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OSK日本歌劇団のトップスター高世麻央の大阪でのファイナル公演となるレビュー『春のおどり』が大阪松竹座で上演中だ(5月27日まで。また、7月5日〜9日まで東京新橋演舞場でレビュー『夏のおどり』として上演)。

OSK日本歌劇団の大阪松竹座での『春のおどり』は、2004年に66年ぶりとなる公演が実現して以来、大阪の春の風物詩として15年間続いているレビュー作品。今年創立96周年を迎え、輝かしい100周年への道を力強く歩み続けているOSK日本歌劇団にとって、大きな柱である興行となっている。
そんな舞台が、現トップスター高世麻央の大阪でのファイナル公演になるとあって、今回の和洋レビュー2本立ては高世麻央の1996年の入団から、今日まで22年間の集大成が詰まった作品に仕上がっている。

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第1部和物レビュー「桜ごよみ 夢草紙」は西川箕之助の構成・演出・振付。平安雅な男女が美しく揃うオープニングで「辛くて泣いても いつも誰かが寄り添い支えてくれた その絆 この縁 忘れはしないありがとう」という主題歌「夢草紙」が歌われる。和物レビューの主題歌としては、比較的ポップで明るい曲調に救われるが、いきなり「ありがとう」からの幕開けに、思わず胸が詰まった。
もちろん、芸道に限らず何かを極めようとした時に、困難のない道などはおそらくどこにもないだろう。だが、今、見目麗しい公達として、舞台のセンターで輝く高世麻央率いるOSK日本歌劇団の歩んできた道程が、あまりにも大きな波乱に満ちたものだったことは忘れようがない。一度は解散が宣言されたOSKを、団員1人1人が街頭に立ち署名運動を重ね、ようやく存続がなったものの経営難が続いた歌劇団の団員は、生まれ故郷であるこの大阪松竹座での66年ぶりの公演が実現した2004年時点で23名にまで減っていた。その時期をくぐり抜けてきた現有メンバーは、高世と、彼女に続く盤石な男役スターである桐生麻耶、特別専科の朝香櫻子、緋波亜紀の4名。彼女たちがつないだバトンがなければ、今再び団員が50名を超え、100周年への道を進むOSK日本歌劇団の歴史は途絶えていただろう。その歴史を担った1人であり「OSKの貴公子」として、あくまでもノーブルな男役姿が、観客を魅了し続けてきた高世麻央に「ありがとう」を真っ先に言いたいのは、こちらの方だ。
だからこそ、そんな「男役高世麻央」の集大成の場面が立て続く構成には、目を奪われた。舞台全体を大きな三面鏡に見立てて、若衆姿の高世と、鏡に映る像として舞う楊琳、真麻里都、愛瀬光の共演で綴られる「鏡の夢」は、OSK和物レビューの看板演目で、豪華メンバーを揃えた布陣と共に、その一糸乱れぬ見事さに改めて見惚れる。そこから、美しき楊貴妃、そして光源氏と、高世ならではの美貌を誇る場面にはため息が出るばかり。それら幻惑の美の世界に、歌舞伎のハイスピード場面である「釣女」や、軽快な「民謡メドレー」等の、色合いの異なるテンポの良い場面が挟まるのも和物レビューを豊かなものにしていて、貴公子高世に対して、骨太な男ぶりが際立つ桐生がいることのバランスの良さを感じさせる。
娘役の序列一番手となった舞美りらと高世の「蝶の道行き」も雅やかで、桜の精の大群舞につながる流れも見応えたっぷり。ただただひたすらに美しい和物レビューが繰り広げられた。

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そこから、休憩を挟み第2部は「One Step to Tomorrow!」。OSK存続の会以降中心となった歴代トップスター大貴誠、桜花昇ぼるの退団公演にも関わった作・演出・振付の名倉加代子が、去りゆく高世がOSK日本歌劇団に残す明日へのStep、明日への第一歩を刻む、回顧だけに終わらない前向きなショーをとの思いで構成した洋物レビューだ。
その中で、OSKの現在を「奇跡の薔薇=ブルーローズ」になぞらえた高世本人作詞によるナンバーは、その思いの深さがしみいるものだったし、高世が折にふれて歌ってきたミュージカル『ジキルとハイド』を代表する楽曲であり、作曲家フランク・ワイルドホーンの出世作「This is the Moment」では歌だけでなく、鍵盤ハーモニカの演奏というサプライズも。男役の集大成に相応しい黒燕尾の総踊り、そしてOSK日本歌劇団を象徴する名ダンスナンバーとなった「ジャスト・ダンス」と、どこを取っても見どころ満載。高世が、桐生をはじめとした多くの団員たちと、瞳を見交わし踊る場面も多く、ここから、そしてこの先へ!との、深い心と心の交感が続く。
だからこそ、OSK日本歌劇団の貴重な男役の戦力である悠浦あやとの休演がなんとも無念ではあるが、悠浦の不在を虹架路万、愛瀬光などが、次世代を担うスターとしての風格を備えて来た楊琳、大変残念ながら高世に続いて本年9月での退団を発表したOSKきっての名ダンサー真麻里都と並んで大きな場面を受け持って支えたのは、貴重な経験となっただろう。高世以下「虹の七色」を男役で表現したシーンに、期待の若手スター華月奏が連なったのも、OSKの明日を感じさせる萌芽としての大収穫と言える。
また印象的なのは、舞美りらを中心とした女役だけの場面「ジェラシー」や「カントリーブギ」等、男役に対して一歩控えて寄り添うのではなく、女役も自立したスターとして対等に渡り合う、OSK日本歌劇団ならではの場面が、色合いを変えて作られていたこと。ここにはOSK独自の個性がよく表れていたし、白藤麗華のコケティッシュな色っぽさ、城月れいの歌唱力も的確に活かされて魅力的だった。
全体に、去りゆくトップスター高世麻央のノーブルな貴公子として、また歌手として、ダンサーとしての多面的な魅力をフィーチャーしつつ、100年への道を進むOSK日本歌劇団の未来へと新たなバトンをつなぐステージに仕上がっていて、男役・高世麻央が有終の美を飾る、7月の新橋演舞場『夏のおどり』へと続く奇跡の薔薇、高世率いるラOSK日本歌劇団が紡ぐ愛おしい時間の輝きを実感できる、見逃せない公演となっている。

※高世麻央の初日インタビューはこちら
http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52053325.html 

〈公演情報〉
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OSK日本歌劇団 大阪松竹座公演
『レビュー 春のおどり』
第1部 桜ごよみ 夢草紙
 構成・演出・振付◇ 西川箕乃助
第2部 One Step to Tomorrow!
 作・演出・振付◇名倉加代子
出演◇高世麻央 桐生麻耶 楊琳 真麻里都 舞美りら 白藤麗華 ほかOSK日本歌劇団
●5/19〜27◎大阪松竹座
〈料金〉一等席 8,500円 二等席 4,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489(10:00〜18:00 年中無休・年末年始除く)
  https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/osk2018_shochikuza/

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OSK日本歌劇団 新橋演舞場公演
『レビュー夏のおどり』
第1部 桜ごよみ 夢草紙
 構成・演出・振付◇ 西川箕乃助
第2部 One Step to Tomorrow!
 作・演出・振付◇名倉加代子
出演◇高世麻央 桐生麻耶 楊琳 真麻里都 舞美りら 白藤麗華 ほかOSK日本歌劇団 
●7/5〜9◎新橋演舞場
〈料金〉S席(1・2階席) 9,500円 A席(3階席) 5,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹0570-000-489(10:00〜18:00 年中無休・年末年始除く)

 



【取材・文/橘涼香 写真提供/大阪松竹座】 

 

『レビュー夏のおどり』
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