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没後36年経った今でも、その小説やエッセイが多くの人に愛されている作家・向田邦子。その向田作品として人気を博したドラマを原作に、ミムラと溝端淳平が「ふたり芝居」を演じる舞台『家族熱』が、5月29日からの東京公演を皮切りに、水戸、大阪、兵庫で上演される。

原作の『家族熱』は、1978年に放送された連続ドラマ。後妻として黒沢家に嫁いできた朋子は、家族と前妻が通じていることを知ってしまい、朋子と歳の近い長男・杉男の勧めで家を出ることになる。
企画・台本・演出の合津直枝は、今回の物語を原作の3年後に設定、“家族”という制約から解放された歳の近い義理の母と息子が再会し、激しく揺れる心情をきめ細かく描き出す。
この「ふたり芝居」で、義理の母・朋子を演じるミムラと、息子・杉男を演じる溝端淳平に、向田作品の魅力、役者としてのお互いについて話してもらった「えんぶ6月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

向田さんの世界なので
綺麗な人間にならないように

──今回取り組む向田邦子さんの作品について、お二人はどう捉えていますか?
ミムラ 向田さんの作品は大好きで沢山読ませていただくのですが、どんな作品も人間の根源的なところまで掘り返して、嫌なところも気持ちいいくらい赤裸々に描き出す。そこが読者を惹きつけるところだと思います。
溝端 男の目線から見るとちょっとぞっとするような鋭さで、女性心理や関係性が描かれていますよね。それに比べると、男ってなんて単純な生き物なんだろうと思います(笑)。

──お二人はこの作品で義理の母と息子を演じるわけですが。
ミムラ 私の役の朋子は、息子とは一回りしか違わない若い後妻で、一生懸命家族のために尽くそうとがんばるんですけど、色々あって家を出るんです。一見いい人間のようですが、向田さんの描く女性ですから、口に出さないだけでエゴイスティックなところもあるし、ずるいところもある。溝端さんが男は単純とおっしゃいましたけど、確かに「隠していることがある」のを隠さないのが杉男で、「何も隠してないわよ」と見せて実はごっそり隠している朋子で(笑)、そこが面白いと思います。朋子をできるだけ綺麗な人間にならないように演じたいですね。
溝端 杉男は3年ぶりに朋子さんと再会しますが、その29歳という年齢がすごく微妙だなと。自分もほぼ同年齢なのですが、大人の男になりきれていない、でも子供でもない。色々背負い込まないといけない立場になって、ある種の男らしさと臆病さが渦まいている。そんな杉男がかつては母という立場だった女性と再会して、家族という枠を超えて秘密をどんどん共有していく。そういう状況は、すごくやり甲斐がありますし、そのぶん内面的な熱量がいると思っています。

「ふたり芝居」は
信じ合うか探り合うか

──舞台では初共演のお二人ですが、ドラマでは共演済みだそうですね。お互いの印象は?
溝端 ミムラさんはすごく器の大きい方で、知識が豊富で、向田さんの作品もすごく読み込んでいらっしゃる。この機会に色々なことを教えていただきたいですね。
ミムラ 私のほうこそ、すでに溝端さんに感化されています。私は色々しゃべることはできるのですが、でも本当に核心をついた言葉ってそぎ落とされているものなんです。溝端さんはそういう言葉を自分の言葉としてストンと話される。そこが杉男という人のどこか不器用なところとか実直さと重なります。このお芝居に関しても、すごく考えてグツグツ煮詰めていらっしゃる感じで、私も鍋のふたをもう少し閉めておいて、煮詰めたほうがいいかなと(笑)。
溝端 僕が杉男と違うのは、この物語の家族とは真逆の、ごく普通の家庭で育ったんです。でも1人の男としては、杉男と朋子さんとの関係性って、すごくときめくものがあって。綺麗な年上の女性で、母なのに母じゃないという。もし友だちに同じ立場の友人がいたら「それ、すごく楽しいじゃない!」と言いたい(笑)。ちょっとタブーをおかすようなドキドキ感ですよね。
ミムラ 溝端さんの凄さは、こういうところです(笑)。
 
──そんなお二人が「ふたり芝居」に挑むわけですが。
ミムラ 私は大人数の芝居ばかりでしたので想像がつかないです。いつも以上に相手役とのコミュニケーションが必要かなと感じるので、溝端さんと一緒に築きあげていきたいです。
溝端 ミムラさんは僕にないものを補ってくださる方だと感じるので、僕も安心です。「ふたり芝居」は信じ合うか探り合うかどちらかだと言いますが、どちらにしろ100%で向き合うわけですから、その濃密さを出せればと。でも、どこかで3割くらい裏切り合ってたりすると面白いかもしれない(笑)。
ミムラ いいですね(笑)。絶対に予定調和にはならないようにしたいですね。

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ミムラ・溝端淳平

みむら○埼玉県出身。03年ドラマ『ビギナー』で女優デビュー。映画やTVドラマ、舞台など幅広く活躍する。読書家で執筆活動も行い、コラムやレビューなどを連載中。最近の主な出演作品は、映画『後妻業の女』『彼らが本気で編むときは、』、テレビ『トットてれび』(NHK)『ソースさんの恋』(NHKBS プレミアム)『この声をきみに』(NHK)『大岡越前4』(NHK BSプレミアム)、舞台『人間風車』など。18年3月美村里江に改名を発表。この『家族熱』がミムラとして最後の作品となる。
 
みぞばたじゅんぺい〇和歌山県出身。07年ドラマ『生徒諸君!』で俳優デビュー。10年映画『赤い糸』で、第33回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。BS時代劇『立花登青春手控え』で時代劇初主演。最近の主な出演作品は、テレビ『立花登青春手控え2』(NHK BSプレミアム)、映画『破裏拳ポリマー』『祈りの幕が下りる時』、舞台『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』『るつぼ』『管理人』『ムサシ』など。秋には『魔界転生』の上演が控える。

〈公演情報〉
家族熱PR

ふたり芝居『家族熱』
原作◇向田邦子 
企画・台本・演出◇合津直枝 
出演◇ミムラ 溝端淳平
●5/29〜6/5◎東京芸術劇場シアターウエスト
〈料金〉前売 6,000円 当日 6,300円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉テレビマンユニオン  03-6418-8700
●6/9◎水戸芸術館ACM劇場
〈お問い合わせ〉 029-225-3555 
●6/11◎近鉄アート館
〈お問い合わせ〉 06-6622-8802 
●6/12◎兵庫芸術文化センター 阪急中ホール
〈お問い合わせ〉 0798-68-0255



【取材・文/宮田華子 撮影/友澤綾乃】



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