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ピンクレディーの「UFO」がテレビを賑わせ、「スター・ウォーズ」などのSF映画が大流行していた昭和の時代を背景に、普通の父親とその家族が予想もしない出来事に巻き込まれていくという、舞台『真っ赤なUFO』が、9月29日から青年座劇場で上演される。(10月8日まで)
脚本は太田善也。青年座には、2010年に書き下ろした『つちのこ』以来の第2作目で、演出は『つちのこ』や朋友公演『ら・ら・ら』など、太田作品を多く手がけている黒岩亮が務める。

【ものがたり】
1978年(昭和53年)。ピンク・レディーの歌う「UFO」や映画「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」が大ヒット。全国各地でUFOの目撃情報が相次いで報告され、空前のUFOブームが起きていた。
東京の郊外にある一軒家。印刷業を営む斉藤清は、優しい妻、市役所に勤める娘、大学生の息子、そして年老いた母と、一家五人、慎ましく暮らしていた。ところが、清が45歳の誕生日を迎えたその夜、とんでもない事が起きる。
それは、家族、娘の恋人、近所に住む親戚、さらには小説家や大学教授、そしてテレビ関係者をも巻き込み、大騒動となってゆく……

この、ちょっと奇想天外なシチュエーションの物語の中で、娘の恋人・柴龍之介役で登場する高松潤に、この作品世界や俳優としての彼自身を語ってもらった。

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1970年代の昭和の匂いと一癖ある人間たちの面白さ

──高松さんは、太田善也さんと黒岩亮さんコンビの前作『つちのこ』にも出演していますね。今回と共通の部分はありますか。
太田さんの書かれる作品というのは、どの作品も太田色というか、1970年代が背景になっていることで、『つちのこ』の場合は岐阜の田舎の話で、今回は東京と、場所は違うんですけど、その時代ならではの匂いというものがあるんです。
──物語は1978年の話ですが、高松さんはまだ生まれたばかりですね。
ちょうど2歳くらいですね。先輩方の中には、当時のことをリアルタイムで知っている方も沢山いて、初めて「スター・ウォーズ」を観たときのショックとか、そういう話で盛り上がっていて。演出の黒岩先輩も、ちょっとSFオタクで、そういう話に一番熱くなっています(笑)。
──高松さんとしては、歴史を勉強しながらという感じなのでしょうか?
完全に時代物として捉えています。ですから当時の映画を見たり、YOU TUBEでCMを見たり、例えば「記憶にございません」というキーワードが出てくると、背景に何があったのか調べたりしています。この物語の1978年というのは、ちょうどオイルショックで景気が落ち込んだ時期だったことを知って、主人公は印刷業なので、その影響を受けて苦しんでいるという話に、「なるほどな」と思ったり。
──台本を読ませていただいたら、主人公は頑固で不器用な昭和の男性ですが、周りの人たちは、かなりユニークなキャラクターが出てきますね。
太田さんはいつも一癖も二癖もある人間を書かれて、そこが面白いんです。今回の僕の役も、名前からして柴龍之介とか普通じゃなくて(笑)。
──登場するシーンもインパクトがありますね。本人は真面目に考えて行動しているようですが。
真面目で真剣なんです(笑)。その真剣さが面白味を生むので、僕としても大真面目に取り組もうと思っています。
──高松さんへの当て書き部分などもありそうですね。
かなり当て書きされていると思います。太田さんとは、実はもう5本目なんです。入団2年目にスタジオ公演がありまして、それが太田さんの作・演出で、初めてお会いして、そのあと太田さんの主宰されていた劇団「散歩道楽」に、2回客演させていただきました。
──では、太田さんは高松さんを熟知しているのですね。いつもこういう個性的な役なのですか?
個性的ではありますね。太田さんの作品は、まずワークショップから始まって、ゲームをやって、そこから役者の個性とか面白いところを拾って書かれるんです。僕についても、いつも自分ではわからない面白さや新しい面を見つけてくださって、物語の中で僕の個性をどう生かすか工夫してくださるんです。今回の登場シーンも、色々考えてくださったうえでこういう形になったと思います。ありがたいですね。
──柴龍之介は、東京太陽族という劇団の俳優という設定ですが、どんなふうに演じようと?
柴については、演出の黒岩さんから、東京キッドブラザースの柴田恭兵さんのイメージと言われたんです。
──東京キッドブラザースは、1970年代に和製ロックミュージカルを上演して人気のあった劇団ですね。
ニューヨークのオフ・ブロードウェイで人気が出たそうですね。僕は去年、『朝食まで居たら?』でヒッピー役をやったのですが、その匂いのするような劇団だったのかなと。ですから柴もそれなりのポリシーを持っている俳優なのかなと思っています。
──そういう役どころで、物語の展開にどう絡んでいくのでしょうか。
物語の展開に関しては、ネタばれも含めてまだ言えない部分もあるのですが、たぶん結婚相手の父親を守るために闘うことになると思います。そこからどうなるかは、劇場で観るまでのお楽しみということにしておいてください(笑)。

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航空宇宙工学を学ぶ日々から俳優志望へと大転換

──今回、主人公を演じる山秀樹さんと、その妻役の小林さやかさんは、高松さんと同じ70年代生まれですね。話が通じやすいところもあるのでは?
世代が同じという以上に、同じ劇団の俳優同士ということの良さと強みを感じますね。芝居の現場はまず顔合わせから始まりますが、劇団だと距離感が近いので、すぐに芝居そのものに取り組んでいけること。そして芝居のことでも日常のことでも、気さくに話し合えるのが有り難いです。
──高松さんは在団15年ですが、大学では航空宇宙工学を学んでいたそうで、そういう経歴の人は珍しいですね。
あまりいないと思います。親戚にパイロットがいたことから、高校時代に航空産業に興味を持って、これからこの業界が盛んになるのではないかと思って入学したんです。でもパイロットより作る側、研究職の方が自分には合うような気がしたので、人工衛星とかロケット作りに興味を持って、そちらを目指したんですが、途中で挫折しました。
──そこから演劇へ方向転換したのは?
就職の時期に、サラリーマンになるイメージが持てなくて、もともと映画が好きでよく観ていたんです。松田優作さんがとくに好きで、そこから俳優をやるにはどうしたらいいのだろうと考えて、演劇を観るようになって。優作さんが文学座出身ということや、映画などで好きな俳優さんが大体舞台経験者とか劇団出身の方だったので、伝統のある劇団の養成所に行った方がいいんだろうなと思ったんです。でも、何もやってないわけですから、勇気がなくてなかなか踏み込めなくて。その頃、二科目ぐらい足りなくて大学を留年することになってしまったので、その時間を利用して思い切って、短期留学みたいな形でロンドンに留学したんです。ロンドンにはたまたま親戚が住んでいたので、そこに住まわせてもらって、町のカルチャースクールに行ったりとか、演劇が盛んなのでそういう場所が色々あるんです。そこでシェイクスピア作品を読んだり、ワークショップとか体験してみたらすごく楽しくて。
──やってみたら演劇が合っていたわけですね?
そう思いました。それで帰ってきて、大学卒業と同時に養成所などいくつか受験した中に青年座研究所があって。青年座のことなど何も知らずに入ったんですが、入ってみて、自分の肌に合うな、ここでよかったなと思いました。
──研究所のレッスンはいかがでした?
楽しかったです。全部初めてやることばかりで新鮮でしたし、体を動かすのは好きでしたから。大学のサークルではバスケットボールをやっていたんです。
──俳優になった今、自分のどういうところが役者に向いていると思いますか?
理系だったことが役作りではプラスになっているかもしれません。論理的なメソッドとか好きなので。黒岩さんも役作りは薬の調合みたいだとおっしゃっていますし。性格的なことで言えば、人と接することが好きなんです。デスクワークとか数字を相手にするより、人間を相手にするほうが楽しいですね。
──人付き合いが好きなのは、この仕事ではメリットですね。
基本的に嫌いな人っていないんです。たまたま何か嫌なことを言われたりすることがあっても、それは何かしら原因があって、こうだからこう言ったのかなとか考えると、その人を嫌いになれないんです。

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「人類の宝として生きたい」という言葉に感動して

──劇団には色々な先輩がいると思いますが、たとえば目指す人とか、尊敬する先輩とかいたら教えてください。
尊敬は先輩全員です。役者を長く続けること自体たいへんなことですから、どんな先輩もまず尊敬しています。その中で、付き人をさせてもらった方が2人いて。劇団にはとくに付き人制度はないのですが、たまたまその時の状況で付くことになったのです。その1人は東恵美子さんで。
──東恵美子さんは青年座の創設メンバーの1人ですね。素晴らしい女優さんでした。
入団1年目に、車の運転手を兼ねて2ヶ月ぐらい付きました。蜷川幸雄さんの『リチャード三世』(03年・日生劇場)に出演していらしたときで、今日の稽古はこうだったとか、昔の話などもしてくださったり、毎日のように役者としての心構えとか色々な話をしていただいて、本当に貴重な体験をさせていただきました。
──それはすごい財産ですね。もう1人はどなたですか?
津嘉山正種さんです。3ヶ月ぐらい付きました。
──津嘉山さんも名優ですね。ご本人はどんな方ですか。
とにかくストイックで、役者というものはここまで芝居を突き詰めるのかという、それが一番衝撃でした。とても繊細な方で、優しさもある方です。このお二方は、今でも無条件に尊敬しています。
──津嘉山さんとは、昨年の『朝食まで居たら?』で共演しましたね。
3人きりの出演者で、1日の半分以上は一緒でしたから、たくさんのことを教えていただきました。毎日、明日はこうやってみようかとか話し合ったり、日常のこととか映画のこととか、昔の舞台の経験など、色々な話をしてくださるんです。
──名優たちの経験を直接そばで聞けた高松さんは、すごくラッキーですね。
本当に運がいいんです、僕は(笑)。
──運も才能のうちと言いますから。これからについても伺いたいのですが、役者としてどうなっていきたいですか。
まずは色々な役をやりたいです。そして、本当におこがましいのですが、志としては「人類の宝になりたい」と思っているんです。というのは、画家の篠田桃紅さんの絵を見たときすごい衝撃を受けまして、どんな人なのか知りたくて、桃紅さんが書かれた本を読んだんです。その中に「人類の宝として生きたい」という言葉があって、それに感動して、自分も表現者の一員として目指すならここかなと。
──まさに大志ですね。 
世界中の人たちを、楽しませたり、泣いてもらったり、感動してもらえるようになりたい。ですから映画にもどんどん出たいです。役者は人に影響を与えられる仕事だと思うんです。自分がそうだったように人の生き方を変えることができる。すごい職業だなと思います。昨年40歳になったのですが、40歳は不惑ですから、惑わず、生涯俳優でいきたいと腹を括りました。
──これからの高松さんにますます注目していきたいと思います。最後にご覧になる方にアピールをいただければ。
この作品は肩肘張らずに観られるわかりやすいお芝居で、きっと共感してくださるところも多々あると思います。SFというか、ちょっと夢のある内容になっていますし、非常に面白い作りになっていますので、必ず楽しんでいただけるのではないでしょうか。
──真っ赤なUFOは本当に降りてきますか?
どうでしょう? それはぜひ劇場で、ご自分の目で確かめてください(笑)。


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たかまつじゅん○東京都出身、2003年青年座入団。最近の主な舞台作品は、『わが兄の弟』(2017年、演出=宮田慶子)『朝食まで居たら?』(2016年〜17年、演出=伊藤大)『フォーカード』(2016年、演出=宮田慶子)『外交官』(2015年、演出=黒岩亮)『地の乳房』(2014年、演出=宮田慶子)『UNIQUE NESS』(2014年、演出=早川康介)『つちのこ』(2010〜13年、演出=黒岩亮)以上、青年座。外部出演は舞台「刀剣乱舞」義伝 暁の独眼竜(2017年、脚本・演出=末満健一 マーベラス)など。


〈公演情報〉
チラシ表

劇団青年座 228 回公演
『真っ赤なUFO』
作◇太田善也
演出◇黒岩亮
出演◇山秀樹 小林さやか 當銀祥恵 松田周 山本与志恵 高松潤 井上夏葉 矢崎文也 平尾仁 山賀教弘 伊東潤
●9/29〜10/8◎青年座劇場
〈料金〉一般4,200円 U25チケット3,000円[25歳以下・青年座のみ取扱]初日割引3,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉劇団青年座 0120-291-481(チケット専用 11時〜18時、土日祝日除く)
〈青年座HP〉http://seinenza.com




【取材・文/榊原和子 撮影/竹下力】





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