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三人の孤児たちの深い孤独を描き、何度も上演されている名作舞台『オーファンズ』が、10月14日、15日に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで、そののち10月18日〜22日、東京・青山の草月ホールで上演される。
蝕まれた心が愛によって癒されていくというテーマで書かれた、ライル・ケスラー脚本によるこの傑作戯曲は、1983年にロサンゼルスで初演。日本では劇団四季により86年に日本初演、以来、さまざまなカンパニーや俳優たちによって上演されている。また、米国の映画版では名優のアルバート・フィニーやマシュー・モディーンが演じている。
今回この作品に挑むのは、『「デルフィニア戦記」第1章』『新・幕末純情伝』『パタリロ!』などに出演して活躍中の細貝圭、『鷗外の怪談』『AZUMI 幕末編』『わらいのまち』などで注目の佐藤祐基、映像で活躍し、舞台は『国語の時間』や『休暇 Holidays』などで強い印象を残す加藤虎ノ介。そして上演台本と演出はマキノノゾミという豪華な顔合わせとなる。

【あらすじ】
フィラデルフィアの廃屋で暮らすトリート(細貝圭)とフィリップ(佐藤佑基)の孤児兄弟は、凶暴な性格の兄トリートが臆病な弟フィリップを外の世界に出さず、トリートの稼ぎだけで生活をしていた。そこに、そこにやくざ者のハロルド(加藤虎ノ介)が迷い込んできて、彼もまた孤児だったことから、3人に疑似家族のような日々が訪れる。ハロルドはかつて自分がされたことを返すかのように、若い2人にさまざま事を教えていく。フィリップの中でトリートの存在は少しずつ薄れていき、やがてトリートは孤独感にさいなまれてしまう……

孤児(オーファン)との共生によって再生する孤児たち(オーファンズ)。この舞台を演じる細貝圭、佐藤祐基、加藤虎ノ介に稽古が始まる直前の時期に取り組みを聞いた。 

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細貝圭、加藤虎ノ介、佐藤祐基

自分たちがやるなら、また違うものになるはず

──作品についてはどんな形で知っていましたか?
細貝 昨年、他のカンパニーで上演されたことで知っていました。
加藤 僕はその公演を観たんですが、面白かったです。話をいただいて、すぐ、あの作品だと。
佐藤 僕も観ていないんですけど、名前だけは知っていました。
──ご自分の役柄についてどう感じていますか?
細貝 孤児の兄弟で、僕の演じるトリートが、弟のフィリップの親がわりとなって育てているんです。トリート自身は小さいときに親をなくして、愛情を受けずに育った。だから一番孤独なんですけど、強く生きなきゃいけないという信念と、弟への愛、自分なりの曲がった愛なんですけど、それで一生懸命生きている。それがとても切ないんですけど、どこか共感出来ます。それなのに手塩にかけて育てていたつもりのフィリップが、ハロルドの出現で、自分の手元からどんどん離れていく。そのやりきれなさというのもわかる気がします。
佐藤 フィリップは今までやったことのないジャンルの役です。わりと強い役をやることが多かったので。今回は良い経験で、贅沢な場を与えてもらったなと思っています。色々なアプローチの仕方はあると思いますが、すごく純粋にやりたいと思いますし、兄弟2人の空気感を大事にしていければと。
細貝 じゃ、公演終わるまで一切、俺に逆らっちゃダメだからね。
佐藤 なんでよ〜(笑)。俺のほうが本当は学年1つ年上なんだからね。いいもん、加藤さんに救ってもらおう(笑)。
加藤 ははは(笑)。
──加藤さんは作品を観ているということですが。
加藤 でもキャストの年齢も雰囲気も違いますから、自分たちがやるなら、また違うものになると思っています。今回の台本にちゃんと向き合うという感じですね。この2人とはそんなに年も離れていないので、わりと兄貴感覚になるのかなと。ハロルドは2人よりは長く世間を生きていて、それなりの経験はしている。そこは自然に出せるかなと思っています。

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せっかく情報収集したのに役に立ってない(笑)

──お互いにこれまで共演したことは?
佐藤 細貝くんとは何回か一緒に出ているんですが、そんなにがっつり芝居してないんです。
細貝 3回かな。密にやるのは今回初めてです。
佐藤 加藤さんとは初めてなので新鮮です。
細貝 僕は、この前、加藤さんと仲の良い役者さんと共演したので、一方的に情報を入れてるんです(笑)。意外だったのはお酒飲まれないという。
佐藤 え、まったくですか?
加藤 うん、飲まない。
細貝 そしてゲームが好きらしいと。
加藤 ゲームは最近あまりやってない。
細貝 えーっ、せっかく情報収集したのに役に立ってない(笑)。
──役者の先輩として見た場合はいかがですか?
細貝 この作品は兄弟の成長物語で、加藤さんのハロルドは、その中でメンタルな部分を引っ張ってくれる人なので、そこはもうそのまま加藤さんに乗っかっていきたいですね。
佐藤 加藤さんは映像で見ていて、すごく深いお芝居をする方という印象があるので、そのまま先輩にしがみついていこうと思っています。
──加藤さんはおふたりについては?
加藤 僕は情報収集はしてなかったんですけど(笑)、すごく感じの良い方たちですから、きっと楽しく公演が終わるんじゃないかと思っています。とにかくイジメないでほしいなあ(笑)。
細貝 (笑)3人きりですから仲良くしましょう!  気になったらお互いに聞いたり、ディスカッションすることになるといいですね。
加藤 あんまり論理的な話はできないからね(笑)。
佐藤 細貝くんは論理的だよね。
細貝 よく言うよ〜(笑)。そんなところ一切ないから。
加藤 僕は細かく説明とかされるとアタマが真っ白になるからね(笑)。

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男だけの芝居にテンションが高くなるマキノさん

──加藤さんは、演出のマキノノゾミさんとは同じ時代に、関西演劇界で活躍していましたね。
加藤 今回、マキノさんに初めて演出していただくんですが、若い頃、一方的にマキノさんの劇団「M.O.P.」を拝見していて、一生縁がない方かなと思っていたんです。僕は劇団MOTHERで、わりと自由度の高い演劇で、あちらはかちっとしたお芝居をしていらっしゃって、全然ちがう芝居の世界でしたから。それが、役者を続けてきたことで、こうしてご一緒できるわけで、やはり嬉しいですね。この出演のお話がきたとき、作品が面白いのはもちろんわかっていたんですけど、マキノさんの演出ということで惹かれた部分も大きいんです。
──おふたりはマキノさんとは?
佐藤 初めてです。僕は鈴木裕美さんの演出した『ブラウニング・バージョン』(2005年)が初舞台だったんです。その公演は「テレンス・ラティガン3作連続上演」という企画で、他の2作をマキノノゾミさんと坂手洋二さんが演出していらっしゃって、マキノさんは、稽古場でお見かけしたことがあったんです。すごく大きな方だなという印象でした。それで今回、裕美さんに「今度マキノさんとやらせていただくんですよ」と伝えたら、「あら!」と。それしか言ってもらえませんでしたが(笑)。
細貝 僕は2年前くらいに、知り合いに飲みに誘われたその席でお会いしました。でもきっと覚えていないだろうなと思いつつ、この間、取材でお会いしたとき聞いてみたら、やっぱり覚えていらっしゃいませんでした(笑)。演出家としては、翻訳劇も沢山演出されていて、きっちりしたお芝居を作る方という印象ですね。
──取材で、この公演についてお話をしたそうですが、いかがでした?
細貝 男だけの芝居ということで、めちゃめちゃテンションあがってました。そういう作品はこれまで少なかったそうですし、ご自分が観てない作品だからこそ、今回は思いがあるというようなことを話されていて、それは嬉しいなと。あれだけの演出家の方がそんなふうに前のめりで取り組んでくださるのはすごく嬉しいですよね。
加藤 僕もその取材では一緒でしたが、この作品は今までたくさん上演されているけれど、自分たちならではの舞台にしたいとおっしゃっていました。そういう意味では、今までの『オーファンズ』公演も、それぞれに違いと良さがあったと思いますし、我々もまた、自分たちの『オーファンズ』になると思います。演出家と役者が違えば、当然、別の舞台になると思うし、良い舞台になればいいなというだけですね。

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『オーファンズ』の歴史に、ちゃんと爪痕を残したい

──三人芝居ですが、それはいかがですか?
細貝 僕は『スワン』(2014年)という作品が三人でした。密な空間で芝居するのは緊張しますね。
佐藤 僕は初めてですが、面白そうだなと思いました。問題はセリフの分量ですよね。フィリップは食べ物とか薬とかの固有名詞をずっと言うんですが、そこがちょっと大変です。イメージを入れておかないと難しい。ばーっと口に出していくので、言い慣れておきたいですね。
細貝 トリートのセリフは、わりと感情を真っ直ぐに出せばいいので、素直にいこうと思っています。
加藤 僕は今回、セリフをきちんと入れて稽古に臨もうと、それを自分に課しているんですが、長台詞があるのでどうなるか(笑)。
細貝 加藤さんは、たぶんセリフは一番多いですよね。
──三人芝居の濃密な空間を楽しみにしています。最後に意気込みを。
加藤 翻訳劇ですが、かまえることなく観られるものにと、マキノさんも話していますが、僕自身も翻訳ものはちょっと近寄りがたいところがあって、外国の人間を演じることの恥ずかしさもあるんです。でも今回、そこを払拭していければと。日本人が観ても素直に共感できと思える作品なので、翻訳劇という壁を感じさせないものにしたいですね。話が面白いのですぐこの世界に入れると思います。
佐藤 僕は、役者として色々挑戦する部分が大きいので、久しぶりにちゃんと悩めるなと思っています。役の持っている色とか空気は初めてですし、自分にとっては大きな挑戦です。これまで強者と弱者でいえば強者をやることが多かったんですが、フィリップは弱者側で、純粋で、個である孤独や悲しさもあると思いますが、その中で柔らかさをどう表現できるかと思っています。心を自然にひらいていくところは、演じがいがあります。
細貝 僕は33歳になった直後の舞台になるんです。ちょうどデビュー10年で、このタイミングで骨太な作品でマキノさんの演出で、しかも三人芝居ですから、すごく嬉しいです。オープンマインドで、どんどんエネルギーをぶつけていって、この三人だからできる芝居にしたいし、今までの『オーファンズ』の歴史に、ちゃんと爪痕を残したいですね。

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細貝圭、加藤虎ノ介、佐藤祐基

ほそがいけい○東京都出身。幼少期から14年間米国で生活し、2008年にミュージカル「テニスの王子様」でデビュー。最近の出演作品は、舞台『新・幕末純情伝』、『パタリロ』、『TRICKSTER』、『剣豪将軍義輝〜星を継ぎし者たちへ〜』、テレビ『サヨナラ、えなりくん』(EX)、など。

さとうゆうき○東京都出身。大学在学中にオーディションに号各、04年にデビュー。06年『仮面ライダーカブト』で主人公の一人、加賀美新を演じる。その後、映像と舞台で活躍中。最近の出演作品は、映画『新宿スワン2』、テレビ『模倣犯』、舞台『鷗外の怪談』『GO WEST』『AZUMI 幕末編』『蒼い季節』『わらいのまち』など。

かとうとらのすけ○大阪府出身。大阪で舞台を中心に活動中、NHK朝の連続テレビ小説『ちりとてちん』(07年〜08年)で徒然亭四草役に抜擢され、脚光を浴びる。最近の出演作品はドラマ、『おみやさんSP2』(EX)『ブランケット・キャッツ』(NHK)など。舞台は『国語の時間』『OPUS/作品』『休暇 Holidays』など。

この公演の稽古場レポートはこちら
http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52038188.html
 
〈公演情報〉
オーファンズキービジュアル
 
『オーファンズ』
作◇ライル・ケスラー  
翻訳◇小田島恒志 
上演台本・演出◇マキノノゾミ
出演◇細貝圭 佐藤祐基 加藤虎ノ介
●兵庫公演 10/14・15◎兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
〈料金〉6,000円(税込・全席指定)
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00〜17:00月曜休)
●東京公演 10/18〜22◎草月ホール
〈料金〉6,500円(税込・全席指定)
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京:0570-00-3337(全日10:00〜18:00)




【取材・文/榊原和子 撮影/安川啓太】



ミュージカル『魔界王子』
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