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池谷のぶえ


「演劇キック」のコラムコーナーで、
 2013 年から約年半連載した、「贋作 女優 池谷のぶえ〜涙の数だけ、愛を知る〜」が、単行本となって出版されたのを記念して、池谷のぶえが下北沢風知空知で「この際、自分のまったく興味がないことや、自分のやりたいことばかりを詰め込んだお祭り」を1人で挙行! その快演ぶりに観客は大喝采! はたしてどんな経緯でここまでたどり着いたのか、今回の単行本の編集を担当した雑誌えんぶ編集長の坂口が、ご本人にインタビュー!
以下は、「ちょっと並べてみただけでも、恐ろしい企画ですね」と本人が語る当日の演目。カッコ内は池谷さんの興味度。

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演目--

獅子舞 ( とても興味がある ) 
対談/ゲスト ブルー&スカイ ( ふつう ) 
初の自作自演ひとり芝居 ( まったく興味がない ) 
公開人生相談 ( あまり興味がない ) 
 ( 少し興味がある ) 

すべてがこう、ぴぴぴと

──なんでイベントをやろうと? うち(えんぶ)で出版させてもらった本がきっかけ、までは分かってるんですが、その後…。
池谷 わたしのもろもろの予定が、思いの外、スコッと空いたんですね(笑)。で、なんかできないかなぁとも思ったんですけど。またね、人をいろいろ集めなきゃとかあるじゃないですか。そんときに「あれ? 本があれじゃないですか。本がもうちょっとで出版できる?」と気が付いて。1月の頃は途中まで進んでたくらいでしたね。
──校正のゲラができた頃ですね。
池谷 「あ、これはもしかして本の出版と同時に何か自分がやりたい物とかと組み合わせられたらいいなぁ」と思って。「じゃあ、いつ頃?」と考えたときに、本の中にもいっぱい出てくる宿敵・父の誕生日がちょうど3月の下旬くらいで、「あ、そのあたりとてもちょうどいいんじゃないか」って。すべてがこう、ぴぴぴと、ちょうど3月20日のイベントっていうところに繋がったっていうか。
──なるほどねぇ
池谷 普段は、こんな「イベントやろう!」なんてとてもじゃないけど思わないんですけど、なにかいろんな要素が集まって。たまたま
──イベント観ていて、最後「お父さんの誕生日」って告げられて、「そんな落としどころがあったんか!」って(笑)。
池谷 (笑)。
──本当にね〜。本当によくやる気になりましたね!
池谷 本当に! でも最初に、ここ(編集部)にご相談に来たじゃないですか。あんときもフワフワっていうか。人に話していけば、どんどん逃げられないようになるからっていう状態でした。自分一人だとどうしてもね「ま、いっか。やめちゃおう」ってすぐに思うから。
 

 やりたいこと、今回で全部使ってしまった

──70席くらいの小さい場所とはいえ、予約も1分くらいで満席になっちゃいましたね。で、回の予定だったのを2回目もやって。それでも来れない方がたくさんいらっしゃって。
池谷 そうですね。1日だけだからその日に用事があったら来れない方もいらっしゃるかもしれないし。
──だからって、あんなもん何日もやってらんない(笑)。
池谷 モチベーションが持たないですね(笑)。
──簡単にできたんですか? 構成というか内容は。
池谷 構成はわりとすぐできました。あんまり迷わないでできましたね。
──あ、そうなんですね。
池谷 いろいろ、やりたいこととかを並べているうちに、なんか。だからもう、これ以上はあんまりないんですよ、やりたいことは(笑)。本当にやりたいことが少ないから、微々たるものを全部今回で使ってしまったので。
──なるほど。
池谷 歌をカラオケ以外でちょっと歌いたいなとか、獅子舞やりたいなとか。鈴木雅之が獅子の中から出てきたらおもしろいだろうなっていうくらいで。うーん。一人芝居は特にやりたくないけど、イベントを考えたときに、わたしトークとかで持たす自信がないから、じゃあお芝居をやるしかないかなと無理くり。人を呼ぶとまた大変なことになっちゃうから、じゃあ一人で、やってみようかなと思って。

獅子舞でお客さんを掴んで

──でも、上手に構成されてましたよね?
池谷 本当ですか?
──ブルー&スカイさんの出てくるところとか。
池谷 ブルー君は絶対に出てもらおうと。この(本に書かれている)半生の中では一番、演劇的にお世話になっているので、どうしても呼びたいなとは思っていたんですけど。
──そうですよね。構成から言っても獅子舞があって、お客さんを掴んで、客席を温かくして。
池谷 温かく(笑)。でもあんなにみんな、獅子舞が好きだとは思ってなかったです(笑)。
──いやいや、池谷さんがあんなんで出てくるから。
池谷 いや、いやそうなんですか!(笑)。みんな獅子舞好きだ〜って。
──でも、嫌いじゃないかも。
池谷 嫌いじゃない! みんな噛まれたそうにしていたし(笑)。それはちょっと新しい発見。獅子舞獅子舞いいかもしれない。
──獅子舞って参加する要素っていうか。ただぼやーっと見てるだけじゃないなにかがあるような。あれナイスな発想でしたね。
池谷 (笑)。獅子舞ね。こんなに受け入れられるものだとは(笑)。
──本当にね。あそこで客席を温めて、獅子舞のかぶり物を取ったら、鈴木雅之が居て、またちょっと波風を起こしておいて、さらに鬘とサングラスと髭を取ったら、池谷さんが出てくるっていう構成って、なかなかのもんじゃないですか!
池谷 本当ですか?(笑)。よかった。でも、ほんと鈴木雅之さんに助けられました。
──獅子舞は借りた?
池谷 借りました。しかるべき場所があって、ネットで探したんですけど。やっぱり、ね、神みたいな扱いなんですね。神聖な物。
──はははは!
池谷 高かったですね。
──でも、楽しく考えてたんですね。
池谷 うん、あんまり「どうしよう!」とかはなかったような気がします。わりとスムーズに。辿り着いたような気がする。


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                     池谷のぶえ・ブルー&スカイ


ちょっと空回りしてるのもおもしろい
 

──で、そのあとが朗読ですね
池谷 せっかくね、本を売るからちょっとくらい読んどいた方がいいかなって(笑)。
──ただの朗読じゃなくって、ブルー&スカイさんにつながるっていうのが。どんどんどんどんそういう繋がりがイメージとして湧いてきたんですね。
池谷 初めは、違う。一番最初の文章を読もうかなと思っていたんですけど。ブルー君に繋がらないとなぁと思って。そこをトークでつなげればいいんだけど、上手じゃないから。じゃあ、読んでつなげようかなぁって。
──なるほどね。で、ブルー&スカイさんとの対談ですね。どうでしたか?
池谷 本当に、変なあれなんですけど。普通、ゲストを呼ぶっていうときに、「あれ聞こう、これ聞こう」って準備をするじゃないですか。わたしもそんなにとっさに出てくるタイプではないので。だけど、今回はすごいあれですけど、「もう、いいや!」っていう気持ちで。出たところ勝負というか、ブルー君も絶対にそんなにうまくしゃべれないっていうことも分かっているんですけど、全然なんかそういう怖さとか、なかったですね。
あれはですね…
池谷 15分でした。
──15分間話で繋ぐのって、けっこう大変ですよね?
池谷 大変。だけど全然何にも準備もしないで、そのときのブルー君としゃべってみようかなって。
──そうなんですか。
池谷 でも客席が味方でいてくれたからアレですけど。うん
──客席もね全然知らない人じゃないのでね。
池谷 そうそうそう。ありがたかったというか。
──ブルー&スカイさんもなかなか大変。大変だけど、一所懸命会場を盛り上げようという努力が空回ったり、しなかったり(笑)。
池谷 そうそうそう(笑)。ちょっと空回りしてるのもおもしろかった。
──そうですね(笑)。
池谷 がんばって2回もしゃべってくれて。得意じゃないでしょうに。ああいうこと。
──不思議なっていうか、今まで経験したことのない空気感が漂っていたというか。おもしろかったです。
池谷 本当ですか? でももうちょっと時間をもっとしゃべりたかったですけどね。それはそれでね。もっとちゃんとうまく構成して話せればよかったかなぁ。時間をもうちょっと取ればよかったかなぁと思いました。
──でも、まあ、細かいことをしゃべってもしょうが無いですしねぇ。ちょうどいいんじゃないですか。
池谷 大丈夫ですかねぇ。

演劇に対する愚痴が言いたかった?

──で、次は一人芝居?
池谷 そうですね。休憩して一人芝居に。
──一人芝居はどうだったんですか? 出来としては。
池谷 あれは、本当にやる気がまったく始めからなくて。何も書きたいことがないっていうか。一人芝居で書きたいことがないから。さあ! と思って、パソコンに向かったときに、「何か、じゃあ、日々思っていることを箇条書きにしてみよう」と思ったら、演劇に対する文句ばっかりが出てきて。もうこれで書くしかないかなぁと思って。自分が文句を言うようなお芝居にしようかなぁとか何かやっていくうちに、「おばあちゃんが出てきたらおもしろいかもしれないな」と思って。で、なんかただのおばあちゃんじゃなくて、自分がおばあちゃんになったときのとかが出てきてそれが何か交錯したらいいかなって。だんだん、文句を書いているうちに、そういうふうな構成になって。だから、わりと流れで書いていったというより、書きたいことをポンポンポンポンって書いていって、あとでそれを整えていったみたいな。そんな感じでした。
──年後の自分と今の自分の会話になる、あれおもしろかったですよね。あれになって、あ、なるほどっていう感じ。その前までは何だか。
池谷 その前までは「つまんない劇を観に行った後のただの飲み会」から始まって。
──はい。
池谷 なかなか「つまんなかった」って言えないなって。いうのがあって。その一方で大女優になって、インタビューを受けているような2つの場面が対になるっていう。
──その、何か、妙な文句のリアリティっていうの、愚痴があって。
池谷 愚痴(笑)。愚痴が言いたかった。
──それは客席の方達もけっこう面白がっていましたよね。「みんな好きでしょ」って。
池谷 あれも愚痴。


白塗りのミュージカル

──その流れで白塗りになりますね。
池谷 そう。流れで白塗りになってましたね。歌って、ミュージカルになりました。
──白塗りのミュージカルになってましたね。あそこらへんは本領を発揮されていましたね(笑)。
池谷 一人芝居を書いていて、これどうやって終わらせればいいのかなと思ったときに、あの場面の最後に歌った歌、『リトル・マーメード』の歌なんですけど、あれなんか、変てこりんで好きなんですよ、前から。電車の中で聴いていたときに、「あ、これで無理くり終わらせちゃえばいい」と思ってついでに「あ、白塗りもやってみたかった」んだと思って。そのままなし崩し的に白塗りを挟んで歌おうかなって。だからあそこらへん、ちゃんと繋がってないです。力業です。
──白塗りになって歌って、力業だけどすごくナイスなアイデアというか。すごいなって思いましたよ。あれ普通に歌っても。おもしろくないことはないけど。
池谷 歌うだけじゃ、あ、そうですか、ってなっちゃいますもんね。

白塗りを落としながら人生相談

──その後、人生相談ですね。
池谷 人生相談。あれ、もっとちゃんとやりたかったんだけど、あれくらいでよかったのかな。今思うと。
──あれくらいで! あれもすごい。白塗りを落としながら人生相談をするっていう。あんなところで人生相談なんてできないもん。目の前に相手がいるわけでもないし。
池谷 本当はちゃんとやろうと思ってたんです。で、構成を考えたときに、時間が全然足りないと思って。だったらまぁ、メイク落としながらになっちゃうかなって。
──あれ一番すごいと思った。
池谷 あれが一番! はははは。
──だってメイク落としながら、人生相談をして、池谷さんがいい加減な回答をしていくっていう。全体にいい加減オーラがね。
池谷 そう! いい加減なね、そういうのはちょっとやりたかったんですけど。
──普通、思いつかないです。メイク落としながら人生相談するってあんまり。よくいろいろ思いつきますね?
池谷 いえいえいえいえ。適当な

最後に良いこと言って終わる

──で、中島みゆきですね。
池谷 最後に良いこと言って終わろうかと思って。
──やりたい放題!(笑)。
池谷 良いことをね。一応。最後に言っておけば、「いいとこ来たな」って思うかなと(笑)。
──最後に自分の歌いたい曲を思い切り歌って。お客さんも納得してっていう。素晴らしい構成でしたね。
池谷 ありがとうございます。
──大変だけど、楽しかったんですね。
池谷 楽しかったです。苦痛ではなかった。「一人芝居ちゃんとできるかな」とか、歌の練習とかは、日々「うーん」と思いながらやっていましたけど、でも、うわあああっ! ていう苦痛は全然なかったです。当日もすごい、ね、お客さんがすごく温かくて。だから楽しかったなぁ。楽しかったっていうか、何だろう。「あ、見守ってくれている人たちというか、気にかけてくれている人たちが、ああ、いるんだなぁ」っていうのを生で実感できたっていうか。今まであんまりそういう実感がなかったんですけど。
──よかったですね!

次回は
36年後
 

池谷 やってよかったです。本が出版されたおかげですけど。
──いえいえいえ。
池谷 本がなかったら、わたしやってないと思うから。本当にありがたかったです。
──また何かの機会があったら。何十年か後に。
池谷 何十年か後で
──じゃあ、大女優の年になったら、
池谷 82歳って、もういないかもしれない。坂口さん(笑)。
──(笑)。じゃあ、予告しましょう。次回は池谷さんが82歳になったときに一人芝居をやる!
池谷 今度は若い方、46歳の方を演じるわけですね。
──いいですね〜。
池谷 (笑)。

 

【構成・文/坂口真人(えんぶ編集長)】


〈池谷のぶえ出演情報〉
【テレビドラマ】 
NHK総合 連続テレビ小説「半分、青い。」
 月〜土曜_日8:00〜放送中
テレビ東京系「執事 西園寺の名推理」
 毎週金曜20:00〜放送中
【映画】
2018年5月19日(土) 公開
モリのいる場所」(監督:沖田修一)


 

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