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佐藤祐基、加藤虎ノ介、細貝圭

三人の孤児たちの深い孤独と再生を描き、幾度となく上演されている名作舞台『オーファンズ』が、細貝圭、佐藤祐基、加藤虎ノ介の出演、マキノノゾミの上演台本・演出で、10月14日〜15日、兵庫・西宮の兵庫県立芸術劇場文化センター阪急中ホール、10月18日〜22日、東京・青山の草月ホールで上演される。

『オーファンズ』は、蝕まれた魂が愛によって癒されていくというテーマで描かれた、ライル・ケスラーによる作品。1983年ロサンゼルスでの初演以降、世界各国で上演され続け、1987年には米国で映画化。また2013年にはトニー賞リバイバル作品賞と、主演男優賞にノミネートされるなど、今尚、不朽の名作として愛され続けている。日本では市村正親主演で劇団四季により1896年に本邦初演。以来、さまざまなカンパニーや俳優たちによって上演され、椎名桔平、伊藤高史、根津甚八、吉原光夫、など多くの俳優たちが熱演。直近では柳下大、平埜生成、高橋和也のキャストで、昨年2月に上演されている。
そんな作品に今回挑むのは、細貝圭、佐藤祐基、加藤虎ノ介。上演台本と演出はマキノノゾミが手がけ、名作を現代版として浮かび上がらせていく。

そんな作品の公開稽古が10月都内で行われ、作品の冒頭1場、2場が演じられた。

【1場】
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粗末な家具と、ゴミが散乱する室内で、落ち着きなく動き回っているフィリップ(佐藤祐基)の、どこか動物的な行動を写し出して場面ははじまる。そこに、兄のトリート(細貝圭)が戻ってくる。

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トリートは道行く人から奪い取った財布や貴金属を品定めしながら、時に激昂し、時に優しく弟に接する。この廃屋のような部屋で、トリートはフィリップを護り、かつ支配していて、弟が外の世界との接点を持つことを、極度に嫌っていることが伝わってくる。
 
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【2場】
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続くシーンでは、飲んだくれたトリートが、やはり泥酔状態のハロルド(加藤虎ノ介)を連れて家に戻ってくる。実はトリートは酔っているフリをしているだけで、ハロルドの持っていた鞄からいつものように金品を盗み、そのまま放り出すつもりでいた。

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だが、ハロルドが持っていた現金、有価証券などの桁違いの多さに、トリートは計画を変更。ハロルドを監禁し、もっと大きな金銭を得ればフィリップと二人、新しい生活をはじめられると企てる。だが、それは二人だけで完結していた世界に、他者を招き入れることであり……。

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この世界が新たな展開を見せることを予見させて、公開稽古は終了。続いて、出演の細貝圭、佐藤祐基、加藤虎ノ介、演出のマキノノゾミが囲み取材に応えて、公演への抱負を語った。

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佐藤祐基、加藤虎ノ介、細貝圭、マキノノゾミ

【囲みインタビュー】

──演出をしていて感じるこの作品の魅力は?
マキノ 少人数で稽古しやすい(笑)、あぁ、そういうことじゃなくて(笑)。すごく人間が剥き出しになっている話なので、俳優それぞれが嘘をつけない、剥き出しのままぶつかり合わないといけない。それは稽古自体がそうなので、僕にとっては稽古場が楽しいということは魅力なんだけど、俳優三人がガッツリやっているのを見られるのが魅力だし、観劇される方も男三人がガッツリ芝居をしているのを観られるのが魅力なんじゃないでしょうか?
──台本を読まれた時と、実際に稽古に入ってみて感じ方などは変わりましたか?
細貝 僕は翻訳劇をやったことも観たこともあまりなかったのですが、台本がとにかく読み易くて世界観にスッと入っていけるという印象でした。でも、いざ稽古に入ってみると本当に繊細なお芝居なんだなということが改めてわかって、だからこそやり甲斐があるし、三人しかいないということで、尚更繊細なところを三人の空気感の中でやっていくところに、個人的にはとてもやり甲斐を感じています。
加藤 そうですね。少人数であるということと…(しばし考えて)とにかく理屈ではないというところ、没頭していることが俺にとっては魅力です。「ここを見てくれ!」とかそういうことではなくて、今とにかく夢中になってやれている作品で、身体も頭もぱつんぱつんに疲れているんだけれども、ちょっとでも隙間があったら台本を読んでいる。そういうことができる時間が自分にとってはすごくありがたいことなので、そこが自分にとっての魅力です。
佐藤 毎日頭も心も身体もフル回転でやらせてもらっていて、やっと膨大な台詞も頭に入り、台本から離れて、探求している作業が1番楽しいです。噛めば噛むほど味が出る作品ですし、毎回稽古する度に「ここはこういう解釈でもいいのかな?」というものが生まれやすい作品だなと思います。とにかく男三人で演じているのが気持ち良いです。
 
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──演出家から見た三人の印象は?
マキノ 印象ですか?もっともらしい答えと、正直な答えとどっちが良い?
三人 (爆笑)。
──では取り混ぜて。
マキノ 三人それぞれ違うんですが、三人共今回一緒にやるのが初めてなので、1本芝居を作ると、例えばこいつはできあがるのが遅いんだな、とかね、データとして入ってくるんだけれども、最初だからね。かなり飛ばして無茶を言ったって、それに対する耐性がある人と、知恵熱が出たりする人がいますね。まぁ誰が誰とは言わないけど(笑)。人って引き裂かれる状態の時ってもともと魅力的に見えるので、トリート役の細貝にしても、すごく狂暴なところとそれを必死で抑制している時や、弟に対する支配と愛情と、その弟が自分から離れていく寂しさ、孤独、そういう色んな要素があって、大きく引き裂かれていくほど人って魅力的でセクシーだと僕は思います。ハロルドの加藤もどこまで与えるか、辛抱強く与えるのかとか、フィリップの佐藤は今まで開かれていなかった世界がどんどん開かれていく、すごく大きな落差や、引き裂かれた状態にもっていければ、この三人がとても人間的に色っぽく見えると思うので、それを目指しています。答えになっている?感じよく言おうとするのって難しいんだよね(笑)。
三人 (爆笑)。

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──細貝さんはアメリカ生活が長かったと思いますが、この舞台の風景などには親近感が?
細貝 僕が貧乏だったということですか?(笑)
──いえいえ。でも何かリアリティーを感じる部分は?
細貝 結構危ない通りとかあるんですけれども、そこには基本的に立ち寄らないようにしていましたし、基本的に英語で喋っている時と、日本語で喋っている時とは、全く感覚的に違うので、融合させるのはなかなか。
佐藤 でもトチった時に出ますよ、決して書いてはいけない言葉が(笑)。おー、アメリカ!みたいに(笑)。
──やはり弟さんの名前を呼ぶ時に発音が違いますね。
細貝 嘘でしょう!?(笑)普通にフィリップって呼んでますよ(笑)。
加藤 そういうことにしとけよ(笑)。
細貝 ああわかりました(笑)、そういうことにしといてください(笑)。
──役を演じる上でそれぞれ大切にしていることは? 
細貝 僕がよくマキノさんに言われるのは「ビートを刻んでろ」と。すごいんですよ、すぐキレるし、感情のアップダウンが激しいので、いつも落ち着きなく色々なことに気を張っている人間だってことを意識しろと言われているので、それを大切にしています。
加藤 これまた難しいな。ただ必死になってやっていて、一番この中では歳とっていますが、1回1回全力で、1日たりとも無駄にしないつもりで、気持ちだけでもせめて負けないというつもりです。
佐藤 フィリップという役はすごくピュアだし純粋なので、常に新しい発見をしていて、常に新しい「?」を見つけるように、というのをとても意識しています。

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──では、皆さんにメッセージを。
細貝 たくさん上演されてきた『オーファンズ』ですが、僕らにしか、この座組にしかできない『オーファンズ』になっていると思うので、たくさんの方に観て頂きたいですし、翻訳劇に対して敬遠されている方も、本当にスッと入れる翻訳劇なので、是非1回お試しあれ、ということで是非ご来場ください。
加藤 本当にその通りなんですよね。
細貝 ズルいよ!(笑)
加藤 だってさ(笑)。
細貝 ここですよ、キメるところは!
加藤 僕自身も翻訳ものって敷居が高い気がしていたのですが、この台本を頂いた時にすごくスッと読めたし、楽しめたので、ちょっと翻訳ものはな…と思っている人でも、スッと楽しんで頂けたらと思います。

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佐藤
 僕らの座組では「たちどころにできろ!」というマキノさんのお言葉がありまして「できろ」という言葉は存在しないのですが(笑)、男三人が汗をだらだらかきながらやっている三人芝居を、是非劇場に観に来てください。たちどころにできているように頑張ります!
マキノ テーマ自体はとても普遍的なものを持っていると思います。シンプルで。でもとても深いですし、尚且つ観ていて退屈せずに、あっという間に終わる芝居を目指していますので、是非構えずにいらしてください。理解できる、よくわかるお芝居です。そして今日は1幕の頭をご覧頂きましたけれども、1幕と2幕でまたガラっと変わりますので、そこも見どころですね。「どうしたお前たち!?」っていうくらいビジュアルが変わったりもするので、色々楽しめる要素の多い、濃密な三人芝居です。秋に観るには良い芝居なんじゃないでしょうか。
佐藤 ああ確かに。
マキノ 10月に観るにはピッタリの芝居なので。
佐藤 さすがです!
マキノ 是非いらしてください。

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〈公演情報〉
オーファンズキービジュアル
 
『オーファンズ』
作◇ライル・ケスラー  
翻訳◇小田島恒志 
上演台本・演出◇マキノノゾミ
出演◇細貝圭 佐藤祐基 加藤虎ノ介
●兵庫公演 10/14・15◎兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
〈料金〉6,000円(税込・全席指定)
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00〜17:00月曜休)
●東京公演 10/18〜22◎草月ホール
〈料金〉6,500円(税込・全席指定)
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京:0570-00-3337(全日10:00〜18:00)



【取材・文・撮影/橘涼香】



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