DSC_4393

2016年3月に東京・新宿のスタジオアルタが閉鎖、それに前後して多くの劇場が閉鎖・改装にある寂しい状況の中で、日本の新しいエンターテインメントを海外に発信する目的の劇場が、東京・有楽町センタービル(有楽町マリオン)に、この夏オープンする。
劇場名は「オルタナティブシアター」。海外から日本までどんな人が観ても楽しんでもらえるように、ノンバーバルと謳い、さらに上演時間も約70分とし、セリフによる芝居ではなく、ダンス、殺陣、イリュージョンなど、言葉だけにとらわれない表現で勝負する劇場だ。

DSC_4126

今回はそのこけら落とし公演である『アラタ〜ALATA〜』の製作発表会が行われた。
脚本はスーパ歌舞伎から、国内の様々な大作の戯曲に挑み続ける横内謙介。演出はつか作品や、アイドル、ミュージシャン、宝塚までプロデュースを手がける岡村俊一。ダンスクリエイターとして、女優だけでなく、2015年にニューヨークに留学、その後コレオグラファーとしても活躍するElina。チャンバラスペシャリストとして、殺陣においては右に出るものなしの早乙女友貴。そして、オーディションにて新たな才能を発掘。今回は若干18歳の吉田美佳子が初舞台を踏む。また、音楽は素性を一切明かさない謎の集団でありながら、今までにリリースしたCDは、すべてオリコンインディーズチャート1位に輝くMiliが手がける。イリュージョンのアドバイザーとして、ラスベガスで活躍をしているAi and YuKiも参加する予定だ。公演はすべてロングランを予定しており、千穐楽は設けず、様々な客層がなんども足を運べる東京のナイトライフを楽しむことのできるスポットを目指す。そして7月のこけら落としとして、日本のトップクリエイターが集結した、かつてないほどダイナミックで、エンターテインメント性に溢れた舞台『アラタ〜ALATA〜』が誕生する。

DSC_4134

ストーリーは、2020年人口1千万を越える巨大都市トーキョにサムライが現れるところから始まる。その名は「アラタ」。15XX年の戦国時代から、魔術を使われ、タイムスリップしてしまった勇ましい武将だ。アラタは夜の銀座で、現代を生る女性「こころ」に出会う。現代の常識を全く知らない「アラタ」と、古くさいことを嫌う「こころ」の東京珍道中。タイムスリップチャンバラパフォーマンスだ。

DSC_4107

今回は、上演に先立ち製作発表会が行われ、スタジオアルタ代表取締役社長である田沼和俊、また横内謙介、岡村俊一、Elina、早乙女友貴、吉田美佳子が登壇。登壇者の紹介では、Elinaによるダンスパフォーマンス、早乙女友貴による殺陣が披露され、その後、登壇者の挨拶、質疑応答が行われた。
 
DSC_4147
DSC_4163

【登壇者挨拶】
 
DSC_4173
田沼和俊
スタジオアルタが2016年3月に閉鎖しました。私どもとしては、新しい事業として、2017年の7月に有楽町センタービル、通称有楽町マリオンで専用劇場「オルタナティブシアター」を開業いたします。「オルタナティブシアター」のオルタナティブは、既存に問わられないという意味で、アルタの社名の語源でございます。そこから、日本のクリエイターの皆さんとともに、共存マーケティングという形で、世界に向けて上質なコンテンツを輸出していきたいと思っております。
今年の7月に開業いたしまして、17年度は500公演、18年度は800公演を目指しております。訪日外国人客を中心に70%、日本人の方が30%ほどを見込み、来年の3月末までに約14万人の動員を考えております。入場料収入の他、12億円の収入規模になる予定です。今回投資いたしましたのは12億円、投資の回収は約4年を想定しております。この専用劇場から、国境、言葉の壁を超えた新しいエンターテインメントを日本の1つの文化として立ち上げて、花開かせていきたいと思っております。
初年度のこけら落としの『ALATA』でございますが、ロングラン公演を目指しております。我々は、東京の銀座有楽町から、ノンバーバル・パフォーマンスを成功させるとともに、最終的には、ラスベガスにコンテンツを輸出していきたいと願っております。その仲間たちが日本を代表するトップクリエエイターの皆さんであり、私と同年代の横内さん、構成・演出家の岡村さん、ダンスパフォーマンスを指導していただきますElinaさん、チャンバラという殺陣を指導していただきます早乙女友貴さんでございます。若手のクリエイターと我々の世代が、コラボレーションをして世界に向けて素晴らしい作品を発信してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

DSC_4205
横内謙介
ノンバーバルですから、外国の方に観ていただくことが大きな目的ですが、かねがね、自分達が美味しいと思わないものを、海外の人が食べても美味しいと思わないだろうと私は考えております。7割のお客様が海外の観光客になるかもしれませんが、私の友人や演劇仲間が観ても、これは面白いものだと、リピーターになってもらうような演目をしっかり作って、海外の方達にも美味しく楽しんでいただければと思います。脚本は細かい指定まで出来上がっています。
あらすじを説明いたしますと、「こころ」に彼氏がいるのですが、頼りない彼氏に欲求不満気味です。ある日、有楽町にいる彼女の目の前に「アラタ」という武士が現れる。アラタは、1500年代のとある国と姫を守るために戦っているので、その戦いに戻らなければならないのですが、ある魔力で時代を超えて吹き飛ばされてしまった。だらしない彼氏に辟易している「こころ」には、男の中の男の日本男子がやってくるわけですから、たちまち恋に落ち、なんとか元の時代に戻してあげないといけないと奔走する。この話では「アラタ」の殺陣が重要になります。有楽町付近での大立回り、そして、戦国時代に戻っての悪霊との大立回りといったストーリーになっております。現代人も出てまいりますので、現代へのメッセージも含んでおります。セリフはほぼないのですが、しっかりとしたストーリー性のあるものにして、楽しく刺激的でありながら、感動できるものにするのが私の責任だと思っております。この舞台でトップクリエイターの仲間入りをする志でございます(笑)。よろしくお願いいたします。

DSC_4232
岡村俊一
横内さんより大作の台本をいただいて、身がすくむ思いです。テーマを申しますと、「コトとモノ」という考えがございます。田沼社長から、お仕事の依頼をされた時に考えました。人間は今「モノ」に頼って生きています。カメラマンの方はカメラで戦っている。パソコンを打っている方はパソコンで戦う。そして、愛の表現をする時に指輪をする。「モノ」に対して感情を託して、「コト」を利用している時代です。ただ、戦国時代では、愛しているのなら、愛していると口八丁で言うだけでよかった。腕っ節があれば、指輪をしなくても、指切りで人と愛しあえた時代がありました。そのことを現代人が古代人と会って、今を生きるために、心の中に何が必要なのか考える材料にするために、Elinaのスーパーダンスや、早乙女友貴の殺陣を並べていきたいと思います。新規の劇場ですから、フライングシステムや照明などいろいろなものを発注しました。特殊装置もふんだんに使用している劇場ができる予定です。イリュージョンもラスベガスで活躍するAi and YuKiさんですから、視覚的な部分で、この話はわかるな、昔の人はこう考えていたんだな、と理解できる劇にしたいと思います。

DSC_4258
Elina
3年ぶりに芝居の入った舞台に帰ってくるわけですが、ニューヨークにダンサーとして留学し、活動を再開していろいろなことを学んできました。それをまた岡村さんとともに表現できることを嬉しく思っております。

DSC_4267
早乙女友貴
本日はお集まりいただきありがとうございます。先ほど横内さんがおっしゃったように、演劇仲間にも、日本の方にも、外国の方にも楽しんでもらえるような作品にするために、頑張っていきたいと思います。

DSC_4270
吉田美佳子
一昨日、大学の入学式が終わって、なりたてのほやほやの大学生です。私はまだ経験も未熟で浅いので、何事にも挑戦して頑張りたいと思います。

【質疑応答】
 
DSC_4264

──Elinaさんはどのような表現をしていきたいですか。
Elina ノンバーバルである以上、ダンスの可能性を知っていただきたいですね。ダンスにしかできない情感や、雰囲気、空気感、さらに繊細で緻密な部分を表現していけたらと思っております。
──ニューヨークに留学して変わったことはありますか。
Elina ニューヨークの方は日本人よりずっとオープンで、感情もすごくわかりやすく表現される方が多いですね。逆に、日本人はシャイですが、技術に対してストイックで、その両方の良さを感じて帰ってきた1年だったので、そのどちらも全力で表現できたらな。
──早乙女さんはどのようなパフォーマンスを見てもらいたいですか。
早乙女 今まで言葉のあるお芝居に立たせてもらって、その中で、殺陣をさせてもらいました。ただ、今回は言葉がなく、物語のシーンによって、お芝居が入った殺陣や、天狗のように舞っている殺陣を盛り込んでいけたらと思っているので、そこを見てもらいたいです。
──先ほどの殺陣もお見事でしたが、ご自分で振りをつけていらっしゃるんですね。
早乙女 はい。振りをつけています。
──一番大切にしていることは。
早乙女 自分の絵を客観視することを大切にしていますね。
──Elinaさんと早乙女さんは初めてお会いになられましたが、先ほどのお互いのパフォーマンスをご覧になって。
Elina すごいの一言です。ダンスを踊っている時に様々なことを考えているのですが、殺陣も同様で、私とはまったく違うことを考えていると想像を馳せていました。
早乙女 すごいの一言です(笑)。キレが良くてしなやかで、クールな感情を体で表現しているのが感じられて本当に素晴らしいと思います。

DSC_4301
 
──吉田さんは、キャストオーディションを勝ち抜きました。勝ち抜いた時のお気持ちは。
吉田 本当に嬉しくて全力で頑張ろうと思いました。
──この作品を通してどのような女優になっていきたいですか。
吉田 みんなから愛される、魅力的で、世界にも通用するような女優になりたいです。
──タイトルの『ALATA』に込められた想いはありますか。
岡村 別に文字ったわけではないのですが、「ALTA」、アルタの文字を使って新たなチャレンジの気持ちを表そうとしたら「ALATA」となりました(笑)。
横内 主人公の名前ですね。
 
DSC_4218

──セリフは全くないのですか。
横内 今の段階では、俳優さんに多少の気持ちをわかってもらうために残していますが、最終的にはもっと言葉を減らします。せっかく外国の方がいらっしゃっているので、「おのれ」「無念じゃ」というわかりやすい言葉を流行らせたい。無理に黙っているのもおかしいので、立ち廻りの時に「やー」といった声は自然と出るんじゃないかな。「おのれ」「無念」など覚えて帰ってねと言う決め台詞があったほうがいいと思うので、日本語を覚えてもらえるぐらいの気持ちで臨んでいきたいです。
──70分に収まる作品で、台本で苦労されたことはありますか。
横内 普通の芝居だと、500年前と現代を行ったりきたりするのがとても大変ですけれど、今回の場合は、映像でスペクタクルを説明できると思うので、芝居の説明は言葉でやったほうがいいですが、専用劇場なのでストーリーもわかりやすくなるのではないかと期待しております。それはこれからのすり合わせで決めていきます。ちょっとしたレビューショーというより、しっかりストーリーのあるものを感じてもらえればと思います。
──岡村さんは70分をどのように演出していこうと思いますか。
岡村 いただいた脚本に沿っていきます。基本は、怒りや喜びといった基礎感情が出た時に、音楽や、踊りや殺陣にしていきます。セリフは、できるだけ残すものは残していきますが、擬音に近い感情的な「え?」「うおー」などセリフではない部分は、セーフだと思っています。ものすごいものに出会った時の驚きから端を発して踊ったり、「貴様」と怒った時のエネルギーで殺陣に変わる。「アラタ」がトイレのウォシュレットに座って、「ぎゃー」とびっくりして大丈夫? といった台本を書いていただいていますが、擬音を使いながら、基礎感情に沿った広がりを劇化してダンスや歌や殺陣で繋いでいけたらと思います。さらに、ある時はフライングやイリュージョンを使いながら、感情を表現していく70分にしたいと思います。

DSC_4209
 
──訪日観光客を意識されているということですが、3年後の東京五輪の意識はお持ちですか。
横内 オリンピックがあるからこのようなチャンスが生まれたのではと思います。僕たちの今までためていたエネルギーを一気に噴出できるチャンスですね。というのも、劇場が減っていくこの何年間でしたので、オリンピックだから新たな劇場が生まれるチャンスを与えてもらった。海外の五輪ではスポーツの祭典の時に、文化的イベントをするそうですが、今回もそれを見習うといっているものの、なかなか文化的な盛り上がりが足りないと思いますので、僕たちが頑張らなくちゃいけない。ラスベガスのショーを観た時に、その出来のすごさに圧倒されたと同時に、とても嫉妬をして、こんなことができないかと数年前から思っていたので、チャンスを待っていました。そのチャンスを逃してはいけないようにしたいですね。僕も岡村くんも小劇場出身ですから、20年前の小劇場大ブームは、タイムスリップや魔術やファンタジーが劇場に溢れていたので、今になってそれをぶつけられるので、素晴らしい巡り合わせだと思っています。

DSC_4236

岡村
 オリンピックはあまり考えないようにしているのですが、外国人の方に聞くと、ちょうどいい具合に楽しめる観光スポットが少ないそうです。例えば東京の夜に、「じゃあどこに行こうか」となると、歌舞伎町の「ロボットレストラン」に行くと聞いたんです。それだけじゃなくて、2020年に向けて、世界から多くの人が集まってくるなら、日本には、日本の心の芯の強さ、ただの金儲けの国ではないということが伝わる出し物を作っていきたいですね。
Elina 今でも東京に多くの人が集まっているのに、それ以上に人が集まるので、想像がつかないんです。ただ、ニューヨークにいた時に、殺陣をやっている方が間違った認識をされてもいたので、2020年とは関係ないかもしれないですが、早乙女さんの素晴らしい殺陣に触れて、新しい発見をしてもらいたいな。
早乙女 俳優で殺陣をずっとしてきたので、海外のお客様に日本の武士の魂や日本刀について知ってもらえたらいいですね。そして、いつの日か海外で殺陣を披露できるステップとしていい機会だと思います。
吉田 2020年に20歳になるので、節目の年に、素晴らしい舞台に出させてもらって、いろいろな国の方に観ていただけるので感謝しています。
田沼 僕は2020年には定年の年だと思います(笑)。東京五輪は意識しましたが、それ以上に2016年問題がありました。テレビスタジオが閉鎖するとともに、専用劇場をもうけたいと探していたところ、劇場の改装・閉鎖がたくさんあった。それから、岡村さんもおっしゃったように、訪日されるみなさんのナイトライフを探すのが大変だったという事実もありました。この大都会で、新しいナイトライフとして東京の新しいエンターテインメントを提供していきたいですね。

DSC_4395
DSC_4461

〈公演情報〉
「オルタナティブシアター」こけら落とし公演
『アラタ〜ALATA〜』
脚本◇横内謙介
演出◇岡村俊一
音楽◇Mili
ダンスクリエイター◇Elina
チャンバラスペシャリスト◇早乙女友貴
出演◇早乙女友貴、Elina、吉田美佳子 他
●7/7〜ロングラン公演◎オルタナティブシアター
〈料金〉8,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉オルタナティブシアター開業準備室 03-3350-4151(平日 11:00〜17:00)


【取材・文・撮影/竹下力】




『明治座 五月花形歌舞伎』 




kick 

shop 

nikkan 

engeki