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ふくふくやの第18回公演『くるんのぱー』が、11月1日より、下北沢の駅前劇場にて上演される(12日まで)。
劇団ふくふくやは、1999年春、女優の山野海(脚本の時は竹田新名義)を中心に設立。公演ごとに多様な客演を迎え、「30〜50代の男と女」をじっくりと描く、大人の芝居を上演してきた。
下北沢を中心に活動を続け、2009年には第19回下北沢演劇祭に参加し多くの反響を呼ぶ。その後も劇団員が映画・TVなど幅広いメディアに活動の場を増やし、劇団・個人の両極で更なる飛躍を遂げている。2014年の第15回公演『フタゴの女』(下北沢駅前劇場)では、ゲストに小泉今日子、渡辺哲を迎え、観客動員3,000人を記録。現在、様々な方面から注目を浴びている。
また山野海は、作家・竹田新としても活躍、塚原大助主宰のゴツプロ!では作・演出を務め、ゴツプロ!の旗揚げ公演『最高のおもてなし!』は今秋、幻冬舎から小説化されることが決まっている。
今回の『くるんのぱー』は、ふくふくやへ書き下ろす竹田新の新作で、彼女のライフワークと言うべき三本木麗子一座シリーズの最新作だ。その作品について、山野海、塚原大助、岩田和浩、また劇団ふくふくやの演出を全作品の手がけている司茂和彦に、語り合ってもらった。

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塚原大助、岩田和浩、 山野海、司茂和彦

女剣劇の一座とその家族たちの物語

──今回の作品『くるんのぱー』はどんな作品なのでしょうか?
山野 三本木麗子一座シリーズと名付けていて、16年前に『てれすけ』という作品を書いたのが始まりです。浅香光代さんがやっていらっしゃったような、女が男役をこなす女剣劇一座の話で、いわゆる股旅物の時代劇が全盛だった頃の流れをくむ、三本木麗子という女座長の一座とその家族たちの話です。そのシリーズを何作か書いているうちに、福島マリコさんと知り合って、6年ほど前に『ずんばらりん』(2011年)という作品を書きました。東の大衆演劇のトップスター三本木麗子と、西のトップスター鏑木丸子、幼馴染みで腐れ縁の2人を中心に据えた作品です。彼女たちは、お互いを親友とは決して認めないで、喧嘩したりしつつも持ちつ持たれつの関係を続けていく。今回はその2人について新たに書いたストーリーです。2人が旅芝居を続けながら、いろんな土地で様々な問題に巻き込まれていく、笑いあり涙ありのお話となっています。
──女剣劇の一座を書こうと思ったのは?
山野 私が子役をやっていた頃に、「新国劇」という劇団がありました。辰巳柳太郎さんと島田正吾さんという二枚看板の名優がいらっしゃった。彼らの男芝居、男が男に泣くような『国定忠治』『瞼の母』などに子役で出ていたんです。今は歌舞伎でしか聞かない掛け声「大向こう」も、「新国劇」でもたくさんありました。お芝居をわかっていらっしゃるお客さんが観にいらして、「日本一!」「これが見たくてやってきました!」と、掛けてくださるんです。そういうことが歌舞伎だけでなく、普通のお芝居の一部に組み込まれていたことを、現代の人たちに知ってほしかった。今回は『瞼の母』を劇中劇として使います。そこで当時のことをわかってくださるような仕掛けになっています。それから、私が子役の頃から見てきた俳優さん、いわゆるザ・俳優、心優しくてなんとなく照れ屋の俳優たちを観ていただきたかった。心配しているとき「心配してるよ」と言うのではなく、「バカじゃないの!頑張れや」と言うような、表の言葉に隠された裏の本当の気持ちを、お互いが感覚で受けとめ合っていた時代、その当時の人たちを書きたいなと思ったんですね。
──昨年「ゴツプロ!」に書き下ろした『キャバレーの男たち』とも、共通の時代背景がありますね。
山野 戦中・戦後、あの人たちのエネルギーが今の時代に必要な気がします。学校で習う方程式ではなくて、みんなが必死になって生きる必死さが必要なんです。笑わなくちゃ生きていけない、茶化さなかったら死んでしまう、そういう熱いエネルギーのほとばしりがある時代が好きなんです。

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塚原大助が育てられた思い入れ深い役

──演出は司茂和彦さんですね。演出プランをお聞きしたいのですが。
司茂 演技は役者さんに任せています。我々が楽しくないと観ているお客さんも楽しくないですから、のびのび楽しくやってもらえればと思っています。ふくふくやのお芝居のテーマは「愛」だと思っていますし、演しものによって、親子の愛や兄弟の愛、今回は弟子と師匠の愛といった形があるんです。それを伝えるためにも、リラックスして観ていただいて、泣いて笑って、くだらねえなと言いながら、でもお客さんの心に残るような演出を考えています。
──役者の皆さんは、今回の台本を読んでどんな印象を?
塚原 このシリーズは6年ぶりなので、ようやく故郷に帰ってきたという印象です。
山野 塚原だけはずっと私の息子、多多役をやっていたんです。
塚原 台本の初見で故郷に錦を飾るような感覚が押し寄せて嬉しかったですね。
岩田 僕は『ずんばらりん』はお休みしていて、たまたまシリーズで1本だけ休んだのがそれだったのですが。僕が初めてふくふくやに出演したのが、この三本木麗子シリーズだったので運命を感じています。今回の僕の役は新しい役で、これまで出てない役なんですが、でも、帰ってきたなと感じる登場人物はたくさんいるので楽しみです。
司茂 そうだよ。よく帰ってきたな!
全員 (笑)。
──それぞれの役について詳しく聞かせてください。
塚原 僕の多多という役は、おやま(女形)になるように育てられたので、普段の言葉から女形言葉なんです。今回でこの役は3度目で、6年前の『ずんばらりん』までは、この役をやるのが苦しかったんです。というのも多多というキャラクターはとても純粋で、ほんとに愛情深くて優しくて、天使みたいな子なんです。そういう多多の持っている愛情に追いつけなくて、すごく苦労したんですね。でも稽古を重ねている中で、少しずつ追いつき始めた感覚がありました。この役に苦しみぬいた過程が僕の生き方を変えてくれたし、成長させてくれた。この役に育てられたといってもいいですね。塚原大助という役者としても人間としても思い入れ深い役です。多多の持つ優しさや人を思う気持ちは、今の自分の根っこにありますし、そこからいろんなものを吸収してきた自負があります。そのおかげでゴツプロ!も立ち上げられた。ですから6年前とは違う、純粋な心は持っているけれど、それがもっと深くなって、大人になった多多を表現できれば嬉しいですね。
岩田 僕の役は三条きよしという演歌歌手で、しかもヒット曲が1曲しかないという、よくあるような話なんですが(笑)。実はその曲のせいで過去に傷を抱えて、それゆえに1曲しかヒットしなかったわけです。でもヒットした曲だからその歌は歌い続けなくちゃいけない葛藤がある。人として上手に成長できていないまま、とうとう40歳になってしまって、そして久しぶりに兄弟子と出会ったことによって物語が進んでいきます。今までにあまりない役ですね。劇団の中では若いせいか、誰かの下につく役が多かったのですが、最近は年齢に見合った役を演じられるようになりました。今回も同じような役どころですが、心が幼い部分や、売れたからこそ経験して辛さや喜びもあると思うので、それを表現できたらと。やりがいがある役だと思います。
山野 私は三本木麗子役です。女剣劇一座に育ち、照れ屋な部分もありますが、男っぽい性格…完全に男ですね(笑)。そうやって育ってきたのですが、50歳になって、ある男の人と同棲をします。昔は、男なんていてもいなくてもと思っていたのが、50歳になって初めて、男と向き合うことがどういうことなのか気づきます。スパッと恋にいけるかもしれませんが、今まで男として生きてきたので、男の人に素直になれなかったり、逆に怖かったり、そういう揺れが出てくるんですね。実年齢と同世代なので、新しい挑戦だと思っています。
──挿入歌の作詞・作曲は『キャバレーの男たち』と同じ石川よしひろさんですね。
山野 三条きよしの一曲しか売れなかった曲を、石川さんに作詞・作曲をしていただいて、コブシをぐいぐい回す演歌(笑)を書いていただきました。とても難しい要望に応えてくださって、素晴らしい歌ができました。

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普通に生きていたら会えない人たちに会いにきてほしい

──作家・竹田新さんの世界は、時代性を感じさせつつキャラクターに感情移入できるところが魅力ですね。
山野 竹田新として言えば、その時の感情を、あるいは昔に置き去りにしてきた感情を考えながら書いています。ふくふくやだから、他の公演だからとか、テーマを変えているわけではなくて、どんな公演でも、出てくださる俳優に寄せて書かせていただくことが多いので、観ている方も感情移入しやすいのかもしれませんね。
──3人からご覧になった作家・竹田新さんは?
塚原 今回の本を読んだ時も、とても面白いんですよね。遊んでいるんです、とても雑に。
山野 雑と言わないでよ(笑)。
塚原 みんなで遊んでいたいと思わせてくれますね。それをどこまで楽しめるかが勝負です。今回は13人という大所帯で、ゴツプロ!のメンバーも全員出ていますし、初日の本読みから、その空気感が出ていたので、このままいけば、きっとお客様も満足してくださると思います。そして、女優・山野海はバケモノです。福島マリコと山野海は僕の中ではバケモノ女優ツートップです(笑)。
司茂 ふくふくやの一番初めの芝居は3人でスタートして、もともと山野海を成長させるというコンセプトでした。
山野 すごい昔の話だね〜(笑)。
司茂 彼女がお芝居をしたいけど、なかなかその場所がない、そのチャンスもない。だったら自分が書いて主役でやってしまえと立ち上げた劇団です。それが、いつの間にか山野海を慕う俳優さんたちが増えて、劇団が転がっていくようになりました。彼女の魅力がそうさせているんですよね。初めの頃の台本は、暗いことばかり書いていた時期もあった。けれど、それを消化して、いろいろな経験を積み重ねてきた。彼女の良さが次第に出てきて、今は役者さんも演じることが楽しいだろうと思います。言葉づらだけではなくてその奥に隠されている心理や気持ち、そこを表現していく躍動感が、竹田新の脚本にはあるんです。
岩田 台本だけでも人物が動いているんですよね。当然ワクワクするし、これで稽古を続けたらどうなるんだろうと楽しみでしょうがない。そして女優の山野さんには演技では負けてられないと思うのですが、ある意味天才ですからね。
山野 私が言わせています(笑)。
岩田 どの人物にも味があるんです。
──皆さんの演技が楽しみです。最後に読者に見どころをお願いいたします。
山野 女剣劇一座の楽屋裏がかなり出てきます。そこに生きる役者と役者ではない人たち。そして大人たちの恋の仕方、怒り方、泣き方。みんなが右往左往しているところを見てください。
塚原 ふくふくやのメンバーにゴツプロ!のメンバーも出ますが、ゴツプロ!では描かれないキャラクターが出演していますので、ゴツプロ!しか観たことのない人は驚くと思いますよ。けれど、「普通に生きていたら会えない人たちだね」と褒め言葉をいただいたような人たちです。大人たちがめちゃくちゃ遊んでいますし、普通に生きていたら会えない人に会えるチャンスなので、ぜひ劇場にいらしてください。
司茂 肩肘張らずに遊びにきていただければと思います。
岩田 今回プロデューサーとしても携わらせていただいていますが、企画書を作った時から、この作品はお祭りだと思っています。錚々たる面々で大いに騒いで、僕も楽しみたいし、お客様も楽しませたい。皆さん、お祭りに参加して損はないですよ!

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前列/ 山野海、司茂和彦  後列/塚原大助、岩田和浩

やまのうみ○東京、新橋生まれ。女優・劇作・脚本家。劇団ふくふくやを主宰し、竹田新の名義で脚本も手掛ける。1985年から1998年まで激弾B級(現・激弾BKYU)に所属し、1999年劇団ふくふくやを立ち上げ、女優として全公演に出演。また全作品の脚本を執筆。2009年、ドラマ『救命病棟24時』で人気に。2013年、NHK大河ドラマ『八重の桜』へレギュラー出演。2016年、ゴツプロ!第1回公演『最高のおもてなし!』で演出家デビューを果たす。

つかはらだいすけ○東京都出身。ふくふくやの『だてっこき』(2007年)に客演したのをきっかけに劇団員となる。2016年にゴツプロ!を旗揚げ、2018年1月には本多劇場、近鉄アート館で新作『三の糸』の上演が決まっている。主な出演作品は舞台『フツーの生活』(44 Produce Unit) 『あつ苦しい兄弟』(劇団道学先生) 『ぼくはだれ』(RISU PRODUCE)『贋・四谷怪談』(椿組) 『世襲戦隊カゾクマン供(プリエールプロデュース)。

いわたかずひろ○茨城県出身。劇団ふくふくやの『すかしっぺ』(2008年)、『おろろん。』(2009年)に客演。以降、劇団員として参加。ドラマ『セーラーゾンビ』(TX)『梅ちゃん先生』(NHK)『新警視庁捜査一課9係#CASE7』(テレビ朝日)『下流の宴』(NHK)土曜プレミアム『これでいいのだ!赤塚不二夫伝説』、『ようこそ、わが家へ』、『民衆の敵』(CX)など映像でも活躍中。

しもかずひこ○1999年、劇団ふくふくや結成以降、全作品の演出を手掛ける。ミュージシャン石川よしひろのライブの演出、44 Produce Unit『自由を我らに』、劇団七福人『グズたま』など外部での演出も多数。
 
〈公演情報〉
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ふくふくや 第18回公演
『くるんのぱー』
作◇竹田新
演出◇司茂和彦
作詞・作曲◇石川よしひろ
出演◇山野海 塚原大助 岩田和浩 かなやす慶行 中村まゆみ 浜谷康幸 清水伸 福島マリコ 関口アナム 佐藤正和 渡邊聡 泉知束 44北川
●11/1〜12◎駅前劇場
〈料金〉前売り4,000円/当日4,200円/福ふく割り【1日夜、2日夜のみ】3,500円
(全席指定・税込)
☆終演後トークショー開催→【3日昼、5日昼、10日昼のみ】
〈お問い合わせ〉『くるんのぱー』制作部 070-6562-4480(11:00〜19:00/日曜休)
http://fukufukuya.net/kurun.html




【取材・文・撮影/竹下力】



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