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本年、2017年に創立30周年を迎えた花組芝居。そのアニバーサリーイヤーの掉尾を飾るのは、江戸川乱歩の名作を舞台化する浪漫歌舞伎劇『黒蜥蜴』。美貌の女盗賊・黒蜥蜴と名探偵・明智小五郎の対決と恋の駆け引きが見どころの本作を、今回は【黒天使組】と【黒夫人組】のWキャストで上演する。

【あらすじ】
有閑マダム「緑川夫人」の正体は、腕にトカゲの入れ墨を持つ女賊・黒蜥蜴。
ホテルに滞在中の富豪岩瀬に近づき、令嬢早苗を誘拐するが、名探偵明智小五郎によって取り戻されてしまう。
ところが自宅に軟禁状態の早苗は、人間椅子のトリックによって再び黒蜥蜴の手に。女賊は早苗と引き換えにダイヤモンド「エジプトの星」を要求する。
そんな黒蜥蜴の裏をかき、明智は変装して彼女を追跡、ついにアジトをつかんだ。
しかしそこには盗んだ宝石類と共に、剥製化された美しい人間達のコレクションが陳列されていた…。

今回、この舞台の脚本と演出を手がけ、【黒夫人組】では黒蜥蜴役を演じる、花組芝居の座長・加納幸和に、今回の企画意図や創立30周年への思いを聞く。

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黒蜥蜴という人はどこか寂しくて愛に飢えている

──花組芝居では初上演の『黒蜥蜴』ですが、【黒天使組】と【黒夫人組】というダブルバージョンにしたわけは? 
『黒蜥蜴』というのは原作がよくできていて、できすぎていて登場人物が少ないんです(笑)。そこで小林少年を出したり色々やってみたんですけど、役をあまり増やすと焦点がぼやけてしまう。でも役者が余ってしまうので、じゃあダブルにしようと。新作でダブルを作るのはしんどいんですけど、2年前の『毛皮のマリー』もダブルでやりましたので、なんとかできるんじゃないかと思ったので。
 
──主人公の黒蜥蜴ですが、加納さんはどんなふうに表現したいですか?
美しいものが大好きで、盗んでまで自分のものにしたいという欲が強い人ですけど、どこか寂しいんじゃないかなと。明智のことも好きになりますけど、子分にした雨宮のことも好きで同時進行させてしまう。なんて浮気な女だとも思いますが、ちょっと愛に飢えているところがあって、そこに雨宮は擦り寄ってしまうし明智も心が傾いてしまう。そういう部分はちゃんと見せたいなと思っているんです。
 
──ダブルで谷山知宏さんも同じ役を演じますが、見せ方などの違いは?
僕のほうは明智が小林大介で雨宮は押田健史、2人とも年下なのでお姉さんに見えないように(笑)。谷山のほうは逆に明智の桂憲一が年上ですから、対等に見えるようにがんばってほしいし、雨宮の丸川は同期なので、同期同士で刺激し合えばいいんじゃないかと。谷山はダンスができるので洋風にしようかと思っていて、僕の方は和風になるかもしれません。
 
──今回、30周年ボーイという方たちが出るそうですね。
30周年の記念公演に参加しませんかと、30歳以下を条件で募集したんです。9人参加するので大所帯です。出番は黒蜥蜴の恐怖美術館の手下とか、警部の部下(刑事)とか作って出てもらいます。

こんなに他の演出家の現場を知っている演出家はいないと

──劇団を30年続けているというのは、それだけでも1つの財産ですね。
ここまでこられたのは、基本的に人手に困らなかったことで、それはものすごく有り難かったなと。役者とかスタッフが足りないということは一度もなかったので。もちろん出入りはありましたけれども、やめない人が多いんです。
 
──やめないのは花組芝居にいるのが楽しいからでしょうね
それは心がけました。芝居作りはアーティスティックな作業ですから、表現に関してはわがままな連中が集まって来ますけど、いろいろ追求しているうちにカリカリしても、最終的にはホッとする現場にしたいと思っていましたから。

──歌舞伎を基本に置くという花組のカラーも、ずっと変えないできましたね。
最初はそれなりに試行錯誤はありました。でも10年過ぎたあたりから、表現上の共通言語みたいなものができて、ここを赤くしようと言うと同じイメージを持てるようになりました。それはずっと一緒に作りながらやってきたからだと思います。

──加納さんは俳優として様々な作品に出ていますが、それも劇団にとって刺激になっているのでは?
有り難いことに色々な演出家さんに演出してもらえるので、それを劇団に持って帰ってくるんです。最初はみんな戸惑うんですけど、それはそれで面白いとついて来てくれるので。こんなに他の演出家さんの現場を知っている演出家はいないと思います(笑)。
 
──最後に、30周年から次への新しいステップの一言をいただけきたいのですが。
以前「歌舞伎から入って歌舞伎から離れようとしている」と言われたんですけど、歌舞伎がもしも現代劇であり続けていたらどうなるかということを考えてきて、30年経ってようやく、これもできるようになったあれもできるようになりました。
今回、浪漫歌舞伎劇と付けたのも、『黒蜥蜴』を歌舞伎でやったらこうなるよというのを見ていただきたいので。歌舞伎の方は『黒蜥蜴』に義太夫を入れたりするのは嫌がるかもしれませんが、花組芝居は歌舞伎の持っている古典の要素を使いながら新しい劇を作っていく。歌舞伎の先取りというか、もし歌舞伎の方がご覧になったら、こういうのをやりたかったと悔しがるような、そういうものを作っていきたいと思っています。

【プロフィール】
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かのうゆきかず○兵庫県出身。87年、花組芝居を旗揚げ、ほとんどの作品の脚本・演出を手がける。俳優としても映像から舞台まで幅広く活躍中。最近の主な舞台は、『サド侯爵夫人』『ギルバート・グレイプ』『八百屋のお告げ』『ディーラーズ・チョイス』『鉄瓶』『配達されたい私たち』『龍が如く』音楽劇『悪名』『グリーンマイル』など。歌舞伎の豊富な知識を生かし、カルチャースクールの講師も勤める。

〈公演情報〉
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『黒蜥蜴』
原作◇江戸川乱歩
脚本・演出◇加納幸和 
作曲◇鶴澤津賀寿 杵屋邦寿

キャスト表【黒天使組】【黒夫人組】
黒蜥蜴/谷山知宏 加納幸和
明智小五郎/桂憲一 小林大介
雨宮潤一/丸川敬之 押田健史
岩瀬庄兵衛/原川浩明 山下禎啓
岩瀬早苗&桜川葉子/二瓶拓也 堀越涼
女中マリ子(秦万里)/秋葉陽司 松原綾央
岩瀬富子夫人/植本純米 横道毅
小林芳雄/大井靖彦 美斉津恵友
浪越速太警部/北沢洋
奥村文代/磯村智彦 嶋倉雷象
手下 北村六平/与作
手下 合田権蔵/ミヤタユーヤ
刑事 石花竜/永澤洋 菅山望
刑事 佐居庄一/小坂竜士
刑事 芝満男/笹尾京平 寺内瑞樹
刑事 伊組谷冠二郎/奥村啓介 山崎正悟

●12/2〜10◎あうるすぽっと
●12/16・17◎近鉄アート館 
〈料金〉一般・
前売6,000円/当日6,400円 U-25割引・前売2,500円/当日2,900円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉花組芝居 03-3709-9430






【取材・文/宮田華子 撮影◇岩田えり】




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