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芸術家財団の来年の助成金対象者の選考に集まった二組の夫婦が、崇高な芸術についての未来を語りながらも、自分が抱えている問題でいっぱいいっぱい……。
そんな、ちょっと身につまされるシチュエーションを、怒涛の会話劇で描くシチュエーションコメディ『誰か席に着いて』が、本日、11月28日から日比谷のシアタークリエで上演される(12月11日まで。のち、全国公演もあり)。
 
『誰か席に着いて』は、今最も注目を集める人気劇作家の1人、倉持裕の作・演出で繰り広げられる夫婦を題材とした新作オリジナルコメディ。姉妹と、その夫たちという二組の、それぞれにクリエイティブでインテリジェンスを持った人々が、芸術の未来を語りながらも、頭の中には自分が抱えている問題が渦巻いている、というシニカルな視点が、テンポの良い台詞の応酬の中で描かれている。
 
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【STORY】
資産家の家長が立ち上げた財団で多くの芸術家を支援してきた小原家。家長の死後も財団の運営は続き、助成対象となる芸術家の選定には、売れっ子脚本家で長女の織江(木村佳乃)、その夫で映画プロデューサーの哲朗(田辺誠一)、ダンサーだったが結婚を機に家庭に入った次女の珠子(倉科カナ)、その夫で売れないギタリスト・作曲家の泰平(片桐仁)が関わっていた。
今年も来年度の助成対象者を選ぶシーズンとなり、織江と哲朗の家に四人が集まって選考会をはじめる。ジャンルは違えど、それぞれに芸術への愛情が深い四人は、本物の芸術家を支援していきたいと熱く語りあう。だが、議論は度々宙に浮き、四人はどこか落ち着きを欠いている。それもそのはず、四人は各々、自分自身が直面している問題で頭がいっぱいの状態だったのだ。
脚本家としてスランプに陥っていた織江は、義弟の泰平がきまぐれに書いた脚本に意見を求められた折、予想以上の傑作に驚き、思わずその内容をパクった脚本をテレビ局に送ってしまっている。また、映画プロデューサーとして勢いを失っている哲朗は、義妹の珠子がダンサーに復帰したがっているのを知り、有名プロダクションとのパイプを匂わせて、密かに珠子と幾度か関係を持っていた。だが、哲朗の斡旋が一向に進展しないのに業をにやした珠子は、哲朗との関係に見切りをつけ、自分が出演するカンパニーを財団の支援団体にねじ込もうとしている。一方音楽活動が上手くいかない泰平は、いかがわしい金儲け話に手を出し、哲朗夫婦に大損害を与えている事実をひた隠しにしていた。
そんな四人が日本の芸術の未来について語りあうのだから、議論が進む訳もない。それどころか、語りあう時間が過ぎるに従って、それぞれの抱える問題が、そこかしこからほころびを見せはじめて……

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織江と哲朗の住む小原家の中庭、ただひとつの場面の中で、ストーリーは展開していく。その中で芸術論を語りあう四人が、二人の姉妹とその夫同士という、二組の夫婦であり、姉妹であり、義理の兄弟であるという関係性がまず面白い。しかも、それぞれが抱えている「実は」の問題の数々が、絶妙に四人の間でリンクしていながら、全く不自然さがないのが脚本の倉持裕の技を表している。それだけでなく、四人が直面している問題点が、非常にリアルでどれ1つとっても絵空事感がないから、おそらく誰しもが、登場人物の悩みのどこかに共感できる展開が、実に巧みだ。
 
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その上に、田辺誠一、木村佳乃、片桐仁、倉科カナの役者陣が、個性は異なりながらも、チャーミングであるという共通点を持っているから、劇中の人物たちが取る切羽詰まった行動が、嫌味に映らないのには驚かされた。普通、仕事に復帰したがっている妻の妹に、復帰の道をつけてやると匂わせて関係を持った、などという設定が示されたら、観る者が「人間のクズだ」と思ったとしても不思議ではないのに、田辺誠一の温かで柔らかい佇まいと、二枚目なのにどこかでとぼけた可笑しみもあるキャラクターが、哲朗を全く嫌な男に見せないのは驚異的だ。哲朗も売れっ子脚本家の妻を前に、プロデューサーとして行き詰っているいる自分への焦燥があったのだろうなぁ、と、田辺の味わい深い演じぶりに納得させられてしまうのだから、たいしたもの。
 
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同じことが他の出演者すべてに言えて、木村佳乃のある意味あっけらかんとして、とことん前向きなポジティブさ、近年持ち前の美貌とのギャップがバラエティ番組でも大注目を集めている個性があることによって、織江の行動にほの昏さがみじんもなく、舞台をポップに弾ませる効果になっている。
また、片桐仁の抜群の反応の良さと巧さが、本人の独特のキャラクター性の中で、適度に中和されながらも緩急自在なのが、作品のコメディとしての側面を支えたし、倉科カナのとびっきりの愛らしさが、四人の悩みの中で、最も一般的に理解しやすい苛立ちと鬱屈に対して、応援する気持ちを増幅させられるのも、役柄を更に膨らませる効果になっている。
 
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この総じてチャーミングな四人に、出入り業者役の福田転球、自称家政婦の富山えり子が、共に醸し出す食わせ者感が、大きなアクセントになっていて、展開の転がり方も面白い。
 
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固定されて動かないセットの、出入り口、窓などという意外な使い方も面白く、休憩なし約1時間半ノンストップの展開からの、ラストシーンをどう取るか?に、観客それぞれの嗜好が現れるだろうが、役者のチャーミングぶりが堪能できることは間違いない舞台となっている。
 
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【囲みインタビュー】

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プレビュー公演の初日に囲み取材が行われ、田辺誠一、木村佳乃、片桐仁、倉科カナが、公演への抱負を語った。

──初日を控えた気持ちから教えてください。
田辺 1ヶ月びっちり皆で稽古したので、お客様にどういう風に楽しんでもらえるのかが楽しみです。
木村 明日初日のような気がしなくて、なんかソワソワして。明日だと言って頂いたら非常に緊張してきちゃいました。いきなり手汗が。
田辺 そうですね。
木村 どうしよう、緊張しますよね。久々の舞台なので。初日はかなり緊張すると思います。

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──緊張するとどうなるんですか?
木村 手汗をかいて、やたらテンションが高くなってベラベラ喋って。
片桐 ベラベラ喋っても台詞だから大丈夫ですよ!役もそうだし。
木村 あ、そうですね。そして最終的にはお腹が痛くなってきてという、一般的な緊張状態という感じです。
片桐 僕もやっぱり田辺さんがおっしゃったように、ずっと一緒に和気藹々とやってきたので、日常としてこの家族っていう感じになってきていて、それをお客様に観てもらって、笑ってもらって初めて答えが出る感じなんで、緊張しますけれども、早くお客様の前でやりたいです。
木村 あ、確かにそれもある!
片桐 ここがどうウケるのかな?とか心配ですのでね。
倉科 稽古場がすごくおだやかに進んで、その延長線上でここまで来てしまって、緊張感が全然なくて(笑)。
片桐 良くないと思うよ(笑)。
倉科 本当に(片桐)仁さんが言った通り、観てくださる方の前に立った方が、稽古がこういうところで生きているんだって、実感していくんだろうなと思います。まだちょっと実感が。
片桐 そうですね。

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倉科
 (木村)佳乃さんも、昨日通した時には全然緊張しないと…
木村 昨日の通しのことは思い出したくないの!
倉科 (笑)その前、その前です。稽古の前の時に。
木村 あぁ、良い思い出の時にね(笑)。昨日の通しの時には、私がただ1人メタメタだったんです!本当にすみません!
倉科 違うんですよ!本番って感じがしないよね、って言っていて。
木村 そう、なぜなんでしょうね。11月がそうさせるんでしょうか(笑)。
田辺 えっ?(笑)
片桐 何、それ(笑)
木村 ほら何かあるじゃないですか。ハロウィンも終わって、クリスマスと年末が控えていて、なんだかんだ言ってイベントがないでしょう?
田辺 あ〜うん。
木村 まぁ「文化の日」はあるんですけど。
片桐 それはもう過ぎましたしね(笑)。
木村 そうなんです。でもだから緊張してなかったんです(爆笑)。
片桐 全然答えになってないよ!(笑)
木村 そうですね、言っていて生きていないなと(笑)。

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──久しぶりの舞台だからですか?
木村 でも田辺さんが昨日の通し稽古でものすごく面白くて!もう田辺さんにフイてしまって(笑)。私達はファミリーなんですけれども、私達は真剣に演じていて、それをお客様に観て笑って頂く演目なので、笑わそう、笑わそうとするものではないので、こっちが吹き出してはいけないので、それが大きな課題ですね。本当に面白いんですよ、田辺さんが。
田辺 いやいやいや。ちょっと脚本と関係ないところで訛ってしまって(笑)、それがツボに入ったんだよね?
木村 いえ、それだけじゃなくて。
片桐 それはただのきっかけだったんだよね。
木村 確かにそれがスイッチとはなったんですけれども、本当にすごいんです!田辺さんが!
田辺 いやいや。

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──アドリブなどもすごいのですか?
木村 アドリブは禁止なんです。倉持裕さんが「アドリブは必要ないですよね」とおっしゃっていました。
──木村さん、また髪の毛がね。
木村 気がついてくださいました?
片桐 気が付くでしょ?(笑)どうして気がつかない人がいましょうか!
木村 やっと気が付いて頂いて!去る10月の頭に髪の毛を切ったんです。何故かと申しますと『誰か席に着いて』とは全然関係なくて、この会見は『誰か席に着いて』の為なんですが、『真田丸』『ひよっこ』と、三年半くらいずっと髪の毛が切れなかったんです。ずっと切りたくて、終わった瞬間に勢いよく切ったと、それだけです(笑)。
片桐 普通、そういうのは演出家に相談するんですよ。それが初日に何も言わずにズバッと切ってきました(爆笑)。
木村 一応プロデューサーの方には「切っていいですか?」とお伺いはたてたと思うんですが…。
片桐 ここまでとは!ここまで短いと思わないですよ。
田辺 どのくらい切るかは言わずに?
木村 そう…そうですね(笑)。
──女性が髪を切るって何かあったのかな?と思ってしまうんですが。
木村 いえ、本当に『真田丸』と『ひよっこ』でずっと切れなかったっていうのがあって。ずいぶん傷んできちゃっていたので、ずっと切りたかったんです。こんなに短くしたのは24歳くらいの時に『愛と青春の宝塚』というドラマをやった時に、男役だったので切ったことがあるんですが、ここまで短いのは初めてなんです。

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──生まれて初めて?
木村 そうなんです!だから今、顔を洗った延長線上で、髪も洗えると。
片桐 どうして?どうして顔を洗った延長線上で髪を洗うの?(笑)
木村 本当に楽ですよ!
片桐 いや、あり得ないからその無防備さ(笑)。
木村 でもちょっと首の辺が寒いですけどね。
田辺 ねっ、て(笑)。
木村 いや、だって男性の方は首元をどうしているのかなと。足首、手首、首元って冷やしちゃいけないってね。
片桐 そうですね、はい。
木村 男性はどうしてるの?鍛えられるものなんですか?
片桐 慣れじゃないですか?(笑)それに、佳乃さんは首が長いから、冷めやすいんじゃないですか?
木村 それが悩みです、今、首が寒い。
──何僂らい切られたんですか?
木村 どのくらいあったっけ?
片桐 いや、それわかんないけど(笑いながらポスターを示して)、このくらいはあったんですよね?
木村 あ、そうです、そうです。
片桐 3〜40僂らい切ったんてじゃないですか?
木村 あぁ、そうなんですか?
片桐 いや、そうなんですかって(笑って記者に)、このように、思ったことをすべて言ってくださいます(笑)。
──お子さんの反応は?
木村 子供ってやっぱりプリンセスが好きなので、長い髪の毛が好きなんですよ。だからずいぶん「切らないでくれ」とは言われました。
片桐 あぁ、そうなんですか、へ〜。
木村 そうなの。でも「切らなきゃいけないんだ!」と、よくわからないことを言って切ってしまいました(笑)。
倉科 あ〜あ(笑)。
──嫌われたりとかは?
木村 そこまで興味はなくて(笑)、もうすぐに慣れて。
──ところで、今回田辺さんが絵を描かれて、それが公演グッズになっているとか?
木村 そうなんです!(スタッフからグッズが届けられて)あ、これです!
片桐 いいですよね!
倉科 可愛い!

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──こちらはどういう意図で?
田辺 『誰か席に着いて』のタイトル通りで。
片桐 この劇をテーマに絵を描いてくれと言われて。田辺さん特に素晴らしくて!
──誰がどなたですか?
木村 すぐわかりますでしょう?(指さして)これが仁さんで。
片桐 これ(福田)転球さんですよね?こっちが田辺さん?
田辺 そうです、そうです。
木村 (富山)えり子ちゃんもいて。
田辺 こっちがカナちゃんで、こっちが木村さん、髪が短いバージョン。
片桐 やっぱり若干、顔が縦長ですね(笑)。
木村 背も高いし。
倉科 本当に可愛いです!ゆるキャラで!
木村 可愛いよね〜。
倉科 これを着られると思うと嬉しい。
片桐 本当にね。
木村 販売もするそうです!
倉科 さすが画伯!
木村 1枚いくらなんですか?
田辺 わからない。少し欲しいって言ったら「買ってください」って言われたから(爆笑)。
片桐 1枚くらいくれよ!(笑)。
木村 あと、トートバックもあるんですよね!Tシャツには黒も!
片桐 黒と言うか、ネイビーですね!
倉科 可愛い〜!
田辺 自信作です。皆が席に着けないお話なので、その心のぽっかりした穴をね、物理的に座れないというように描きました。
──絵を描くのはお好きなんですか?
田辺 絵は好きですね、大好きです。

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──今回、田辺さんと木村さん、片桐さんと倉科さんがご夫婦で、浮気をするような話だそうですが。
田辺 そうです。
木村 浮気があったり、借金があったり、盗作があったり、横領もありますよね?
片桐 そう、皆ろくでもない!(笑)
木村 それでもコメディなんです。
──結構サスペンスっぽい?
片桐 そうですね。こっちはサスペンスでやってますから。
木村 えっ?サスペンスでした?これ?
片桐 いや、サスペンスです。
田辺 ばれないように、ばれないようにってやっているから。
倉科 そうですね。
片桐 メロドラマあり、サスペンスあり。
田辺 スリルもありでね。
木村 木も落ちてきますものね!
──見どころは?
木村 木が落ちてくるところです!
片桐 ちょっと、そんなに言わないで、それかなり後半のところだから(笑)
木村 えっ?言っちゃダメ?(笑)見どころは、やはり倉持裕さんの台詞じゃないですか?
片桐 そうですね!
田辺 もうずっと喋ってますからね。
木村 やっぱりすごい作家さんです。
片桐 台詞量はすごいですね。
木村 歳が近いんです。まだ45歳?
片桐 45歳ですね。
木村 私、歳が近い舞台の演出家の方とお仕事させて頂くの初めてなので。だからどうしたって?すみません(笑)。
──そんなに台詞が多いんですか?
田辺 多いです、多いです。
木村 でも舞台自体は休憩なしの90分で、非常に観易いと思います。11月28日からシアタークリエで、また全国にも回りますので是非来てください。
片桐 色々なところに行きますよね!
木村 美味しいものがいっぱい食べられますね!
片桐 それも楽しみですね!
──では改めてメッセージを。
田辺 『誰か席に着いて』日比谷のシアタークリエ他、全国を回りますので、この四人とあと二人での、大人のコメディになっています。是非是非劇場にお越しください!
三人 待ってます!よろしくお願いします!

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〈公演情報〉
だれ

『誰か席に着いて』
作・演出◇倉持裕
出演◇田辺誠一 木村佳乃 片桐仁 倉科カナ/福田転球 富山えり子
●11/28〜12/11◎日比谷・シアタークリエ チケット好評発売中
その他、全国ツアーあり
〈お問い合わせ〉03-3201-7777 東宝テレザーブ(9時半〜17時半)



 
【取材・文・撮影/橘涼香】



『夢一夜』

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