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作家・松村武の博覧強記と飛翔する想像力、それを具現化してみせる劇団員たち。毎公演、予測不能な新しい演劇世界を見せてくれる劇団カムカムミニキーナ。今年の本公演は、松村が北陸の地においてインスピレーションを受けて創作した『蝶つがい』。彼の地にまつわる「蝶」と「貝」をキーワードに、季節や時を超え、幻想と現実が交錯するファンタジックなストーリーが展開する。
出演者はカムカムの看板役者八嶋智人、役者としても高い評価を受ける松村武、そしてベテラン陣から新進まで幅広いカムカムの劇団員たちに加え、元AKBの仁藤萌乃、小劇場界で活躍する富岡晃一郎や小林健一、さらに演劇集団円の実力派女優として知られる谷川清美など、強力なゲストが参集しての新作公演となる。
その舞台について松村武と八嶋智人が語った「えんぶ6月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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壁に止まった蝶つがいは
三次元を四次元にするキー?

──タイトル『蝶つがい』の発想はどんなところから?
松村 北陸に行く機会があって、富山で神社巡りをしていたら、たまたま蝶にまつわる謂れのある神社があったんです。近くに貝塚があって、貝がひらひら飛んで蝶になったというのがそこの伝説で、蝶が出てくる日本の神話はまず聞いたことがないなと。そこで蝶と貝の話にしようと。さらに北陸の魚津は蜃気楼が有名ですが、蜃気楼の語源は大蛤が吐き出す幻想と言われます。そこで、貝が「幻想」の内側に閉じるイメージなら、蝶は「現実」という宙にはためいていくイメージ。
同時に、僕は最近トポロジー(位相幾何学)に興味があって、図形で世界を考えるその理論風にいくと、蝶の卵は点で一次元、それが線になって動くことで二次元の幼虫、サナギ。そこから羽が生え、羽ばたくことで、三次元の世界。その蝶が壁に止まった形が蝶つがいになるわけですが、そこから蝶つがいは三次元を四次元に繋ぐキーにもなるのではないかと。
四次元は時間軸ですが、今回は時間軸が複数並行存在するような話です。具体的には1人の女性の一生の話ですが、その一生を一本の時系列に沿うだけでなく、同時に存在する未来の可能性という視点から見るというようなことを書きたいと思ったんです。
八嶋 僕もたまたま、富山にテレビの収録で行くことになって、その神社にも行ってきました。魚津も行って、ちょうど僕の行く何日か前に蜃気楼が出たそうです。海岸が湾になっているので、氷見からだと海の上に立山連峰が見えたり、どこか幻想的な眺めでした。

言葉が溢れてしまう人たちが
集まるサロン

──内容もSFファンタジー的ですね。
松村 そういう面もあります。ストーリーを少し詳しく言うと、日本海を臨むところにとあるサロンがあって、そこは言葉が内から溢れてしまう人たちが集まってくる場所です。ウソを言ってしまう人、説教臭い人、予言する人、学校で不思議なことを喋っていじめられた子たち、世界を動かしていると喋る老人もいます。そこにいる1人の女性が主人公で、その役は何人かの女優で分担して演じます。そこで起きる事件を探りにくる週刊誌の記者が八嶋です。
八嶋 変人が集まるサロンを取材しているとき、少女に「明日、不吉なことが起きる」と予言されて確かめにくるんです。
 
──松村さんの物語は膨大な知識で書かれているので、演じる側はたいへんですね。
八嶋 うちの劇団員はそういう歴史など知らずにやるのがいいところで(笑)、神話とか歴史的背景とか関係なく、松村が書いたものにそのまま向き合う。その底知れないピュアさがいいんだと思います。だから面白くなるんだと思うし、松村と同じくらい知識のある人間がやるとかえってつまらなくなる(笑)。
 
──言葉が溢れてしまう人たちというモチーフは、言葉が不自由になってきたこの時代や、言葉をまき散らすSNSなどへのカウンターにも思えます。
松村 言葉は流布していく、飛んでいく、と同時に言葉によって、実際にはありもしない一点に閉じ込められてしまうこともあります。たとえば天気はずっと変化し続けている。雨も曇りも晴れも繋がっていて、一点ではない。時間もそうです。未来と現在と過去に分けてしまわず、大きなうねりのようなものの中で、仮に一点止めしてあるものを見ている。すべては流れていてその濃淡でしかない。そういう視点から言葉も捉えると世界の見え方も違うし、言葉で追い詰められることもない。それは世の中のすべてに言えると思います。そういう意味では、演劇は言葉から脱却することが課題で、また得意だった時代もあったはずなんですが、今は言葉の存在感が強すぎる時代に戻っている気がします。
八嶋  カムカムは言葉を沢山使う劇団だと思われていますけど、普通の演劇よりダンスのほうが情報量が多かったりするように、言葉そのものより身体性で表現する劇団なんです。そういう表現がどんどん色濃くなっているのが現在のカムカムで、そこは28年間ブレてないし、どんどん表現が上がってきています。この作品も期待していただいていいと思います。


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松村武・八嶋智人

まつむらたけし○早稲田大学在学中の1990年、カムカムミニキーナを旗揚げ。役者として出演しつつ、劇団の全作品の作・演出を担当。外部への脚本提供や演出作品も多数。故郷の奈良では般参加型演劇イベント「ナ・LIVE」のプロデュースも担当。俳優としても、NODA・MAP、阿佐ヶ谷スパイダース、ラッパ屋、KAKUTAなどの作品などに出演している。
 
やしまのりと〇奈良県出身。1990年、松村武とともに、劇団カムカムミニキーナを旗揚げ。強い個性と鮮やかなセリフ回しキレのあるトークを武器に、舞台のみならず、ドラマや映画などの映像作品、またバラエティ番組においても広く活躍中。劇団以外の最近の出演舞台は『國語元年』『消失』『あたらしいエクスプロージョン』『24番地の桜の園』など。

〈公演情報〉
#10

カムカムミニキーナVol.66
『蝶つがい』
作・演出◇松村武
出演◇八嶋智人 松村武 吉田晋一 亀岡孝洋 長谷部洋子 未来 田原靖子 大倉杏菜 元尾裕介 渡邊礼 菊川耕太郎 福久聡吾 栄治郎 柳瀬芽美 スガチヅル 
仁藤萌乃  富岡晃一郎(ベッド&メイキングス) 小林健一(動物電気) 谷川清美(演劇集団円) ほか
●5/17〜27◎座・高円寺1
〈料金〉[通常回]5,000円  [割引回]4,500円 [U25割]3,900円(全席指定・税込)
●6/2・3◎近鉄アート館
〈料金〉[一般]5,000円 [U25割]3,900円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉http://www.3297.jp/tyo-tsugai/

 


【取材・文/宮田華子 撮影/田中亜紀】



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