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熱い支持を受けて再演を繰り返している方南ぐみの人気舞台『あたっくNo.1』が、若いキャストたちによって、6月2日に幕を開けた。(11日まで博品館劇場にて) 
脚本・演出の樫田正剛の代表作で、彼の伯父が戦地に向かう潜水艦内で書き綴った日記から着想を得た作品だ。
役者陣は、人気ダンス&ボーカルグループTHE RAMPAGEの岩谷翔吾と藤原樹が舞台初出演、劇団プレステージの太田将煕、『チア男子!!』『スタミュ』などの高野洸、劇団Patchの近藤頌利、さらに戸谷公人、橋本真一、太田将煕、諒太郎など勢いのある若手たちが顔を並べる。また、初演から出演している扉座の岡森諦やベテラン水谷あつし、THE CONVOYの瀬下尚人が上官として脇を支えている。この合計11名の豪華メンツが舞台を所狭しと駆け巡り、熱気漂う舞台となっている。
 
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【あらすじ】
「見送る者は無言の自然のみ。行く先は何処ぞ…」。1941年11月18日。男たちは行き先も目的も告げられることなく広島の呉から潜水艦伊18号に乗艦した。祖国を離れた2日後、艦長が全員に告げる。行き先はハワイ真珠湾。敵はアメリカ。「敵に不足なし」艦内に若者たちの咆哮が爆音と共に鳴り響く。しかし、上層部は彼らにとある秘密を隠していた。その秘密を巡って彼らは争い葛藤をするのだが、時は残酷に迫ってきて…。

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舞台は息苦しくなるような狭い兵員室後部。潜水艦の後ろの甲板に位置しているこの場所で、ここに兵員は寝泊りをしている。中央には銀行の金庫室にあるような頑丈な扉、そして奥には質素な寝どころのみ。暗転後、上手の「イ−18」と書かれた箱にスポットライトが当たり、やがて、この舞台の着想を得たという、樫田の伯父の魂を宿した柏田勝杜兵曹長(藤原樹)が徐々に浮かび上がる。彼は白い軍服に身をまとい、箱に座って日記を読み上げる。そんな勝杜に、古瀬繁道中尉(橋本真一)が「日記なんて野暮な真似を」などと笑いながら話しかける。密閉された圧迫感のある空間を和ませる雰囲気が清々しい。そこから舞台が始まる。
 
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演劇キックのインタビューで(http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52027751.html)、岩谷翔吾が最初のシーンについて「ダンス的な要素がある」と語っていたように、まるでスローモーションのように走る動作をキャスト全員で魅せる。明日を信じて祖国に戻ろうという熱い決意をにじませたようなダンスで、特にパフォーマーとして活躍中の岩谷翔吾、藤原樹、THE CONVOYの瀬下尚人ら、やはりダンス巧者たちの動きには目を奪われる。
 
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そこから舞台は、横川寛模一等兵曹の誕生日会のために、彼の上司である古瀬の音頭で「Happy Birthday to You」の練習をしているシーンに変わる。もちろんアメリカは敵で英語は敵性語になっているので、日本語に意訳してあるのだが、「誕生日めでたい貴様」というおかしな歌詞や盆踊りのような音頭が、客席の笑いを誘う。

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この舞台は戦地に向かう船上での出来事を描く苛烈な作品だが、若い軍人たちは。まだリアルな戦争そのものからは遠く、10代や20代の放つ青さを全開していて、青春の輝きを感じさせてくれる。そこには、今の時代と少しも変わらない笑いがあり、涙があり、妄想も明日への夢もある。だが、大きな違いは、彼らは戦時下に生きていて、彼ら自身では解決できない葛藤があるということだ。
また、この作品を魅力的にしているのは、すべてのキャストが主人公で、それぞれの立場や考え方が詳細に描かれていることで、それによって俳優個々が光って見えるのだ。
 
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戸谷公人が演じる寺内中尉は力のない上司で、同じ中尉の古瀬が皆に愛されることが許せない。部下の北少尉に押されて出世しようと頑張るのだが、自分が選ばれると思っていた敵軍に打撃をお見舞いする任務に、古瀬の部下の横川が選ばれたとを知り、腹立たしく思う。そんな屈折にとらわれていた寺内が、次第に仲間への思いを変化させていく様は泣かせる。

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太田将煕は寺内の部下の北吾一少尉。軍人らしく上下関係を重視するのだが、寺内の曖昧で弱気な態度が気にいらない。そこで必死に上官らしく振舞ってくれと懇願し、考えをめぐらしたりする。太田はそんな北の若さゆえの直情と、当時の上官・部下に存在する義理と人情の世界を誠実に演じてみせる。
 
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古瀬繁道中尉の橋本真一は誰からも愛される人間を、自然に熱く演じる。古瀬は、部下の横川だけでなく、自身も「小ちゃい潜水艦」に乗り込むこと、それが死地への片道切符の旅であることを皆に隠している。そして国のためだと言い聞かせた覚悟があるからこそ、笑顔を振りまき、誰よりも優しく接する。そんな内心の諦念を見せることない古瀬の明るさが胸に迫る。

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二等主計兵曹の永井実を演じる近藤頌利は、コメディーリリーフ的な存在として場面を賑わせる。彼はコックであることを卑しく思い、自分も爆撃に参加したいという思いがある。また男性しか愛せない彼が、仲間たちを和ませるために、筋肉質な身体を使った裸エプロンなどで笑わせる姿は切ない。

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諒太郎は軍医大尉の村松秀明で、潜水艦内の情報を全て把握したうえで、彼らの悲劇を見つめる重要な役割を果たしている。軍医として皆の健康状態をチェックしているのだが、実は古瀬と横川の健康状態が一番大切で、それに葛藤を感じる彼の、人間らしい悲しみが背中から浮かび上がってくる。

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高野洸は一等兵曹の二本柳肇、知的で合理主義で、平等主義を体現したような芯の強い人間だ。日本の国力ではアメリカに勝てないと現実を訴え、潜水艦内ではすべての兵員が平等ではないかと説く。いわば兵員たちの心の内を一身に担い、同時に客席や現代の人々の戦争観を背負ったような存在だ。高野は、その大役をシャープな身のこなしと豊かな感情表現で演じきる。劇中で上官と取っ組み合いをする場面など、その本気度がリアルに迫って恐いほどだ。
 
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岡森諦は主計兵曹長の渡久保権太。コック長の役割でありつつ父性を感じさせる役どころで、皆をまとめ、また極限状態にある兵員に人間としての尊厳を失わせないように諭し続ける。初演から演じているだけあって、登場するだけで安心感がある。時にはおっちょこちょいで笑わせ、時には老年の夢を語り泣かせるなど、この作品全体を熟知しての演技が圧巻だ。
 
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水谷あつしは整備兵曹長の宇津木真。整備士として艦内を見回っているのだが、どこか間が抜けていて、お茶目といってもいい役柄だ。誰より歌が下手くそで、誰よりも状況が把握できないのだが、それゆえのホッとさせる部分と可笑しさを巧みに演じてみせる。
 
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瀬下尚人は大滝鉄男少尉で、元は陸軍や海軍という表舞台で活躍していたことで、潜水艦内の兵員を「ドン亀」呼ばわりする。この戦争に諦念を感じているやさぐれた存在なのだが、兵員たちの熱い息吹に触れることで、次第に潜水艦の役割に目覚めていく。その変貌ぶりをいぶし銀のような演技力で見せてくれる。
 
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そして初舞台の2人。THE RAMPAGEの岩谷翔吾は横川寛模一等兵曹を演じて、初舞台とはまったく感じさせない生き生きした存在感がある。「小ちゃい潜水艦」に乗って敵地へ乗り込む覚悟を持った彼は、丸刈りの頭で、胸を張って声を出し、はち切れんばかりの笑顔をいつも忘れない。その明るさと強さが、観るものの心に迫り、最後にとてつもないカタルシスをもたらすのだ。

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同じくTHE RAMPAGEの藤原樹は柏田勝杜兵曹長を演じていて、語り部役でもあり、仲間と仲間をつなぐ存在として、ある意味ではこの舞台のすべてを表現してみせる。時には10代の若者らしいたわいのない妄想で笑いを取り、泣き、怒り、悲しみを、ダンスとセリフと表情で力強く訴えてくる。その姿には、1941年の開戦前夜の日本人の心情そのものが託されているような気さえして、胸が痛くなるのだ。
 
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作・演出の樫田正剛の脚本は、戦争を決して悲しみだけでは捉えていないように見える。反戦や非戦といった括りだけでは語れない、人間そのものにある業を、極限状態の中から丁寧にすくいながら、笑いに、涙に、怒りに変えて見せる。登場人物それぞれのキャラクターを、きちんとフォーカスしてみせる演出は見事で、人間個々の命の大切さを伝えてくるとともに、どんな状況でも勇気を忘れないで生きること、そして誰もが寄り添って生きることが希望だと訴えかけてくる。そのことで時代性を感じさせない新鮮な舞台として、明日も見えないような2017年の日本で生きる我々にも、ひたむきに生きる勇気を与えてくれるのだ。

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(注)ここから具体的な内容に触れている写真があります。事前に情報を入れたくない方は、観劇後の閲覧をお勧め致します。

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〈公演情報〉
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方南ぐみ企画公演『あたっくNo.1』
脚本・演出◇樫田正剛 
音楽◇三沢またろう
出演◇岩谷翔吾 太田将煕 岡森諦 近藤頌利 瀬下尚人 高野洸 戸谷公人
橋本真一 藤原樹 水谷あつし 諒太郎(50音順)
●6/2(金)〜11(日)◎博品館劇場
〈料金〉¥6,500(全席指定・税込)
〈お問い合せ〉方南ぐみ info@2017attackno1.info
 


【取材・文・撮影/竹下力】



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