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江戸川乱歩の人気小説「黒蜥蜴」が、花形新派公演『黒蜥蜴』として6月1日からに三越劇場で上演される。「黒蜥蜴」は、名探偵・明智小五郎と女賊・黒蜥蜴の闘いと愛を、スリリングに妖しく描く面白さで、これまで映画や舞台で何度も上演されている。
今回の新派での上演は、喜多村緑郎、河合雪之丞に加え、尾上松也の妹で新派女優の春本由香、劇団EXILEの秋山真太郎、そしてベテラン永島敏行と、華やかな顔が並ぶ。脚色・演出は齋藤雅文が手がける。
開場90周年を迎える三越劇場というクラシカルな場所を得て、新派ならではの様式美で繰り広げられる今回の『黒蜥蜴』。主役の2人に作品への想いを話してもらった「えんぶ6月号」の記事を、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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黒蜥蜴は女方が演じるのに相応しい役

──『黒蜥蜴』の上演が決まったときの気持ちから伺いたいのですが。
喜多村 乱歩は大好きで小学生の頃から読んでいて、テレビの天知茂さんの明智シリーズもよく見ていたんです。新派に入る前から新派向きの舞台だと思っていたところに、雪之丞の入団など条件が揃い、実現にこぎつけました。新派でやるからには、三島版とは違うエンターテインメント性を追求したいし、新派独自の『黒蜥蜴』になると思います。
河合 黒蜥蜴の役は、初演は先代の水谷八重子先生で、それから美輪明宏さん、(坂東)玉三郎さんと、錚々たる方が演じてこられた憧れの役です。まさかこんなに早くさせていただけるとは思ってもいなかったので、まさに挑むという気持ち。でも、やるからには良い作品にして、再演や新派のレパートリーとなるようなものにしたいです。
──雪之丞さんの入団が大きなポイントになったというのは?
喜多村 黒蜥蜴は女方が演じるのに相応しい役だと思うんです。とても複雑で肉厚な女性像で、物語に描かれていない過去や幼少期、なぜ女賊になったのかなど、謎に包まれた背景を感じさせないといけない。しかも美貌であること。生身の女性よりも女方が演じることでより豊かに表現できることがあるのではないか、と。そして明智と黒蜥蜴は、まるで双子のような美意識で結ばれています。そこは歌舞伎の世界で一緒だった雪之丞と僕だからこそ出せるものがあると思います。
河合 黒蜥蜴は善悪両方の顔を持っていますし、変装もします。彼女の色々な顔を見せるのに歌舞伎で培った技術が生かせますし、黒蜥蜴の背負っている影は新派の深い人間描写で描くことができそうです。また、女方の私が演じることで、さらに役を膨らませてお見せすることができればと思います。
──2人の恋愛模様も大きな見どころですね。
喜多村 そこがこの作品の一番の面白さで、雪之丞となら美しく見せられるなと。
河合 禁断の愛であり、自分の意志ではコントロールできない運命的な関係ですよね。その部分で、黒蜥蜴の内面がふと見え隠れするといいなと思っています。

乱歩の退廃的な空気は新派によく似合う

──新派公演としても、これを機会に新しい展開が考えられそうですね。
喜多村 歌舞伎もそうですが、その演目が最初に作られたときは現代劇なんですよね。それが時代を経て古典になる。歌舞伎は、僕らの師匠(二代目猿翁)がスーパー歌舞伎という形で現代の息吹を吹き込んだものを創り出した。新派は明治に生まれ、その時代時代の最先端を描いてきて、いまでは近代文学を上演できる数少ない劇団です。だからこそ、名作を継承していく一方で、その精神を引き継ぎながら現代的な手法を駆使した作品も生み出していきたいですし、『黒蜥蜴』がその第1歩になればいいなと。
河合 土台がある新派だからこそ、挑戦することができるんです。
喜多村 『黒蜥蜴』でいえば、内面描写は新派の深さで、映像や照明でショーアップする。僕が新派に憧れたのは、伝統を受け継いでいる文芸部があって俯瞰して作品を見てくれる。ですから、しっかりと新派の世界としてお届けできる。僕らはその中で芝居をきっちり演じながら、エンタメ性とショーアップ性をうまく取り入れていくことができれば、さらにお客様の層も広がっていくのではないかと思うんです。
河合 とにかく良い作品を作ることですよね。お客様が喜んでくださる作品にしていくことで、結果として残っていくのだと思います。
──では最後に意気込みを。
喜多村 乱歩って本当におしゃれなんです。どこか外国の作品のような雰囲気もあるし、大正期、昭和初期の退廃的な空気は、新派に似合うんです。僕個人としても、この作品は一生懸命準備してきましたので、あとは19人の出演者とスタッフ一丸となって楽しみながら弾けていきたいと思っています。
河合 100年先にも上演できるようなものにしたいです。そのためにもお客様に「もう1回観たい」、「またやってください」と言ってもらえるように、皆でがんばりたいと思います。

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喜多村緑郎・河合雪之丞

きたむらろくろう○新潟県出身。昭和63年3月国立劇場第九期歌舞伎俳優研修修了。同年4月歌舞伎座『忠臣蔵』で初舞台。同年7月、市川段四郎門下となり10月から市川段治郎を名乗る。後に三代目市川猿之助(現猿翁)の部屋子となり、スーパー歌舞伎で主演を勤めるなど活躍。平成23年12月、二代目市川月乃助を名乗る。新派公演は波乃久里子と共演した『日本橋』で初参加。その後、数々の新派作品に出演。2016年1月の初春新派公演『糸桜』より劇団新派に入団、同年9月に新派の大名跡である喜多村緑郎を二代目として襲名した。

かわいゆきのじょう○東京都出身。昭和63年3月国立劇場第九期歌舞伎俳優研修修了。同年4月歌舞伎座『忠臣蔵』で初舞台。同年7月、三代目市川猿之助(現猿翁)門下となり二代目市川春猿を名乗り、後に部屋子となる。美貌の女方として、多くの舞台で活躍。スーパー歌舞伎供悒錺鵐圈璽后戮任蓮▲淵潴鬚魏栂に演じた。新派公演は、平成22年に三越劇場『滝の白糸』で初参加、初主演。以来、数々の演目に出演。2017年1月の初春新派公演『華岡青洲の妻』より劇団新派に入団、河合雪之丞と名を改めた。

三越劇場での2人のトーク記事はこちら
http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52025494.html

〈公演情報〉 
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六月花形新派公演 
『黒蜥蜴』
原作◇江戸川乱歩  
脚色・演出◇齋藤雅文  
出演◇喜多村緑郎 河合雪之丞/秋山真太郎(劇団EXILE) 春本由香/永島敏行 他  
●6/1〜24◎三越劇場
〈料金〉9,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489、三越劇場:0120-03-9354




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