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大ヒット漫画『北斗の拳』が、来年35周年を迎えるが、その初めての舞台化が、9月6日〜10日、シアターGロッソにて上演される。
『北斗の拳』は、199X年、世界は核の炎に包まれるというディストピアな世界で、武論尊の原作・原哲夫の漫画で、80年代『週刊少年ジャンプ』(集英社)黄金期の一世を風靡。アニメ化もされ、主題歌であるクリスタルキングの名曲「愛をとりもどせ!!」は大ヒットとなった。
今回は、川尻恵太(SUGARBOY)の脚本と、村井雄(KPR/開幕ペナントレース)の演出により、主役はなんと“ザコ”。主人公ケンシロウや彼の兄のトキ、さらに長兄のラオウなどの中心人物ではなく、ザコの、ザコによる、ザコのための、ザコだけの舞台で、タイトルも舞台『北斗の拳 -世紀末ザコ伝説-』と銘打たれている。そのザコとして登場する河合龍之介と寿里に、この舞台にかける思いを語り合ってもらった。

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河合龍之介・寿里

どうでもいいことを全力でやるのが“ザコの姿勢”

──稽古が始まったそうですね。
寿里 そうです。でも実はその前から本読みは始めていて。本読みをすごくするんですよ(笑)。
河合 怒涛の本読みで。車座になってずっとやってますね。
──それはどうしてなんですか?
寿里 演出の村井雄さんがそういう作り方なんです。村井さんの劇団(KRP/開幕ペナントレース)の作品だと、そもそも台本もなくて、アイデアを出し合って、それを実現していくような作り方をするらしくって。だから「こんなことをやったら面白いんじゃないか」というアイデアは「本当に細かいことでも言ってくれ」と言われています。
河合 自分の役だけじゃなくて作品をみんなで作っていくっていう環境づくりが、最初からありましたね。話し合いがあって、意見も取り入れてくれて、脚本をいい意味で壊していこう、みたいな姿勢がみんなにあるから面白い。特にこういう作品なので。
──では、皆さんでいろんなアイデアを出されるのですね。
寿里 出してますね。自分のシーンだけじゃなく、人のシーンでも出してます。「これ見てみたいんで、絶対お願いします!」って(笑)。
河合 僕もそれ見て「あ、ここまで言っていいんだ」と思ったりして。
──本読みが「男子校みたいな雰囲気」という噂も聞きましたが。
河合 そうですね。僕、男子校だったのですが、まさにその感じです。
寿里 脱線したら戻ってきやしないですよ(笑)。
──芝居のアドリブとして脱線するんですか?
寿里 いや、本読み中の「ここ、こうしたらいいんじゃない?」ってアイデアに、村井さんが「面白くなりそうだね」ってなると、“どう実現するか”の方向に脱線します。本読みの最中ですよ? その場で考え始めちゃうから、一向に話が進まない。本読みをやってからでいいんじゃないかっていう(笑)。
河合 戻ってこないね(笑)。
寿里 本読みなのに話の流れを全力でぶった切るっていう。
──(笑)。楽しいですね。
河合 楽しいです。
寿里 この前、村井さんが脱線してキャッキャしてるときに水希蒼さんが来られたんですけど。大の大人たちがキャッキャキャッキャしてる姿を見て、水希さん「ちょっとよくわからない」ってなってましたね(笑)。本読みもしてないし(笑)。
河合 工業高校に女子が1人紛れ込んだみたいになってた(笑)。
──ただ、作る楽しみも大きいんじゃないですか?
2人 (口を揃えて)そうですね。
寿里 僕はわりと普段から演出家さんに「こういうのはどうですか?」って喋りに行ったりするんですけど、それをいっぱい出していいよって言われることはあまりないので。それに、芝居の中での提案はできても、こんなのはなかなかね。
河合 作品のね。
寿里 構成に関わる話ですから。
河合 それをやると全体的に変わってきますよ、みたいなこともあるので。
寿里 映像のアイデアとか出てきちゃったら、作ってもらわなきゃいけないし(笑)。
河合 ただ、最短距離でいくんじゃなくて、遠回りでも無駄だと思っても、それを一生懸命やることで、とてつもないものが生まれるんじゃないかって、みんなが思いながらやっている。それがこのカンパニーの強みかなって思いますね。
寿里 どうでもいいことを全力でやるっていうのが、一番楽しいかもしれないですね。
河合 それがザコの姿勢(笑)。

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同じ「ヒャッハー」じゃ、飛び抜けられない

──脚本の感想はいかがですか?
河合 泣けるな〜って(笑)。
寿里 普通に読んだら泣けるわけはないんですけどね(笑)。でもどこかで1個所、感情移入できるところがあれば、そっちのほうに流していけるんじゃないかなとは思います。最後の最後にはお客さんがザコに感情移入している、っていうのはすごく面白いし。
河合 それってライブ感なんだと思って。昨日、読み合わせしてて、歌が流れた瞬間にね。
寿里 稽古場でムッシュ吉さん(クリスタルキング)が、わざわざ「愛をとりもどせ!!」を歌ってくださったんですよ。
──え! 稽古場まで来られたんですか?
河合 顔合わせに来てくださって。
寿里 本読みも付き合ってくださって。ムッシュさんは歌だけの出演なんですけど、本読みを聞いてくださるんだなと思っていたら。
河合 それだけでもありがたいんですけどね。
寿里 曲がかかったら歌ってくれて!村井さんと(脚本の)川尻恵太さんは泣きそうになってましたね。喜びのあまり。
河合 本番ではお客さんも鳥肌ものだろうなって思ったんですよね。
寿里 ほんとに。本物で生歌ですからね。それがオープニングなので。そうやって最初にお客さんを引き込んだところで、僕らがその気持ちを継続もしくは上乗せしていかなければいけないというのは、大変だなと思います(笑)。
──ちなみに歌は、アイドルグループ・A応Pとのコラボなんですよね。
寿里 そうです。だからステージングもかなり作り込まれると思いますよ。
──温度が上がるでしょうね。
寿里 僕らの仕事はそこをピークにしないことですよね。オープニング直後にラオウが出てくるとかトキが出てくるとかだったら、「きたー!!!」ってなるでしょうけど。それはないわけですから。ザコですから(笑)。
河合 「きたんであろう」ですからね(笑)。
──そこで大事なのは何になるんですか?
寿里 圧倒的エネルギー量が必要だと思います。(磯貝)龍虎とは「とりあえず喉がやばい」って話はしましたね。基本「ヒャッハー」だから。
河合 台本に書かれてなくても言ってないといけないし(笑)。
寿里 「ヒャッハー」何回言うんだろうね(笑)。もう2回目くらいでやばいから。
──高音で言ってるイメージあるし、喉にきそうですね(笑)。
寿里 でも皆さん徐々に普通の「ヒャッハー」じゃなくなってきてますよ。人数も多いので、同じ「ヒャッハー」じゃね、飛び抜けられないじゃないですか。
河合 みんなが自分のポジションを探ろうとしてるのはすごく感じます。戦いですよね、これは。
──そもそもキャストの皆さんが濃い人ばかりですよね。
河合 濃いですよね。なかなかこのメンバーで集まることもないでしょうし。
寿里 ほんと、メンバー内での弱肉強食が。
河合 (笑)。
寿里 こうなってくると自分のザコカーストをどこに置くかっていうところもね。
河合 上(じょう)ザコとかね。
寿里 ザコの分け方もすごくて。メインザコ、サブザコ、アクションザコ、アンサンブルザコって。村井さんがずっと「アンサンブルザコはやべーな」って言ってました(笑)。
──おふたりは何ザコなんですか?
寿里 僕らはメインザコですよ。だからチラシに載せてもらえる(笑)。ザコなのにチラシを作っていただけるっていう。

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ちっちゃくちっちゃく見ていくと素晴らしいなって思える

──おふたりの役はどうなっているのですか?
寿里 僕は“ザコC”っていう名前なんですけど。話(オムニバス形式)によって違うザコです。
河合 僕は“ザコB”です。上ザコもやるんですけど、その違いはまだわかってないです(笑)。
──役作りはどうされるのでしょうか?
寿里 僕が提案したのは、アニメ版とかでは、ザコってもうめっちゃザコに描かれてるんですけど、彼らは(自らを)最強だと思っているのではないかということ。実際、すごく強いだろうし。「自分が一番なんだ」って思った集団なんです、きっと。
──なるほど。ケンシロウとかに比べるとザコだけど、っていうことですね。
寿里 ケンシロウなんてもう神様ですから! 神と並べるんじゃないよっていう(笑)。やさしい人たちに対して、「そんなんじゃ食ってけねえんだよ! 死んじまうだろうが!」って人たちが、そのために身体を鍛え、生き残るための手段として(ザコの行為を)やっているわけで。残虐非道っていうのも、モラルがなくなった社会だからなので、この社会の中では間違ってないんですよ。だから「俺らはザコだぜ!」とはなってないと思う。
河合 美意識もそれぞれにありますしね。僕が演じるパルコという(ザコを目指す少年)役とかはもともと普通のヤツで。寿里くんが親父役なんですけど(笑)。親父に憧れて、血を受け継ぐっていう。そういう自分なりの哲学を持って生きようとした人の話だから。ちっちゃくちっちゃく見ていくと、素晴らしいなって思える。そういうとこは素直にやっていきたいと思っています。
──背景を緻密につくっていくのが今回の役作りになりそうですね。
河合 最終的に、お客さんがザコの集団に入ったらこうなるんだよっていうのも見えたら面白いなって思ったりしています。普通の人が飲み込まれていく感じが出ると切ないかな、とか。
──予想外の感情が動かされる作品になりそうですね。
寿里 動かしたいと思っています。ずっとバカやってる中で「あれ?」って引き込まれる瞬間がないと、ザコをただ観に来てる感じになるから。動物園みたいな。
河合 そうね。
寿里 どこかでザコだってことを忘れさせたいので。ただ、そのバランスは本当に難しいなって思うんですよ。今のところコメディ色が強いし、どう組み立てたらちょっとそっちに誘導できるのかっていう。その辺りは村井さんがやってくださると思うんですけどね。
──村井さんからそういった演出はもう始まってますか?
河合 まだそこまでいってないですね。
寿里 入れるだけ入れて、後でそぎ落とすっていうスタンスなので。今はとことん散らかってます。これからそういう話を徐々にしていくのかなって思います。みんなが考えないと置いてかれちゃうような感じですよね。
河合 でもほんと、こういうことを本気でやろうとしてる大人たちの姿はかっけーって思います。今回は特にいろんな畑の人がいて。みんな育ってきた環境も違うし、走る方向も違うから。そのベクトルがとっ散らかっても「みんな本気でやってる!」っていうのが見えたとき、それだけでも感動できるんじゃないかなって思いますね。
──いろんな畑と言えば、ザコネタでお馴染みの「キャベツ確認中」のおふたりをはじめ、お笑いの方も出演されますよね。一緒にお芝居されるんですか?
寿里 します。芸人さんってコントとかやられるので、間の使い方がうまい人とか、受けの芝居がきれいな人が多いです。台詞を独特の間合いで言ったり、やっぱり感覚が僕らと違う部分があって。
──役者はやらないような芝居をされるということですか?
寿里 そう。役者ってスルスルいっちゃうんですよね。それで観やすいところと、観やすくすると面白くなくなっちゃうところもあって。そういう(自分の中の)セオリーみたいなものを、今回は1回なくしたいなって思いました。それも無駄な遠回りかもしれないですけど。より面白くなるように。
──稽古場でそう思ったってことでしょうか?
寿里 はい。僕ができるかどうかはわからないですけどね。うまく吸収しつつ。
河合 お笑いの方もそうですし、プロレスラーには役者がどうカッコつけても勝てなかったりして。芸人に人間の弱いとことか恥ずかしいとことか見せられて、プロレスラーにカッコいいところを見せられたら、俺ら役者はどうすりゃいいんだっていうことは考えますね。
寿里 極論で言うとそのままでいいかもしれないんだけどね。

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世紀末へようこそ!!一体となって観てください!

──ビジュアルがすごくかっこいいですね。
寿里 でも、ちゃんとみんなどこか抜けてるのがいいですよね。
──このために鍛えたりされたんですか?
寿里 僕、めちゃくちゃ鍛えてたつもりですけど、一番それがわからない服で。肩幅とかも厚みが出てきたのに、上からコルセットしちゃってるから、わからない(笑)。
河合 (笑)。全部隠されてる。
寿里 (ビジュアル写真を見ながら)龍ちゃん、いい筋肉だね。
河合 寿里くんの腹筋ローラー(稽古場に常備してある寿里さんの私物)で本番までがんばるから!
──では、皆さんの肉体美にも期待ですね。
寿里 原作はみんなムキムキだもんね。
河合 役によってはだらしなく太ってたりするけどね(笑)。
──では最後に読者の皆さんに一言お願いします。
寿里 僕はザコ以外の役もあるのですが、ザコ芝居の中でザコ以外の芝居をするのって…めっちゃ楽しいっす(笑)。ぜひそこも観ていただきたいですね。メインのザコは、いろんな遊びもしながら、単純にできるところもつくりつつ、楽しんでいきたいと思います。ぜひぜひ観に来てください。世紀末へようこそ!
河合 音楽ライブのように“一体になって観る”という感覚を、芝居でも味わって楽しんでもらえる作品になるんじゃないかと思います。最後にみんな総立ちで「ワー!」ってやるくらいの一体感が出てきそうな。これをきっかけに「やっぱり生のお芝居が一番いいね」って言ってもらえるような作品にしたいと思っています。個人的には、みんなでかいしキャラ濃いしっていうところに飲みこまれて、(自分から)何が出てくるのかなっていうところは、ちょっと楽しみです。
寿里 ここ(寿里と河合)が共演するのも13年ぶりとかだよね。テニミュ以来。
──変わりましたか?
河合 変わってる部分もあれば、変わらない部分もありますね。
寿里 龍ちゃんは丸くなった。1回尖って丸くなったよね(笑)。
 

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かわいりゅうのすけ○1983年生まれ、東京都出身。03年にデビュー、05年からミュージカル『テニスの王子様』日吉若役などで注目を浴びる。舞台、映画、ドラマと幅広く活躍している。近年の主な舞台に、「宇宙に雨の降る如く」、オーストラ・マコンドー「息が苦しくなるほどに跳ぶ」、『孤島の鬼―咲きにほふ花は炎のやうに―』、舞台「黒子のバスケ OVER-DRIVE」などがある。今後の予定としては、12月にミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania- への出演が控えている。

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じゅり○1981年、千葉県出身。読者モデルとして活躍した後、パリコレ出演を果たし、18歳で本格的にモデルデビュー。04年からミュージカル『テニスの王子様』亜久津仁役などで、俳優業にも進出。多くの舞台、また映像で活躍している。近年の主な舞台に『幻の城〜戦国の美しき狂気〜』ミュージカル『ヘタリア』シリーズ、斬劇「戦国BASARA」シリーズ、舞台「剣豪将軍義輝」などがある。今後の予定としては、10月に舞台『K –MISSING KINGS-』への出演が控えている。

〈公演情報〉
ザコ舞台キービジュアルs

 
舞台『北斗の拳 -世紀末ザコ伝説-』
原作◇武論尊
脚本◇川尻恵太(SUGARBOY)
演出◇村井雄(KPR/開幕ペナントレース)
音楽◇TSUTCHIE
OPENING LIVE◇「愛をとりもどせ!!」クリスタルキング with A応P
声の出演◇千葉繁
出演◇磯貝龍虎、河合龍之介、寿里、花園直道、林野健志、水希蒼(A応P)/
青山フォール勝ち(ネルソンズ)、キャベツ確認中(キャプテン★ザコ、しまぞうZ)、街裏ぴんく/
大岩主弥、福島悠介、吉野哲平/
円盤ライダー(渡部将之、冠仁、賢茂エイジ、森田和正)、KPR/開幕ペナントレース(高崎拓郎、G.K.Masayuki、森田祐吏)
ジャギ(トリプルキャスト):角田信朗(6日・7日夜・9日昼)、武田幸三(8日・10日昼)、山本圭壱(7日昼・9日夜・10日夜)
◇日替わりゲスト:谷口賢志(9/6 19:00)、川本成(9/7 14:00)、河原田巧也(9/7 19:00)水石亜飛夢(9/8 19:00)、中河内雅貴(9/9 13:00)、中村優一(9/9 18:00)、藤田玲(9/10 13:00/17:00)

●9/6〜10◎シアターGロッソ
〈料金〉ザコシート6,999円 世紀末シート(前方エリア・特典付)9,999円 リングサイドシート(ステージエリア一部客席・特典3点付)19,999円(全席指定・税込)

(C)武論尊・原哲夫/NSP 1983, (C)北斗の拳−世紀末ザコ伝説−製作委員会2017 版権許諾証GP-907



【取材・文/中川實穂   撮影/アラカワヤスコ】




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