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すぐ隣にそびえる巨大アミューズメントパークが不夜城のように空を明るくしている海辺の広場。その草むらに「おぼんろ」のテント劇場は幻のように建っている。色とりどりの布や電飾をまとった外観は、一見サーカス小屋のようにも見えるのだが、どこか草原のパオのような温もりと優しさと懐かしさがある。そのテント劇場が『キャガプシー』を上演するための「キャガプシーシアター」だ。

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「おぼんろ」は主宰の末原拓馬によって2006年に作られた劇団で、末原、さひがしジュンペイ、高橋倫平、わかばやしめぐみという「語り部」4人で活動している。かつて末原は毎晩のように都会の路上で、独り芝居というスタイルで「物語り」をし、劇団公演では、劇場ではなく廃工場や屋形船の上など様々な場所が舞台となった。その中で培われた観客の想像力をかき立てる独自の演劇表現と、いかなる場所でも公演するというアトラクション型の上演で、『パダラマ・ジュグラマ』(2014年)では3,000人以上を動員する劇団にまで成長した。
 
今回の『キャガプシー』は、昨年11月に、自分たちの作品にもっとも相応しい場所で上演したいという思いで、この広場にオリジナルのテント劇場を建てた。その公演は初日が開いてから観客のSNSやクチコミによって動員が伸び続けた。今回の再演もそのときと同様に、テント素材や舞台美術や衣装は、SNSで「建材」を募って、贈られてきた不用品で作り上げている。そして5月16日、今回の「キャガプシーシアター」が姿を現し、「物語り」を語り始めた。 

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【Story】
穢れた人形達はあまりに尊い夢を見た
キャガプシーと呼ばれる人形達は人形同士で壊し合いをするために創られました。 
人間の罪の穢れを浄化するための儀式なのです。 
さあ、気になるのは、キャガプシー達が何を考えていたかです。 
その儀式は人里離れた場所でひっそりと行われていましたが、
ある時、その壊し合いを見世物にしようと考えるネズミという男が現れました。 
それから10年、仲間を壊し続けるトラワレという名のキャガプシーを
破壊させるための人形を作り続ける盲目の人形師ツミ。 
ガラクタを集めて小屋を作り、そこで人間たちに残酷なショウを見せ続けるネズミ。 
三者は互いに笑い合うことも、泣き出すこともなく過ごしていました。 
しかしある時創られた「ウナサレ」というキャガプシーは何かが壊れていました。
彼は眠るたびに悪夢にうなされると大声で嘆き、先に創られたトラワレを兄だと言い放つや、朝も晩も、大笑いをしながらトラワレを全身全霊で愛し始めました。
そして何かが、変わり始めます・・・

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外界と遮られたテントの中で、観客は、まず闇へと導かれ、やがてキャガプシーたちが生きる「異界」へと足を踏み入れる。その「異界」はどこか外国の絵本のようなファンタジー性をまとっているのだが、キャガプシーが「人間の穢れ」を浄化するために作られた人形だと知ると、単なるおとぎ話では終わらないこの「物語り」の怖ろしさに思いいたる。
たとえば「トラワレ」「ツミ」「ウナサレ」というそれぞれの名前に託されたメタファー。ただひとり生き物の名を持っている「ネズミ」という存在。それらの謎を解いていくことは、最終的には観客自身の心をのぞき込むことであり、人間そのものの「罪」や「悪」と向き合うことにほかならない。つまりこれは人間という「罪深い生き物」についての「物語り」なのだ。
だが「おぼんろ」の素敵なところは、テント劇場というかりそめの空間を逆手にとって、そんなヘビーな「物語り」を、軽やかに着地させてしまうことだろう。テントの布を1枚めくると、「異界」に風穴があく。そこには外界が果てしなく広がっている。
「物語り」は終わったのだ。解放と喪失と…。その痛みと意味を引き受けながら、それぞれに外界へ踏み出していくしかないのだ。

「トラワレ」の末原拓馬は抑圧された人形の苦悩が哀しく、「ツミ」のわかばやしめぐみは命が壊される痛みを抱え、「ウナサレ」の高橋倫平は愛の純粋を秘め、そして「ネズミ」のさひがしジュンペイは深く切なく葛藤する。たった12日間で跡形もなく消えてしまう儚さゆえか、劇場も出演者もひたすら美しい。

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〈公演情報〉
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おぼんろ第16回本公演『キャガプシー』
作・演出◇末原拓馬
劇場美術◇竹邊奈津子 
語り部◇さひがしジュンペイ・高橋倫平・わかばやしめぐみ・末原拓馬
●5/16〜27◎おぼんろ特設劇場「キャガプシーシアター」(江戸川区臨海町6丁目  葛西臨海公園内 汐風の広場)
〈料金〉全席自由/一般前売4500円 当日参加チケット4800円(税込) 
優先入場参加チケット(5分前入場)5000円 各ステージ限定20枚
ひよっこ(高校生以下)2000円 イイネ公演チケット(26日、11:00 金額は当日投げ銭)トリオ割10,000円(超お得な3人セット一般チケット)
※イイネ公演/実質無料の公演。観劇後に、参加者の思った価値分を投げ銭するシステム
☆特典付き公演/終演後、出演者の楽屋トークラジオをその日の参加者様限定で期間限定配信する
〈公式Twitter〉
https://twitter.com/obonro
〈公演HP〉
http://www.obonro-web.com/15 
〈おぼんろ公式〉http://www.obonro-web.com



【取材・文/榊原和子 外観写真提供/おぼんろ 舞台撮影/MASA】




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