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舞台『ウエアハウス〜Small Room〜』が10月8日、東京・アトリエファンファーレ高円寺で開幕した。(11月7日まで)
佐野瑞樹、味方良介、猪塚健太という3人の男優が火花を散らす、濃密で骨太なステージだ。

『ウエアハウス』は劇作家・演出家の鈴木勝秀が、ZAZOUS THEATER(ザズゥ・シアター)時代よりライフワークとして様々な形態で上演しているシリーズ。芝居、リーディング、パフォーミングアートと、その時々のキャスト・劇場により変容する作品だが、今回は若き実力派3名が、客席70席という緊密な劇場で、濃厚な会話劇として立ち上げている。

舞台となるのは取り壊しが決まった教会の地下“憩いの部屋”。そこは地域サークル「暗唱の会」の活動場所であり、メンバーは各々好きな詩や小説などを暗記し、ほかのメンバーの前で暗唱しているのだが、近くの出版社で働く男・エノモトはこれまで一度も暗唱を披露したことがない。好きな長編詩をひたすら練習しているだけである。その彼の前にシタラと名乗る若い男が現れた。突然英語で話しかけてきたその男に興味をひかれ、戸惑いながら会話を進めていくエノモトだったが……。

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とにかく、膨大なセリフ量だ。劇中で彼らが暗唱する詩や小説含め、言葉の洪水にまず、飲み込まれる。彼らが交わす会話も、哲学的なものから、身の回りの愚痴のようなものまで多岐にわたる。ここまで情報量が詰め込まれた芝居も昨今では珍しい。この物語は何を語りたいのだろう? ……観客が抱くであろうその戸惑いはしかし、佐野扮するエノモトが受け止めていく。議論をふっかけるシタラに対し、戸惑いながらも時に好奇心で、時にお愛想で、時に反発し向き合うエノモト。前半の“受身”の芝居から終盤の混乱の芝居まで、感情のふり幅の大きいエノモトを、佐野が柔軟にみせていく。

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そのエノモトになぜか執拗なまでに絡んでいくシタラを演じるのが味方。意図が読めないことで、観るものに不安感を与えていく。誰もが心の中に不満や不平を抱えつつ、押し殺し“普通”を装い生きている。エノモトがそういった一般人の象徴であるとすれば、その価値観を破壊していくシタラは悪魔か——。そんなことすら考えさせられる存在を味方が好演。ちょっとした会話のニュアンスから、イスの位置をずらすといった些細な行為で不気味さを募らせていくのが上手い。そして物語にアクセントを加えるのが、猪塚健太扮するテヅカだ。マイペースな軽いノリで“みんなだって、本心ではそう思っているでしょ”と、人の暗部をざくりとえぐる。猪塚の飄々とした軽妙さも面白く、作品全体としてもいいスパイスだ。

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物語のテーマは、本質は、とひと言で語れるような作品では決してない。世に氾濫するライトなエンタメとは一線を画する、ディープな演劇だ。それを俳優の体温すら伝わるような緊密な空間で味わうことで、肌で理解する……そんな演劇ならではの醍醐味に溢れた作品だ。この作品を観る前と観た後では、あなたの価値観も、どこか変化しているかもしれない。(文:山岡祥)


〈公演情報〉
『ウエアハウス〜Small Room〜』
劇作・脚本・演出◇鈴木勝秀 
出演]佐野瑞樹/味方良介猪塚健太
●10/8〜11/7◎アトリエファンファーレ高円寺 
〈料金〉7500円(全席指定・税込)
 〈お問い合わせ〉CAT チケット BOX    03-3485-5999   


【写真提供/atlas] 




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