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男優劇団スタジオライフの『DRACULA〜The Point of No Return〜』が、2月15日に劇団の本拠地であるウエストエンドスタジオで開幕した(公演は3月4日まで)。

スタジオライフはこれまで『ヴァンパイア・レジェンド』『銀のキス』など吸血鬼を主人公とした物語を数多く取り上げてきた。中でも『DRACULA』は2000年の初演以来、今回で5度目の上演。名実共に劇団を代表する作品の一つ。ブラム・ストーカーの原作小説ではドラキュラが追い求める相手はミナという女性。しかし、脚本・演出の倉田淳は、ドラキュラの思い人をミナの婚約者のジョナサンに大胆に脚色。男性に恋するドラキュラの求めても叶わぬ思いが際立つ、スタジオライフならではの世界観が浮き彫りになった。

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物語前半はドラキュラ伯爵と、不動産取引のためトランシルヴァニアのドラキュラ城を訪れたジョナサンとの緊張感あふれる会話劇。物語後半の舞台はロンドン。ミナの友人、ルーシーを襲ったドラキュラ伯爵と、ルーシーの婚約者アーサーやヴァン・ヘルシング博士、ジョナサン、ミナらとの息詰まる死闘を描く。

ダブルキャストでの上演で、WeirDチームでは曽世海司がドラキュラ伯爵、松本慎也がジョナサンを演じる。一方、AberranTチームでは松本がドラキュラ伯爵、曽世がジョナサンを演じる。ドラキュラとジョナサンを交互に演じるというのは、スタジオライフでも初めての試みだ。複数キャストでの上演が多いスタジオライフにおいても、これほど両チームのカラーが違うのは珍しい。それは、二人が演じるドラキュラ像がまったく異なるからだろう。

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曽世海司は今回で3度目のドラキュラ伯爵役(曽世はこれまでの5度の上演すべてに出演し、ミナ、セワードなども演じている)。曽世が演じるのは、「これぞスタジオライフのドラキュラだ」といえるような決定版。黒のマントを翻す姿にセクシーさが漂う、アダルトな魅力が身上だ。一方で、前半のジョナサンとのやり取りは極めて緊密。会話でドラマを伝えて、永遠の思い人であるジョナサンに寄せる思いを浮かび上がらせる。

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松本慎也のドラキュラ伯爵は一般的なイメージとは異なり、いわば『ポーの一族』のエドガーを連想するような「美青年ドラキュ ラ」。若くして吸血鬼になってしまった青年の孤独感が際立った。ドラキュラがジョナサンに寄せる思いも「憧れの、兄と慕う人」というものに。瑞々しい感性を保ちながらも長い年月を生きるドラキュラ。耽美な香りが漂う中に、精緻で繊細な演技で見せる。

ミナを演じる宇佐見輝は芯の強い女性像を作り上げた。ルーシー役の関戸博一(WeirDチーム)は確かな演技で作品を引き締め、同じくルーシー役の若林健吾(AberranTチーム)は苛酷な運命に操られた女性の悲しみを見せる。ヴァン・ヘルシング博士の船戸慎士は映画『ヴァン・ヘルシング』を思わせる、活力ある演技だ。

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今も日本で、そして世界で吸血鬼を題材とした作品は数多く上演され続けている。絶対的な恐怖感、吸血という行為のセクシーなイメージなど、吸血鬼物が好まれる理由は数々あるだろう。スタジオライフの『DRACULA』で描かれるのは、「究極の孤独」だ。どんなに愛する人を追い求めても、愛する人は自分より先に逝ってしまう。究極の孤独の中で、それでも人とのつながりを求めずにいられないドラキュラの切なさが観客の心を揺さぶる。
(文/大原 薫)


〈公演情報〉

doracula
Studio Life 公演
『DRACULA〜The Point of No Return〜』
原案◇ブラム・ストーカー著「DRACULA」
脚本・演出◇倉田 淳
出演◇曽世海司 船戸慎士 関戸博一 松本慎也 仲原裕之 宇佐見輝 鈴木翔音 若林健吾 千葉健玖 江口翔平 他
*ダブルキャスト公演。
*出演者は都合により変更になる場合があります。
●2 /15〜3/4◎ 中野 ウエストエンドスタジオ






『遠ざかるネバーランド』
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