【対談】粟根まこと(劇団☆新感線)× 植本潤(花組芝居)

俳優になってほぼ30年。今回対談していただいたお二人は、なんとも魅力的な自然体で、小劇場のリーディング公演から、大劇場のミュージカルやエンタテイメント作品まで、関係各所でその存在感を遺憾なく発揮しています。その秘密っていったい何処にあるのだろうか? 現代俳優道の一端を知ることで、少しでも表現世界の深淵に触れてみたい! 演劇ぶっくをつくって30年、お二人とほぼ同時期に“演劇”の世界に足を踏み入れてしまった、弊誌編集長がその疑問を解くべく、及ばずながら取材を担当いたしました。(えんぶ6月号より転載)

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 植本潤 粟根まこと

客席数30の劇場で共演。

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ゼータクチク vol.02『春宵・読ミビトツドイテ』
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亀山ゆうみ 草智文 粟根まこと 植本潤

──まずはお二人が最近出演されていた池袋にあるカフェシアターでの公演のお話から。
粟根 ゼータクチクvol.2ですね。
──ゲストで参加されてるんですか?
植本 はい、そうです。
粟根 一応、TEAM HANDY(チームハンディ)さんの企画で、彼らは「ACTACTION(アクタクション)」というアクションバリバリの企画をやりながら、それとは別に小さい劇場でお芝居中心のこともやりたいという「ゼータクチク」というレーベルがあって。
植本 主宰の亀山ゆうみさんという方は、お芝居の現場で殺陣をつけたり、アクション指導をしていらっしゃる方なので。
粟根 vol.2になって、わかぎゑふさんとやってみたいと。そして植本潤さんともお願いしたいと。はじめはだから、亀山、草(智文)、植本3人と、わかぎゑふさんが作・演出として関わる、という企画だったらしいんですけど。(ふーっと息を吐く)植本が、何を思ったか、いろんな人に声をかけ始めて。
植本 まあ紆余曲折!  粟根さんにも出演していただいて。そしたら、もう働く、働く。当パンのデザインとか、あと、タンブラーのデザインとかやるし、稽古場でも舞台監督のように、物事をしめていくしね。
粟根 ていうか、少人数だから、みんなでわーわーやんなきゃいけない。ちっちゃーい稽古場でやっていくから。分担作業を。植本君は気が利くから、いろんな食べ物を買ってきてとか。そういうメンタル面でのバックアップがうまいから。
植本 ふはは。そんなこと言われたことない!
粟根 私はそういうのが苦手だから、じゃあ、タイム計りますとか。そういうようなことを。物理面の、フィジカル面のバックアップをするという。
植本 本当にこの人がつかまって良かったんです。すごい機能してたし、みんな感謝してる。
──粟根さんがいらっしゃるとちょっと全体の雰囲気が大きくなるっていうか、ね。公演自体は、わかぎさんの作で、台本があって作られてる?
植本 はい。
粟根 わかぎさんの過去作、だいたい短めの作品から抜粋というか、選んで。
──作品そのものも面白かったけど、みなさんがすごく楽しんでる雰囲気をまた一緒に楽しむ感じで。ああ、一緒に楽しめてよかったなぁと。

唐十郎×応用微生物学VSガラスの仮面×演劇専修


──今回は、“小劇場演劇”が形になり始めた時期にスタートして現在に至るお二人に。俳優としての活動ぶりを語っていただきたいという企画なんですね。
植本 第四世代って呼ばれてるんだっけ? おれたち。
粟根 アングラとか野田(秀樹)さんとかがあって、その後ですね。
──小劇場公演のおもしろい形ができ始めたちょうどいい時期に。
植本 1980年代初め頃ですかね。
──粟根さんがちょっとだけ先輩ですね。

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粟根 芝居を始めたのもちょっと早くなるんですけど、まあまあまあ。
──粟根さんは最初の頃は大学生だったし、お芝居そのものにはそんなに興味がないというか、
植本 はははは。
粟根 そうですね。その頃は、いずれは辞めて科学者になる予定で人生を進めているわけですから。
──発酵?
粟根 はい。応用微生物学。
植本 カビですよ。
粟根 まあ、高校の時にも演劇部で唐十郎さんとかをやったりしてたんですけど。
植本 へー。
粟根 で、「大学入ったら、ま、勉強しよう!」と。でも、一応、なんか学内劇団あるらしいからって、ちょっとだけ観に行ったら、もう入らされて。
植本 はー!
粟根 大阪って、まず演劇人口が少ないから、「ちょっと無料で手伝いに来て。酒、無料で飲ませるから」みたいな感じで貸し借りが多いんですよ。で、新感線がその当時、一番メンバーが少なかった時期で。「手伝いに来て」って言われて、勉強がてら、仕込みとか手伝いに行って。
植本 仕込みの方なんだ。
粟根 スタッフとして手伝いに行って。で、無料でお芝居みせてもらって、お酒を飲んで。いるうちに、今度は出演者が足りないと。「出る?」ということになって、出たらちょっと楽しかったので、新感線に入ったという状況です。
植本 あ、楽しかったのね。
粟根 そう。
──そこが大きな分かれめでしたね。植本さんは大学で演劇を学んでるんですよね。

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植本 演劇専修。高校の時に、お芝居観たこともなかったのね。ただ、寮生活だったんですけど、『ガラスの仮面』が回し読みされて、みんなが「おもしろいね」って言ってたんだけど、おれだけは、「あ、これやろう!」って思ったの。
──え、演劇を? 『ガラスの仮面』を読んで、演劇をやろうって?
植本 そう。読んで。
──そんなに意識は高くないんですね?
植本 なんて?
──だって、唐さんの芝居を「やろう!」っていってる人と、『ガラスの仮面』を読んでって。
植本 いやいや、『ガラスの仮面』だってすごいんだよ。
──それはそうですけど。でも実技がないですよね。早稲田の演劇科って。
植本 うんうん。高校が付属だったからさ、そのまま行っただけで。で、大学の演劇サークルに入って、そこが解散しちゃったときに、花組芝居が募集してて。「この公演に出ませんか?」っていう、座員の募集ではなくてね。
──1回だけ。公演の。
植本 それに応募したら、それから20、30年近くなってしまった。新感線は創立してから何年くらいだっけ?
粟根 37年くらいです。
植本 で、在籍何年?
粟根 31年くらいかな。

外部出演の多寡と、出演希望劇団について

──お二人の共通の部分で言うと、外部出演、多いですよね? いろんな劇団だけじゃなくて。植本さんで言えば、『屋根の上のヴァイオリン弾き』まで来てますからねぇ。ミュージカル。
粟根 出たんだ。日生(劇場)?
植本 うん、日生。
──に出ていらっしゃって。花組芝居からそういう落差が大きいじゃないですか。
粟根 本当に植本君は幅が広いと思います。ストレートプレイから、ミュージカル。小っちゃい劇場から大きい劇場まで。人脈がものすごい広いんですよ。またみんなと仲良くしてるから。
植本 ふぇふぇふぇ。なんでそこ嫌そうに言う。
粟根 いやいや。ぼくは出てる出てるとおっしゃいましたけど、実はぼくが演出を受けた方って、数が少ないんですよ。
──あ、そうですかね。
粟根 いのうえ、G2さん、成井豊さん、河原(雅彦)さんを除いちゃうと、 木野(花)さんとか加納(幸和)さんとか上田誠さんとか宮田慶子さんにそれぞれ1回ずつとか。その程度。
植本 鈴木勝秀さんとか。
粟根 そのくらいなので、幅が狭いんです、わたし。
──まぁ、でも劇団☆新感線の公演期間も長いからね。
植本 そうそうそう!
粟根 まあ、それもありますけど。本当に限られた演出家としか仕事してないんですよ。呼ばれないし。
植本 あれ、どこだっけ、出たいとこ。
粟根 イキウメ。
植本 出たいんだって。
──前川さん? 何で?
粟根 SFを今、大手を振ってやってる劇団がないので。
──なるほどね。
粟根 いつ見てもおもしろいですし。あとラッパ屋さん。この2つは出てみたいですって言ってるんですけど、一回も呼んでもらえない。
植本 うはははは。
──植本さんは新感線にも何回か出演されてますよね。
植本 『花の紅天狗』が最初ですね。新感線ってレーベルがいくつかあるじゃない? 「RX」とか「ゴージャス」とか、今やすごい人を芸能界から呼んでくるじゃない。その時、1回目の「ゴージャス」というときのゲストが、木野花さんとおれと、川崎悦子さん、そんなにゴージャスじゃなかったね。
粟根 くはははは。
──出演されていてどうでしたか? 時期時期でいろんな感想があるとは思いますけど。
植本 楽しかったですね。とにかく。でも向こうも珍しがって使ってくれてる感は感じました。女形の役もあったのでね。
──お二人は、一応、俳優として成功した。と、思っていて、
植本 30年俳優を続けて居られるということでね。
──もちろん、俳優としての資質というか、頑張りがあったけど、何かもうちょっと何か、ほら、「何か別の力が働いてる」っていうのが、この前、怪我をしながら優勝しちゃった稀勢の里が言ってたけど、何かそういう上昇気流に乗ったみたいな?
粟根 ぼくは明らかにそっちですね。あの、植本君は学生の頃から演劇をやろう! と思ってやってるじゃないですか。だからたぶん、そして劇団に所属しながら、「よそにいっぱい出たい」っていうのをちゃんと言って、それを通してもらって出て、今の「植本潤」がいる。けど、わたしの場合、もうずっと巻き込まれているだけの人間で。
植本 へへへ。
粟根 人生で。劇団☆新感線にたまたま入っちゃったら、劇団☆新感線が大きくなっていって。みたいなことなので。大きな力というか、劇団の力が大きいし、まわりで面白がっていただいた方の力が大きいし。わたし自身、何の努力もしてないですよ、簡単に言うと。

客席がまわる劇場への出演と、改名!

──ま、そんなお二人の今後ですけど。一番身近なところで言うと、豊洲の、
粟根 IHIステージアラウンド東京という新しい劇場で劇団が初の試みを、この号の発売の頃にはとっくに始まっちゃってますけど。
植本 第一弾はね。
粟根 このインタビューは実はその直前でございまして。わたしは他人事と言いながら、自分事でもあり、ちょっとドキドキしてまして。第一弾が3月30日に初日が始まります。
──粟根さんが出演されるのは、第2弾。
粟根 6月27日から。植本潤さんが、植本純米に変わる日が初日でございます。
植本 ありがとうございます。
──それも伺おうと思ったんですけど。植本さんは個人的なことが一番、メインな。
粟根 人生を変える日だね。
植本 50歳の誕生日に、改名という。
──改名?
植本 改名します。

改名記念写真
植本純米改名記念写真

粟根 とりあえず、その訳は知りたいね。
植本 それはやっぱり、劇団花組芝居というところにいるからっていうのが大きいと思うんですけど、古典芸能に対する憧れですね。歌舞伎俳優とか、噺家さんとか。
粟根 襲名?
植本 襲名はできないじゃない? でも初代を名乗るつもりで、苗字は何でもいいけど、「何とか純米」さんっていう人がこの後増えていけばいいなって。
粟根 ふはははは。出ねえよ! 「何とか純米」はもう出ないでしょ。
植本 植本純米になるんですけど。
粟根 なぜ純米にしたかっていうのは興味がある。
植本 それはね、口に入れるものにしたかった。
粟根 食べ物?
植本 飲み物だけど。あとは桂都丸さんていう人が何年か前に「塩鯛」っていう名前に変わったのね。「塩」に「鯛」。素敵な名前だなと思って。
──奥さんは何って言ってますか?
植本 あの、純米っていう名前だから、「飲んだくれて死ねばいいのに」って。
粟根 ははははは!
植本 うちの母親からメールが来て、「お母さんは反対です」って。わはははは!
──素敵なお母さんですね。
粟根 誰も勧めてないってことだね?
植本 もう改名が迫ってきたから、ちょっとドキドキしますね。
粟根 本当にいいのかおれって。
──じゃあ、まあ、お二人ともいい方に囲まれて、俳優をされているわけですね。粟根さん、次回公演についての心構えは?
粟根 劇場を1回だけ、見に行ったんですけど、まあ、それは大変な劇場ですから。みなさん、行かれた方は驚いたと思うし。ただやる方がどうなるかは、まだぼくは体験してないんで。
──客席が動くんですよね
粟根 舞台が外側ですから。客席が回るわけですよ。まわりが舞台なんですよ、客席が真ん中にあって、ぐるぐる回るという劇場なので。全部のシーンが同時に見えるわけではないので、視覚は限られるんですけどもね。俳優は通常の舞台に比べて行動範囲が広いので、出番だ、着替えだ、楽屋戻るだ。常に走っていると。大変だと。
植本 あとは、みんな心配してること、お客さん酔わないかどうか。けっこう、高速で回るんだって。
粟根 ま、スピードは可変なんですけど。大丈夫だと思うんですけどね。問題点をこれからの本公演で、解消していかないといけない。花チームがいろいろとノウハウを獲得していただいたものを、我々がいただいて、『鳥髑髏』。6月27日から。
──よかったですね、2回目で。
粟根 はい!
植本 わははは。
──新感線は昔からエンターテインメント志向が旺盛で、神戸の遊園地で、
粟根 はい、ポートピアで。
──やったりもしてますからね。それの延長線上にあると思えば、劇団☆新感線の初心は豊洲公演にもあるわけですよね。
粟根 んんー、派手好きというか。おもしろがりはあると思います。
──初心からつながって、30何年来て、ここでまた動く劇場でできるなんて素晴らしいですね!
粟根 無事に終わることを祈っています。
──植本さんの今後はどうなんですか?
植本 個人的にはこまつ座の『イヌの仇討』がありますが、まずは改名です。
──改名がメインなんですね?
植本 いやいや!? こまつ座公演は演出が桟敷童子の東憲司さんという初めてご一緒する方なので、稽古を心待ちにしてます。あとは劇団が30周年なんで、記念公演のどれかには出るんだろうなと。

そして、将来のビジョンは!


──楽しみですね。近い将来はそれとして、将来うんと遠くを見据えたら、どんなビジョンがあるんですか? お二人は。
粟根 ないですね。
──あ、素晴らしい。
粟根 元気に舞台がやれてればいいなって。最近、大先輩とご一緒することが増えてきて。60、70、80代の方とご一緒すると、気が遠くなりますね。あと20年、30年、かかってあそこに行けるかっていうことを考えると、そこまでまず元気にやらないとならないし、やり続けるとあそこに行けるのかということを考えています。元気でいるということが大事だなと思って。それ以上のビジョンというのが、「どこそこの劇場に出たい」とか、「どういう作品に進出したい」とかそういうのはわたし全くないです。
──植本さんは?
植本 なんかさ、古典の人って義太夫の人とかも、70歳の人が80歳の人に教えを請いに行ったりするのを見ていると、長くやっただけおもしろいものが見えてくるんだろうなと思っていて。歌舞伎以外で、現代劇の女形の末席に身を置いている人間としては年を取ってね、おじいさんになって行ったときに、それこそお姫様とか町娘とかができるかどうかですよ。できたらいいですけどね。そういうことは可能なのかどうかというのを探ってみたいと思います。
──じゃあ、今はその前哨戦? 素でやったり。
植本 そうそう、この間の花組公演『夜叉ケ池』で百合っていう役を、
粟根 スキンヘッドでね。
植本 鬘もかぶらずに、やらせてもらって有り難かったし。座長の加納(幸和)さんは「そういうのも、ありよ、ありよ!」って言ってくれたし。「ああ、ありか」って。
粟根 あの公演は何でもありだったね。


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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。大阪大学工学部醗酵工学科中退。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。演劇ぶっくコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。

【出演予定】
ONWARD presents 劇団☆新感線
『髑髏城の七人』
Season鳥 Produced by TBS
髑髏城PR

作◇中島かずき 演出◇いのうえひでのり
出演◇阿部サダヲ 森山未來  早乙女太一/松雪泰子/粟根まこと 福田転球 少路勇介 清水葉月/梶原善/池田成志 ほか
○6/27〜9/1◎IHIステージアラウンド東京
〈お問い合わせ〉0570-084-617(10時〜20時)


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うえもとじゅん○岩手県出身。早稲田大学演劇専修卒業。89年「花組芝居」に参加。以降、老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。演劇キックweb対談「『過剰な人々』を巡る♂いささかな☀冒険」ではえんぶ編集長と月イチで様々な戯曲について語り合っている。

【出演予定】
こまつ座『イヌの仇討』
【アタリ】こまつ座PR
作◇井上ひさし 
演出◇東憲司
出演◇大谷亮介 彩吹真央 久保酎吉 植本潤 加治将樹 石原由宇 大手忍 尾身美詞 木村靖司 三田和代
●7/5〜23◎紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
〈お問い合わせ〉こまつ座 03-3862-5941
http://www.komatsuza.co.jp/


【構成・文◇坂口真人 撮影◇山崎伸康(人物) 佐藤瑞季(舞台) 伊藤馨(人物/改名分)】



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