DSC_2824

あたたかい笑いと切ない涙で感動を誘う宅間孝行主宰「タクフェス」。今春は最初から最後まで笑える「タクフェス 春のコメディ祭!」と銘打ち、2011年に初演された『わらいのまち』を再演。キャストを大きく変えて、笑いのエンターテインメントとして上演する。

『わらいのまち』は、とある寂れた温泉旅館を舞台にした、宅間孝行初の「暗転なし」「転換なし」「ノンストップ」で繰り広げられる一幕物の舞台。初演に引き続き、仲居のくにゑ役に柴田理恵、コメディ初挑戦となる永井大、映像に舞台にめざましい活躍の柄本時生、昨年の初舞台に続き2度目の舞台出演となる鈴木杏樹など総勢15名で繰り広げるドタバタ喜劇だ。その公演が3月30日に東京グローブ座で開幕した。(4月12日まで)。

DSC_2316

【あらすじ】
何の名所も特産品もない寂れた田舎町の温泉旅館「まつばら」に国会議員の大関代議士(橋本真実)が、泊まりに来ることになった。明日から始まる町の未来をかけたお笑いイベントを視察にやってくるのだ。町おこしの実行委員長を務める「まつばら」の次男の松原信雄(永井大)、三男で板前である松原将雄(柄本時生)、仲居のくにゑ(柴田理恵)、真知子(鈴木杏樹)も大喜び。しかし、この日になって、長年音信不通だった疫病神とあだ名のヤクザの長男の松原富雄(宅間孝行)が、帰ってくるというのだ。一体なぜ? 何のために? みんなが慌てふためく中、富雄がとうとう帰ってきてしまう。とにかく、無事に視察を終わらせたい面々は様々な嘘と方便を使って、富雄をごまかしていくのだが、行き違いやら勘違いが交錯する羽目になって、最後には……。

DSC_2352

舞台は鈴木杏樹演じる仲居の真知子が風呂場の暖簾をくぐるところから始まる。彼女が独り言のように達者な大阪弁でギャグをかませば、一気に笑いが広がっていく。「春のコメディ祭!」の開幕だ。

DSC_2426

コメディ初挑戦となる永井大は次男の信雄。頼りない長男の代わりを務めようと必死になるが、そのあまり空回りしてしまう、その面白さを真面目に丁寧に演じてみせる。
板前である三男の松原将雄役の柄本時生は、末っ子の甘えたがり屋で、常に頼りなげな様子をまるで素のままのように演じてみせる。セリフまわしも淀みなく、身体表現も豊かで、キャラクターを饒舌に伝える。
 
DSC_2972

真知子役の鈴木杏樹は、これが2度目の舞台というのが嘘のように落ち着きがあって、ネイティブである関西弁を駆使してのギャグも自由自在、笑いをさらっていく。

DSC_2358
 
同じく仲居のくにゑは柴田理恵。宅間作品の常連だけあって、言うことなしのコメディエンヌぶり。ギャグはもちろん、少し展開の早いストーリーをセリフでフォロー、勘違いや行き違いを交通整理してくれる。おかげで観客は置いて行かれずに物語に楽しむことができる。

DSC_2381

新町朋美役の岡本玲はワケありげな顔で赤ん坊を抱いて登場。彼女は秘密を抱えている役で、唯一シリアスな雰囲気を醸し出す。

DSC_2502

水道工事夫の太役の土平ドンペイは、すぐに故障する宿のトイレを修理をさせられることになり、ことあるごとに登場。彼が出てくるだけで1つの笑いの仕掛けになっている。

DSC_3172

また、探偵・若松役の佐藤祐基は、黒のスーツにハットという姿でカッコいいのだが、どうみてもハードボイルドものの探偵のパロディといった感じ。
若松と一緒にやってくるのが、大学病院で医者をやっている小谷役の冨永竜。彼はこの宿に彼女を探しに来たらしい。小谷の秘密は大詰めの笑いのネタとなっているのだが、そこまでのタメをきっちり抑える。

DSC_3441

さらに、打ち合わせにきたイベントのPR会社の担当者たち、山吹あかね役はえまおゆうで、あかねは足が臭くてデリカシーのない女性というキャラクターだが、これを元宝塚トップスターのえまおが面白おかしく演じて女優魂を炸裂させる。
自称"美貌で生きる女"石嶺小百合役の松本若菜は、目鼻だちのはっきりした美貌の持ち主だが、自分でもそれを鼻にかけている様子がおかしく、可愛らしさも感じさせる。

DSC_2666

この家の疫病神である長男、松原富雄が帰ってくると伝えにくる寺の住職・寂蓮役の尾関伸嗣は、事情を知らないようで知っているフリをする様が可笑しい。
富雄が帰ってくるという噂を聞きつけて殴り込みにくるかつこ役のブルは、女子プロレスラーという役どころで、スリッパで男性・女性を問わずひっぱたくというインパクト満点のキャラクター。

DSC_2700

そしてこの作品の真打ち、松原富雄役の宅間孝行が登場。富雄はとにかく面倒と混乱を持ち込む男で、弟の信雄は彼をここから去らせようと嘘をつくのだが、それがすべてのドタバタの始まりとなる。
富雄は客間にいた小谷たちを中国人だと勘違いしてしまい、一方、仲居たちは彼らを代議士らしいと思い込んで丁重に扱ってしまう。

DSC_3198

そこに本物の代議士・大関杏子役の橋本真実と秘書の神村役の辻本祐樹がやってくる。橋本の上から目線の喋り方は政治家の傲慢さを感じさせる。また秘書の神村は、実は大関を嫌いで裏で政治家の悪態をつく。そんな屈折を辻本が巧みに表現、語られる時事ネタが今の社会批評にもなっている。

DSC_2913

富雄は石嶺小百合に一目惚れ。だが、とあることで小百合と信雄が恋仲だと勝手に思い込んでしまい、それを聞いた真知子は、信雄のことが好きで告白までしてしまっただけに、ショックのあまりに日本酒一升瓶を2本飲んでしまう。

DSC_3388

そのうえ、小谷たちは中国マフィアで、この宿に止まっている代議士を狙いに来ているという話になり、事態はどんどん収拾がつかなくなっていく。
とはいっても、最後はバラバラのピースを1つのパズルへと完成させるのが宅間孝行のすごさで、ひねりも入れた展開の面白さと、コメディと銘打った作品であっても涙もあれば人生を考えさせるテーマ性も落とし込んでいて、だからこそ観客を惹きつけるのだろう。

DSC_3784

そしてやはり役者としての宅間孝行も見逃せない。周りに迷惑をかけながらも、芯にはぶれない正義感や反骨心を持っていて、不平等な世界に立ち向かう富雄の姿は、とにかくカッコいいのだ。そして演出家としては、暗転なし、転換なし、ノンストップで繰り広げられる1幕もののコメディの面白さを正攻法で見せてくれる。
 
DSC_3872

さらにタクフェスならではのお楽しみがたくさんあり、前説やチェキ会、フリートークに近いアドリブ合戦、最後にはダンス、ボンボンでの人文字もあって、本編プラスお楽しみ満載の舞台だ。笑って笑って、ちょっとだけしみじみする。桜咲く春に似合いの明るく感動的な舞台である。

DSC_3934

【囲みインタビュー】

DSC_3991

『わらいのまち』の初日前日に、プレス用の公開舞台稽古と囲みインタビューが行われ、宅間孝行、永井大、柄本時生、柴田理恵、鈴木杏樹が登壇した。

DSC_4010
宅間孝行(松原富雄役)
お芝居は、お客さんが入って、育ててもらうところがあるので、お客さんから教わるほど、いろいろ変わっていくと思います。まずは稽古場でやっていたことを見せていきたいな。タクフェス名義ではコメディは初めてですけど、いつも8割はお客さんに笑っていただきたいと思っているので、コメディだからという意識はないです。逆に言うと、いつものタクフェスだと泣かせてくれるだろうと最前列の方がタオルを持っていらっしゃる。それがプレッシャーになるので、コメディの時はそこまでプレッシャーは感じなくて楽しんでやれますね。今回は泣かせるシーンはおまけで、笑っていただきたい。ちなみに、今日のゲネプロはですね、永井大(マサル)がミスをしていたので、てめえマサル、このやろうって、思ったんです。「柴田姉さんの一番美味しいネタを吹っ飛ばしたな、マサル」って思ったら、それ僕でした(笑)。杏樹さんが助けてくださったんですけどね。チームワークがすべてですね。今日ご覧いただいて、我々は芝居というよりはイベントとしてお客さんに楽しんでいただきたいと思っています。チケット代8000円というのは、安くありません。ただ、ディズニーランドのフリーパスが7800円で、そこに負けたくないなという気概を持って、8000円分を楽しませるぞという気持ちで臨んでいきたいと思います。劇場でお待ちしております。ちなみに、最後のボンボンのところは、カタカナで「みんなありがとう❤」︎とやろうとしたのに、全然できなくて、これは明日までの宿題ですね。できなくて実際に声出しちゃいましたからね(笑)。

DSC_4045
永井大(松原信雄役)
いよいよ本番が間近だなという緊張感が走りますね。お客さんがさらに多くなって、出ている時の景色も変わるし、そこでお客さんに育ててもらうこともあるんです。千秋楽まで、どういう風に、どういう感じで走っていけるのか楽しみですね。やはりお笑いは、ボケるのが難しいと思います。僕は実行委員長の役なので、明日大イベントがあるんだという、楽しさを届けるような表現をできたらなと思います。コメディは初挑戦ですが、コメディの難しさを経験させていただいて、ありがたいです。間だったり、セリフの言い方だったり、テンポだったり、日常的にふざけているのを、お客さんに直接届ける表現が難しくて、考えれば考えるほど、頭が固くなってしまうので、それを取り除いた時に、伝えたいものが伝わるのかなと思います。

DSC_4036
柄本時生(松原将雄役)
お笑いがどれだけ難しいものか、柴田さんや宅間さんに教わったりして、勉強になり、楽しくやらしていただきました。本番が始まってお客さんがどういう反応をしていただけけるか楽しみですね。この中では一番年下なので、言いづらいことはあるんですけど、稽古はツラ(辛)楽しいです。稽古は辛いですよ。宅間さんは俺が一番辛いって叫んでるんです。リーダーが辛いというんだから辛いんですよね。だけど楽しい。辛いことも楽しいこともあって出来上がっていくんだなと実感しています。

DSC_4033
柴田理恵(くにゑ役)
お笑いは、お客さんの反応を見て、自分たちの演技も変わっていくと思うので、そこが勝負です。私のシーンをすっ飛ばしたときは、宅間さんがマサルくんにめくばせしていたんです。それが宅間さんだったなんて(笑)。展開の速さが見せ場ですね。次から次へ、入って出ていく、パズルのようにバラバラで、一つの事柄の捉え方がぜんぜん違う。そこでこんがらがって、最後に集結していくのが、この舞台の妙味ですね。我々のセリフと出入りで、鮮やかに編んでいけたらいいと思います。こうやって、一つの喜劇を作り上げていくのは難しいけれど、面白いなと思います。私は初演の時も出演しましたけれど、別物ですね。出演者が変わっているので、生まれ変わったようで、新鮮で面白いです。稽古はツラ楽しいですけど、暗闇から光明が一筋見えた時に、生きててよかったと思えるんですよ。

DSC_4037
鈴木杏樹(真知子役)
私はコメディが初めてですので、お客さんの反応ですとか、こちらとの兼ね合いで、何が生まれるのかわからないので、それを経験することが明日から楽しみです。コメディエンヌとしては先輩の柴田さんを見習いながら演じていきたいですね。今回は上手に大阪弁に変換できることができるので奇跡です。真知子さんになると自然と関西弁になるので大丈夫です。生まれが関西で、物心がついた時から、吉本新喜劇に育ててもらっているにもかかわらず、笑いを表現することが、いかに難しいか身にしみて感じました。

DSC_2433
DSC_2792
DSC_3063
DSC_3266
DSC_3605
DSC_3780
DSC_3880DSC_3934

 〈公演情報〉
201612070033_ex

タクフェス 春のコメディ祭!『わらいのまち』
作・演出◇宅間孝行
出演◇宅間孝行 永井大 柄本時生/柴田理恵 鈴木杏樹 ほか
●3/30〜4/12◎東京グローブ座、
4/14〜16◎中日劇場、
4/18〜23◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈お問い合わせ〉東京/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
http://takufes.jp/warainomachi/


【取材・文・撮影/竹下力】



えんぶ4月号 




kick 

shop 

nikkan