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新宿・紀伊國屋ホールの2月の恒例となっているつかこうへい作品、今年は『熱海殺人事件』の上演45周年を記念して、副題に「CROSS OVER 45」と銘打っての上演となる。
1973年に文学座に書き下ろされたこの戯曲は、当時の若者の熱狂的な支持を受け、翌年、つかは史上最年少での岸田國士戯曲賞を受賞している。その後もキャストごとにバージョンを変えながら、『熱海』は紀伊國屋ホールとともに生き続けてきた。そして2010年、つかこうへい死去。だがその魂と意思は演出家の岡村俊一に引き継がれ、紀伊國屋ホールでの『熱海殺人事件』は、装いも新たに毎年のように上演され、様々なバージョンでスターを生み出し続けてきた。
 
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今回、2度目の木村伝兵衛部長刑事役をつとめるのは味方良介。昨年、史上最年少24歳でこの大役を演じ、新世代の伝兵衛、若さと熱さで勢いのある伝兵衛として清新な風を吹かせ、次代のスターへの大きなステップとした。

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富山から東京警視庁に栄転してきた熊田留吉刑事には、2016年に、これもつかの名作の1つ『新・幕末純情伝』で、坂本龍馬役に挑み、花も実もある役者ぶりを披露したNON STYLEの石田明。


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取り調べ室の紅一点、水野朋子婦人警官役には、AKB48を退団して今作が本格的な女優デビューとなる木ゆりあ。

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そしてこの物語の核心を握る犯人・大山金太郎には、a-X’sの敦貴と匠海がWキャストで競演する。

【あらすじ】
舞台になるのは東京警視庁の木村伝兵衛部長刑事の捜査室。伝兵衛の取り調べの中で、熱海で工員の大山金太郎が幼なじみの女を絞め殺したというチンケな事件を、婦警の水野朋子と富山県警から赴任してきたばかりの熊田刑事が、部長刑事とともに一人前の犯人に仕立て上げていく…。

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その『熱海殺人事件』の稽古場が、1月下旬のある日、プレスに公開された。
まず目を引くのはあちこちをハサミの入った衣裳。演出の岡村俊一いわく「稽古しすぎでボロボロになったという設定」なのだそうだが、ボロボロというより最先端のファッションにも見えるのは、役者たちのカッコ良さゆえか。

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この日の稽古は、これから伝兵衛の取り調べ室へ犯人大山金太郎が引き出されるという場面。
味方良介はとにかく堂々として、押し出しのよさといいダンディぶりといい、まさに自信満々の伝兵衛像そのまま。1年前にこの大役をみごとに演じきった自信で、鮮やかにメリハリをきかせ、熊田とのやりとりにも余裕すら感じさせる。この作品を体で理解し、迷いなく真ん中に立っていて頼もしい。

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水野朋子婦警を演じる木ゆりあは、これまでの水野像と比べると若さを前面に押し出し、かつ現代的だ。どこまで本音でどこまで芝居かわからないような、木村伝兵衛との曖昧な関係性を保ちながら、婦警としての役割もきちんとこなしていく。キュートでフレッシュなのに、頼りがいもありそうな女性像だ。

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熊田留吉の石田明は、富山から出てきた野心家の刑事で、伝兵衛の取り調べにことごとく反発。苛つくと懐から銃を取り出し、ロシアンルーレットで脅かすなど、やたら熱く泥臭い男だ。ロシアンルーレットを自分へ発砲してしまうという定番のギャグも、芸人として鍛えてきた石田ならではの派手な見せ方でカラッとした笑いになる。このパワフルな石田の熊田刑事が、味方伝兵衛にどこまで喰らいつくか。役者同士の熱い切磋琢磨も、相当期待できそうだ。

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そして、オレンジのつなぎにサングラスというインパクトの強いスタイルで登場する、お待ちかね、犯人・大山金太郎。今回はa-X’sの敦貴と匠海が日替わりで演じることになっているが、どちらも若さと清潔感があって、演出の岡村の「史上最強の美しい大山金太郎」という言葉も頷ける。サングラスから黒縁のダサイ眼鏡に変わるギャグシーンも、どこかほのぼのと可愛らしい。だがこのあと事件の真相へと捜査が迫っていく中で、見えてくる金太郎の心の闇を2人がどう演じるか。そこも今回の見どころの1つだろう。

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この公開稽古の短い時間のなかでも、名作に挑む俳優たちのエネルギーの凄まじさは十分伝わってくる。つかこうへい戯曲から放たれる速射砲のような言葉と、そこに込められた毒とレトリック。そこからは痛烈な社会批評と人間のロマンと愛がこぼれ落ちてくる。そんな熱い魂の作家、つかこうへいの想いを引き継いだ紀伊國屋ホールで、今年も上演される45周年目の『熱海殺人事件』。いよいよ2月17日に初日を迎える。

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敦貴、石田明、味方良介、木ゆりあ、匠海

〈公演情報〉
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『熱海殺人事件 CROSS OVER 45』
作◇つかこうへい
演出◇岡村俊一
出演◇味方良介/木ゆりあ/敦貴(a-X’s)・ 匠海(a-X’s)[Wキャスト]/石田明   
●2/17〜3/5◎紀伊國屋ホール
〈お問い合せ〉東京音協 03-5774-3030 (平日11:00〜17:00)



【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】




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