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「人間は死ぬまであかんぼうなんだと思いませんか?」
宇宙から見れば人の一生は、皆あかんぼうなのだから、驕らず、ただ静かにこの世界を受けとめていけたら。小説家辻仁成が、そんな願いを込めて書き綴った小説『99才まで生きたあかんぼう』が、辻自身の脚本・演出により舞台化され、2月22日によみうり大手町ホールで初日を開ける。(3月4日まで。以後、名古屋、福岡、大阪でも上演。)
1人の男の0才〜99才までが描かれる一大叙事詩の、様々な年代に登場する多彩な人々を演じるのはたった6人の男優たち。人の一生分のあらゆる場面が、凝縮された空間の中に少数精鋭のキャストで浮かび上がる、濃密なステージだ。
そんな作品に出演する村井良大と玉城裕規が、新たに生まれ出る舞台への意気込み、辻作品と演出の魅力、また、3年ぶりの共演となる互いへの信頼感を語り合ってくれた「えんぶ2月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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玉城裕規・村井良大

幸せな時も辛い時もある人生のリアルを描いている

──原作を読んだ感想から教えてください。
玉城 まず、すごく読みやすかったです。1人の男性の人生が1才ずつ、見開き2ページで展開されていて、とても珍しい表現の小説だなと思ったし、あっと言う間に読めました。
村井 自分と同じ年代のところが誰にでもあるから「どの年代の人にも読んでもらえる小説を書きたかった」という辻さんの願いが込められているなと。逆にもっと年齢を重ねてから読み返したら、感じ方が変わっているんだろうなとも思ったし。ずっと読み続けられる小説ですね。
──特に、自分の年齢のページが気になると思うのですが、どう感じましたか?
村井 僕はちょっと悲しい気持ちになった。ならなかった?
玉城 うん、切なくなったよ。1つには主人公が自分よりも様々な経験をしていて、大人だから。あぁ、同じ年でこんなに違う、というのもあった。
村井 10代から20代にかけて、かなり波乱万丈だからね。
玉城 家庭内の不和があったり、登校拒否にもなったり、過酷なことがたくさんあって。
村井 とても幸せな時もあれば、すごく辛い時もある。人生ってこういうものだよな、というリアルな感覚。それはやっぱり辻さんの人生経験から出て来たものだと思うから、演じる僕たちがどれだけ人生経験をしてきたかも、問われてくるなと。「幸福に気づき、成功を収め、人生に翻弄され、挫折を知ったあかんぼう」だよ? 玉ちゃん挫折なんてしてないでしょう?

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玉城 いや、してるから(笑)。してる、してる!
村井 いつ?
玉城 いつって、それ具体的に訊く?(笑)そう言ったら10代の頃からしてるよ。
村井 10代から挫折してたの?
玉城 サッカーやってたからね。小さいことで言えば、試合に出られないのも挫折だったし、怪我もしたし。
村井 あぁ、怪我はキツイよね。
玉城 うん、出られない大会とかもあったから。そういう良大は?
村井 挫折は多々あるよ。もう本当に多々あるけど、強烈なのが辻さんの作品に初めて出させてもらった舞台、『醒めながら見る夢』で悪魔役をやった時。その時も6人芝居だったんだけど、1ヶ月の稽古の中で辻さんが「天使と悪魔は今まで見たことのないような世界に連れて行ってくれ」とおっしゃって、ものすごくたくさん稽古したのに、その稽古最終日に「全部変えます」って言われて(笑)。相方の古川(雄大)君と僕のステージングを全部やり直すってなった時に、この1ヶ月の苦しみはなんだったんだろうって、無茶苦茶泣いた。「やっとここまで創り上げて来たのに、なんでそんなこと言うんですか」って。でも辻さんは「面白くする為だから仕方がない。次行こう!」って明るく(笑)。僕はもう打ちひしがれて、まぁ、初日は無事に開いたんだけどね。
玉城 僕その話、辻さんから聞いた。
村井 えっ? 本当に?
玉城 僕が『海峡の光』で初めて辻さんの舞台に出た時、「良大と古川雄ちゃんがすごく頑張ってチャレンジしてくれて、2人は舞台の笑いを持っていったから、君たちもそうなって」と(笑)。「そうなって」って、いきなり言われてもと思ったけど、辻さんが笑いのある舞台にしたいんだなってことはわかったから。
村井 でもそうか、辻さん覚えていてくれたんだ。
玉城 しかも、良大は挫折の話としてしたけど、辻さんは成功例として僕に話してたからね。
村井 あぁ、それ嬉しいな。
玉城 うん。だから、やっぱりこうやって話していても、『99才まで生きたあかんぼう』って、自分の人生を掘り出していく作業になっていくんだろうなと。そうしないと演じられないというか、きっと自分と向き合う作業が増えていくね。

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演じていて作品に陶酔していく

──辻さんの舞台作品の魅力をどのように感じていますか?
村井 辻さんの創るものは、普通の表現よりも更に飛び抜けることができるし、想像を膨らませてもらえる作品だなと。
玉城 わかる、わかる。自分で演じていて、どうしたって作品に陶酔していくの。
村井 言葉の使い方がすごく上品で綺麗で、でもロックなんだよね。綺麗なものを綺麗なまま読むと違う。どこかに自由さがないと。辻さん自身がロックな人だから。
玉城 柔軟でいないとダメ。表現が凝り固まると違ってくる。幅を持っていないと。今回は音楽もSUGIZOさんだし。
村井 まさにロックな方たちばかりだね。
玉城 しかもたった6人でこれだけの題材をやるわけで。辻さんはアーティスティックに試行錯誤して、様々なやり方を試していく方だから、それに対応してこちらからも色々な表現を出していかないと。
村井 しかもそのライブ感も楽しんでいて、なかなかいないタイプの演出家さんだよね。最終日に変わることもあるし(爆笑)。

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──そんな作品で共演するお互いの魅力についても話してください。
村井 玉ちゃんは優しいし、柔軟で、縁の下の力持ちにもなってくれる人なので、一緒に出ていて、すごく安心感がある。
玉城 それ同じ。良大と一緒って聞いただけで、嬉しくて楽しみだし、安心。
村井 電話で話したりしていても「今度いつ一緒にできるかな? 一緒にやりたいね」と必ず言っていたから。『里見八犬伝』(2014年)以来の念願の共演だし、しかも『里見』ではあまり絡みがなかったから、今回は絡みがたくさんあるといいなって。
玉城 いや、確実に絡むよ!(笑)6人でこの題材をやるんだから。
村井 そうだよね! そういう意味でもすごく楽しみだし、辻さん自身も久しぶりの舞台で気合が入っていると思うから、辻さんの世界を余すところなく舞台上に乗っけていきたい。どんな年代の人が観ても共感できる作品だから、たくさんの人に観て頂きたい。
玉城 色々な役を皆で演じるだろうし、役者人生で得て来た全てを出さないと板の上には立てない作品だと思う。小説で感じた感動を大切に、6人の役者とスタッフで辻さんの世界観を表現できるように、お客様の感情を揺さぶれるように、頑張っていきたいね!

【プロフィール】 


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むらいりょうた○東京都出身。07年テレビドラマ『風魔の小次郎』で初主演。また『仮面ライダーディケイド』などでも活躍。近年は舞台作品で大役を立て続けに演じて、存在感を高めている。主な舞台作品に『里見八犬伝』『マホロバ』『カワイク・シアワセでなくちゃいけないリュウ』『殺意の衝動』『真田十勇士』『キム・ジョンウク探し〜あなたの初恋探します』『RENT』『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』『アダムスファミリー』など。

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たまきゆうき○沖縄県出身。強い印象を残す美貌で、舞台を中心に活躍中。主な出演作品に、舞台『弱虫ペダル』『Messiah メサイア』シリーズ、『海峡の光』『里見八犬伝』『カレーライフ』『曇天に笑う』ミュージカル『黒執事 〜NOAH’S ARK CIRCUS〜』『紅き谷のサクラ〜幕末幻想伝新選組零番隊〜』など、映画『のぞきめ』『新宿スワンII』『咲─Saki─』など。

〈公演情報〉
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『99才まで生きたあかんぼう』
原作・脚本・演出◇辻仁成
音楽◇SUGIZO
出演◇村井良大 松田凌 玉城裕規 馬場良馬 松島庄汰 松田賢二
●2/22〜3/4◎よみうり大手町ホール
●3/6・7◎名古屋市芸術創造センター
●3/20◎福岡市民会館 大ホール
●3/24◎梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
〈お問い合わせ〉東京公演/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10時〜18時)


【取材・文/橘涼香 撮影/山崎伸康】


ミュージカル『陰陽師』
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