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結成15周年を迎え、更に多彩な活動を続けるDIAMOND☆DOGS。リーダー東山義久が再びサロメに挑むDramatic super dance theater『サロメ』が、北千住のシアター1010で上演中だ(10日まで)。

オスカー・ワイルドの名作『サロメ』を題材としたこの舞台は、欲望渦巻く大人たちの闇の世界に咲く、純真無垢な一輪の花サロメの、その純真さ故の直情と残酷を妖しくも美しく描き出し、高い評価を得た作品。2014年の初演時は、東山義久と、常に舞踊界に新しい伝説を生み出し続けるクリエーターの上田遙が、初タッグを組んだ作品としても注目され、その突き詰めた芸術性が深い印象を残した。

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あれから3年、DIAMOND☆DOGS 15th Anniversary Seriesのひとつとして再演されることになった2017年版『サロメ』は、エロド王を演じる森新吾をはじめ、DIAMOND☆DOGS のメンバー全員が出演したことに加えて、ヨカナーンに元チャイコフスキー記念東京バレエ団のプリンシパル高岸直樹、王妃エロディアに法月康平、そして、サロメが寵愛する小姓の少年にミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー』の主人公ビリー役の1人として活躍した、木村咲哉が扮する等、新キャストを迎えてパワーアップ。最早、新作と言っても過言ではないほど、新たな広がりを見せる舞台が展開されている。

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最も大きな変化として、やはり今回の舞台には歌がふんだんに織り込まれたことが挙げられる。もちろんDramatic super dance theaterと銘打たれた、ダンスによる表現形態の舞台であることは揺るがないのだが、そこに「歌詞」が入ることによって、物語世界がよりくっきりと浮かび上がる効果があった。
更に今回は『サロメ』という物語が持っている独特の妖しさと狂気は残したまま、エンターティメント性が加味されていて、全体にある種の軽やかさと、華やかさが際立ったのが面白かった。

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非常にアクロバティックに畳みかけてくるダンスに、ストレートなカッコよさがあり、それがあるからこそ、サロメがただ一途にヨカナーンを求める想いの深さ、狂おしさが際立ち、作品を単なる再演と捉えなかった上田遙のあくなき探求心と情熱が舞台にあふれ出るようだった。

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そんな新たな舞台でサロメに扮した東山義久が、作品世界の中で刻々と変化していくサロメを十二分に表現している。義父であるエロド王の邪な視線を嫌い、小姓の少年との時間に閉じこもっていたサロメが、ヨカナーンに魅せられ、狂おしい恋の狂気に囚われ、相手の生首を所望するに至る。この恋の情念がサロメを変えていく様を、語ることも歌うこともない、ただ踊りのみの表現に限定された中で活写していて素晴らしい。DIAMOND☆DOGS 15年の歩みを牽引し、チャレンジをし続けている東山の深化が、作品の陰影をより色濃いものにしている。少年と、ヨカナーンと、更にサロメと言えば、の七色のベールの踊り、そして終幕と、それぞれに味わいが異なる場面、場面のダンスを堪能させてくれたダンス表現も味わい深い。かなり近い時期に『サロメ』を描いたオスカー・ワイルドに扮していることも面白い巡り合わせで、東山が初演から3年の間に培った蓄積が花開いたサロメ像となった。

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その東山のサロメの深化に、新たなキャストたちが大きく寄与していることも、この2017年版から感じられる成果の1つだ。

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冒頭からサロメの傍近くにつき従う小姓の少年の木村咲哉は、この夏のミュージカル界に旋風を巻き起こした『ビリー・エリオット』のタイトルロールとは、全く異なる清らかさを発揮していて驚かされた。あれだけの大舞台で主役を務めてきた木村に、悪い意味での舞台慣れがみじんも感じられず、あくまでも清新な少年としてこの舞台に存在できているのは、どこか奇跡のようにも感じられる。一転、2幕冒頭では達者にタップを踏み、ビートをいっぱいに感じて踊る様も心地よく『ビリー…』から僅かな期間で、木村がこれだけの新たな存在感を示したのは特筆に値する。今後どこまで伸びていくのか、注目していきたい。

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また、ヨカナーンに元チャイコフスキー記念東京バレエ団のプリンシパル高岸直樹が登場したことも、作品の色彩を決定づける効果となっている。バレエを極めた人だけが持つ、立っているだけでこぼれでる気品と神々しさを、高岸が如何なく発揮するからこそ、サロメがヨカナーンにある意味で憑りつかれることに説得力が生まれた。非常に贅沢なキャスティングで、その存在の大きさが作品を更に高みへと引き上げている。
 
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そして、DIAMOND☆DOGS 15th Anniversary Seriesに最も相応しい存在だったのが、エロド王の森新吾。作品世界に君臨する暴君であるこの役どころを森が、すなわちDIAMOND☆DOGSのメンバーが演じられるようになったという事実は、DIAMOND☆DOGSが歩んできた15年の確かな歴史を、何よりも雄弁に表していて、森の充実ぶりも見事。

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宮廷歌手として作品の音楽面を担った咲山類とTAKA、物語の語り部として、ダンスだけでなく台詞もふんだんに利かせた小寺利光、中塚皓平、和田泰右、と、東山を含めたDIAMOND☆DOGS 7名が、それぞれ作品に欠くべからざる存在となったことが嬉しい。

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そんな彼らと共に、王妃エロディアに扮した法月康平が、今回2017年版の『サロメ』の、男性のみで演じられる舞台を体現して、武器である歌だけでなく、ダンスに芝居にと着実にステップアップを重ねていることを感じさせて頼もしい。親衛隊長と共に「死の指輪」という象徴的な役柄で登場する長澤風海の、最早言うまでもない優れたダンス力はもちろん、登場しただけで場の空気を変える表現力は秀逸。

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首切り役人の橋田康の肉体美と禍々しさが、作品に暗い影を落とす様にも強烈に目を引かれる。
一方、東間一貴の清々しい個性は舞台に清涼感を与えるし、樋口祥久のくっきりとした居住まいも印象的。舞台上でバク転をすること自体はさほど珍しくないが、ここまで滞空時間が長いバク転は例がない、と感嘆した大舌晃平の身体能力は圧倒的で、彼ら1人1人にもきちんと場を与えている上田の愛ある目配りも美しい。

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月をバックにしたセットの中で、ドラムの樹、ヴァイオリンの田佳芳の生演奏も効果的で、総じて、観るべきものの多い2017年版『サロメ』となっている。

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〈公演情報〉
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DIAMOND☆DOGS 15th Anniversary Series
Dramatic super dance theater『サロメ』
構成・演出・振付・台本◇上田遙
音楽◇ la malinconica T-LAYLA
出演 東山義久、木村咲哉、高岸直樹、森新吾、法月康平、長澤風海、橋田康、樹、田佳芳、咲山類、TAKA
小寺利光、中塚皓平、和田泰右、東間一貴、樋口祥久、大舌晃平
●12/8〜10◎シアター1010
〈料金〉全席指定 8,000円
〈お問い合わせ〉THEATRE1010 03-5244-1010
〈チケット〉キョードー東京 0570-550-799(平日:11:00〜18:00 土日祝:10:00〜18:00)
 
  
http://hpot.jp/salome/
 



【取材・文・撮影/橘涼香】
 


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