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葬儀屋(FUNERAL HOME)を営むある家族の日常に深く沈む真実を描き、軽快でどこか懐かしいメロディーと、3つの時代を行き来する重層的な作劇で、2015年トニー賞ミュージカル作品賞、脚本賞、オリジナル楽曲賞、主演男優賞、演出賞の、主要5部門を獲得した最新ブロードウェイ・ミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』。この話題作が、2月7日から日比谷のシアタークリエで、待望の日本初演の幕を開ける。
主人公であるアリソンが、父親が自殺したのと同じ43歳になり、父の死の理由を探す旅は、普遍的で心に強く突き刺さるテーマを持っている。気鋭の演出家、小川絵梨子によって、この作品がどんな輝きを見せるだろうか!
3つの時代が交錯して描かれるこの作品で、大学生時代のアリソンを演じるのが大原櫻子。歌手としての活動はもちろん、近年話題の舞台作品に立て続けに出演。舞台女優としての評価も日増しに高まっている、演劇界期待の星だ。そんな彼女が、レズビアンであることを自覚し葛藤するアリソン役への想い、異なる年代の同じ役を3人で演じ分けることの醍醐味、更に、女優として目指す道などを語ってもらった「えんぶ」2月号のインタビューをご紹介する。

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不思議な縁を感じた『FUN HOME』との出会い

──ブロードウェイで大変高い評価を受けた作品の本邦初演ですが、まずアリソン役のオファーを受けた時の気持ちから教えてください。
実はこのお話を頂く前に、たまたま家で母と「テレビでも見ようか」とパッと電源入れたら、トニー賞の授賞式を中継していたんです。ちょうどその時、子役の子が歌っていて「すごい子がいるね、なんていう作品?」と思ったのが『FUN HOME』でした。でもその時は「すごかったね〜」と言っただけで、そのままだったのですが、奇しくもその数日後にこのお話を頂いて。「えっ? この間トニー賞で見たあの作品?」と思って、なんというご縁なのだろう! と感じました。
──それは確かに、かなり運命的ですね。
そうなんです。これは是非演らせて頂きたいと思いました。とても嬉しかったです。
──『FUN HOME』という作品自体については、どんな印象を?
重たい内容ではあるのですが、ミュージカルであることによってファンタジー的な世界も覗けますし、観た後に明るい気持ちになって頂ける作品になると思っています。
──演じる、大学生時代のアリソン役についてはどうですか?
大学時代のアリソンは、一番葛藤しています。自分がレズビアンであることに気づき、両親にカミングアウトするに至る、とても大切な役割りだなと感じています。アリソンには、自分がレズビアンであることに気づいているけれど気がつかないふりをしている時期と、ハッキリとレズビアンであると自覚する時期とがあるのですが、その自覚したあとにも、そんな自分が自分でわからなくなって、迷い悩みます。常に葛藤しているんですね。その惑いの中で、彼女の変化をどう表したらいいのかを、今ずっと考えているのですが。でも、この作品に出られること、アリソンを演じられることは嬉しいことなので、楽しく悩んでいるところです(笑)。

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3人で1人の女性、アリソンを演じる頼もしさ

──この作品の大きな特徴である、アリソンという1人の女性の、少女時代、大学生時代、父親が自殺してしまったのと同じ年齢になった43歳、それぞれを3人で同時に演じるということについては、いかがですか。
稽古に入ったら、小学生時代のアリソンを演じる笠井日向ちゃんと龍杏美ちゃん、大人時代を演じる瀬奈じゅんさんと、色々と役について話し合いながら役作りができたらと思っています。やはり、小学生、大学生、大人とつながって1人の女性を3人で演じるわけですから、共通認識としてお互いに共有しておかなければいけないことも色々出てくると思います。特に瀬奈さんには、私が演じる年代の頃に、ご自身が何を感じて、どう過ごしてこられたのか、そういうことも伺えたらいいなと思っています。
──瀬奈さんはちょうどその頃、宝塚歌劇の男役として突き進んでいた時期だと思いますから、興味深いお話が伺えるかもしれませんね。今回の場合は、単なる共演者というだけの関わりではありませんから。
同じアリソンを演じる人が近くにいて相談できるというのは、ありがたいなと感じています。作品の内容もそうですし、役柄もこれまでにたくさん描かれてきたものではないと思いますから。もちろんレズビアンは、決して珍しいことでも特殊なことでもありませんが、私自身はまだ女性に対して恋愛感情を持ったことがないので、わからないところも多いですし、女性を恋愛の対象として見たことがないからこそ、想像が広げられることもあると思うので、色々な方のお話も聞きしたいです。先日私の恋人役のジョーンを演じる横田美紀さんとお会いしたのですが、目を見ただけで「あ、この方とならお芝居ができる」と感じました。そういう気持ちは大切にしたいです。部活で素敵な先輩に憧れた経験もありますから、心情としてわからなくはないのだけれども、でもそれでわかると言ってしまうのは絶対に違うと思うので、深く感じて考えて、決して曖昧にせず、嘘をつかずに演じていきたいと思っています。

大原櫻子が歌うライブと、役柄として歌う芝居

──また、今回の日本版演出を、今最も注目されている演出家の1人、小川絵梨子さんが務めることも大きな話題ですが、小川演出への期待は?
先日、小川さん演出の『CRIMES OF THE HEART—心の罪—』という舞台を拝見させて頂いたのですが、やはりすごい方だなと。リアルだし、でも細部に至るまで計算され尽くしているのがわかるし、生の舞台を信じて、とことんあるべき表現に切り込んでいっているなということが伝わってきました。とてもリアルですし、その小川さんの演出に応えている役者の方々の、プロフェッショナルぶりにも畏怖の念を抱きました。舞台ならではの面白さを、とことん求めてこられる方とご一緒できるのがとても楽しみです。
──『FUN HOME』もミュージカル作品ですから、改めて伺いたいのですが、歌手としても大活躍をされていますが、ミュージカルの舞台で歌うことと、歌手として歌うことの違いはどう感じますか?
ライブは、歌う曲1曲ごとに独自の世界観がありますし、まずお客様を楽しませよう! という気持ちが強いんです。でも、舞台の場合はその作品全体が持つ世界観の中に入っていっていますし、結果としてお客様に楽しんで頂きたいとはもちろん思っていますが、私1人が「皆、行くよ!」とリードして、皆さんを盛り上げていくというものではないので、やっぱり感覚は全く違いますね。楽しんで欲しいし、心に突き刺さって欲しいと思いますけれど、1人の人間を演じているうえでは毒々しい部分も見せますから。やはり大原櫻子として歌っている時とは、何もかもが違うと感じます。

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皆でものを創る楽しさを感じる舞台の魅力

──今回の『FUN HOME』が大原さんにとっては4本目の舞台ですが、初舞台の『The Love Bugs』から、振り幅の大きい多彩な作品に出演してきた中で、舞台の魅力をどう感じていますか?
生の舞台というのは失敗もあるんですよね。ライブだと、例えば歌詞を間違えても皆が歌ってくれたりして、お客さんが助けてくれるんです。舞台の場合は、それを舞台の上にいる演者同士でカバーし合ったり、時にはそのまま失敗は失敗として次に進めていくこともあったり、私自身にも想像がつかないからこその楽しさがあります。「あれだけ毎日練習していたのに、なんでこんなところで間違えるの!?」というハプニングは、怖さももちろんありますが、面白さもあります。特に『The Love Bugs』は64公演もあって、稽古を合わせて5ヶ月も皆さんと一緒だったんです。そうすると、隠したくても到底隠せないものがさらけ出されるし、もう家族みたいな存在になって、アドリブなどもどんどん出てきて、本当に楽しくて。皆でものを創るってこんなにも楽しいことなんだなと思ったし、それはとても大きな魅力に感じています。
──特に今回の『FUN HOME』は家族の物語ですから、共演者の方たちとのチームワークも、更に必要になりますね。
本当の家族のようになっていけたらいいなと思っています。父親役の吉原光夫さんの舞台を観に行かせて頂いて、ご挨拶した時にも本当に気さくに接してくださいました。もちろんお芝居も素晴らしいですし。母親役の紺野まひるさんとは、以前にも母娘の役どころで共演させて頂いているので、とても良い空気感の中でお稽古ができるはず、と確信しています。皆さんとお稽古するのがとても楽しみです。

一見身近ではないようで身近なものに置き換えられる話

──今、舞台作品にも積極的に取り組んでいる中で、今後こういう舞台に出てみたい、等の夢はありますか?
ミュージカルや、音楽劇には出させて頂いているのですが、ストレートプレイの経験がまだないので、ストレートプレイの作品には是非出てみたいです。後はアクションにも興味があるので、取り組んでみたいですね。闘いたいです(笑)。
──殺陣などのある作品ということですか?
はい、殺陣はすごくやってみたくて! もともと極真空手と殺陣を習いたいとずっと思っているので。私は昔から、ミュージカルよりもストレートプレイばかりを観てきたんです。蜷川幸雄さんや白井晃さん、もちろん最近では小川絵梨子さんも。どちらかと言えば大人が観るお芝居を、小さい頃から観てきたので。
──親御さんがお芝居をお好きで、連れて行ってくれたということですね?
そうです。小学校2年生にして、裸の女性が出てくるお芝居も観ていたりしましたから(笑)。「わからなくて良いから、とりあえず観ておけ」と言うのが親の方針だったので。
──それは素晴らしいですね。そういう蓄積が大原さんの中にあるのですね。
あるんだろうなと思います。結構重たい作品も多く観ていたので、余計に今回の『FUN HOME』にはやり甲斐を感じます。大学時代のアリソンは父親ととても仲が良いですし、私も父を尊敬していて、家族も私のしたいことを尊重してくれています。でも変に盛り上がることはなく(笑)、「やるからには頑張りなさい」と温かく見てくれているので、そんな家族から与えてもらった経験も根底に感じつつ、作品に向かっていきたいです。
──では、改めて『FUN HOME』を楽しみにしている方たちにメッセージを。
題材の中には、同性愛の悩みもありますし、父親の自殺という悲しい話もあります。でも人が葛藤しているお話だと考えた時に、何かに悩んだ経験がないという人はいないと思いますので、きっと登場人物にも共感してもらえると思います。そういう意味では、一見身近な話ではないですが、身近なものに置き換えられる話でもあります。ミュージカルという部分では音楽も素晴らしいですし、観た人が何かを感じて帰れる、希望を持って帰れる作品になっていますので、是非劇場にいらしてください。

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おおはらさくらこ○東京都出身。13年『カノジョは嘘を愛しすぎてる』全国ヒロインオーディションに合格、スクリーン&CDデビュー。14年日本映画批評家賞大賞新人賞、日本レコード大賞新人賞を受賞。15年1stアルバム「HAPPY」をリリースし、セールスは10万枚を突破、ゴールドディスクを獲得。NHK紅白歌合戦に初出場。歌手活動と共に16年地球ゴージャスvol14『The Love Bugs』の出演を皮切りに、舞台作品にも積極的に取り組み躍進中。これまでの出演舞台はミュージカル『わたしは真悟』舞台『Little Voice』など。
 
〈公演情報〉
L239967-0001-001

『FUN HOMEファン・ホームある家族の悲喜劇』
原作◇アリソン・ベクダル
音楽◇ジニーン・テソーリ
脚本・歌詞◇リサ・クロン
翻訳◇浦辺千鶴
訳詞◇高橋亜子
演出◇小川絵梨子
出演◇瀬奈じゅん 吉原光夫 大原櫻子  紺野まひる 上口耕平 横田美紀 
笠井日向/龍杏美(Wキャスト)  楢原嵩琉/若林大空(Wキャスト) 阿部稜平/大河原爽介(Wキャスト)
●2/7〜26◎シアタークリエ
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9時半〜17時半)



【取材・文/橘涼香 撮影/◇岩村美佳】



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