いました。東京で『三人連獅子』ということで、いつもの「連獅子」とは違います。だいたいお父さんと子供が出てきますが、『三人連獅子』は、お父さんとお母さん、そして子供が出てくる。そして、千尋の谷から子獅子が這い上がってくるのを待つ場面ではなく、石橋が上がったり下がったりするんです。親子の情愛がわかりやすく描かれております。舞踊は、「わかるかな」と心配になられる方でも非常にわかりやすいです。お昼の部は歌舞伎を初めてご覧になられる方にうってつけの2本立てでございます。
そして夜の部は、『南総里見八犬伝』で、いつも私が出演しますのは、『新八犬伝』でございますけども、今回は古典の通し狂言で、犬山道節を初めて務めさせていただきます。これも通し狂言ですから、最初から最後まで、初めてご覧になられる方には、うってつけの作品でございます。普段、歌舞伎をご覧になられる方にも楽しんでいただけるような作品でございます。私たち全員汗まみれになって、頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
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【質疑応答】

──『月形半平太』と『南総里見八犬伝』は初役ですが、それぞれの役の魅力は。
片岡 『月形半平太』は、行友李風の原作ですから、そちらを書き直して行くわけでございます。やはり、私のイメージとしては、作品の資料を拝見させていただくと、本当に二枚目の大先輩しかやっておられないので、頑張って二枚目に作り込んで、務めていきたいと思います。色気のある部分や、そして強さと忠義の心を持ち合わせている役です。昨日ですが、里見浩太朗さんが、『コメディ・トゥナイト!』を観にきてくださった。「観に来ましたよ」とおっしゃられて「ありがとうございます」というやりとりをしているうちに、「そうだ、里見さんもやっていらっしゃる」と思い出して、「月形半平太やらしていただきます。何か教えてください」とお伝えしたんです。そして、楽屋の前で教えてくださったのは、「春雨じゃ。濡れてまいろう」という有名なセリフを七三で言うとクスクス笑われたんだ、と。里見さんは、「先輩に伺ったら、歌いなさいと言われて、僕には歌う意味がわからなかったけれど、愛之助くんは歌舞伎をやっているから、セリフを歌うという意味わかる?」と聞かれました。「はい、わかりました」とお答えすると、「歌わせてもらったら、その日から拍手喝采だった」と里見さんにアドバイスをいただきました。聞いてみるもんだなって(笑)。それから、みなさまからいろんな知恵を拝借いたして、作り上げていこうと思います。通し狂言の『南総里見八犬伝』は、犬山道節という役なので、みんなで作り上げて行く八犬士の1人で、しかも今回は普段出ないような場面も出ておりますので、みんなで見つめ直しながら、また新しい「八犬伝」ができればいいなと思います。

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──今回は座頭ということで、若手を束ねて行く立場になりました。どういう心境で迎えられていますか。
片岡 私はいつまでも若手と思っているんです(笑)。歌舞伎の中では40歳、50歳は、鼻垂れ小僧と言われていますから、やっと45歳になって、鼻垂れ小僧に慣れて来たなというところなんです。確かにおっしゃる通り、今まで下だ下だと思っていたのに、今回のチラシを初めて見た時に、若手がこんなにたくさんいると思ってびっくりしました。ただ、鴈治郎兄さんや、亀蔵さんが出てくださっていますから、安心して舞台に出られます。やはり自分が経験してきたことを踏まえれば、やることは同じだと思うんです。先輩方もおっしゃっていましたけれど、昔はこうするだろうということを自分たちもしてしまうので、自分の経験でわかる範囲で、いろいろ話し合っていきながら、実際に彼らから学ぶこともあるかもしれませんし、先輩、後輩と関係なく、いい舞台を作っていけたらと思っております。
──若い方が多いと稽古の雰囲気は変わりますか。
片岡 どちらかというと、それぞれの役を楽しんで、膨らまして欲しいと思うんです。初ミュージカルのチャンスをいただき、歌舞伎以外のお仕事をしたことがとても勉強になりました。もちろん、みんな1日1日頑張っているけれど、歌舞伎だと役が決まっていますよね。それ以外のお芝居の重要な役は、決まっていない場合があったり、流動的な場合があったりするんです。そうすると演出家は、みんなを見て役をつけるようになる。だから、若手の稽古を見る眼差しが半端なく鋭いんです。例えば、仕事でどうしてもこの日はいけない、お稽古をキャンセルします、となる。すると、代役入ってくださいと言ったら、誰でもパッと入っていける。しかも脚本を離して代役をしてくれるんです。それぐらい真剣に一挙手一投足を観ているんですね。そういう真摯なお稽古場に、弟子たちも連れていっているんです。「そういうところを学びなさい」と、そうして人は頑張って行くものですね。このチャンスをいただいた時に、若手の彼らに、ああしなさい、と上から全部ダメ出しをして、統制をとることは簡単です。でもそれをやりすぎると「僕一色」になりすぎてしまって、彼らのアイデアが出てこなかったりするので、いい意味で役を膨らませて行く、彼らのスペースを作ってあげることにしています。枠からはみ出し過ぎたら、それはおかしいかなと注意することに留めています。そうすると彼らも楽しみながら役を膨らませて行くことができる。お芝居の中でも役を楽しんで演じることはお客様に伝わると思うんです。みんなのびのびとお芝居をしていることが明日につながって行くと思うので、座頭の責任はそういうものだと勉強させていただきました。

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【囲み取材】

片岡愛之助 
久しぶりの明治座ということもあり、しかも『月形半平太』は、新国劇から始まり、いろんな方がやっていらっしゃったお芝居ですから、これを歌舞伎に書き換えるのは非常に難しく、しかも花形歌舞伎ということなので、最初は、和の音で立廻りもツケだけでと思って台本を読みました。それでもやはり、作品が新国劇からきたものですから、音も、ジャッジャーンとわかりやすいものを入れた方がワクワクすると思って、一昨日ぐらいに「ごめん、入れなおしてくれ」とすべて変えてもらっている最中です。いわゆる、歌舞伎の『男の花道』のような作品に仕上げたいと思います。
今は、ミュージカルをやっていますが、頭の切り替えはやってみないとわからないですね。ミュージカルは大阪公演もあって、そこからですから、1週間ぐらいしか空いてなくて、しかも2日間は別のところで踊りを踊っていますので、実質4日ぐらいしかないですが、大丈夫だと思います。体調は元気いっぱいですね! ミュージカルの初日はやつれたって言ったように、ど頭から死ぬほど喋り、死ぬほど歌っていますので5キロぐらい痩せましたね。歌舞伎も出ずっぱりですから、どんどん細くなって大丈夫かという(笑)。なので頑張って食べます。
歌舞伎役者だけで『三人連獅子』をするのは初めてですけれど、これは上方でもマイナーな作品になってしまいました。先代が生きていらっしゃった時には、本当に頻繁にかかっていた歌舞伎舞踊だったのですが、そういうご縁がなくなってしまったので、楳茂都流を継いだ以上は、みなさんに知っていただこうと思います。これからも昔よかった舞踊をどんどん出して行こうと思っているので嬉しいですね。
『明治座 五月花形歌舞伎』、初めてご覧になられる方にも非常にわかりやすい1本目の『月形半平太』、ぜひ観ていただいきたい作品ですし、『三人連獅子』もいつもと違う楳茂都流の連獅子だと思います。新しいものと古典を観る。一粒で2度美味しい昼の部でございます。夜の部も通し狂言ですから、これも初めてご覧になられる方でもわかる『南総里見八犬伝』でございます。私だけではなく、みんな出ずっぱりだと思うので、千穐楽までにぜひ1度、足を運びくださいませ。

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〈公演情報〉
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『明治座 五月花形歌舞伎』
【昼の部】
一、月形半平太(つきがたはんぺいた)
二、三人連獅子(さんにんれんじし)
【夜の部】
通し狂言「南総里見八犬伝」(なんそうさとみはっけんでん)
出演◇片岡愛之助、中村萬太郎、坂東新悟、中村米吉、中村隼人、中村壱太郎、中村種之助、中村橋之助、中村福之助 他
●5/3〜27◎明治座
〈料金〉一等席13,000円、二等席6,500円、三等A席5,000円、三等B席3,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10時〜17時)




【取材・文・撮影/竹下力】



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