DSC_3333

日本の舞台芸術の中心地である千代田区有楽町、そこに位置する「有楽町マリオン」に、新しいエンターテインメントを海外に発信する目的の劇場「オルタナティブシアター」が、7月7日にオープン。そのこけら落とし公演として上演される『アラタ〜ALATA〜』の初日が開幕した。

脚本はスーパ歌舞伎からミュージカル、オリジナル戯曲まで幅広く手がける横内謙介。演出はつか作品をはじめ、商業演劇で気を吐く岡村俊一。ダンスクリエイターには、女優&コレオグラファーとして活躍するElina。サムライアクション・ディレクターには、殺陣に抜群の才能を発揮する俳優・早乙女友貴。そして、オーディションで抜擢された若干18歳の吉田美佳子。音楽は、素性を一切明かさない謎の集団で、リリースしたCDはすべてオリコンインディーズチャート1位に輝くMili。さらに舞台美術は、小劇団からプロデュース公演まで500作以上を手がけ、世界でも活躍する加藤ちか。イリュージョン協力としてラスベガスの公演でも話題をさらったAi and YuKi。映像では劇団鹿殺し、地球ゴージャスなど様々な舞台で実力を発揮するムーチョ村松。まさに錚々たるキャスト・スタッフが名を連ねている。

★ロビー170604_a_0003
★客席170604_a_0295 (1)
ロビーと客席
 
公演はすべてロングランを予定しており(現在は2ヶ月の予定)、すべてのキャストが回替わりする可能性のある公演となっている。そのため千穐楽は設けず、海外の観光客から日本人まで、どんな客層も何度も足を運べるように、そして、ブロードウェイの日本版として、平日から休日までのナイトライフを楽しむことのできる新たな観光スポットを目指している。

この『アラタ〜ALATA〜』の初日を控えた7月6日に、「オルタナティブシアター」のテープカットセレモニーと公開ゲネプロが行われた。

DSC_1919
田沼和俊、岡村俊一、石川雅己、三浦哲裕、横内謙介
 
【テープカットセレモニー】
江戸太神楽の丸一仙翁社中によって、劇場の繁栄を祈る和太鼓と横笛の「お多福来い来い」が演奏されたあと、株式会社スタジオアルタの代表取締役社長の田沼和俊が挨拶。その後、千代田区長の石川雅己が祝辞を述べたのち、『アラタ〜ALATA〜』で脚本を担当した横内謙介、株式会社ルミネの常務取締役の有楽町店長の三浦哲裕、石川雅己、構成・演出の岡村俊一、田沼和俊によってテープカットが行われ、獅子舞が舞い祝祭ムードを彩った。セレモニーのあとは、丸一仙翁社中の傘回しやバチのジャグリング、劇場パフォーマーを務める「CRAZY TOKYO」の曲芸や、人とロボットの音楽ユニット「mirai capsule」による、ヒューマノイドタブレットのPepperのパフォーマンスが披露され招待客の目を楽しませた。

DSC_1963
DSC_2009
DSC_2042

【挨拶と祝辞】
 
DSC_1888
田沼和俊(スタジオアルタ代表取締役社長)
今日は暑い中、ご来場いただきありがとうございます。スタジオアルタは『笑っていいとも!』の新宿アルタ館から、千代田区有楽町2丁目のマリオンビルに移して、「オルタナティブシアター」として開業いたします。「オルタナティブシアター」はアルタの語源であります、「既存のものにとらわれない」エンターテインメントを提供していきます。訪日観光客をターゲットにしておりますが、日本の皆様にも、楽しめるものを提供できると思います。日本人は自分のことを自慢することが得意ではありませんし、コミュニケーション下手なところがありますけれども、開業に向けて準備してきたことを振り返りますと、苦労をしながらも、たくさんの方々に支えられ、ご支援があって、ここまできたと自負できます。千代田区には、歌舞伎座から始まり、劇団四季、帝国劇場、宝塚劇場もあります。日本のエンターテインメントを担ってきた諸先輩がたのパフォーマンスを学びながら、新しい価値をどのように想像していくのか考えながら本日を迎えることをできました。我々は世界に向けて、キーワード「さぁ、次は世界を笑顔に!」を胸に、新しいエンターテインメントを提供していきたいと思っております。こちらのビルは築30年ぐらい経っておりますが、メンテナンスも行き届いております。設備を維持されてきた方々は大変な苦労をなさったと頭の下がる思いですし、この映画館を劇場にリフレッシュするために色々な努力をしてきました。ハードに限らず、ソフト面につきましては、国境を越えて、言葉の壁を越えて、エンターテインメントを提供していきます。これから公開ゲネプロがございますが、セリフを極力減らした、若い方から、お年寄りまで楽しめ、そして言葉の壁を越えた娯楽作品でございます。最後までゆっくりと御覧いただきまして、感想をいただければ幸甚です。これからもご支援のほど、何卒よろしくお願いいたします。
 
DSC_1907
石川雅己(千代田区長)
千代田区は、田沼社長からお話があったように、日本のブロードウェイといっても過言ではありません。現代社会は、既存の仕組みにこだわらない新しいコンセプトのものを求めている傾向にあります。そこに古い枠にとらわれない新しい劇場を作ろうということで、最新の設備や映像装置を駆使して、迫力満点の舞台を披露いただくとお聞きし、地元の区長として喜びに絶えません。3年後はオリンピックとパラリンピックが開催されます。内外のお客様、特に外国からのお客様がお見えになると思います。この劇場に、おそらく多くの外国人の方が訪れ、舞台を楽しんでお帰りいただける。オリンピックはスポーツの祭典だけではありません。文化や芸術、教育との融合がオリンピックの基本的な精神になっております。その意味で、新しいコンセプトの劇場が開設されることは、オリンピックの精神にもつながると期待しております。今日の日を迎えるに当たり、心からお祝い申し上げます。

【ゲネプロレポート】

DSC_3113

2020年、人口一千万を越える巨大都市トーキョーに一人のサムライが現れた。その名は「アラタ」。妖術使いの怨霊・玉野尾に襲われた千代姫を守る戦いで追い詰められ、祈祷師の白百の呪文によって、戦国時代から現代にタイムスリップしてきたのだ。アラタは夜の銀座で、現代を生きる女「こころ」に救われる。そこから、現代東京の常識を全く知らない「アラタ」と、古くさいことを嫌う「こころ」の東京珍道中が始まる。そして、古代から追いかけてきた玉野尾が2人の行く手を阻む。はたして「アラタ」は自分の時代に戻れるのか…?「こころ」の運命は…?

DSC_2671

開演のブザーがなり緊張感が高まると、「Alternative Theatre」と書かれた幕の中央にスポットライトが当たる。舞台が始まるのかと思いきや、モップを持った清掃員の格好をしたSATOCOによるコミカルなマイムが始まる。普通の劇場であれば、アナウンスによる「携帯の禁止」「撮影禁止」「食べ物の禁止」「非常誘導灯の消灯」といった劇場あるあるが、日本語や英語やハングルといった多言語が幕に映されながら説明される。この時点で、この舞台は普段観劇する体験とは異なる楽しみを与えてくれることを予感させる。
 
SATOCOのマイムの後に幕が開くと、そこに広がるのは細部まで目の行き届いた美しい舞台装置だ。ダンサーや役者達に所狭しと動けるように用意された広くて黒い床。上手と下手には3枚の切れ込みの入ったギザギザの幅の異なるパネルが奥へと連なり、役者達がパネル同士の間を出たり入ったりする。一番奥のパネルは開閉式になっており、ドアのような役割を果たす。それが閉まると、舞台全体がスクリーンの役割を果たし、ムーチョ村松らによる映像が流れ場所の説明やシーンに様々な感情を与えてくれる。
中央には2段の台座。台座と台座の間にはLEDの照明が仕掛けられていて、それが明滅し、天井のライトとまじりあうとクールな印象や、ノスタルジックな雰囲気に彩る。一番上の台座は昇降式で役者が宙に浮く仕掛け。奥には開閉式のドアがあり、映像によって浅草寺の境内の門やトイレのドアなどに変わる。シンプルでありつつ精巧な加藤ちかの装置とムーチョ村松らによる映像の掛け合いが絶妙だ。周りを見れば、天井には2700灯のフルカラーLEDが劇場を覆い、劇場全体を様々な色に染め上げる。フライングシステムは2基用意されており、観客席も劇場の一つだと感じさせてくれる素晴らしい劇場だ。
 
DSC_2142

そんなシンプルで精巧な舞台の中央に、こころ(Elina)がやってきて、毎晩恐ろしい夢を見てしまうオブセッションをソロのダンスで華麗に踊り、そして寝汗をかいて目覚めるといつものようにやってくる退屈な日常を、ダンサー達と表現していく。行きも帰りもぎゅうぎゅう詰めの満員電車。無駄ばかりで意味のない仕事。ひっきりなしにかかってくるムカつく携帯電話。そんな現代日本の陰の部分をダンスでリズミカルに表現していく。

オープニングのシーンは、公開稽古(http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52030137.html)でも書いたように、完成された照明、装置、音楽、それらが絡み合うことで、次元の異なる臨場感を与えてくれる。
Elinaのダンスも彼女が同サイトで「まだ改善の余地がある」と語った通り、稽古の数倍のキレを見せる。とにかくダンサー達のキレとそれに勝るとも劣らないコンビネーションが圧巻だ。Miliのアンニュイな音楽も完成された劇場で流れると、こころの心模様をリアルに表現しているように聴こえ、日本人の感じるフラストレーションを外国人にもわかりやすく伝えてくれる。
 
DSC_2425

その後、戦国時代へとシーンが移動し、アラタが登場し殺陣が始まる。千代姫(吉田美佳子)を守るための戦いだが、アラタの早乙女友貴の殺陣が稽古で見た以上に抜群のスピードと迫力だ。瞬きさえも許さないほどのすばやい刀さばきで、手首のスナップを効かせたしなやかな殺陣の美しさは圧巻。その刀をくるくる回し鞘に納める流麗な動きはかっこいいの一言で、外国の観光客に男の子がいたら武士に憧れてしまうのではないだろうか。
 
だがアラタは多勢に無勢で、敵に斬られて倒れてしまう。そこに千代姫がスポットライトとともに現れるのだが、吉田美佳子の凛とした佇まいが美しい。彼女は「鼓」を打つのだが、鼓を打つたびに苦しみだす。その煩悶の表情が実にリアルで痛みが客席に伝わってくる。だが、そのときアラタが復活する。千代姫が「鼓」を叩くことによって己の命と引き換えに、他人の傷を癒すことができるとわかる。
 
DSC_2336

やがて後方のPAシステムから不気味な笑い声がしたかと思うと、妖艶な衣装を着た玉野尾(寿美)がフライングで観客席の上を飛びながらやってくる。この劇場ならではの立体的な演出だ。千代姫たちは玉野尾たちに破れ、アラタは小さな箱に閉じ込められてしまうのだが、その場面はAi and YuKiのイリュージョンでファンタジックに魅せる。千代姫は玉野尾に囚われるが、アラタの入った小さな箱は白百(SATOCO)が奪い返し、呪文によって現代に飛ばす。SATOCOは開演前のマイムも印象的だったが、白百の切迫感やコミカルな表情は、パントマイマーでしか表現できないリアリティーがある。
 
DSC_2685
DSC_2471

シーンは現代に戻り、こころの前に「鼓」とともにアラタが現れ2人は出会う。こころはアラタに興味を持ち行動をともにする。そこからの2人の珍道中は、初めて日本にやってきた外国人の行動と重なって面白い。浅草寺を興味深げに散策したり、歌舞伎の斬り合いを本物と勘違いする。トイレのウォシュレットに驚いてトイレを破壊してしまったり、カルチャーショックの微笑ましいシーンの連続が、このプロダクションの「さぁ、次は世界を笑顔に!」というテーマを体現しているようだ。だがアラタは警察に絡まれ、機動隊にまで襲われる羽目になって…。

DSC_2983

横内謙介のストーリーテラーとしての卓抜した才能は、現代と過去をテンポ良く交差させ、時には過去と現在を同居させながら幻想的に物語を進めていく。歌舞伎、切腹、花札といったジャポネスクの象徴と、現代日本ならではの先端的文明を織り交ぜながら、その意味を考えさせ、エンターテインメントとして問いかける手腕はさすが。セリフはほとんど書かれていない作品だが、物語に込められた作家の魂は、観るものを確実に感動させる。
 
DSC_3279

岡村俊一の演出はきめ細かく、かつスペクタキュラーで、横内の意図を十二分に表現する。芝居、ダンス、殺陣の3つの要素を、スピーディーに無数に掛け合わせながら、映像、照明、音楽と巧みに組み合わせ、役者やダンサーたち1人1人をフィーチャーする。70分という制約を逆手にとって、「どのシーンも見逃せない」「どのシーンも見逃させない」という、観客と演者が一体となった空間を成立させてしまう。

DSC_3186

最新テクノロジーを駆使する斬新さと、それに抗うような役者たちの生の肉体から立ち上る熱が相俟って、観るものに圧倒的なカタルシスをもたらしてくれるこの舞台。「ノンバーバル」と銘打たれているように、テクノロジーと演技の融合が新たな言語を生み出したような感覚さえして、それを共有するために必要なのは、国境を超えた友愛の感情だと教えてくれる。そしてこの「ノンバーバル」なエンターテインメントが、ここから世界に発信されていく、その歴史的な瞬間に立ち会えた幸せに感動する。
劇中でアラタとこころが交わす何回かの友情「ゆびきり」、それは過去を大切に受け取ることで現代が輝き、やがて未来への大きな架け橋になることを訴えかけてくる。改めて「ノンバーバル」という言葉の意味を考えさせ、真摯なメッセージを感じさせてくれる舞台でもあるのだ。
 
【囲みインタビュー】
 
DSC_3390
岡村俊一、吉田美佳子、早乙女友貴、Elina、横内謙介
 
ゲネプロの後、岡村俊一、Elina、早乙女友貴、吉田美佳子、横内謙介が登壇。囲みインタビューが行われた。

岡村俊一(構成・演出)
ゲネプロを観ていただいた外国の方にも、日本のエンターテインメントとして、心に届いたような気がします。この劇場は最新鋭の機材を使っています。映像も、照明も、音楽も、ぴったり揃って動くシステムを使って演者達が表現する70分間は圧巻です。日本でもこれほどの舞台はないと思います。

Elina(ダンスクリエイター)
私はゼロから携わらせていただいたので、それぞれの役割分担を考えつつ、1人を見てもストーリーがわかるようにしたいと思っていました。それが何回も観ていただけるポイントだと思います。激しい舞台で、終わった後、楽屋で痙攣を起こしてしまいました。「ゆびきり」がポイントになっていますが、汗と疲れで私と早乙女さんの指が震えたりふやけているんです(笑)。だからといって、力を抜いてクオリティーを下げるのではなく、いい意味での逃げ道を探しながら、どんどんクオリティーをあげるようにしたいと思います。

早乙女友貴(サムライアクション・ディレクター)
素直な感想は運動会をやっている感じです(笑)。ひたすら走って、汗を流しながら頑張らなくちゃいけない体力勝負の舞台ですね。現代と戦国時代で殺陣の種類を変えていますが、現代では僕も今までやったことがなかった中国アクションをやらせていただいて勉強になりました。いろんな場面で殺陣を変えていくところを見ていただければと思います。ノンバーバルな作品の経験で新たなジャンルが広がりました。機会があったら海外で言葉がなくても殺陣で表現してショーができたら嬉しいです。Elinaさんと同じように終わったあとは楽屋で倒れていました(笑)。酸欠状態になっていました。体力勝負なので、食べること、それから舞台に慣れることですね。まだ、演技や殺陣で力むところがあるので、もっとこの作品に慣れて、ペース配分をしながら、いい作品にしていけたらと思います。この作品はノンバーバルですから、外国の方や日本人でもお子さんからお年寄りの方まで楽しんでもらえると思うので、僕らの熱いエネルギーを感じに劇場に遊びにきてください。

吉田美佳子(千代姫役)
セリフの少ない稽古は役者として勉強になりましたし、Elinaさんと早乙女さんと一緒にお芝居ができることが嬉しかったです。

横内謙介(作)
外国の人にも日本語を覚えてもらいたいと思っていたので、台本にはセリフがありましたが、それがどんどん消えて、どこにいったんだろうと思って観ていましたら、ダンスや立ち回りの中に僕の言葉があって、みなさん丁寧に演じてくださった。言葉が消えたのではなくて、形を変えて舞台上にあるんだなと感動しました。最新技術が投入されていますが、最後に胸を打つのは人間の力だと思って楽屋に行ったら、早乙女くんとElinaちゃんは立てなくなっていました(笑)。ここまでエネルギーを出し尽くして最新技術と戦っている人間がいるんだと思うと、岡村さんもおっしゃっていましたが、人間の力を見せるパフォーマンスになっていて、お客様も感動してくれると思っています。大変だけど頑張ってくださいね。

DSC_3394


 〈公演情報〉
alata_main_visual_s

「オルタナティブシアター」こけら落とし公演
『アラタ〜ALATA〜』
脚本◇横内謙介
演出◇岡村俊一
音楽◇Mili
ダンスクリエイター◇Elina
サムライアクション・ディレクター◇早乙女友貴
出演◇村井亮 MANNA Riko Koyama 林祐衣 笹原英作 宮迫誠 Rina Shinohara Yuito Elina 吉田美佳子 Sakurako Ozawa 岡本ゆうか 青木源太 真由 SATOCO 早乙女友貴 寿美  美月 三上真司 Yume Hirono 青山萌 SHIOR! Kana MOMOCA 久保田創 K@ori 鈴木百花 塚田知紀 KOKi 根本なつき 椎名康裕 高橋邦春 中野里香 塚越靖誠(※ファーストネームのアルファベット順)
●7/7〜ロングラン公演◎オルタナティブシアター
〈料金〉8,000円(全席指定・税込)
〈公演に関する問い合わせ〉東京音協 03-5774-3030(平日 11:00〜17:00)
〈劇場に関する問い合わせ〉オルタナティブシアター開業準備室 03-3350-4151(平日 11:00〜17:00)
 


【取材・文・撮影/竹下力】





“栗山千明、溝端淳平出演『ミッドナイト・イン・バリ』お得なチケット販売中!"






kick 

shop 

nikkan 

engeki