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34年前にロンドンで初演以来、欧米各地で上演されてきた『BLOODY POETRY(ブラディ・ポエトリー)』が、2月8日に日本初演を迎える。(18日まで。赤坂 RED/THEATER)
登場する英国の実在の詩人役で主演するのは、猪塚健太。アミューズの劇団プレステージに所属し、4月に映画『娼年』の公開も控えるなど、そのまっすぐな演技で活躍が期待される若手俳優だ。
その猪塚にとって、今作は劇団を飛び出した外部初主演、初翻訳劇。多彩なキャストも全員初共演となる。
登場するのは全員が実在の人物。若き彼らがスイスで出会い、今も知られる名作『フランケンシュタイン』や『吸血鬼』が生まれていく。今作は、そこに確かにあった若者たちのもがき、葛藤、そして世界を変えようとする信念を描いた青春群像劇だ。主人公の詩人パーシー・ビッシュ・シェリーを演じる猪塚に作品の魅力を語ってもらった。

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「世界を変えるんだ」と信じて生きた実在の人物


──演じるパーシー・ビッシュ・シェリーは実在の人物ですね。
今回のオファーをいただくまでビッシュのことは知らなかったんです。調べてみると、『自由主義』を世界に訴えることに人生を賭けた詩人。29歳で死ぬまで「世の中は変わっていかなきゃいけない」と信じ続けた人でした。それでも、母国からは受け入れられず認められず、時にはずっと一緒だと思っていた人からもひどいことを言われたりする…。物語は、彼に関わる友人や妻たちとの20代の青春の物語です。
──ビッシュの訴えた『自由主義』はとても奔放で、恋愛も自由な人だったようですが…。
まさに自由恋愛主義者。フリーラブなので、今の世の中だったら絶対に謝罪会見しなきゃいけないようなことをしてる。ビッシュも、妻になるメアリーも「自由であることが正しいんだ、そうあるべきなんだ」と信じて、駆け落ちを繰り返したり、いろんな人を愛したりしています。けれども、自分たちはそれが正しいと思って実践していながら、恋愛のことになると嫉妬やもやもやした気持ちも芽生えたりする。
──劇中には実際にビッシュが書いた詩もたくさん登場しますね。
魅力的な詩です。「自分が世界を変えるんだ」という強い思いを込めて書かれています。その信念は時に揺らいだり、悲しみや葛藤もある。自分の理想通りにうまくいかないことがあって悩んでもがいて、それでも意思を貫き通す。死ぬまで書くことをやめなかったビッシュの詩は、とても力強い。演じる僕としては、詩を読むときはその詩の魅力そのものを伝えるのはもちろん、ビッシュがその詩を書いている時の感情を表現したいです。

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詩人バイロンとの出会いが生み出したもの

──作品の大きな軸に詩人バイロンとの出会いがあります。詩人同士の会話はとてもウィットに富んでいますね。
彼らは頭が良くて、会話の質が高い。だから時には哲学的だったり難しく感じるかもしれないけれど、実は人間関係はとてもシンプル。やってることは今の若者たちと何にも変わりないですよ。熱く夢を語ったりと、すごく人間臭い人たちの青春群像劇です。僕たち役者も、仲間と演技論を戦わせることがありますけど、そうやって自分が真剣に挑んでいることについて熱く会話するのと同じで、バイロンとビッシュが自分の考えにのっとって熱く議論する。それが面白い。
──バイロンとの会話は、その言葉だけを読むとケンカしているかのようにも感じます。
彼らの会話って言葉遊びなんですよね。詩人だから、自分の主張を言葉に乗せて相手に伝えようとする。甘い言葉だったり、痛烈な言葉だったり、いろんな言葉を使って意思を見せることに詩人としてのプライドを賭けている。そうやって言葉を戦わせることで仲良くなっていく。今でいうフリースタイルダンジョン(ラップバトルを交わすバラエティ番組)に似ているのかも。
──詩人だから比喩的な表現を使ったり、思いをストレートに言葉にしないのも、会話の面白さですね。
そうなんです。言葉は喜びを語っているのに、本心はそうではないかもしれない。だから稽古の最初の方は役者によってシーンの捉え方に食い違いがあり、それを擦り合わせていく作業が必要でした。
彼らの会話は、たとえば尻はさらけ出すのに、言葉では心を隠すことで自分の主張を訴えたりする。ビッシュとバイロンって、出会う前からお互いの存在は知っていたと思うんですよ。詩人として負けられないという意地があるから、言葉でかましあっていくうちに、「こいつ話せるじゃねぇか」と認めあう。見るからに仲良くなるのではなくて、言葉でお互いの内側を探って、抉っていくことによって、友情になっていくんですよね。そして一緒に作品を作ったり、議論を交わし合う関係になる。見ている世界や目指しているものを共有できる人とは自然に仲良くなるんだろうな。
──現場ではどうやって友情を作っていきましたか? バイロン役の内田健司さんをはじめ、みなさん初共演ですよね。
台本ではビッシュとバイロンの友情について明確には書いていません。だから(内田)健司は健司としてバイロンを作ってきて、僕は僕としてビッシュを作っていきました。それがある日、稽古以外の時に話していたらふと僕たちの間に共通言語が生まれたんです。僕がなにげなく「この人たちいろんなことワイワイ言ってるけど、けっきょく寂しがり屋だよねぇ」と言ったら、健司が「そうだよ、寂しいんだよ」って返してくれて。その瞬間、「ああそういうことなんだ」とふに落ちたんです。「寂しい」って簡単に言えちゃう言葉のわりには、本当に寂しい時には口に出せなかったりする。ビッシュもバイロンも世間からはみ出して、それでも信念を貫こうとするけれど、本当はどこか寂しい思いを感じあっていたのかなあと思うんです。
──好きなシーンはありますか?
バイロンとの関係が変わっていくところです。出会いを経て、関係性の変化を経て、それでもまたお互いの前に立つ時、なんだか不思議な男の高揚感みたいなものをすごく感じます。嬉しさの中に混ざる複雑な思いや、心臓が掻き立てられる感覚になります。

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彼らは、僕たちとなにも変わらない若者だって気づいた

──初主演・初翻訳作品、初共演者と初めてづくしの現場ですが、プレッシャーはありませんでしたか?
劇団を出て主演をやらせていただけるという喜びと、ずっとやってみたかった海外の戯曲ということで、出演が決まったときはすごく嬉しかったです。けれど実際に台本を手にすると、時代背景もわからないし、登場人物は知らない人ばかり。「勉強しなきゃいけないし、やることがいっぱいあるぞ。僕にできるのかな」という不安も大きかったです。でも稽古を重ねるうちに、「この台本ものすごく面白いな」と実感してきて、自信が出てきたんです。
──この作品はいいぞ、と確信したきっかけはあるんですか?
まず、詩や哲学について話す彼らは、べつに難しいことを言っているわけじゃないと気づいたこと。それはセリフを覚えて人間関係が出来あがっていくなかで、彼らは僕たちと何も変わらない20代の若者たちなんだとわかったからでした。通し稽古を見に来た人が「台本を読んだだけではわからなかったことも、実際に目の前で人が動いていたら何十倍も伝わった。こんなに面白い作品だったなんて、いろんな人に見てもらわなきゃダメだ!」と言ってくれた。僕たちが稽古でやってきたことはやっぱり間違ってなかったんだと思って、もっと突き詰めようとしています。舞台美術も特殊でいろんな仕掛けがあるんです。詳しくは観てもらうまで言えないですけど、目で観ても楽しいエンタメ性がたくさんあります。衣装も200年前のイギリスの人たちが来ていたデザインをイメージしたものです。劇場で当時の世界観に入って、そこで若者たちが生きていた空気を感じていただければと思います。

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いづかけんた○1986年生まれ、愛知県出身。劇団プレステージ所属。最近の舞台は『ウエアハウス〜Small Room』、『オーバーリング・ギフト』、プロペラ犬 第7回公演『珍渦虫』、『娼年』、朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』『俺とおまえの夏の陣』2016、地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』など。映画『娼年』が4月に公開。

〈公演情報〉
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舞台『BLOODY POETRY』
脚本◇ハワード・ブレントン
演出◇大河内直子
翻訳◇広田敦郎
出演猪塚健太 百花亜希 蓮城まこと 内田健司 青柳尊哉 前島亜美 
●2/8〜18◎赤坂 RED/THEATER
〈料金〉前売/一般 5,800円 学生2,800円 高校生以下2,000円(当日券は各 500 円増)(全席指定・税込)
〈チケット申込み〉 http://ticket.corich.jp/apply/87700/


【取材・文/河野桃子 撮影/交泰】



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