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世界23カ国、500都市で上演され、世界観客動員700万人を突破した和太鼓エンターテイメント集団DRUM TAO。ロックをテーマにした新作『ドラムロック 疾風』が、7月19日よりZeppブルーシアター六本木で東京公演を上演されている(30日まで)。

今回の作品『ドラムロック 疾風』は、アメリカをルーツにする“ROCK”を美しい和太鼓パフォーマンスで表現する新感覚の舞台。前作からさらに進化したDRUM TAOのパフォーマンス、オフブロードウェイでも喝采を浴びたフランコドラオの演出、世界各国で活躍するクリエイティブ集団ZERO-TENによるプロジェクションマッピング、そして彼らの舞台には欠かせないエッジーでクールな存在感を放つコシノジュンコによる衣装が融合。もはや和太鼓のイメージを超越した「THE 日本エンターテイメント」だ。
5月6日に大分県日田でプレビュー公演として上演され、九州公演を経ての東京公演だけに、一段とパワーアップ。舞台上を駆け抜けるような疾走感あふれるBEATに、美しいメロディーが重なった瞬間には、大きな感動が湧き上がる。

その舞台の初日開幕前に、公開ゲネプロと囲みインタビューが行われた。

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江良拓哉、岸野央明、西亜里沙、麓大輔

日本に初めてロックンロールが伝わった時期は諸説あり、どれもが正しいと思わせてくれるワクワクする逸話に満ちているが、1つのエポックは、ザ・ビートルズの来日ということに、異論を差し挟む人は少ないだろう。彼らがなしたのは、30年代にあったブルーズやR&B、さらにエルヴィス・プレスリーのようなロカビリーを彼らなりの解釈で導入した新しい音楽だった。それを総称してロックンロールといってもいいだろう。さらには解散までのわずか10年程度で作られた数枚の傑作アルバムで、アメリカ南部のソウル、ゴスペル、ミュージック・コンクレート(現代音楽)などを導入し、伝統と現代の融合による数えきれないほどの音楽の革新を行ってきた。 そして、今ではロックンロールといえば、テクノもヒップホップも貪欲に取り入れる、現代の「モード」とも言える様式を呈している。
 
今回、DRUM TAOがロックを導入すると聞いた時、すぐに傑作になる予感がした。なぜなら、DRUM TAOは常に、革新と伝統をミックスさせながら、音楽だけでなくエンターテインメントのショーとして絶えず「時代」を「舞台の歴史」を更新してきた存在だから。

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今回の公開リハで聴くことのできた曲は6曲。
どこかの森にいるような動物たちや自然界に溢れるSEが鳴り続け、奥の方ではトライバルなビートが鳴っている。すると、スポットライトに当たった4名の鈴を鳴らす男性が立っている。そして様々な太鼓のトライバルなビートが絡み合い、ZERO-TENによる印象的な映像が映し出されたかと思うと、始まるのが1曲目〈舞族(ぶぞく)〉だ。紗幕が上がり、掛け声と共に演出のフランクドラオによるシンメトリーに配置された小さい太鼓から大きな和太鼓まで8ビートのリズムを叩き出すのが新鮮だ。和太鼓ならではの肌が痺れるようなドスンドスンとした音圧。ロックのリズムが高揚感を醸し出し、絵も言われぬエモーショナルな空間を一瞬にして作りあげる。
かけ声の他と太鼓の音の以外は、幾人かの役者が、扇子を両手に持ちながら統制の取れたダンスをする。徐々にBPM(テンポ)は上がっていき、ハードロックと言わんばかりのパーカッシブなリズムが特徴的だ。まるでドラムスティックのようなバチさばき、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムのスネアの圧倒的な存在感、ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツのタムのリズミカルな泥臭いリズム、ザ・ビートルズのリンゴ・スターのタイトなフィルの感覚。楽器は和太鼓なのに、ひっそりと浮かび上がるドラムのスターたち。歴史と伝統が作り上げる舞台だと感じさせてくれる。

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2曲目の〈GAIA供淵イアツー)〉では、琴の幽玄な調べから、太鼓のリズムに横笛が重なるどこか日本古来の「祭」を感じさせる音楽だ。ただ、リズムに抑揚がつき、スピード感があるので、ロックとしても捉えられる。そして西亜里沙が赤い扇子を持ち、赤と銀を基調としたどこか中華的な衣装で踊る。巨大な大陸、あるいは世界を表現するダイナミズムな踊りで目を奪う。

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3曲目は〈海武士II(カブトツー)〉は、三味線の水藤義徳がスリーフィンガーで爪弾くロックなメロディーが印象的なオープニング。ブルージーでありながら和のテイストも忘れない。どこにも聞いたことのない音色が響きわたる。そこから三味線のダイナミズムを活かした演奏と太鼓が絡み合い、インプロヴィゼーションのような様相を呈していく。そして3人の三味線と和太鼓の掛け合いが凄まじい迫力で迫ってくる。それらを彩る江良拓哉たちの棒さばきが圧巻だ。

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そのあとは、奏者たちが楽器を捨て、掛け声によるパフォーマンスで声が楽器になる。拍子木に間の取り方も絶妙で、ノリノリになれるダンサンブルな曲だ。ここから80年代のテクノから現代のヒップホップのリズムを感じるのは大げさだろうか。セグウェイという現代的な乗り物で、縦横無尽に舞台を横切る、その最新テクノロジーと古の歴史を組み合わせたパフォーマンスが、「DRUM TAO」というバンド、いや、「故きを温ねて新しきを知る」カンパニーそのものなのだろう。そして大太鼓の上でバチを振っている奏者の姿も圧倒的なかっこよさだった。

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4曲目に披露されたのが〈千本桜〜その先へ〜〉。これは5人の男性が琴で女性的なメロディーを弾きながら、時々スタッカートを入れて抑揚をつける。そしてギターで言えばミュート奏法に近い印象で儚い彩りをつけていく。中央の舞台に白い衣装の3人の女性の太鼓隊が現れ、西が、今度は真っ赤な衣装を着てゆったりと踊る。これは桜の花びらが咲き誇り、そして散っていくイメージだろうか。どこか儚くて美しいのに、女性的な強さが際立つバラードだ。主役は男性なのに、徐々に女性中心に変わっていく流れが、演出のフランコのフェミニンな部分とリズム感のあるテンポを感じさせてくれる。

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続いて披露されたのは〈沖縄〉。2人の三線奏者が掛け合い、岸野央明たちの太鼓が陽気なセッションを繰り広げるように始まる。セッションの親密な空気感が感じられる曲だが、徐々に雲行きが怪しくなる。映像が大都会のビルディングと日が昇る映像とともに映し出され、次第にトレンチコートを着た集団がダンスに加わっていく。オスプレイの問題、あるいは基地問題、そんな現代の沖縄を侵食する問題を提示する群舞が、ダークでありながらも、和太鼓と三線の音楽で、ウチナーンチュならではのメンタリティーの力強さと陽気さでそれを打ち消していく強さが心地良い。そして三線のメロディーの美しさには、やはり心を奪われてしまう。

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最後に披露されたのが〈夢幻響次淵爛殴鵐ョウ)〉。ここでは最初に戻ったかのようなロック的なイディオムを駆使しながら、リズミカルに太鼓と横笛が奏でる音が、次元のこ異なった世界へ連れていってくれる。岸野の太鼓は疲れを知らず、麓大輔の棒さばきが激しく律動しながら夢幻的な世界を作っていく。さらにキューブ形をした棒によるダンスも見事。最後に舞台中央の大太鼓を6人で叩く様は圧巻で、彼らが太鼓の周りを回りながら、バチを使ってドラムソロのようにひたすら叩いていく。ここでシンバルのような和太鼓のチャンパが4つ打ちのリズムをとれば、現代のJ ROCKにも引けをとならないコンテンポラリーなエネルギーを作り上げる。横笛の印象的なメロディーとともに太鼓がリズムの渦を作り出して舞台の中央に竜巻を作り上げて、メロディーが天に登って青いライトと合間って青空から雨が降っているかのような幻想的なシーンだった。

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ここまでの6曲だけで、まさに疾風怒濤の30分。ひと時も目が離せず、スピーディーでありながら、視覚に印象的なシーンもさりげなく残していく演出のフランコの手腕が素晴らしい。もちろん、曲の印象だけでなく、コシノジュンコのクールでいてシャープな衣装も見逃せない。動きづらさを一切感じさせず、照明に反射し美しい色をきらめかせて舞台映えする、緻密に考え抜かれた衣装だった。
 
奏者たちの肉体は言わずもがな、彼らの息遣い、テンポ、リズムが作り上げていく演奏、そこにスタッフワークの絶妙な合いの手が加わり、「THE 日本ロックンロールショー」を作り上げていく。決して古びずない、そして伝統に敬意を払った世界に誇るショーそのもので、ショーの完成度、カタルシスどれもが一級品。躍動的で、スピーディーな最新型の日本のエンターテインメントショーで、この日本公演のあとはアメリカ公演へと続いていく。彼らが各地でどんな感動をもたらすが、その展開が楽しみだ。


【囲みインタビュー】


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コシノジュンコ、江良拓哉、岸野央明、西亜里沙、麓大輔


ゲネプロの後、コシノジュンコ、江良拓哉、岸野央明、西亜里沙、麓大輔、フランコドラオが登壇。囲みインタビューが行われた。

──『ドラムロック 疾風』ということで、ロックをコンセプトにした作品ですが、テーマにした思いは?
西 音楽界にロックというジャンルが現れた時に新しい風が巻き起こったように、今回は、日本伝統の和太鼓と日本のエンターテインメントにロックを取り入れることで新しい風を吹き込みたいなという思いがテーマになっています。
──リズムはこれまでの作品とは違いますね?
岸野 僕はどちらかというと、今までのリズムとも合っている気がします。根本はリズムですからね。ロックは若者の食いつきがいいと思うので、ぜひ若い方に聴いていただいて、和太鼓はこんなにかっこいいんだと痺れてもらいたいなと思っています。

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──これまでにプレビュー公演をされていますが、どんな感想がありますか。
江良 疾風とあるように、あっという間に終わったと(笑)。
岸野 狙い通り(笑)。
西 テンポ感も良くて、展開の早さも特徴です。作品の中に激しいところもあれば、やさしいところもあるので、あっという間に終わってしまったという感想をいただいて、もう一度観たいとおっしゃられる方が多いです。

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──演出面で意図したところはありますか。
フランコ 2016年にオフブロードウェイで1週間の公演をしました。その時、ブロードウェイのプロデューサーが、もっと疾走感のある舞台、ニューヨークの人々は日本の伝統芸能を観ているわけではなくて、日本人がどんなエンターテインメントを作るのかを観にきたいと思っている、と言われました。だから、伝統芸能を前面に押し出すのではなくて、こんな表現はすごいということに挑戦してくれと、それがきっかけで、だったらロックかなということを意識しました。
──今回の衣装のコンセプトはありますか。
コシノ 日本のロックの始まりは60年代なんですよね。あの時の勢いはすごかったと思うんです。若い人たちはそれを知らないかもしれないけれど、TAOは、新しいものを取り入れるから面白いと思うんですね。もちろん、今までつちかってきた「さむらい魂」はありますので、何をやってもTAOらしさが根底にあると思います。それには時代に挑戦していくという勢いもありますし、何よりこれだけ関わっていながら初めて見たような新鮮さがありますね。これからも前に進んで行ってもらいたいです。

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──大分県で共同生活をされていますが、どのようなスケジュールなのですか。
岸野 1年中演奏活動ですが、制作期間はTAOの里にいるんですね。基本的には朝と夜は稽古、日中はクリエイション的な時間です。みんなで生活して、稽古をして、遊んだりもしています。
コシノ ゴルフ場のそばですものね。空気もいいしのびのびとできますね。
岸野 先生もよく来てくださいます。
──どんな遊びがありますか。
西 映画館やバー、サウナや大きなお風呂があるので、楽しんでいます。

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──一番後輩の麓さんはいかがですか。先輩に対する意識はありますか。
 ないですね(笑)。
フランコ 夜抜け出していたよね。
 最近はないです(笑)。家族より兄弟に近いです。
コシノ みんな料理が上手ですね。誰かプロがいるのかっていうぐらい。
フランコ 最初はホテルを作るつもりで始まったんです。4万屬療效呂涼罎法▲曠謄襪鮑遒辰董△客さんにライブを見せて泊まってもらうというコンセプトだった。ちなみに、西座長は我々のワイン館長です。ソムリエの称号を取るんだものね?
西 はい。
コシノ それで朝10キロ走ってるんでしょ? 
西 そうですね。朝と夜は真面目ですね。

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──世界の方々の反応はいかがですか。
江良 どこに行ってもすごい反応でありがたいですね。その土地によって盛り上がりが違いますね。暖かいところだと熱い人だったりしますが、最近では日本も海外と変わらないぐらい盛り上がりを感じます。
──最後に意気込みを。
岸野 おそらく皆さんの持っている和太鼓のイメージを覆すようなステージになっていますので、ぜひ一度騙されたと思って遊びに来てください。
江良 日本人でよかったというショーにしたいです。
 客席との距離が近いので、生の和太鼓を目で見て楽しめるショーになっています。
西 今回はロックですので、ロックのビート感と、和太鼓の音圧を体感することができます。ぜひいらしてください。

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〈公演情報〉
sipp2017 
DRUM TAO『ドラムロック 疾風』
演出・制作◇フランコドラオ
衣装デザイン◇コシノジュンコ
出演◇DRUM TAO
●7/19〜30◎Zepp ブルーシアター六本木
〈料金〉8,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京音協 03-5774-3030(平日11:00~17:00) 

(C)DRUM TAO
 

【取材・文・撮影/竹下力】






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