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倉科カナ 木村佳乃 田辺誠一 片桐仁

今、最も注目を集める劇作家の1人、倉持裕が作・演出。そして田辺誠一、木村佳乃、片桐仁、倉科カナという豪華キャスト陣で描かれる大人のコメディドラマ『誰か席に着いて』が、シアター1010でのプレビュー公演を経て、11月28日からシアター・クリエで開幕する。(12月11日まで。その後、全国ツアーあり)
 
芸術家支援の財団で、来年の助成金対象者の選定に集まった2組の夫婦が、崇高な芸術とその未来について語りあうはずが……実は4人はそれぞれに自分が抱える問題で頭がいっぱい。そこには、プライド、嫉妬、嘘、名声、金など、利己的な問題が山積みになっている。次々と明るみになる各々の隠し事に、果たして4人が迎える顛末とは──?という問いかけが、倉持ワールドならではのシニカルでテンポの良い会話のなかで、繰り広げられていく。
そんな大人のコメディに挑む実力派俳優たちが、稽古たけなわの時期に、作品のこと、役柄のこと、更に互いの魅力までを語り合ってくれた「えんぶ12月号」のインタビューをご紹介する。

膨大な台詞の中に詰まった「夫婦あるある」「兄弟姉妹あるある」

──脚本を読んだ作品の印象から教えてください。
田辺 ワンシチュエーションで登場人物6人がずっと喋っている、今まで映像や、舞台も色々やらせて頂いてきましたが、こういうシチュエーションの芝居って初めてで、膨大な台詞量に驚いたのが第一印象でした。これ覚えられるのかな?と。
片桐 またまた! 一番覚えてるじゃないですか!
木村 今の段階で、唯一台本を離してますものね。羨ましくて。
片桐 どうやって覚えているんですか?
田辺 家に帰って、お酒飲みながら読んだり。
木村 でも、量が多いうえに長台詞がある訳ではないから、1人で読んでいても覚えられないんです。実際に皆さんとやりとりしないと。
田辺 誰かに読んでもらうといいよ。
片桐 えっ? 奥様に読んでもらうんですか?
田辺 うん。
片桐 マジで!?  じゃあ奥様はこの話を知っているんですね?(倉科に)どうやって覚えてる? 台本一番汚れてるから相当読み込んでるるんじゃ?
倉科 それは扱いが雑なだけです(笑)。でも稽古期間があるから、稽古の中で徐々にきちんと覚えていけばよいかなって。
木村 そう、稽古で覚えようね! 倉持さんもそれでいいと。倉持さんは、台詞のニュアンスが合っていればOKではなくて、語尾まできっちり台本通りに言えないのなら、台本を持ってくださいっておっしゃるので。
倉科 句読点にまでこだわられますよね。「えっ」とか思わず入ってしまっても止められるので、堂々と持っています(笑)。
木村 私にとっては、まず読んだことがないタイプの台本でした。倉持さんの笑いってとても知的で、洗練されていて、例えばバナナの皮を踏んで、滑って転んで笑うというような、わかりやすい笑いではないので。
片桐 いや、その笑いはかえってハードル高いですよ(笑)。
木村 だから例えばって!(笑)。すごく奥深い笑いなので、面白かったけれど、演じるのは難しいなと思いました。
片桐 僕は倉持さんの作品に初めて出たのが05年で、やっぱりワンシチュエーションの会話ばかりの舞台で、面白かったし、また出たいなと思っていたから嬉しかったですね。読んで、これは倉持さんの好きな世界だな! と思ったから、楽しいけれども確かに難しい。1つ1つに対しての演出も緻密だし。
倉科 台詞のどこが誰の言葉を受けていて、誰に発しているのかが、読んだだけだとわからないくらい細かいですよね。
田辺 あぁ、それはある。
倉科 だから皆さんとお稽古して初めて、そういうことか! と思うところも多くて。
──台本を読んだ印象と、皆さんでお稽古した時の印象が違うのですか?
片桐 そうですね。やっぱり人の声で読むと全然違います。だから、ご覧になる方にはきっとよく伝わる、リラックスして観てもらえるものになると思います。「夫婦あるある」「兄弟あるある」が満載なので。

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リアリティーのあるそれぞれのキャラクター

──役柄にはどんな感じで取り組んでいますか?
田辺 僕が演じる哲朗は、基本の設定としてはずっとイライラしている役なのですが、そのカラーだけで行くのは違うなと。絡む相手によって、ここはもっと抑えていいんだなとか、稽古の中でわかってきたので、今探っているところです。
木村 私の演じる織江はスランプに陥っている脚本家で、長女なので自由なんです。私自身は次女で、カナちゃんが本当は長女なんですけれど、長女って自分ルールで妹を支配しようとするところがあって、それは私の娘や長女の友だちを見て参考にしています。作家という職業についても、20年来の親友の作家さんをモデルにさせてもらっているんですが、生み出す仕事って本当に大変だなとつくづく思います。だから織江は、夫が妹と浮気しているなんて全く気づいていないし、基本的に自分が書けないことにいっぱいいっぱいで気づく余裕もないんです。でも夫を愛しています。
片桐 僕は売れないミュージシャンなんですが、僕は以前、倉持さんに自説のアーティスト論を語ったことがあって。作品って、作家が「こういう意図で創ったものです」と言って回って、しかるべき人に認めてもらえて初めて値段がつくんですけど、「本当はそんなこと言いたくない、観た人に自由に感じて欲しい」というような話をしたら、それがそのまま台詞になっていて!(笑)「これ、俺が言ったことじゃないか!」とびっくりしました。
木村 さすが作家ですね(笑)。何気ない会話をちゃんと覚えている。
片桐 だから奏平という役には、結構身につまされるものがあります。
倉科 私が演じる珠子は、ずっとイライラして怒っています。倉持さんが「俺、好きなんだよ」っておっしゃって。
片桐 カナちゃんのことが?!
木村 問題発言ですね?(笑)
倉科 違う、違う、怒っている人が!(笑)「俺が書く人、怒っている人が多いんだよ」って。
田辺 あぁ、それはあるかも。
木村 私の役も結構怒ってますよね。
倉科 珠子の気持ちもわかるなと思って。元々プロのダンサーで踊りたいのに踊れないフラストレーションがたまって、八つ当たりをしたり、本当はそんなこと思っていないのに、という外れたポイントで怒ってしまったりすることってありますから。
片桐 たまっているとそうなるよね。
倉科 とてもリアリティーのあるキャラクターなので、演じていて理解しやすいです。
──倉持さんの演出にはどんな印象を?
田辺 僕は倉持さんの演出を受けるのは初めてなので、どんな感じなのかな? と思っていたのですが、本当に穏やかで的確です。「こうしてみて」という指示が繊細で、僕がよく行く整体の先生が「ちょっとズレてるから」って、ほんの軽くチョイチョイと触れるだけで。
片桐 そんなに優しいんですか?
田辺 そう、他のところに行くと結構バキバキという感じなんだけど、その先生はチョイチョイと触るだけで、やられた感が全然ないのに効く。それに通じるなと思います。
木村 すごくわかります。声を荒げることもなく、知的でね。微妙なニュアンスをおっしゃるんです。「この語尾もう少し強くしましょうか?」とか。
片桐 「やっぱり戻しましょう」とかね。
田辺 すごい方向転換をする訳ではないのに、変わっていく。
倉科 だから演出を受けていてとても面白いですね。
木村 特に私は3年ぶりの舞台なので、こういう現場で、皆さんが演じるのを見て一緒にやれるのが楽しいです。

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居心地の良い稽古場で生まれる連帯感

──少し視点を変えて、夫婦の役柄で感じているお互いの魅力を語ってください。
木村 私は田辺さんが「メンズノンノ」でモデルをなさっていたのを見ていた世代なので、なんてハンサムな人だろうと思っていたのですが、実際にこうしてお仕事をご一緒させて頂くようになってからは、その上に優しい方だなと。そんなに口数が多い方ではなくて、物静かだけれど、私がワイワイ話しかけても「うん、うん」とうなずいてくださるし、女性が一緒にいて楽なタイプですね。ああしろ、こうしろと言う訳ではなく、包容力があって。
片桐 なるほど!  品があるしね。飄々としてるし。
木村 あと、すごく面白いのが田辺さんの表情です。田辺さんの哲朗とカナちゃんの珠子が不倫をしている関係なんですが、もう田辺さんがカナちゃんを見る度にやたらニヤニヤ笑いかけていて(笑)、それがもうなんとも言えない可愛い笑顔で! ここ是非注目してください。哲朗の珠子に対する態度は必見です!
片桐 もう露骨だよね。なんで俺たち気づかない設定なんだろうっていうくらい(笑)。
木村 私はこれまでの現場で、心身共に限界だった時にとても温かく接してくださって、助けて頂いたという印象が強かったので、夫役が田辺さんだと伺った時には嬉しかったです。
田辺 木村さんは本当に面白い人で、基本的にパワフルでポジティブだから、一緒にいて気持ちがいいです。切り替えも早いしね。
片桐 確かに演出家の指示に対する反応も早いですね。PTAの会長とかバリバリやりそうですよね。
田辺 うん、そうそう。
木村 あ、でもそれは本当にバリバリやるかも(笑)。どうせやらなければいけないことなら、楽しくやりたいと思うタイプなので。
田辺 そういうところが良いですね。そちらは?
片桐 僕らは、カナちゃんがデビューの頃に一緒に仕事していますからね。深夜枠で1分半のコントを100本撮ったんです。
田辺 えぇ?
倉科 本当に大変でした! 撮っても撮っても終わらなくて。
片桐 半ばやけくそだった(笑)。
倉科 でも面白かったですよ。どこかで遊びの延長のような気分もあったし、若かったなって。
片桐 だからその頃のことを思うと、立派な女優さんになられたなと思います。
倉科 だって10年ですもの。ただ普通に大人になっただけです(笑)。でも仁さんは変わらないです。あの時のまま。
片桐 まさか夫婦役になるとは思いもしなかった。14歳も離れているし。
倉科 仁さんと夫婦役だから、もっとフランクな関係かなと想像していたら、ケンカばかりしていて(笑)。もうずっとケンカしていますよね。
片桐 目も合わせない。
倉科 合わせたら爆発するから。
片桐 たまったものがあるから。でもここまで密に芝居するのは初めてだし、新鮮だよね。
倉科 居心地が良いです。
片桐 この稽古場全体が居心地が良い。福田転球さん、富山えり子さんも含めて、皆さん素敵な人ばっかりだから!
木村 長い稽古だし、全国ツアーもある長い公演だから、仲良く力を合わせて、怪我のないようにやっていきたいですね。
──稽古場の和気藹々とした雰囲気が伝わります。では改めて、意気込みをお願いします。
田辺 人間の可笑しさが出ている芝居ですので、きっとクスクスと笑って頂ける舞台になると思います。楽しみになさっていてください。
木村 どこで笑って頂けて、楽しんで頂けるのか、私達もそのお客様の反応を楽しみにしていますので、是非劇場に足をお運びください。
倉科 皆さんの足を引っ張らないように頑張ります!
片桐 そこ?(笑)夫婦とか、姉妹とか身につまされる話と、芸術論も入っていて、シアター・クリエにぴったりのお芝居になっていますので、楽しみにしていてください。

【プロフィール】
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倉科カナ 木村佳乃 田辺誠一 片桐仁

たなべせいいち○東京都出身。85年、16歳の時「Art Project Swim」を結成、映画製作、絵画、小説、写真等の創作活動を展開。87年『メンズノンノ』専属モデルとしてデビュー。92年には俳優デビュー、以後、俳優、映画監督、アーティストと多彩な活動を続けている。映像はもちろん、蜷川幸雄、宮藤宮九郎演出作品や、劇団☆新感線など舞台出演も多い。近年の主な舞台は『八犬伝』『キレイ 神様と待ち合わせをした女』など。 
 
きむらよしの○東京都出身。96年女優としてデビュー、97年映画『失楽園』で日本アカデミー賞新人賞受賞。数多くのドラマ、映画で活躍。近年の作品にはドラマ『僕のヤバイ妻』、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』など。バラエティにも積極的に出演、活動の幅を広げている。主な舞台作品は『モーツァルト!』『さらば、わが愛 覇王別姫』地球ゴージャスプロデュース公演Vol.10『星の大地に降る涙』『抜目のない未亡人』など。
 
かたぎりじん○埼玉県出身。多摩美術大学在学中に小林賢太郎と「ラーメンズ」を結成。お笑いコンビとして人気を博す一方、俳優としても活躍。また「エレキコミック」とのユニット「エレ片」としてのライブ活動や、彫刻家としての作品発表など、多岐に渡る活動を展開している。主な舞台作品は『レミング—世界の涯まで連れてって』『小野寺の弟・小野寺の姉』『ライクドロシー』『海峡の光』『鎌塚氏、振り下ろす』など。

くらしなかな○熊本県出身。高校在学中に「SMAティーンズオーディション2005」でグランプリを受賞したのをきっかけにタレント活動を開始。06年に女優デビュー後、09年NHK連続テレビ小説『ウェルかめ』でヒロインを務めるなど、テレビドラマ、映画と、多くの作品に出演している。主な舞台作品は『シダの群れ』『真田十勇士』現代能楽集VIII『道玄坂綺譚』『ライ王のテラス』など。

〈公演情報〉
だれ

『誰か席に着いて』
作・演出◇倉持裕
出演◇田辺誠一 木村佳乃 片桐仁 倉科カナ/福田転球 富山えり子
●11/28〜12/11◎日比谷・シアタークリエ チケット好評発売中
その他、全国ツアーあり
〈お問い合わせ〉03-3201-7777 東宝テレザーブ(9時半〜17時半)



【構成・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】



『江戸のマハラジャ』
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